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七人の男と六つの袋
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左右の腕をハルとレイに埋められてしまった。少々歩きにくいし暑苦しいが、二人の彼氏に腕を組んでもらえるなんて幸せだ。
「やっぱりタレですよ、一番ご飯が進みます」
「俺焼肉ご飯のおかずにしないし~。バジルソースが一番美味しいって!」
「俺は塩コショウがいいっす」
「調味料は各々好きなのにしろよ、多分全部家にあるから買わなくてもいいだろ」
いつも俺の腕に抱きついているカンナは今回出遅れてしまい、不満そうにリュウの腕を握って歩いている。一人で歩くのは心細いのだろうか? 良質な薔薇百合を見せてもらえて嬉しい。
「歌見の兄さんは何肉好きです? やっぱ肉言うたら牛ですやんな」
「そうだな、俺も牛は好きだ。ところで……お前出身は関西か?」
「そうですー。大阪の端のほぉ……なんで分かりましたん?」
「分からないヤツは居ないと思うが……」
早速リュウが歌見と打ち解けてくれている。彼が居なければ彼氏同士仲良く過ごせていなかったかもしれない、潤滑油役の大切さが身に染みて分かる。
「みんな何のどの部位を食べたいんだ? 脂身は好き嫌い分かれるけど、どうだ?」
「俺は豚の脂ないとこ! あと、鶏胸肉のバジル焼き~!」
「安いもので構いませんのでとにかくいっぱい食べたいです」
「牛のペラッペラのんをタレで食いたいわ。しぐは?」
「……む、ちょ……ぷ」
「俺ホルモン食べたいっす」
「やっぱりカルビだろう、カルビは外せない」
スーパーが見えてきた頃、軽く尋ねてみたがみんなバラバラに肉を欲しがった。焼肉は肉のバリエーションが豊かな方が飽きずに楽しめる、好みがバラついているのは嬉しい。
「みんなアレルギーとかないよな?」
「ないけど脂身はヤダ!」
「ホルモン嫌や」
アレルギーの申告はなかったが、各々の嫌いなものを教えてもらった。
「やっぱり野菜も食べなきゃなー……で野菜を買うのはやめましょう、どうせ鉄板の隅で焦げカスになります」
肉売り場への道中にある野菜売り場を通っている最中、レタスを眺めていた俺の視線をシュカが割り込んだ。
「えー、山芋焼こうや。輪切りにして焼いてタレつけんの美味いんやで」
「しめ……食べ、た……」
「山芋はいいですね。じゃあ山芋は買いましょう、レタスやキャベツなんて誰も食べませんよ」
「……め、じ……欲し……」
「キャベツの塩ダレ焼かずに食べたいっす」
「木芽に賛成、肉ばかりじゃキツい」
男子高校生の俺達は肉だけでも一向に構わないのだが、レイと歌見の大人組はキャベツを欲しがった。俺もあと数年で肉を好き放題食べられなくなるのだろうか? いや、三十までは何とかなるだろう……
「ほな野菜は山芋とシメジやな。キャベツどないする?」
「キャベツは家あったはずだからいいよ」
「シメジも買うんですか? 別にいいですけど」
「もやしはいらないのか?」
「いりませんよあんなかさ増し食材」
酷い言いようだ、もやしのシャキシャキ食感は焼肉には大切なアクセントだと俺は思う。
「キムチはー?」
「辛いもんは焼いたら目ぇ染みるから嫌や」
「肉以外いりません、早く肉のところへ行きましょう。安いものから順に片っ端からカゴに入れていきますよ」
「え~ヤダー! 高いのちょっとずつにしよーよー、俺そんな食べないし~。安い肉硬いからキラーイ!」
肉売り場へ差し掛かると彼氏達の騒がしさは増す。俺は他の客に会釈しつつ、声のボリュームを下げるよう言ってなだめた。
「おっ……ホルモンはこの辺だな。俺の他に欲しいヤツは居ないのか?」
「ホルモンは焼くより鍋派ですね」
メガネが曇るからなんて理由でラーメンを嫌がっていたくせに、鍋は好きなのか。
「ワンパックにしとくか……どれにしようかな」
「先輩っ、俺もホルモン食べてみたいです。食べたことないので」
好きな人の好きな物は経験しておきたい、ホルモンを食べたことはないけれど元デブの俺に苦手な食べ物なんてある訳がない。
