冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
344 / 2,304

胎動するトラウマ

しおりを挟む
金曜日の朝、少し早起きをして昨日の見舞い帰りに買った食材で朝食を作った。レイの家に来てから初めて三人で朝食を食べられると思ったのだが──

「レイ! 起きろ! 飯作ったから!」

「んんん……大声、やめ…………頭、ガンガンするっす……」

──レイがなかなか起きず、俺が想像していた優雅な食事が始まらなかった。

「ったく、お前昨日俺が寝た後こっそり酒飲んだだろ。冷蔵庫から三本も減ってたぞ」

「んー……」

「…………朝までぐっすり眠れるように、抱き潰してやろうか?」

「抱いてくれるんすか!? あっ……痛た、急に起きたら頭が……」

「ほら起きろ、飯作ったから」

二日酔いに苦しむレイを無理矢理抱きかかえてダイニングに向かうと、俺が焼いた目玉焼きを美味そうに食べているアキが居た。

「アキっ、お前……もういいや、レイ、ほら、座れ」

三人同時に食べたかったのだが……

「にーに、にーに作るした卵美味しいです。ご飯作るするありがとうです!」

まぁいいか!



レイは二日酔いで潰れていたし、アキは勝手に食べ始めていたしでろくな朝食ではなかったが、アキの可愛らしい笑顔を見られたからもうそれでいい。

「よし、じゃあ俺はもう学校行くけど、アキ……レイに酒を飲ませるなよ」

「二日酔いの時は迎え酒が……」

「分かるするしたです、このめ酒飲むする、ぼく怒るするです」

「飲まないっすけど……アキくんに怒られてもそんな怖くないっすね」

「アキはハイキック一撃で人を昏倒させられることを教えておく」

「ぇ」

青ざめてアキを見つめるレイを笑い、彼らに手を振って登校した。



昨日リュウを抱くと約束したからか、いつもお喋りな彼が今日は静かだ。それに言及すれば顔を赤くし、更に黙り込むという愛らしい反応を見せてくれた。

「てん、く……だい、じょ…………? 風邪、とか……」

「保健室行く~? 先生には言っとくよ」

「い、いや……そういうんとちゃうねん、体調は悪あらへんから気にせんといて」

カンナとハルに慰められるリュウから一歩離れ、リュウの照れの理由を察しているシュカが俺に囁く。

「……青姦をするなら虫除けスプレー必須ですよ」

「なるほど。ありがとう、買っとくよ」

新情報を手に入れたりもしつつ、昼休み、今日も年積には無視されたがネザメは選挙活動をサボって俺と二人きりの時間と場所を作ってくれた。

「テディベア喜んでくれました! 昨日は帰り際に泣かなくて……本当にありがとうございます」

「そうかい、役に立ったようでよかったよ。お礼は言葉よりも……ね?」

ネザメは自身の頬をつんとつつく。彼の求めを察した俺は身を屈め、その白い頬に唇を触れさせた。

「……ふふ、どういたしまして」

「本当に助かりましたよ。来週……月曜日に選挙ですよね、頑張ってください」

「もちろん。君を手に入れられるかどうかもかかっているからね」

「いやだから俺それまだ同意してないんですけど」

なんて会話をしているうちに昼休みは終わり、俺達はそれぞれの教室に戻った。何事もなく放課後まで時間は進み、今夜のためにリュウと話す時間を設けた。

「アキ、迎えに来てくれることになったからさ、駅で合流しろよ」

「ありがとさん、一人でもええ思うんやけどねぇ」

昨晩、俺はアキとレイにリュウを抱くことを話し、迎えの頼みを済ませておいた。時間を教えて待ち合わせるのには不安があったため、電話をかけたら駅に来てくれと頼んだ。

「もしもし、アキ? 学校終わるしたから、駅、リュウ、お迎え、来る欲しい。あぁ、ありがとうな、頼むよ」

「……アキくんと話すん傍から聞いてたらおもろいなぁ」

「うるさいなしょうがないだろ。ちゃんと合流しろよ、アキは多分日傘持ってるから分かりやすいと思うぞ」

「分かっとるて。水月はお見舞い行くんやんな? 仲良うやりや」

「あぁ、いつか紹介するよ」

今日は真っ直ぐに病院に向かったため、昨日よりも一時間は早く着いた。病室の前に立ったがセイカの叫び声などは聞こえない。

「セイカー……?」

「……鳴雷っ」

