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おんせんです!

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ロールケーキを食べ終えた後、アキは着替えを持った。

「にーに、おさき、おゆもらうです」

「あぁ、行ってらっしゃい」

アキが出ていき、部屋の扉が閉められた直後、足を伸ばして座っていた俺の太腿の上にレイが跨った。俺が視線を向けるよりも前にレイの腕が首に回り、首筋に顔が押し付けられた。

「せんぱい……」

「……アキが戻ってくるまでだぞ」

後頭部に手を回し、うなじの真上にある髪ゴムに触れる。

「ほどいていいか?」

「髪っすか? ご自由にどうぞっす」

腰まで伸びた長い後ろ髪を解放する。俺の手首に移った髪ゴムはラメ入りの薄紫色という小学生女児が使っていそうなものだった。

「せんぱぁい、キス……」

「ん」

邪魔モノが消えた頭を撫でながら唇を重ねる。すぐに舌を入れて上顎をぬるりと舐め、結んでいたせいで癖がついた髪をほぐし、ピアスが目立つ小さな舌をねぶりながら後ろ髪に手櫛をかけた。

「んっ、ん……ふっ、ん、んんっ……はぁっ、せんぱい、せんぱい好きっす、せんぱい……髪気持ちぃ、もっと……」

ハルも後ろ髪に指を通してやると喜んでいた、長い髪を人に触らせるのは心地いいものなのだろうか?

「はぁあぁっ……! せんぱいの指、頭皮に掠ってるんすけどぉ、その度にめっちゃゾワゾワするっす。せんぱい、髪撫でながら……その、ピアス、口でして欲しいっす」

耳を突き出してきたレイの頬にちゅっと一瞬だけのキスをし、すぐに耳たぶに唇を移す。耳たぶに三つ並んだピアスを舌で弾き、リング型のそれを一つ噛んで軽く引っ張る。レイの耳に痛みを与えないよう細心の注意を払いながらピアス越しに耳を愛撫し、頭皮を優しく撫で回す。

「ひっ、ぁ、あぁあぁ……! 耳っ、み、みぃ……! ひっ……! 頭っ、もぉ……ぁあぁああっ……! こひっ、もぉ、とんとんしゅきっ! せんぱっ、しぇんぱいしゅきっ、しぇんぱいぃいっ……!」

ピアス責めを始めた直後からレイが腰をカクカクと揺らし始めたので、腰に添えていた手を緩く握ってレイが腰を上げた時にぶつかる位置に固定し、レイ自身にレイの腰を叩かせている。だから──

「──俺、腰トントンはしてないぞ」

「ふ、あっ? ひてぅっ、せんぱいっ、とんとんんっ……!」

「レイが腰振って俺の手にぶつかってるだけだ。本物のトントン欲しいか?」

「欲しっ、欲しいっす、ぜんぶ欲しいっ、せんぱい、せんぱぁいっ」

何の全部なんだと思いつつ、猫にするように腰をトントンと叩いてやる。腰骨に響かせるように意識し、痛くはない程度に、握り拳の小指側で優しくトントントントン叩いていく。