「そうか? じゃあ初心者でも食べやすいのにしとこうな。ホルモンは焼けても色があまり変わらないのが多いから、今日はとりあえず俺が焼き加減を見て水月の皿に入れてやろう」
「ありがとうございます。シュカも食うよな?」
「なんでも食べます」
緊張のせいか硬くなっていた表情が一気に柔らかくなった。全員の彼氏である俺は潤滑剤にならなければならない、知らぬ間にリュウに押し付けてしまっていた役割をようやく果たせた。
カゴにたっぷりと肉などを積み、レジを通し、いざ袋詰め。
「なんか……結局めっちゃ買ったね」
「よかったなぁしぐラムチョップあって。このスーパーたまにしか売ってへんねんでそれ。あ、水月、パックの肉そのまんま入れたアカンで。このちっこいビニール入れな」
「水月入れ方下手ですね、貸してください」
「ごめん……いやぁ、リュウもシュカも袋詰め上手いな。よくお使いしてるのか?」
一人暮らしをしている歌見は当然手際がいい、レイもかと予想していたがどうやら普段は配達サービスに頼りきっているようでもたついていた。
「ぉん、よぉなんじゃかんじゃ買ってこい言われるわ」
「買い物は全て私がしています」
「へぇー……」
家庭的とは少し違うのかもしれないが、なんだかイイ。袋詰めが上手いなんて些細なことのように思えるかもしれないが、俺にとっては立派な萌え要素のようだ。
「みっつんみっつん、レシートいる?」
「あー……一応母さんに渡そうかな」
レシートをポケットに入れ、一番重たいだろう袋に手を伸ばす。しかし歌見に掠め取られてしまった。
「歌見先輩、それ俺が……」
「俺の方が力が強いんだから俺が持つ、文句あるか?」
「みっつんの腕は俺っていう大事なもん持たなきゃじゃーん?」
歌見が持つ袋の持ち手を弱々しく掴んでいた手がハルに捕まる。彼の右手には小さめの袋があった。
「ハル、それ俺が……」
「ダメっすダメっす! せんぱいの手は俺のっす!」
もう片方の手もレイに捕まった。行きと全く同じ並びだ。荷物を持って頼れるところを見せたかったのだが、彼氏の求めを振り切ってまで行うべきだろうか?
「なんやまた出遅れたんか、しゃあないなぁ……」
落ち込んだ様子のカンナはまたリュウの手を握っている。荷物を持つべきかの迷いはカンナへの萌えに上塗りされ、俺一人だけ何も持たずにスーパーを後にした。
「やっぱりタレですよ、一番ご飯が進みます」
「俺焼肉ご飯のおかずにしないし~。バジルソースが一番美味しいって!」
「俺は塩コショウがいいっす」
「調味料は各々好きなのにしろよ、多分全部家にあるから買わなくてもいいだろ」
いつも俺の腕に抱きついているカンナは今回出遅れてしまい、不満そうにリュウの腕を握って歩いている。一人で歩くのは心細いのだろうか? 良質な薔薇百合を見せてもらえて嬉しい。
「歌見の兄さんは何肉好きです? やっぱ肉言うたら牛ですやんな」
「そうだな、俺も牛は好きだ。ところで……お前出身は関西か?」
「そうですー。大阪の端のほぉ……なんで分かりましたん?」
「分からないヤツは居ないと思うが……」
早速リュウが歌見と打ち解けてくれている。彼が居なければ彼氏同士仲良く過ごせていなかったかもしれない、潤滑油役の大切さが身に染みて分かる。
「みんな何のどの部位を食べたいんだ? 脂身は好き嫌い分かれるけど、どうだ?」
「俺は豚の脂ないとこ! あと、鶏胸肉のバジル焼き~!」
「安いもので構いませんのでとにかくいっぱい食べたいです」
「牛のペラッペラのんをタレで食いたいわ。しぐは?」
「……む、ちょ……ぷ」
「俺ホルモン食べたいっす」
「やっぱりカルビだろう、カルビは外せない」
スーパーが見えてきた頃、軽く尋ねてみたがみんなバラバラに肉を欲しがった。焼肉は肉のバリエーションが豊かな方が飽きずに楽しめる、好みがバラついているのは嬉しい。
「みんなアレルギーとかないよな?」
「ないけど脂身はヤダ!」
「ホルモン嫌や」
アレルギーの申告はなかったが、各々の嫌いなものを教えてもらった。
「やっぱり野菜も食べなきゃなー……で野菜を買うのはやめましょう、どうせ鉄板の隅で焦げカスになります」
