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おまけ
おまけ ノヴェムの一番長い日
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※ノヴェム視点 水月と同じく始業式の日を迎えたノヴェムのお話。※子供が性的な場面に遭遇する等の展開が許せない方は閲覧をお控えください。
お父さんが休みの日に何度か連れてきてもらった、新しい小学校。校門の前で僕は立ち止まってしまった。
「…………」
「君、どうしたの」
大人に声をかけられた。でも何を言っているのか分からない。
「何年生? 先生の名前分かる?」
聞き取れない。お父さんはずっと日本に住んでいたらしいけれど、僕は少し前に来たばかりで、日本語がまだよく分からない。
「あら、金髪……にほんご、分かる?」
「……!」
聞き取れた。僕は首を横に振った。
《英語なら分かるかな?》
《……! 分かる》
《よかった。何年何組かな?》
《分かんない。ぼく、今日から、ここ通うの》
《そっか。じゃあ他の先生達に聞いてみるから、職員室行こっか》
手を引っ張られて、大人いっぱいのところに連れて行かれた。担任の先生が見つかった。お父さんは学校に「英語が出来る先生のクラスに入れてください」ってお願いしてたって、担任の先生が英語で教えてくれた。
みんなは宿題っていうのを先生に渡していた。僕はそれがなかったから、椅子に座って大人しくしていた。チャイムっていうのが鳴って、びっくりしていたらクラスの子がみんな立ち上がって、ウロウロし始めた。
「前どこ住んでたのー?」
「なんで髪金色なのー?」
「なにじん~?」
「お顔見ーせてー」
何人も僕の周りに集まって、何かを言ってきた。何が何だか分からなくて、怖くて、何も言えなくて、ただ困っていると、少しずつ人は減っていった。またチャイムが鳴って、みんなが座った。
何もかもよく分からないままだった。
「あなた達! お家近所だから、ノヴェムくんと一緒に帰ってあげてくれる?」
「えー?」
「はーい……」
《ノヴェムくん! この子達と帰りなさいね》
《……? 分かった》
何故か知らない二人と一緒に帰れと言われたから、僕はその二人の後を着いて行った。
「ねぇ……どうする? うざくない?」
「置いてっちゃお。喋んないしつまんないよね」
二人に続いて電車に乗って、降りて、先に改札を通った二人は急に走り出した。
《……!? ま、待ってぇ!》
追いかけようとして改札でお腹をぶつけた。首から下げた、お父さんにもらった定期を使って通った後にはもう、あの二人の姿はどこにもなかった。
《ど、どこ……? どこ……えっと》
名前を知らないから、呼べない。どうしよう。どう……お家に帰らないと、でも、お家……何口から出ればいいんだっけ。降りる駅はここでよかったんだっけ? 見覚えがあるような、ないような。
《どこ……どっち、に……》
周りには大人がいっぱい。みんな足が早い。スタスタ通り過ぎていく。
《……お母さん》
大好きなお母さんは、少し前に死んじゃった。
《お父、さん……》
お母さんが死んで、僕を迎えに来てくれたお父さん。何年も前に一度会っただけだった、あんまり知らないお父さん。でもすごく優しくて、いっぱいぎゅってしてくれて、すぐ大好きになった、僕のたった一人の家族。
《お父さん、お父さぁんっ、うぁあああん!》
なぜだかすごく怖くて、不安で、たまらなくなって、目が熱くなった。
「き、君……いや、えっと…………お父さんだよ! ごめんねぇはぐれて、よしよし……ダディだよ~」
泣いていたら知らない人に突然抱き上げられた。
「うぉお……やっぱり、マジモンの白人のショタだ。可愛い~……あぁヤバいヤバい、やっちゃダメなんだけど、絶対やっちゃダメなんだけどこんなこと」
知らないおじさんは僕を抱っこしたまま早歩きで駅を出た。見覚えがある景色だ、確か、お家へはここから右に……知らないおじさんだけど、お父さんの知り合いなのかな? お家に連れてってくれるのかな。
「あ……お、大人しくなった。な、何? なんで、ダメだよ君知らない人に抱っこされてるのに、助けてって泣かなきゃいけないのに…………な、泣かないんだから、泣かないんだから、いいよね? 持って帰って……はぁ、はぁ…………あぁもういいや、人生終わっていいや……可愛い、可愛いねぇ、へへへ」
「かわ、いー?」
「……! う、うん、可愛い……か、可愛いよ、へへ……お名前なんて言うのかな」
かわいい。かわいい……お父さんや、ミツキお兄ちゃんがよく言ってる言葉。僕に言ってる言葉……だからやっぱり、この人はお父さんのお友達。
「うわぁぁ……にこーって、にこーって、ひぇえ……」
《わ、なに、お尻触っちゃやだぁ、くすぐったい》
「柔らけぇえ……全身ぷにぷに、かわ、かわい……」
《おいおっさん何してんだ》
おじさんの後ろに真っ黒な人が立ってる。晴れてるのに真っ黒な傘差した、真っ黒な服着た人。
「ひっ……!? し、失礼しまーす」
《……? おい待て》
黒い人はおじさんの肩を掴んだ。
《アンタ何なんだ、ノヴェムかネイの知り合いか?》
「な、何語? 何? えっまさか、こ、この子の……お兄さん? かな? い、いや……ほんの出来心、じゃなくてっ! 迷子だったから、交番にね?」
《…………あー、アウト臭ぇわ、おっさん》
ひゅっ、ごっ、て音がして、おじさんが上を向いた。黒い人の足がピンって伸びてた。黒い人の腕が僕のお腹に回って、今度は黒い人に抱っこされた。
《ヤバそうってのは勘だからよ、善良なおっさんだったらごめんな。一応骨にダメージ与えないように蹴ったから許してくれよ。じゃ》
傘の下に入ってようやく黒い人の顔が見えた。サングラスをしているけれど、この真っ白な髪はアキお兄ちゃんのものだ。
