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美少年天国

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雑貨屋を後にしてレイの自宅へ。一ヶ月ぶりと言っていたが、埃が積もったりしているのだろうか? 掃除を手伝ってやらないとな。

「ここっす」

「……え、マンション?」

レイに案内された先には十階建てのマンションがあった。戸惑う俺達をよそにレイはオートロックを抜けてエレベーターに乗る。

「九人までなんでギリイケるっすけど、狭いっすねー」

「店以外で乗ったの初めてかも……」

それまで話していたのに何故かエレベーターに乗った途端全員が黙り込み、ボーッと階数が表示されているパネルを見上げた。エレベーターは八階で止まり、俺達はレイを先頭にぞろぞろと列を作って降りた。

「わ~! 高~い! 見て見て高~い!」

ハルの家は一軒家だった、マンションの八階からの景色が珍しいのだろう。楽しそうだ。かく言う俺も心臓が跳ねている、少し下を覗いてみようか。

「み、水月! 下覗いたアカン! 落ってまうで! ハルも離れ!」

背後からリュウに手を引っ張られた。俺を柵から離すとリュウはすぐにハルの方へ移動し、彼も柵から離させていた。

「へぇ……あなた高いところ苦手なんですか?」

シュカがリュウの胸ぐらを掴んで柵に近付き、後頭部を押さえて無理矢理下を覗かせるとリュウは奇声とも言える悲鳴を上げた。

「やめろシュカ! そういうおふざけはダメだ。リュウ、大丈夫か?」

仰け反って柵から離れ、座り込んでしまっているリュウに手を貸すも足に力が入らないようだったので、脇の下に腕を通して無理矢理抱き上げた。

「水月っ、水月ぃ……みつ、き……ぉ、落ちっ……落ちてまうぅ……」

「落ちない落ちない、大丈夫。俺がこうやって捕まえておいてやるから、な?」

「リュウせんぱいはここに住めないっすね。ここ俺の部屋っすよ、807っす」

八階の七号室がレイの家か。尋ねることもあるかもしれない、覚えておこう。

「なーんもない家っすけどおくつろぎくださいっす」

「おとんかおかんか何時に帰ってくるん」

「一人暮らしっす」

「寝室使っていいですか? ベッドありますか? ローションは?」

「他人ん家でヤる気満々っすね……ローションはベッド脇の棚にあるっす、好きに使っていいっすよ」

一ヶ月ぶりに人が入ったにしては綺麗な部屋だ、机の上に腐ったバナナが落ちているくらいの惨状を覚悟していたのだが。テレビがなかったり棚に何も入っていなかったり、まるで越してきたばかりのように物が少ない。

「あんまり物ないな」

「玩具はいっぱいあるっすよ。あ、面白いのがあるんすよ、せんぱいに見て欲しいっす」

俺も玩具は幾つか持っているが、高校生の財力と身分では基本的な物を数個集めるので限界だ。成人済みのレイのコレクションは是非見たいし、使わせていただきたい。

「へへ……これっす」

「……ブレスレットか?」

手首にはめられる大きさの銀色の輪はブレスレット以外の用途が思い付かない。悩む俺を楽しげに見つめたレイは細い鎖を取り出し、ブレスレットに取り付けた。

「手錠? にしてはブカブカだし、サイズ調整出来ないし鎖が頼りなさ過ぎるよな」

レイは楽しげな笑顔のままブレスレットに繋がった方とは反対側の端を俺に見せる。フック状になっており、何かを引っ掛けられるようだ。

「これはプリンスアルバートのアタッチメントの一つなんす」

「プリンスアルバートって確か……」

鈴口から入って亀頭のすぐ下に空いた穴から出るピアスのことだよな? 確かレイはそこにリング型のピアスをつけていた、見て触れた覚えがある。

「おちんちんの先っぽにつけてるピアスのことっすよ。そこにこのフックを引っ掛けて、犬の首輪引っ張るみたいにお散歩するんす。想像したんすか? せんぱい、顔真っ赤っすよ」