肉売り場への道中にある野菜売り場を通っている最中、レタスを眺めていた俺の視線をシュカが割り込んだ。
「えー、山芋焼こうや。輪切りにして焼いてタレつけんの美味いんやで」
「しめ……食べ、た……」
「山芋はいいですね。じゃあ山芋は買いましょう、レタスやキャベツなんて誰も食べませんよ」
「……め、じ……欲し……」
「キャベツの塩ダレ焼かずに食べたいっす」
「木芽に賛成、肉ばかりじゃキツい」
男子高校生の俺達は肉だけでも一向に構わないのだが、レイと歌見の大人組はキャベツを欲しがった。俺もあと数年で肉を好き放題食べられなくなるのだろうか? いや、三十までは何とかなるだろう……
「ほな野菜は山芋とシメジやな。キャベツどないする?」
「キャベツは家あったはずだからいいよ」
「シメジも買うんですか? 別にいいですけど」
「もやしはいらないのか?」
「いりませんよあんなかさ増し食材」
酷い言いようだ、もやしのシャキシャキ食感は焼肉には大切なアクセントだと俺は思う。
「キムチはー?」
「辛いもんは焼いたら目ぇ染みるから嫌や」
「肉以外いりません、早く肉のところへ行きましょう。安いものから順に片っ端からカゴに入れていきますよ」
「え~ヤダー! 高いのちょっとずつにしよーよー、俺そんな食べないし~。安い肉硬いからキラーイ!」
肉売り場へ差し掛かると彼氏達の騒がしさは増す。俺は他の客に会釈しつつ、声のボリュームを下げるよう言ってなだめた。
「おっ……ホルモンはこの辺だな。俺の他に欲しいヤツは居ないのか?」
「ホルモンは焼くより鍋派ですね」
メガネが曇るからなんて理由でラーメンを嫌がっていたくせに、鍋は好きなのか。
「ワンパックにしとくか……どれにしようかな」
「先輩っ、俺もホルモン食べてみたいです。食べたことないので」
好きな人の好きな物は経験しておきたい、ホルモンを食べたことはないけれど元デブの俺に苦手な食べ物なんてある訳がない。
「そうか? じゃあ初心者でも食べやすいのにしとこうな。ホルモンは焼けても色があまり変わらないのが多いから、今日はとりあえず俺が焼き加減を見て水月の皿に入れてやろう」
「ありがとうございます。シュカも食うよな?」
「なんでも食べます」
緊張のせいか硬くなっていた表情が一気に柔らかくなった。全員の彼氏である俺は潤滑剤にならなければならない、知らぬ間にリュウに押し付けてしまっていた役割をようやく果たせた。
カゴにたっぷりと肉などを積み、レジを通し、いざ袋詰め。
「なんか……結局めっちゃ買ったね」
「よかったなぁしぐラムチョップあって。このスーパーたまにしか売ってへんねんでそれ。あ、水月、パックの肉そのまんま入れたアカンで。このちっこいビニール入れな」
「水月入れ方下手ですね、貸してください」
「ごめん……いやぁ、リュウもシュカも袋詰め上手いな。よくお使いしてるのか?」
一人暮らしをしている歌見は当然手際がいい、レイもかと予想していたがどうやら普段は配達サービスに頼りきっているようでもたついていた。
「ぉん、よぉなんじゃかんじゃ買ってこい言われるわ」
「買い物は全て私がしています」
「へぇー……」
家庭的とは少し違うのかもしれないが、なんだかイイ。袋詰めが上手いなんて些細なことのように思えるかもしれないが、俺にとっては立派な萌え要素のようだ。
「みっつんみっつん、レシートいる?」
「あー……一応母さんに渡そうかな」
レシートをポケットに入れ、一番重たいだろう袋に手を伸ばす。しかし歌見に掠め取られてしまった。
「歌見先輩、それ俺が……」
「俺の方が力が強いんだから俺が持つ、文句あるか?」
「みっつんの腕は俺っていう大事なもん持たなきゃじゃーん?」
歌見が持つ袋の持ち手を弱々しく掴んでいた手がハルに捕まる。彼の右手には小さめの袋があった。
「ハル、それ俺が……」
「ダメっすダメっす! せんぱいの手は俺のっす!」
もう片方の手もレイに捕まった。行きと全く同じ並びだ。荷物を持って頼れるところを見せたかったのだが、彼氏の求めを振り切ってまで行うべきだろうか?
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