《アキお兄ちゃん!》
《アキっつったか? 俺の名前覚えてるな、よしよし。大人しくしてろよ。騒ぎになったから逃げるぜ》
ぎゅっと抱き締められて、不安がどんどん抜けていった。でもアキお兄ちゃんが走り出してびっくりして、きゃーって叫んじゃった。でも怖くなかった、楽しかった。
《ふぃー……誰も追っかけてきてねぇな? 人蹴ると警察来るんだよなぁ、日本は窮屈だぜ》
《お兄ちゃんお兄ちゃん、もっかい! もっかい走って!》
《よしよし、何して遊ぶ?》
アキお兄ちゃんは走ってくれなかった、お庭にあるアキお兄ちゃんの部屋に連れていかれた。ポスターや置物が怖いから、この部屋あんまり好きじゃない。
「ぷーる、入るです?」
「ぷーる? ぷーる、行く!」
アキお兄ちゃんと……ん? あっ、僕の将来のお嫁さんのミツキお兄ちゃんの弟だから、アキお兄ちゃんじゃなくて、僕の義理の弟のアキくんだった。
《アキくん、どこのプール行くの? スライダーあるところ? ぼく、プールセット、お家から取ってこなくちゃ》
アキくんは部屋の奥にあった扉を開けた。あの扉にはガイコツのポスターが貼ってあって怖くて近寄れなかった。でも開いたらポスター見えなくなったから、僕はアキくんに着いて奥の部屋に入った。
《わぁあ……!》
プールだ。奥の部屋はプールだったんだ。
《服ここのカゴな》
アキくんは黒い服を脱いでカゴに入れた。僕もカゴを渡されたから、そこに服を脱いで入れた。
《パンツも脱げよ~》
アキくんは下着も脱いでカゴに入れたので、恥ずかしかったけれど僕もそうした。
《……アキくん、おちんちんおっきいねぇ。お父さんより……おっきい、かも? うん……アキくんの勝ち!》
《んだよ人のちんこジロジロ見やがって。剥けてんのが珍しいかぁ? 皮被り。ほら、さっさと入るぞ》
《浮き輪ないの? ぼく、泳げない……》
プールに飛び込んだアキくんを追いかけたいけれど、浮き輪ナシでは僕は泳げない。足がつく深さだったらいいけれど、水面から深さを測るなんて僕には出来ない。
「のゔぇむー? プール、入るするしないです?」
「ぼく、およぐ……できる、ない」
アキくんの日本語は聞き取りやすい。僕も日本語で返事が出来た。
「のゔぇむ、カナヅチさんです? ぼく、掴まるする、大丈夫です。泳ぐする、教えるするです」
両手を広げたアキくんにしがみつき、ゆっくりとプールに入れてもらった。プールは深くて足がつかない、でもアキくんが右腕に僕を座らせてくれたから、僕はアキくんの首に抱きついていれば溺れることはなさそうだった。
「力入れるするしない、浮くするです。のゔぇむ、寝るするです」
アキくんは僕をきゅっと抱き締めて、プールの壁を蹴って、身体を横に倒した。アキくんの身体は水面にぷかぷかと浮かんで、その胴にうつ伏せに寝転がってしがみついている僕も浮かんでいる。
《……アキくん、サーフィンみたい》
アメリカに居た頃、お母さんの友達の男の人がサーフィンが好きで、僕をサーフボードに座らせて一緒に波に乗せてくれた。波に乗れていた時は楽しかったけれど、一度波にサーフボードがひっくり返されて、僕は救命胴衣を着ていたしお母さんの友達の人がすぐに引き上げてくれたけれど、怖くって、それから二度とその人には近付けなくなった。
《…………怖くない》
プールには波がない、アキくんが緩やかに足を揺らしてゆっくりと進んでいるだけ。プールに居るのにアキくんに触れているところが温かいし、何だか安心する。
「……アキー」
「のゔぇむー?」
「たのしい」
「のゔぇむ楽しいする、ぼく嬉しいするです」
にっこり笑ったアキくんは、ミツキお兄ちゃんによく似ていて可愛かった。
《……でも、ぼくのおよめさんはミツキお兄ちゃん一人だけなんだからね! アキくんは弟!》
《そろそろバタ足の練習するか?》
アキくんは僕を抱き締めたまま身体を起こした。立ち泳ぎをしているみたいだ。
《な、なにっ? なに? アキくんっ》
「力、入れるするしないです」
アキくんはゆっくりと僕から離れていく。僕の胸の下に腕を入れて、もう片方の手で僕の両手を掴んで、僕を水面にうつ伏せに寝かせていく。
「力入れるする、沈むするです。力入れるするしない、浮くするです」
「は、はなすダメ!」
「力入れるするしないです!」
《おっきい声出さないでよぉ!》
このまま離されたら溺れてしまうと怖がっていたけれど、アキくんはそれ以上僕を離しはしなかった。僕の両手を掴んで伸ばして、僕の胸を支えて、沈まないようにしてくれている。
「足、揺らすするです」
「足……?」
ぱたぱたと足を揺らしてみる、背後でドボンドボンと僕の足が水を蹴る音がする。
《水飛沫立てちゃ上手く進まないんだが……ぁー、言い方分かんねぇな。まぁとりあえずはいいか》
《わぁ……ぼく、泳げてる! 泳げてる! すごいやアキくん!》
泳げるようになった。僕、泳げるようになった。
《泳げると楽しいねぇアキくん》
《楽しそうだな。喜んでくれてよかったぜ、アンタを喜ばせてると兄貴に褒められるからな》
泳げるようになった僕は、楽しくて、アキくんに支えてもらいながらたくさん泳いでたくさん遊んだ。疲れてプールから上がって、シャワーを浴びて、おっきなタオルに包まれた。
「わぷ……へへ……」
《服どうしようかな。着替えねぇぞ……あ、お前の家近所なんだっけ》
髪を乾かしてもらうのは気持ちよかった。アキくんは僕を大きなタオル二枚でしっかり包んで抱っこすると、傘を差して外に出た。
「のゔぇむ、お家、どこです?」
「おうち? あっちー」
指差してアキくんを案内して、お家に行った。ポストに入ってる鍵で中に入って、タンスを開けた。
《一人で着替えられるか?》
シャツを着て、下着を履いて、ズボンを履く。かんぺき!
