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待望の筋肉系 (水月+歌見)

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バイト先の本屋で配達サービスを担当している先輩、歌見うたみ 七夜ななよ

(太陽系男子ですな、笑顔が眩しいでそ。配達お疲れ様ですなぁ、滴る汗がなんともえろてぃっく。筋肉いいですぞ~、雄っぱい待ってましたぞ! 揉ませていただきたいっ……!)

俺の彼氏達はみんな細身だ、シュカは筋肉はあるがむちっとはしていない。歌見は俺と同じくらいの身長ながら手や足は五割増の太さだ、胸筋も素晴らしければ尻や太腿もむっちりとして……筋肉だけでなく脂肪もほどよく乗っているタイプと見た、一番欲しかったタイプだ。

「あっつ……悪い、ちょっと脱いでいいか?」

「えぇもちろん」

食い気味に答えると歌見は本屋の制服である青いシャツを脱ぎ、黒いタンクトップ姿を晒した。首筋、鎖骨、胸筋、肩、腕……ありとあらゆる色気が俺を襲う。

(筋肉のエロスが詰まってますぞ! ふぉぉ、しかもこれは、ふぉおぉおお! HIYAKEATO! 日焼け跡ですぞ!)

このバイトの制服もそうだが、普段着も半袖なのだろう。指先から二の腕の中程までは褐色、肩からは健康的に赤みが指したペールオレンジ。比較的薄い色の肌を引き締める黒いタンクトップ、素晴らし過ぎて泣きそうだ。

「えーっと……なるかみ、だっけ? いくつだ?」

「あ、高一です」

「そうか、俺は大学一年なんだ。新生活どうよ」

「順調ですよ、歌見先輩はどうですか?」

大学生か、一年ならまだ未成年だよな? セーフだよな? 三歳差だろうしセーフだよな?

「俺はちょっとコケた感じするなー、ほら……大学入るからってちょっと調子乗って髪染めちゃってさ、浮いてるっぽいんだよな」

エロい身体にばかり目が向いてしまっていた。歌見の髪はアッシュグレーで、電灯に照らされて銀色に輝いている。小さくて目立たないデザインだが両耳に一つずつピアスがあり、目をよく見ると紫っぽい、カラコンでも入れているのだろう。チャラい人なのかな?

「綺麗ですよ、似合ってます」

「はは、ありがとな。ブリーチかけたからちょっとバシバシしててなぁ……」

「目はカラーコンタクトですか?」

「あぁ、もうちょっと近くで見てみろよ」

鼓動が高鳴るのを感じつつ、お言葉に甘えて顔を寄せさせていただく。紫色のカラコンだと思っていたが、ただの紫ではない。上の方は赤く、下の方は青く、グラデーションがかかっている。しかも時計の針のような模様まである。

(……これちょっと前に発売されたスチームパンク系アニメのコラボ商品ですな。言っていいんでしょうか)

俺は高校に入ってからオタクっぽさを出さないことを非常に気を付けてきた。しかし、歌見はコラボ商品を買うほどのアニメファンだ。本屋に勤めているし、見た目には似合わないが二次元が好きなのだろう……と予測してキャラ名を言ってみた。

「おぉ! 知ってたか。俺あのアニメ、読み切りの時から好きでさぁ」

「そうなんですか。読み切りって確かラスボスが主人公で前日譚みたいになってるんですよね」

「そうそう! よく知ってるなぁ」

歌見は俺の手を両手でぎゅっと握り締める。同志が見つかって嬉しい気持ちは分かるが、握力が強くて手がめちゃくちゃ痛い。指が引っ付いて離れなくなってしまう。

(あの作者さん同人時代から知ってるって言ったら流石に引きますかなぁ……同人誌の趣味全開の変形武装の変態画力見開きについて語りたさがあるのですが)

同人誌については保留だ、彼の熱量を確かめて大丈夫そうなら紹介して、貸すという交流の仕方もある。

「……っと、やばい。そろそろ配達行かないと」

「そうなんですか? もう少しお話したいのに……」

あえて目を逸らして小声を意識し、しゅんと落ち込んでみせる。

「…………お前モテるだろ。そんな綺麗な顔で落ち込まれちゃ、言うこと聞きたくなっちまうよ」

脈アリか? 俺は隙を逃さず堕としにかかるぞ?

「今スマホ持ってるか?」

「はい」

向こうの方から連絡先交換を申し出てくれた。心中ほくそ笑みながら連絡先交換を済ませ、純真さを意識した満面の笑みを作った。

「ありがとうございます! これで歌見先輩ともっとお話できますね、嬉しいです」

「あ、あぁ……」

歌見は目を逸らして首を傾げ、僅かに頬を赤らめている。俺にキュンとしてしまって混乱しているのか? なるほどノンケだな、歳下の男の魅力を一から教えてやらなければ。

「それじゃあな、鳴雷……いつでも連絡してくれ」

「はい! 歌見先輩、行ってらっしゃい!」

後輩属性を意識して無邪気に振る舞い、俺にときめいてしまう背徳感も与えてやろう。

「…………ふっ、完璧過ぎて自分が怖いですな」

あのボリューミーな雄っぱいが俺のものになる日が待ち遠しい。筋肉に触りたいとか言ってみようかな?

「いや……あの雄っぱいは一回触ったら止まれませんな、完璧に堕とすまで揉むのはやめといた方がいいかもしれませんぞ」

迷う俺を呼ぶのは店長の声。俺は攻略法の思考を隅に置き、慌てて仕事に戻った。
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