自称不感症の援交少年の陥落

ムーン

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そろそろ上半身も

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講義をいくつかサボってしまったが、腫れた顔のまま大学に行った。知人や教授に心配の声をかけられて、半分社交辞令だろうと思いつつも嬉しくなった。



大学で話題になっていたケーキ屋で焼きプリンを買い、キョウヤの事務所に帰った。依頼人が来ているようだったのでただいまは言わずに三階へ上がった。

「……キョウヤさんプリン好きかな」

冷蔵庫に焼きプリンを入れ、鈍痛に慣れた身体をシャワーで清めた。キョウヤが用意してくれたらしい新品の下着と服に身を包み、頭にタオルを被せてダイニングへ戻るとキョウヤが居た。

「あ、ただいまキョウヤさん」

「おかえり、レイン。まだ髪を乾かしていないのかい? 早くしないと風邪を引いてしまうよ」

俺の前に立ったキョウヤはタオルの両端を俺の手から掠め取った。

「その前に可愛い顔を見せ…………どうしたんだい、その顔」

「え? あっ、あぁ……えっと、ちょっと喧嘩。大学生なんだからよくあることだろ? 気にしないでよ、もうほとんど痛くないから」

「瞼も唇も切れてるじゃないか、ちゃんと手当てしたのかい? こっちへおいで、ドライヤーよりも救急箱が先だよ」

椅子に座らされ、慌てて救急箱を持ってきたキョウヤを見上げる。なんだかおかしくなって笑い出してしまうと、キョウヤに顔を動かすと手当てが出来ないと叱られてしまった。

「……ね、キョウヤさん」

「なんだい?」

「俺ね、父さんには死ねって思われてたけど、母さんにはすっごい愛されてるんだよ。俺を産んで死んじゃったんだけどね、死ぬ前にビデオ撮っててくれたんだ、俺の誕生日祝ってくれるビデオ、俺のこと愛してる大好きって言ってくれてさ……だからねキョウヤさん、俺キョウヤさんと幸せになる、もう逃げたり怖がったりしないよ、幸せになるんだ」

「……そうかい」

母親が死ぬ前に撮っていたビデオなんてずっと存在を知っているものじゃないのかと、どうして今日初めて知ったような言い方をするんだと、そんなことを聞いてこないキョウヤが好きだ。

「ねぇキョウヤさん、俺の名前どっかに書く時はカタカナでレインにしてね」

「分かったよ。よし、これで手当て出来たかな。顔以外に怪我しているところはあるかい?」

「全部打ち身だからほっといていいよ」

「全くもう……どうしてそんな怪我をしてくるんだい、心配で毎朝見送るのが嫌になってしまうよ」

深いため息をついて俺を抱き締めるキョウヤの体温を感じながら、俺はどうしてキョウヤが好きなのだろうと考えた。
俺を金で買った中年の男なんて山ほど居たのに、俺に本気になった気持ち悪い男も何人か居たのに、どうしてキョウヤだけ……不感症を治してくれたから? 見た目が格好いいから? お金を持っているから?

「キョウヤさん」

「ぅん?」

──きっと、全部違う。この胸の高鳴りに理由はない、生まれて初めての恋なんだ。きっかけなんてどうでもいい、快楽と優しさでほだされただけだとしても今は幸せだ。

「……俺、今すっごく幸せ」

「…………そうかい」

好きだと、幸せだと、そう伝える度にキョウヤは嬉しそうにしながらも目の奥に暗さを感じさせる。卑怯な手で可哀想なガキを洗脳してしまったとでも思っているのだろうか? そんなこと気にしなくていいのに。