《お、着れたか。偉いな》
着替えられたことをアピールすると頭を撫でてもらえた。お父さんもこうしてくれる。
《えへへ、アキお兄ちゃ……ちがう、アキくん! アキくん大好き》
《さ、俺ん部屋帰るか》
アキくんは僕を抱っこして、僕の部屋から出た。
《…………ゃ、ちょっとだけ》
アキくんはお家をウロウロし始めた。リビングを覗いて、キッチンを見て、冷蔵庫を開けた。
《冷食ばっか。野菜室は……バナナだけ?》
《ばなな~》
《バナナ食うか? ほれ》
バナナを一本取ってもらった。美味しい。
《自炊してなさそうなだけで、何の変哲もねぇ家……ん? 鍵かかってんのか》
「……! お父さん、お部屋。入る、だめ!」
《ネイの部屋? ふぅん……》
アキくんは僕を下ろして、洗面所からヘアピンを取ってきた。お家ではオッドアイを隠さなくてもいいから、僕が前髪をどけておくのに使ってるヤツだ。
《ピッキングは親父に習ってんだよな~。家に付いてる鍵程度、楽勝楽勝》
アキくんはヘアピンを鍵穴に入れてカチャカチャしてる。何してるのかなってバナナ食べながら見てたら、扉が開いた。
「……! 入るだめ! お父さん、お部屋! 入る、だめ!」
《そう怒んなよ、ちょっとだけだって》
僕も入れてもらえないお父さんの部屋に、アキくんは勝手に入ってしまった。僕は部屋には入らず、扉からアキくんに呼びかけた。
《……んだこの部屋。監視カメラ管理してる部屋みてぇ、なんでこんな液晶いっぱいあんの?》
「入るだめ! かえる! もどる!」
《引き出しほとんど鍵かかってんな……クソ、パスコード式か。こりゃ無理だな。机の上何も置いてねぇし……つまんね、帰ろうぜノヴェム!》
アキくんはやっとお父さんの部屋を漁るのをやめて、こっちに戻ってきた。ううん、その途中で止まった。
《……やっべ、カメラあるじゃん。しかも動いてる……しっかり撮られてんなコレ。迂闊だったわ》
アキくんは天井の隅を見ている。何を見てるのかなって思ってたら、顔の前で両手を合わせて困ったように笑いながら、ちょっと頭を下げた。
《これ怒られるかな~……やだな~、せっかくノヴェムの世話っつー褒められることやったのに》
ぶつぶつ言いながら部屋から出てきて、ヘアピンを洗面所に戻して、僕を抱っこしてアキくんは自分の部屋に戻った。
《スェカーチカ帰ってきたら飯にしような。ん? おわ……プール中兄貴からめっちゃ着信来てたみてぇだ。スェカーチカからメッセもあるぜ。はぁ……? 飯食って帰るぅ? クソったれ》
スマホを見てまたぶつぶつ言ったと思ったら、今度は小さな冷蔵庫を開けて、取り出した何かをレンジに入れた。
《お部屋に冷蔵庫と電子レンジあるんだね》
しばらくするとレンジが鳴って、アキくんは中からハンバーガーみたいなのを取り出した。
《ライスバーガーだ、具はカルビ。熱さは自分で見ろよ》
一個くれた。でも熱い。
《アキくん、熱いよ。ふぅふぅして》
《あちち……ん、美味い。結構イケるわコレ、またユノに頼んどこ》
《アキくん、アキくん、熱いよ、ふぅふぅしてよぉ》
「……? のゔぇむ、嫌いするです? これ」
「きらい、ちがう。あつい」
《なんだ。冷めんの待てや》
ふぅふぅしてくれないみたい。僕は仕方なく自分でふぅふぅして、ゆっくり食べた。美味しかった。
《ふぃー食った食った。次何する? サウナは……やめとくか、ガキだし。いや俺はもっとチビの頃から入ってたけどよ……この国、気候的にあんまり蒸気浴の意味なさそうなんだよな~》
《おなかいっぱい。ねむい》
