冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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顔の良さだけでのバズり (水月+ハル・カンナ・シュカ・リュウ)

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何日か務め、本屋での立ち読みが禁止な一番の理由は「邪魔だから」だなと心で悟る頃、不意にシャッター音が聞こえた。

「……本棚の撮影は店員にお声掛けくださいねー」

決まりなので一応注意はしたが、どの客が撮ったかも分からなかったので軽めに留める。

(中身撮ってそうな奴は居ませんし、わたくしバイトですしな……)

撮りたくなる背表紙でもあったのだろう、そんな適当な考えでシャッター音を聞き流した。俺はその翌々日に音の正体を知ることになる。

「ねーねーみっつん、これみっつんじゃなーい?」

ハルに見せられたのは彼のスマホ、SNSアプリが開かれていた。そこに表示されていたのは本屋で働く俺の写真。

「……俺だ。え、何……ハル来てたのか?」

「俺じゃないって、なんか女子高生のアカウント。知らない奴だけどバズってるっぽくて俺のTLにも流れてきた」

俺の隠し撮りに添えられた文を読むに、本屋にイケメン店員が居た報告のようなものだ。このアカウントの主は知り合いと共有する程度の気持ちだったのだろう。

「万リツいってるよ、みっつんすごいね」

「このJKがインフルエンサー的な……?」

「いや普通の子、フォロワー……五百人だね」

「で、二日で万RT……? え、これ本屋どこかとかは書いてないよな」

「投稿には書いてないけど特定されてんじゃない? DMとかで聞いてるヤツも居そうだし」

俺は明日からも普通にバイトに行けるのだろうか? いや、SNSの話題なんて何日も持たないし、俺の居場所が分かってもわざわざ見にくる奴なんて何万分の一の行動力だ、RT数は二万三千……露骨な視線くらいは感じるかなぁってとこか?

「俺も回しとこっか?」

「いやいいよ……ちなみにフォロワー何人?」

「百五十万」

「絶対やめてくれ。何投稿したらそんなに……」

言いながらスマホを覗き、女装自撮りの写真が投稿履歴に並んでいるのを見て納得した。

「……エロいの上げるなよ?」

「んなことしないし!」

後でフォローしとこ。元々持っているアカウントはオタク色が強過ぎるから、もちろん新しいアカウントを作って。

「みーつきぃー、何話しとるん?」

「楽しそうですね」

「あぁ、お前ら。SNSやってるか?」

「アカウントはあんで、色々連携する用なだけやけど」

「私もそんな感じですね」

俺の腕に抱きついているカンナを見下げると、彼は首を横に振った。
俺の彼氏達はハルを除いて全員SNSにあまり興味がないタイプだったが、ハルが口頭で広めたため全員が俺の隠し撮りがバズったことを知ってしまった。

「ほー……めっちゃコメント来とるやん。抱いてとか言うとるヤツおんで」

「俺可愛い男の子じゃなきゃ勃たないから……」

「可愛い男の子だったらどうするんです?」

「……とりあえずDMかな」

俺の隠し撮りの投稿のRTが落ち着いた後も、彼氏達の間ではしばらくイジるネタにされそうだ。

「みぃくん……いっぱ、見、れ……の、なん、か……ゃ、だ」

「俺をいっぱい見られるのなんか嫌? 可愛いなぁカンナは……嫉妬だな、可愛い……俺も嫌だよ、盗撮だって訴えてやろうかな」

「あなたの格好良さに盗撮までした女も、たまたまSNSで見かけてあなたを魅力的だと思った女も、あなたと寝るチャンスすらない。そう思うと愉快でたまりませんね」

性格が悪い。

「これ一昨日のんか。本屋に変な客来たりしてへん?」

「……なんかヒソヒソされたりはしたけど、盗撮されたり声掛けられたりは今んとこないな」

平和が一番だし、俺もその程度の影響だろうとは予想していたが、本当に何もないと逆に不満に思ってしまう。

「あ、ちょっと待ってみんな。カミアの握手会の抽選発表きた」

時計を見ればキリのいい時間。俺も応募だけはしておいた、どうせ当たっていないだろうけど確認はしておくかな。

「え……? えっ? えっ? えっえっえっ? あ、ぁ……当たったぁぁぁーっ!」

「うるさっ……おめでとさん」

「ありがとぉーっ!」

「うわっ!? なんやねん離れぇ気色悪い!」

大はしゃぎのハルは一番に祝ってくれたリュウに抱きつく。微笑ましく思いながら発表のページを開く。

「……あ、俺も当たった」

「水月も応募しとったん? おめでとさん」

「カミア……確か、私達と同い年のアイドルでしたよね、霞染さんが以前熱心に話してました。反応が薄いですね委員長、ご要望の可愛い男の子ですよ?」

確かに、ぱっちり開いた目とバサバサとした長いまつ毛が特徴的な可愛い男子だ。だが、流石に芸能人に手は出せないのでイマイチはしゃげない。

「…………みー、くん」

くい、とカンナが袖を引く。やはり、小さいながらに艶めかしい唇はそっくりだ。

「なんだ? カンナ」

「……の、人……会う?」

「いや、俺はそこまで興味ないしな。ハルに頼まれて応募しただけだし……まさか当たるとはな」

手を出せない可愛い男の子と握手なんて生殺しだ、行きたくない。

「えーっ! みっつん一緒に行ってくんないの!?」

「一曲も知らねぇのに行くの逆に失礼だろ」

「アルバム全部貸したげるからぁ! あっ、しぐしぐ! アンタだけは俺が教える前からカミア知ってたよね、一緒に行く?」

「……っ!? ゃ、やだ……!」

カンナは首を横に振りながら俺の後ろに隠れてしまう。

「大丈夫だって、カミアはファン対応も神ってるって評判だから! アンタみたいに全然話さなくっても笑って握手してくれるって」

アイドルってみんなそうじゃないのか?

「ぁ、いっ……たくっ、ないっ……! ぜった……やだっ」

「はぁ? なんでさ、カミアだよ? 超絶可愛い神アイドルだよ?」

「ハル、カンナ嫌がってるから……な?」

カンナの様子はいつもの少し怯えた程度ではない、尋常ではなく嫌がっている。俺はハルに離れてもらい、カンナを抱き締めてなだめた。

「……しゅー、アンタ行く?」

「私その日は予定があるので、残念ですが……」

「俺まだ何日か教えてないよね? アンタのそういうとこキライ! りゅー、アンタは?」

「よぉ知らんしなぁ、心細いんやったらついて行ったってもええけど……いつなん?」

リュウはハルのスマホを覗き、渋い顔をする。

「その日法事やわ」

「はぁー? はぁ……みっつぅ~ん」

「分かったよ、行くよ。用事ないし、俺が当たったんだしな」

「みっつん大好き!」

握手会への備えを言い訳に、カミアの曲を聞きたいと言ってハルを家へ誘うか、ハルの家に行くかしなければな。はしゃいでハグをねだるハルを抱き返しながら、頭の中で文章を練った。
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