「……それはまた随分、SM色が強いな」

「まぁピアス使ったプレイなんで仕方ないっすね、強く引っ張らなきゃ痛くないっすよ」

レイが望まない限り絶対に痛みを与えるような引っ張り方はしないと心に誓う。

「乳首ピアスに引っ掛ける用の二股の鎖とか、舌ピに繋ぐ鎖もあるっす。せんぱいには操り人形動かすみたいに四本の鎖を巧みに操って俺をイかせて欲しいっす! ピアスだけでイけるのは実証済みなんできっとせんぱいにも出来るっす」

ピアスを引っ張るプレイを思い付き、実行したのはあの大男なのだろうか? ムカつく。

「頑張ってみるよ」

「……ええのぉ、俺もして欲しいわ。ピアス空けるんは怖ぁて嫌やけど」

「クリップのアタッチメントもあるっすよ? 痛過ぎるんで使ってないっすけど、Mなリュウせんぱいにはちょうどいいかもっすね」

「クリップ……貸してくれん?」

「その気でお話したっすよ。もちろんっす」

レイはピアスばかり入れているらしいジュエリーボックスには不釣り合いなクリップを中から二つ取り出し、リュウの手のひらに転がした。

「乳首用っす。舌と下用のももちろんあるっすけど、まずはお試しっすよね」

「うわ……これ挟むとこギザギザなっとるやん。痛そぉ……こんなもんつけたないわぁ、せやけど水月はいけずやからなぁ、無理矢理つけられてまうんやろなぁ」

チラッチラッと俺の顔を見るリュウの願望は分かりやすい。他の彼氏達にもこれくらい分かりやすくあって欲しいなと思いつつ、彼の手から二つのクリップを奪い取る。

「あっ……」

「たくし上げろ」

濡れた瞳で俺を見上げながらシャツの裾を掴み、ゆっくりとたくし上げる。腹の皮膚が一部青黒く変色しているのが見えて表情がブレたが、何とかSの演技を続けた。

「服を口で咥えて乳首を目立たせろ」

「はぁい……ん……んっ、んん」

リュウはシャツの裾を噛むと乳首を左右同時に指で弾いて勃たせ、乳輪に人差し指と中指を当ててくぱっと拡げるようにし、乳首を目立たせた。

「よく出来ました。じゃあご褒美……可愛いマゾ豚に似合うアクセサリー借りてやったからつけてやるよ、俺とレイに感謝しろ」

クリップを乳首に近付けるとリュウはふぅふぅと息を荒くし、まず右乳首から挟んでやると悲鳴を上げた。

「……っ、あぁああっ!」

仰け反って倒れかけたリュウの背に素早く腕を回し、彼が倒れなかったことに安堵のため息をついてからシャツを掴んだ。

「リュウ、俺はいつ服を離していいって言った?」

「あ……か、堪忍して水月ぃ、わざとやないねん……んぁあっ!? いっ、痛いっ、痛いぃ……ちぎれてまいそぉや」

不意打ちで左乳首をクリップで挟んでやった。

「お仕置きは何がいい? このクリップを思い切り引っ張って外してやろうか、尻を叩くのもいいな」

「あ……ぁ、そんなんっ、嫌やぁ……」

言葉に反して顔は蕩け切っただらしない笑顔を浮かべている。潤んだ瞳は可愛らしく、痛みなんて一切与えずドロドロに甘やかしてやりたくなる。

「水月、準備終わりました」

長らくトイレにこもっていたシュカが俺の肩を叩いた。俺はハッとしてリュウに抱いていた汚泥のような欲情を心の奥底に沈めた。

「……放置だな。俺がいいって言うまで正座してろ。レイ、鎖一本貸してやってくれ。リュウ、鎖引っ張る以外の自慰は禁止だ。分かったな?」

「はい……ご主人様」

レイがクリップに細い鎖を取り付けるのを横目に俺はシュカの腰に腕を回す──どこを向いても俺のことが大好きな美少年しか居ない、ここが天国だ。
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