《なんだよ目ぇ擦って。あ、眠ぃのか? 寝んの? 寝んならほれ、ベッドで寝な》
《んー……》
《よしよし、ゆっくり寝な》
《アキお兄ちゃんいっしょに寝ようよぉ》
袖を引っ張ってみるとアキお兄ちゃんは困ったように笑って、僕の隣に寝転がってくれた。
《えへへ……おやすみ、お兄ちゃん》
腕枕をして、頭を撫でてくれている。僕はゆっくり目を閉じて、そのまま眠った。
頭が落ちて、目が覚めた。アキくんが腕枕をやめちゃったみたい。しかも、アキくんはベッドから抜け出てしまった。
《っと、枕枕……》
アキくんは僕の頭をそっと持ち上げて枕を挟んでくれた。急に一人にされて寂しくなったけれど、僕はまだ眠たくて、起き上がらずに寝返りだけでアキくんを探した。
《おかえりスェカーチカ!》
《ただいま。悪ぃな、起こしたか》
《いいよいいよ、ノヴェムは起きてねぇし》
《あぁ……ちゃんと面倒見てたんだな、えらいえらい》
セイカお兄ちゃんだ。帰ってきたみたい。ミツキお兄ちゃんが帰ってくるのはセイカお兄ちゃんより遅くって昨日聞いた。ミツキお兄ちゃんはまだかぁ……でもセイカお兄ちゃんに「おかえり」って言わないと。でも眠いや……
《えらい? んじゃご褒美くれよ》
ロシア語? っていうので話してるみたいで、何言ってるのか全然分かんない。日本語より分かんないから、もういいや。寝ちゃえ。
《ご褒美ぃ? いいけど……何?》
《可愛い可愛いスェカーチカを見て猛り狂った哀れ雄を、その蠱惑的な唇で鎮めてやって欲しいんだ》
《はぁ……普通にフェラしてくれって言えよ。ノヴェム、寝てるんだよな?》
《寝てる寝てる。ほら》
ぽんぽんと頭を撫でられた。どっちの手だろう、目開けてみようかな……アキくんだ。
《こいつ目元見えねぇから寝てるかどうか分かりにくいんだよなぁ……寝てるにしろ子供の傍ってなんか嫌だ、プールの方でやろうぜ》
《あっち暑いぜ? プールあるっつってもエアコンねぇし》
《あー…………そっか。まぁ、寝てるならいいかぁ……ぅし、んじゃそこ座れ》
アキくんは足を大きく広げて床に座って、セイカお兄ちゃんは左足を取ってアキくんの足の間にうつ伏せに寝転がった。腕で上半身を持ち上げて、アキくんのズボンと下着引っ張って、僕のお父さんよりおっきいアキくんのおちんちんを外に出した。
《自分で出せよな……》
《出してもらった方が興奮すんだよ》
《……ったく。俺腕ねぇのに》
なんでおちんちんだけ外に出してるんだろ。ここおトイレじゃないのに……何するんだろ。
《早く舐めてくれよスェカーチカぁ》
《はいはい……ん、すぐデカくなるよな、お前も》
セイカお兄ちゃんがアキくんのおちんちん舐めてる……汚くないのかな。アキくんのおちんちん、なんかどんどんおっきくなってる気がする。なんでだろ。
《はっ、くすぐってぇ……なぁ、ぺろぺろしてねぇでさぁ……咥えてくれよ》
《顎疲れる……舐めててやるからこれだけで出せよ》
《無茶言うなよスェカーチカぁ、男なら分かんだろ?》
《…………はいはい。んっ、ぁむっ……ん、む、んんっ……!》
セイカお兄ちゃんがアキくんのおちんちんパクって食べちゃった! アキくん痛くないのかな……噛んでないのかな? 何してるんだろ……ワンちゃんがオモチャかみかみする感じなのかな? 甘噛みって言うんだっけ……
《はっ、ぁ……あぁっ、イイ……スェカーチカ最高っ、名器だわマジで……やっべぇ》
アキくん、気持ちよさそう。おちんちん甘噛みされると気持ちいいの? セイカお兄ちゃんも、なんだかうっとりしてるみたい……美味しいのかなぁ?