「……喧嘩だと言ったね。場所と時間と相手を教えなさい、治療費くらい請求しないと気が済まないよ」

「俺の方が請求されちゃうよ」

「レインからふっかけたのかい? 相手の方が大怪我なのかい? そう……そうかい、もうそんなことしちゃダメだよ」

「キョウヤさん、俺プリン買ってきたんだ。昨日のお返し、キョウヤさんと暮らせること俺が祝うの。食べて。キョウヤさんプリン好き?」

「おやおや、嬉しいねぇ。プリンは大好物だよ。お風呂上がりの楽しみにしてもいいかな?」

「うん!」

幼子にするように頭を撫でていたキョウヤの手が頬に移り、手つきも変わる。顔と耳の境目、顎と首の境目を、指の腹でゆっくりと淡く愛撫する。

「……っ、あ……」

「…………ベッドルームに行こうか、レイン」

「うん……あは、なんか久しぶりじゃない? 毎日ヤり放題だと思ったのにな」

「毎日したいのかい?」

「キョウヤさんが嫌じゃなければ」

立ち上がってキョウヤの腕に抱きつき、無意識に媚びながらベッドルームへ向かう。扉を抜けて大きなベッドが見えると鼓動が早まり、これから始まる行為への期待が高まる。

「今日から開発をしようと思っているんだけれど、いいかな?」

「もうされてると思うけど」

結腸口は陰茎を通すし、尿道も指より細い異物なら挿入出来る。臍に触れられたら気持ちいいし、腹を押されたら喘いでしまう。そんな俺のどこをどうこれ以上開発しようというのか──とある意味タカをくくっていた俺の胸をキョウヤの手が這った。

「乳首、まだだろう?」

「ち、乳首? 乳首が性感帯なんて都市伝説だよキョウヤさん。俺、男だし……」

「ふふふっ、まだそういう生意気なところがあるんだねぇ、腕が鳴るよ」

服の上から乳首を探すでもなく俺の胸を撫で回すキョウヤの手に俺は期待していた。キョウヤなら俺の乳首も敏感な性感帯にしてしまえるのだろうという信頼がある、生意気な発言は本心ではない。

「……ベッドに座って」

キョウヤに言われた通りにベッドに腰を下ろすとキョウヤは俺の真後ろに座り、軽く開いた俺の足の上に足を乗せ、俺の足の間に膝から下を垂らした。

「動けないんだけど……」

「それでいいんだよ」

乾いた手が服の上から胸をまさぐる。今度は乳首を探しているようだ。

「……何ともないけど」

「最初はそれでいいんだよ。それよりレイン、今夜の夕飯はどうしようか?」

どうやら言葉責めはしないようで、夕飯をどうするか決めた後もキョウヤは雑談を続けた。一瞬後には忘れてしまうような何気ない会話の中、服越しに乳首を弄られ続けるという奇妙な状態に頭も身体も混乱していく。

「そういえばレイン、家事をすると言っていたけれど」

「うん、一人暮らししてるし、料理以外なら一通り出来るよ」

柔らかいままの乳首をつままれ、ふにふにと弄ばれながら、掃除や洗濯などを任せたいというキョウヤの話を聞く。

「三階の物の配置は使いやすいように変えてくれて構わないし、欲しいものがあったら遠慮なく言いなさい。欲しいもの、何かないかい?」

「んー……」

乳首の根元をほじくられながら、欲しいものを思い浮かべる。

「会計士試験の過去問とか……?」

「勉強に関するものは当然買ってあげるよ。娯楽や趣味のものだよ、私が仕事の間は暇だろう?」

「別に……課題とかあるし」

「そうかい? そうだねぇ……じゃあ、暇になったらベッドルームにお行き。このベッドに毎日違う玩具を一つ置いておくから、私が来るまで遊んでいなさい」

「……オナニーしてろって? いいよ、分かった」

乳首の先端をぴんぴんと弾かれながら、キョウヤが仕事中で暇な時は玩具オナニーをするよう決めた。

「…………硬くならないねぇ」

「全然気持ちよくないもん、いつ気持ちよくなんの?」

「君が不感症だと思い込んでいた下半身のは性感が眠っていただけだから一日で起こせたんだ。でも乳首の開発には時間がかかるんだよ」

「やっぱ性感帯じゃないんじゃん。キョウヤさんのテクで何でもないところだけどよくするってことだろ? ま、別にいいけど。キョウヤさんなら絶対気持ちよくしてくれるもんね」

「……おや、おや、信用されているね、私は。それじゃあ今日から君の乳首を開発するよ、私の言いつけをよく守るように」

そう宣言された日から俺はいくつかの約束を守って生きた。まず最初の五日間、キョウヤは俺にスポバンという鍼治療用の製品を俺に使わせた。乳首にとても短い針を刺されたのだ。

「2ミリもないから痛みはないはずだよ。時々チクッとするだろうけど外さないでね」

「うん……」

身体をひねった時、肩を回した時など、忘れた頃にチクッとした痛みが走り、五日のうち最後の二日間はずっと乳首を意識させられた。
五日間ずっとスポバンを貼りっぱなしという訳ではなく、一日一回一時間キョウヤの指で乳首をこねくり回された。

「今日でスポバンは卒業だよ」

五日間のスポバンを使った開発が終わる頃には、俺の乳首はキョウヤに触れられると膨らむようになった。
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