「あっ、あっ? ちがっ、ちがうっす、さっきとちがうぅっ……! きも、ひっ、きもちぃっ、あぁーっ! これっ、これ好きっす、こっちがいいっすぅっ!」

「ははっ……可愛いなぁ、このままイけるか? 可愛いネコちゃん」

「イけるっす、多分イけまひゅっ! もっと、もっとトントン強くっ、あっ! ぁあっ! せんぱいっ、首、首して欲しいっすぅっ!」

イキ顔を間近で見たいのになと思いつつ、レイの首筋に唇を寄せる。軽く吸い、舐め、歯型がつかない程度に噛む。

「ぁあああっ! イくっす、これイくっ、イくイくイくっ、イくぅうっ!」

大声を上げて絶頂し、仰け反り、数秒の痙攣の後にぽすんと俺の胸に落ちてきた。ズボンの上から股間に触れてみると、ぐちゅっという粘着質な水音が鳴った。

「……あーぁ、パンツ汚しちゃったな」

「んっ、ん、ぁ……!」

「どうしようかな、コンビニで買ってこようか? 俺のパンツ履く?」

「せん、ぱいのぉっ……被りたいっす」

「履くかって聞いてんだよ。ふふっ、変態だなぁ」

可愛らしい変態を床に下ろし、濡れた首筋を手の甲で拭う。口の周りに垂れた俺のものかレイのものか分からない唾液も拭う。耳も濡れているが……まぁ、見えないからいいだろう。

「せんぱい……? これで終わりっすか? せっくす……しないんすか?」

「そろそろアキが風呂から出てくる頃だと思うんだよ」

言いながら消臭剤を掴み、部屋全体に満遍なく散らした後、レイの股間に接射した。

「ひゃっ!? な、何すんすか……ぅあ、ちょっと冷たいっす。ちんちん寒いっすぅ……」

「染み込んじゃったか? 意外と薄いんだな、それ。いや、服の中だから大丈夫だと思ってたんだけど……出させてみたら結構エロい匂いするからさ。悪いな、ドライでイかせりゃよかった」

「え、匂いしてたっすか? マジすか……」

証拠隠滅を完全に終えて、俺とレイの着替えを用意していると部屋の扉が開かれた。一日のうちこの部屋で過ごす時間は俺よりも長いアキがノックなんてする訳もない、俺の時間感覚が正確でよかった。

「にーに、おさきです」

「おぅ、温まってきたか? アキぃ、ほこほこだな」

「このめ、帰るしないです?」

「レイは今日泊まるぞ。嫌じゃないよな?」

泊まるという言葉はまだ覚えていないのか、アキは真っ赤でまん丸な目を俺に向けたまま黙っている。

《……なんか消臭剤臭ぇな》

かと思えばロシア語で何かを呟いた。先程までの行為がバレたのではないかと心臓が騒ぎ出す。

「にーに、お風呂するです」

「あ、あぁ……じゃ、行ってくる」

二人分の着替えを持って扉を開けるとレイも当然ついてくる。

「このめ、どこ行くするです?」

「へっ? お風呂っすけど」

どうやら俺と一緒に入るつもりのようだ、俺にも心の準備があるのだから事前に言っておいて欲しい。

「にーにお風呂入るです。このめ待つするです」

「……せんぱい、一緒に入るって言っていいっすか?」

「あー……いや、適当にトイレとか言って……」

ロシアの風呂文化は知らないが、一緒に風呂に入るというのはどこの世界でも仲のいい相手とやることだと思う。泊まりに来た友人と共に入るのは不自然ではないだろうか? 安全策を取って誤魔化すべきだと俺は思う。

「……おんせん、です?」

「へっ?」

「Япония……お風呂、いっしょ入るするです。ぼく、知るするです、おんせんです」

「あ、あー……うん、まぁ、そんな感じ。じゃ、お兄ちゃん達風呂入ってくるからな」

困惑しているレイと共に笑顔のアキに手を振って部屋を出た。

「……アキくん何言ってたんすか? 日本語なんすけど、よく分かんなかったっす」

「うん……多分だけど、温泉……日本の文化だろ? それを知ってるって言ってたんだよ。場所とかじゃなくて、お風呂に一緒に入ることを温泉って言うって思ってるのかもな。そこは後で訂正してやらないとだな」

「なるほどー……? 日本人でよかったっすね」

「うん……? うん、うーん……?」

アキが妙にはしゃいでいたのは話でしか聞いていなかった温泉文化を実際に見られたからなのだろうか? やっぱりアキは温泉という言葉の意味を勘違いしている気がする、興味があるようなら夏休みにでも本物の温泉へ連れて行ってやりたいな。
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