《もっと裏筋っ……あーっ、それ、それやばいっ……!》
布団の下で僕はこっそり自分のおちんちんつまんでみた。ぎゅってしたら痛かったけど、きゅってしてみたらなんだか……なんだか、うずうずして、変な感じ。おトイレ行きたくなってきちゃった。
《はぁっ……スェカーチカ、スェカーチカっ、出るっ……!》
《んぶっ……んっ、んん、ぐっ……はぁっ、にがぁ……ぅえ、喉に絡む……》
《はぁーっ……スェカーチカぁ、ダメ、足んない。素股させて》
《先にシャワー浴びさせてくれたらな》
《汗臭いのがいいのに……分かったよ》
おちんちんを甘噛みするのは終わったみたい。アキくんはセイカお兄ちゃんを抱っこしてプールの方に行っちゃった。僕はこっそりおトイレに行ったけど、おしっこ出なかった。何だかむずむずはしてたのになぁ……もう納まったし、まぁいいかぁ、ミツキお兄ちゃん来るまで寝ちゃおう。
《ミツキお兄ちゃん……》
おちんちん甘噛みするの、アキくんもセイカお兄ちゃんも楽しそうだった。遊びなのかな? ミツキお兄ちゃんもアキくんにするのかな、セイカお兄ちゃんにしてもらうのかな。僕もしてみたいな……ミツキお兄ちゃん、上手く出来たら褒めてくれるかな。ミツキお兄ちゃんのこと考えてたら、またおちんちんむずむずし始めた。なんなんだろ、これ……
お父さんが休みの日に何度か連れてきてもらった、新しい小学校。校門の前で僕は立ち止まってしまった。
「…………」
「君、どうしたの」
大人に声をかけられた。でも何を言っているのか分からない。
「何年生? 先生の名前分かる?」
聞き取れない。お父さんはずっと日本に住んでいたらしいけれど、僕は少し前に来たばかりで、日本語がまだよく分からない。
「あら、金髪……にほんご、分かる?」
「……!」
聞き取れた。僕は首を横に振った。
《英語なら分かるかな?》
《……! 分かる》
《よかった。何年何組かな?》
《分かんない。ぼく、今日から、ここ通うの》
《そっか。じゃあ他の先生達に聞いてみるから、職員室行こっか》
手を引っ張られて、大人いっぱいのところに連れて行かれた。担任の先生が見つかった。お父さんは学校に「英語が出来る先生のクラスに入れてください」ってお願いしてたって、担任の先生が英語で教えてくれた。
みんなは宿題っていうのを先生に渡していた。僕はそれがなかったから、椅子に座って大人しくしていた。チャイムっていうのが鳴って、びっくりしていたらクラスの子がみんな立ち上がって、ウロウロし始めた。
「前どこ住んでたのー?」
「なんで髪金色なのー?」
「なにじん~?」
「お顔見ーせてー」
何人も僕の周りに集まって、何かを言ってきた。何が何だか分からなくて、怖くて、何も言えなくて、ただ困っていると、少しずつ人は減っていった。またチャイムが鳴って、みんなが座った。
何もかもよく分からないままだった。
「あなた達! お家近所だから、ノヴェムくんと一緒に帰ってあげてくれる?」
「えー?」
「はーい……」
《ノヴェムくん! この子達と帰りなさいね》
《……? 分かった》
何故か知らない二人と一緒に帰れと言われたから、僕はその二人の後を着いて行った。
「ねぇ……どうする? うざくない?」
「置いてっちゃお。喋んないしつまんないよね」
二人に続いて電車に乗って、降りて、先に改札を通った二人は急に走り出した。
《……!? ま、待ってぇ!》
追いかけようとして改札でお腹をぶつけた。首から下げた、お父さんにもらった定期を使って通った後にはもう、あの二人の姿はどこにもなかった。
《ど、どこ……? どこ……えっと》
名前を知らないから、呼べない。どうしよう。どう……お家に帰らないと、でも、お家……何口から出ればいいんだっけ。降りる駅はここでよかったんだっけ? 見覚えがあるような、ないような。
《どこ……どっち、に……》
周りには大人がいっぱい。みんな足が早い。スタスタ通り過ぎていく。
《……お母さん》
大好きなお母さんは、少し前に死んじゃった。
《お父、さん……》
お母さんが死んで、僕を迎えに来てくれたお父さん。何年も前に一度会っただけだった、あんまり知らないお父さん。でもすごく優しくて、いっぱいぎゅってしてくれて、すぐ大好きになった、僕のたった一人の家族。
《お父さん、お父さぁんっ、うぁあああん!》
なぜだかすごく怖くて、不安で、たまらなくなって、目が熱くなった。
「き、君……いや、えっと…………お父さんだよ! ごめんねぇはぐれて、よしよし……ダディだよ~」
泣いていたら知らない人に突然抱き上げられた。
「うぉお……やっぱり、マジモンの白人のショタだ。可愛い~……あぁヤバいヤバい、やっちゃダメなんだけど、絶対やっちゃダメなんだけどこんなこと」
知らないおじさんは僕を抱っこしたまま早歩きで駅を出た。見覚えがある景色だ、確か、お家へはここから右に……知らないおじさんだけど、お父さんの知り合いなのかな? お家に連れてってくれるのかな。
「あ……お、大人しくなった。な、何? なんで、ダメだよ君知らない人に抱っこされてるのに、助けてって泣かなきゃいけないのに…………な、泣かないんだから、泣かないんだから、いいよね? 持って帰って……はぁ、はぁ…………あぁもういいや、人生終わっていいや……可愛い、可愛いねぇ、へへへ」
「かわ、いー?」
「……! う、うん、可愛い……か、可愛いよ、へへ……お名前なんて言うのかな」
かわいい。かわいい……お父さんや、ミツキお兄ちゃんがよく言ってる言葉。僕に言ってる言葉……だからやっぱり、この人はお父さんのお友達。
「うわぁぁ……にこーって、にこーって、ひぇえ……」
《わ、なに、お尻触っちゃやだぁ、くすぐったい》
「柔らけぇえ……全身ぷにぷに、かわ、かわい……」
《おいおっさん何してんだ》
おじさんの後ろに真っ黒な人が立ってる。晴れてるのに真っ黒な傘差した、真っ黒な服着た人。
「ひっ……!? し、失礼しまーす」
《……? おい待て》
黒い人はおじさんの肩を掴んだ。
《アンタ何なんだ、ノヴェムかネイの知り合いか?》
「な、何語? 何? えっまさか、こ、この子の……お兄さん? かな? い、いや……ほんの出来心、じゃなくてっ! 迷子だったから、交番にね?」