病室に入り、カーテンをくぐってセイカの元へ。テディベアを両腕で抱いた彼と目が合い、すぐに彼の拘束具が外されていることに気が付く。

「今日は早かったな」

「用事なかったからな。具合よくなったのか? アレ、ほら……ベルト? ないじゃん」

「拘束のことか? 朝に検査受けた後なんか外してもらえたぞ。寝返りも打てなかったからなぁ……楽になったよ」

「昨日より顔色いいよ。抱き締めてもいいかな」

セイカは特に照れた様子はなく頷き、テディベアを脇に置いて手を広げた。俺は靴を脱いでベッドに乗り、セイカの上半身をそっと抱き締めた。

「……あったかい。セイカ……夢みたいだよ、本当に。セイカを抱き締められるなんて、俺、すごく幸せだ」

「…………俺の何がそんなに気に入ってんのか知らねぇけど、まぁ喜んでんならよかったよ」

抱き締めた身体は想像以上に細い。中学の頃セイカはずっと冬服を着ていて、体育の時間も常にジャージだったから体型はあまり分からなかったけれど、ここまで細くはなかったと思う。

「本当に、本当にっ……大好きだ」

中学時代を思い返す度、吐きたくなる。セイカを愛おしく思い救いたいと願う裏で復讐の炎が燻る。好きだと声に出していないとその炎が燃え上がる気がしてしまう。セイカが少し元気になって話し方が俺を虐めていた当時に寄ってきた今は特に。

「……一旦離すよ」

身体を離し、ベッドの上で見つめ合う。濁った瞳は俺に殺意を向けていた目と同じものとは思えず、憎しみが落ち着く。

「鳴雷……」

セイカの右腕が俺の方を向く。肘下数センチから先がないその腕を見ていると劣情が湧き上がる。セイカは右腕を下ろし、左手で俺の頬に触れた。包帯のザラザラした感触が新鮮だ。

「俺、右利きなんだよ。たまにないの忘れて使おうとしちまう」

「そっか……じゃあ、飯とか不便だよな」

「スプーンかフォークだから何とかなってる。箸はキツいだろうな……」

「…………義手とか作る予定は?」

「ない。動くヤツは高いんだってよ。動かなきゃ別にいらないしな」

まぁ、左手が残っているなら日常生活は不便だろうが何とかなる……かな? 絶対に両腕が必要な状況が俺にはパッと思い付かない。

「義足は? こっちはないと歩けないだろ」

「まぁ、俺が自分で歩けなきゃ困るだろうし……買ってくれるんじゃないかな、安モンだろうけど」

「そっか。リハビリとかしてるのか?」

「いや、断面まだ柔らかいから無理。太腿にソケットつけるって言っても一番体重かかるのは断面だからさ……傷口にんなことしたらどうなるか分かるだろ?」

「あ、あぁ……傷、まだ塞がってないのか?」

「もうだいぶ。そろそろ包帯も外れると思う」

セイカの顔が見られるのは楽しみだが、セイカの顔を見て俺はこれまで通りに彼に接していけるかが不安だ。
包帯で彼の顔が見えないからこそイジメっ子だったセイカと今のセイカが頭の中で上手く繋がらず、軽い嘔吐感や呼吸のブレで済んでいるだけなのかもしれない。

「セイカの綺麗な顔が見れるのが楽しみだよ」

美少年を愛でる性欲がトラウマを上回ることを祈るしかない。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら兄たちに溺愛されました~

液体猫(299)
BL
毎日AM2時10分投稿 【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。  巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。  かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──  やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。  主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ ⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌ ⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。 ⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...