《…………あー、アウト臭ぇわ、おっさん》
ひゅっ、ごっ、て音がして、おじさんが上を向いた。黒い人の足がピンって伸びてた。黒い人の腕が僕のお腹に回って、今度は黒い人に抱っこされた。
《ヤバそうってのは勘だからよ、善良なおっさんだったらごめんな。一応骨にダメージ与えないように蹴ったから許してくれよ。じゃ》
傘の下に入ってようやく黒い人の顔が見えた。サングラスをしているけれど、この真っ白な髪はアキお兄ちゃんのものだ。
《アキお兄ちゃん!》
《アキっつったか? 俺の名前覚えてるな、よしよし。大人しくしてろよ。騒ぎになったから逃げるぜ》
ぎゅっと抱き締められて、不安がどんどん抜けていった。でもアキお兄ちゃんが走り出してびっくりして、きゃーって叫んじゃった。でも怖くなかった、楽しかった。
《ふぃー……誰も追っかけてきてねぇな? 人蹴ると警察来るんだよなぁ、日本は窮屈だぜ》
《お兄ちゃんお兄ちゃん、もっかい! もっかい走って!》
《よしよし、何して遊ぶ?》
アキお兄ちゃんは走ってくれなかった、お庭にあるアキお兄ちゃんの部屋に連れていかれた。ポスターや置物が怖いから、この部屋あんまり好きじゃない。
「ぷーる、入るです?」
「ぷーる? ぷーる、行く!」
アキお兄ちゃんと……ん? あっ、僕の将来のお嫁さんのミツキお兄ちゃんの弟だから、アキお兄ちゃんじゃなくて、僕の義理の弟のアキくんだった。
《アキくん、どこのプール行くの? スライダーあるところ? ぼく、プールセット、お家から取ってこなくちゃ》
アキくんは部屋の奥にあった扉を開けた。あの扉にはガイコツのポスターが貼ってあって怖くて近寄れなかった。でも開いたらポスター見えなくなったから、僕はアキくんに着いて奥の部屋に入った。
《わぁあ……!》
プールだ。奥の部屋はプールだったんだ。
《服ここのカゴな》
アキくんは黒い服を脱いでカゴに入れた。僕もカゴを渡されたから、そこに服を脱いで入れた。
《パンツも脱げよ~》
アキくんは下着も脱いでカゴに入れたので、恥ずかしかったけれど僕もそうした。
《……アキくん、おちんちんおっきいねぇ。お父さんより……おっきい、かも? うん……アキくんの勝ち!》
《んだよ人のちんこジロジロ見やがって。剥けてんのが珍しいかぁ? 皮被り。ほら、さっさと入るぞ》
《浮き輪ないの? ぼく、泳げない……》
プールに飛び込んだアキくんを追いかけたいけれど、浮き輪ナシでは僕は泳げない。足がつく深さだったらいいけれど、水面から深さを測るなんて僕には出来ない。
「のゔぇむー? プール、入るするしないです?」
「ぼく、およぐ……できる、ない」
アキくんの日本語は聞き取りやすい。僕も日本語で返事が出来た。
「のゔぇむ、カナヅチさんです? ぼく、掴まるする、大丈夫です。泳ぐする、教えるするです」
両手を広げたアキくんにしがみつき、ゆっくりとプールに入れてもらった。プールは深くて足がつかない、でもアキくんが右腕に僕を座らせてくれたから、僕はアキくんの首に抱きついていれば溺れることはなさそうだった。
「力入れるするしない、浮くするです。のゔぇむ、寝るするです」
アキくんは僕をきゅっと抱き締めて、プールの壁を蹴って、身体を横に倒した。アキくんの身体は水面にぷかぷかと浮かんで、その胴にうつ伏せに寝転がってしがみついている僕も浮かんでいる。
《……アキくん、サーフィンみたい》
アメリカに居た頃、お母さんの友達の男の人がサーフィンが好きで、僕をサーフボードに座らせて一緒に波に乗せてくれた。波に乗れていた時は楽しかったけれど、一度波にサーフボードがひっくり返されて、僕は救命胴衣を着ていたしお母さんの友達の人がすぐに引き上げてくれたけれど、怖くって、それから二度とその人には近付けなくなった。
《…………怖くない》
プールには波がない、アキくんが緩やかに足を揺らしてゆっくりと進んでいるだけ。プールに居るのにアキくんに触れているところが温かいし、何だか安心する。
「……アキー」
「のゔぇむー?」
「たのしい」
「のゔぇむ楽しいする、ぼく嬉しいするです」
にっこり笑ったアキくんは、ミツキお兄ちゃんによく似ていて可愛かった。
《……でも、ぼくのおよめさんはミツキお兄ちゃん一人だけなんだからね! アキくんは弟!》
《そろそろバタ足の練習するか?》
アキくんは僕を抱き締めたまま身体を起こした。立ち泳ぎをしているみたいだ。
《な、なにっ? なに? アキくんっ》
「力、入れるするしないです」
アキくんはゆっくりと僕から離れていく。僕の胸の下に腕を入れて、もう片方の手で僕の両手を掴んで、僕を水面にうつ伏せに寝かせていく。
「力入れるする、沈むするです。力入れるするしない、浮くするです」
「は、はなすダメ!」
「力入れるするしないです!」
《おっきい声出さないでよぉ!》
このまま離されたら溺れてしまうと怖がっていたけれど、アキくんはそれ以上僕を離しはしなかった。僕の両手を掴んで伸ばして、僕の胸を支えて、沈まないようにしてくれている。
「足、揺らすするです」
「足……?」
ぱたぱたと足を揺らしてみる、背後でドボンドボンと僕の足が水を蹴る音がする。
《水飛沫立てちゃ上手く進まないんだが……ぁー、言い方分かんねぇな。まぁとりあえずはいいか》
《わぁ……ぼく、泳げてる! 泳げてる! すごいやアキくん!》
泳げるようになった。僕、泳げるようになった。
《泳げると楽しいねぇアキくん》
《楽しそうだな。喜んでくれてよかったぜ、アンタを喜ばせてると兄貴に褒められるからな》
泳げるようになった僕は、楽しくて、アキくんに支えてもらいながらたくさん泳いでたくさん遊んだ。疲れてプールから上がって、シャワーを浴びて、おっきなタオルに包まれた。
「わぷ……へへ……」
《服どうしようかな。着替えねぇぞ……あ、お前の家近所なんだっけ》
髪を乾かしてもらうのは気持ちよかった。アキくんは僕を大きなタオル二枚でしっかり包んで抱っこすると、傘を差して外に出た。
「のゔぇむ、お家、どこです?」
「おうち? あっちー」
指差してアキくんを案内して、お家に行った。ポストに入ってる鍵で中に入って、タンスを開けた。
《一人で着替えられるか?》
シャツを着て、下着を履いて、ズボンを履く。かんぺき!
《お、着れたか。偉いな》
着替えられたことをアピールすると頭を撫でてもらえた。お父さんもこうしてくれる。
《えへへ、アキお兄ちゃ……ちがう、アキくん! アキくん大好き》
《さ、俺ん部屋帰るか》
アキくんは僕を抱っこして、僕の部屋から出た。
《…………ゃ、ちょっとだけ》
アキくんはお家をウロウロし始めた。リビングを覗いて、キッチンを見て、冷蔵庫を開けた。
《冷食ばっか。野菜室は……バナナだけ?》
《ばなな~》
《バナナ食うか? ほれ》
バナナを一本取ってもらった。美味しい。
《自炊してなさそうなだけで、何の変哲もねぇ家……ん? 鍵かかってんのか》
「……! お父さん、お部屋。入る、だめ!」
《ネイの部屋? ふぅん……》
アキくんは僕を下ろして、洗面所からヘアピンを取ってきた。お家ではオッドアイを隠さなくてもいいから、僕が前髪をどけておくのに使ってるヤツだ。
《ピッキングは親父に習ってんだよな~。家に付いてる鍵程度、楽勝楽勝》
アキくんはヘアピンを鍵穴に入れてカチャカチャしてる。何してるのかなってバナナ食べながら見てたら、扉が開いた。
「……! 入るだめ! お父さん、お部屋! 入る、だめ!」
《そう怒んなよ、ちょっとだけだって》
僕も入れてもらえないお父さんの部屋に、アキくんは勝手に入ってしまった。僕は部屋には入らず、扉からアキくんに呼びかけた。
《……んだこの部屋。監視カメラ管理してる部屋みてぇ、なんでこんな液晶いっぱいあんの?》
「入るだめ! かえる! もどる!」
《引き出しほとんど鍵かかってんな……クソ、パスコード式か。こりゃ無理だな。机の上何も置いてねぇし……つまんね、帰ろうぜノヴェム!》
アキくんはやっとお父さんの部屋を漁るのをやめて、こっちに戻ってきた。ううん、その途中で止まった。
《……やっべ、カメラあるじゃん。しかも動いてる……しっかり撮られてんなコレ。迂闊だったわ》
アキくんは天井の隅を見ている。何を見てるのかなって思ってたら、顔の前で両手を合わせて困ったように笑いながら、ちょっと頭を下げた。
《これ怒られるかな~……やだな~、せっかくノヴェムの世話っつー褒められることやったのに》
ぶつぶつ言いながら部屋から出てきて、ヘアピンを洗面所に戻して、僕を抱っこしてアキくんは自分の部屋に戻った。
《スェカーチカ帰ってきたら飯にしような。ん? おわ……プール中兄貴からめっちゃ着信来てたみてぇだ。スェカーチカからメッセもあるぜ。はぁ……? 飯食って帰るぅ? クソったれ》
スマホを見てまたぶつぶつ言ったと思ったら、今度は小さな冷蔵庫を開けて、取り出した何かをレンジに入れた。
《お部屋に冷蔵庫と電子レンジあるんだね》
しばらくするとレンジが鳴って、アキくんは中からハンバーガーみたいなのを取り出した。
《ライスバーガーだ、具はカルビ。熱さは自分で見ろよ》
一個くれた。でも熱い。
《アキくん、熱いよ。ふぅふぅして》
《あちち……ん、美味い。結構イケるわコレ、またユノに頼んどこ》
《アキくん、アキくん、熱いよ、ふぅふぅしてよぉ》
「……? のゔぇむ、嫌いするです? これ」
「きらい、ちがう。あつい」
《なんだ。冷めんの待てや》
ふぅふぅしてくれないみたい。僕は仕方なく自分でふぅふぅして、ゆっくり食べた。美味しかった。
《ふぃー食った食った。次何する? サウナは……やめとくか、ガキだし。いや俺はもっとチビの頃から入ってたけどよ……この国、気候的にあんまり蒸気浴の意味なさそうなんだよな~》
《おなかいっぱい。ねむい》
《なんだよ目ぇ擦って。あ、眠ぃのか? 寝んの? 寝んならほれ、ベッドで寝な》
《んー……》
《よしよし、ゆっくり寝な》
《アキお兄ちゃんいっしょに寝ようよぉ》
袖を引っ張ってみるとアキお兄ちゃんは困ったように笑って、僕の隣に寝転がってくれた。
《えへへ……おやすみ、お兄ちゃん》
腕枕をして、頭を撫でてくれている。僕はゆっくり目を閉じて、そのまま眠った。
頭が落ちて、目が覚めた。アキくんが腕枕をやめちゃったみたい。しかも、アキくんはベッドから抜け出てしまった。
《っと、枕枕……》
アキくんは僕の頭をそっと持ち上げて枕を挟んでくれた。急に一人にされて寂しくなったけれど、僕はまだ眠たくて、起き上がらずに寝返りだけでアキくんを探した。
《おかえりスェカーチカ!》
《ただいま。悪ぃな、起こしたか》
《いいよいいよ、ノヴェムは起きてねぇし》
《あぁ……ちゃんと面倒見てたんだな、えらいえらい》
セイカお兄ちゃんだ。帰ってきたみたい。ミツキお兄ちゃんが帰ってくるのはセイカお兄ちゃんより遅くって昨日聞いた。ミツキお兄ちゃんはまだかぁ……でもセイカお兄ちゃんに「おかえり」って言わないと。でも眠いや……
《えらい? んじゃご褒美くれよ》
ロシア語? っていうので話してるみたいで、何言ってるのか全然分かんない。日本語より分かんないから、もういいや。寝ちゃえ。
《ご褒美ぃ? いいけど……何?》
《可愛い可愛いスェカーチカを見て猛り狂った哀れ雄を、その蠱惑的な唇で鎮めてやって欲しいんだ》
《はぁ……普通にフェラしてくれって言えよ。ノヴェム、寝てるんだよな?》
《寝てる寝てる。ほら》
ぽんぽんと頭を撫でられた。どっちの手だろう、目開けてみようかな……アキくんだ。
《こいつ目元見えねぇから寝てるかどうか分かりにくいんだよなぁ……寝てるにしろ子供の傍ってなんか嫌だ、プールの方でやろうぜ》
《あっち暑いぜ? プールあるっつってもエアコンねぇし》
《あー…………そっか。まぁ、寝てるならいいかぁ……ぅし、んじゃそこ座れ》
アキくんは足を大きく広げて床に座って、セイカお兄ちゃんは左足を取ってアキくんの足の間にうつ伏せに寝転がった。腕で上半身を持ち上げて、アキくんのズボンと下着引っ張って、僕のお父さんよりおっきいアキくんのおちんちんを外に出した。
《自分で出せよな……》
《出してもらった方が興奮すんだよ》
《……ったく。俺腕ねぇのに》
なんでおちんちんだけ外に出してるんだろ。ここおトイレじゃないのに……何するんだろ。
《早く舐めてくれよスェカーチカぁ》
《はいはい……ん、すぐデカくなるよな、お前も》
セイカお兄ちゃんがアキくんのおちんちん舐めてる……汚くないのかな。アキくんのおちんちん、なんかどんどんおっきくなってる気がする。なんでだろ。
《はっ、くすぐってぇ……なぁ、ぺろぺろしてねぇでさぁ……咥えてくれよ》
《顎疲れる……舐めててやるからこれだけで出せよ》
《無茶言うなよスェカーチカぁ、男なら分かんだろ?》
《…………はいはい。んっ、ぁむっ……ん、む、んんっ……!》
セイカお兄ちゃんがアキくんのおちんちんパクって食べちゃった! アキくん痛くないのかな……噛んでないのかな? 何してるんだろ……ワンちゃんがオモチャかみかみする感じなのかな? 甘噛みって言うんだっけ……
《はっ、ぁ……あぁっ、イイ……スェカーチカ最高っ、名器だわマジで……やっべぇ》
アキくん、気持ちよさそう。おちんちん甘噛みされると気持ちいいの? セイカお兄ちゃんも、なんだかうっとりしてるみたい……美味しいのかなぁ?
《もっと裏筋っ……あーっ、それ、それやばいっ……!》
布団の下で僕はこっそり自分のおちんちんつまんでみた。ぎゅってしたら痛かったけど、きゅってしてみたらなんだか……なんだか、うずうずして、変な感じ。おトイレ行きたくなってきちゃった。
《はぁっ……スェカーチカ、スェカーチカっ、出るっ……!》
《んぶっ……んっ、んん、ぐっ……はぁっ、にがぁ……ぅえ、喉に絡む……》
《はぁーっ……スェカーチカぁ、ダメ、足んない。素股させて》
《先にシャワー浴びさせてくれたらな》
《汗臭いのがいいのに……分かったよ》
おちんちんを甘噛みするのは終わったみたい。アキくんはセイカお兄ちゃんを抱っこしてプールの方に行っちゃった。僕はこっそりおトイレに行ったけど、おしっこ出なかった。何だかむずむずはしてたのになぁ……もう納まったし、まぁいいかぁ、ミツキお兄ちゃん来るまで寝ちゃおう。
《ミツキお兄ちゃん……》
おちんちん甘噛みするの、アキくんもセイカお兄ちゃんも楽しそうだった。遊びなのかな? ミツキお兄ちゃんもアキくんにするのかな、セイカお兄ちゃんにしてもらうのかな。僕もしてみたいな……ミツキお兄ちゃん、上手く出来たら褒めてくれるかな。ミツキお兄ちゃんのこと考えてたら、またおちんちんむずむずし始めた。なんなんだろ、これ……
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