過労死で異世界転生したのですがサキュバス好きを神様に勘違いされ総受けインキュバスにされてしまいました

ムーン

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お祝いは順番通りに

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ネメスィとカタラに服を破られ、拗ねてシャルに泣きついた。査定士の膝の上にいたシャルはすぐに俺の服を再び作ってくれて、俺の格好は元通りになった。

「おぉ……完璧、ありがとう。流石だな、シャル」

二度も絶頂させられたせいで乳首はジンと痺れているし、後孔はずくずくと疼いている。ネメスィとカタラが結婚祝いにと俺の身体を要求したアイディアをパクって、査定士とシャルにねだってみようか。

「いえ、それより……」

シャルは俺を追いかけてきたネメスィとカタラに視線を移す。彼らは共に俯き、申し訳なさそうにしている。

「サク……その、ごめん」

「……俺が悪かった」

「いや、無理矢理脱がそうとした俺が悪い。ネメスィに賛成しとけばよかった」

「違う、強情だった俺に責任がある。カタラに賛成して脱がしていれば破れなかった」

カタラがネメスィを睨み上げる、ネメスィの金髪に紫電が走る。

「俺が悪かったっつってんだろ!」

「夫の俺が全責任を負うべきだ」

「誰が夫だお前は嫁だ!」

俺に謝罪に来たはずなのに言い争い始めた二人に苛立った俺は、熱い砂を掴んで投げつけた。

「一生二人でイチャついてろ!」

「あっ……ご、ごめんサク……違うんだよ、つい…………許してくれ」

「カタラ……しばらくは謝罪も受け付けてもらえないだろう、反省して時を待とう」

二人の仲がいいのは微笑ましいのだが、俺を放って喧嘩し始めるのは気に入らない。俺が傍にいるのにシャルが査定士の膝に座っているのが気に入らないのと同じだ。

「……シャル、おじさん、結婚祝い欲しくない?」

「何かくださるんですか? 僕は兄さんがいればそれでいいです」

「俺が……欲しい、か?」

格好付けてセクシーに誘おうと思ったのに、照れてしまってセリフを噛み、顔も赤くしてしまい、格好悪いことこの上ない。

「それって……そういうことですよね、兄さん」

シャルの手がするりと頬を撫で、細い指先が耳をくすぐる。

「んっ……!」

くすぐったい快感にすぐに上擦った声が漏れる。

「おじさん……!」

「うーん……可愛い二人にそんな目で見られたら、首を横には振れないけれど……縦にも振れないよ、海辺は嫌だな」

期待に満ちてハート模様が浮かんだ四つの瞳の要求を査定士は保留にした。

「ピクニックの帰りに場所を探そうか」

「そうですね、暗くなる前に帰る予定でしたし……子供達もそろそろ体力が尽きる頃です」

シャルにまた視線を誘導される。その先では白いドラゴンが砂浜に横たわっていた、疲れてぐでんとしているだけなのに純白の身体は優雅に見える。

「あの子が一番体力がないんでしょうね」

「俺の子の上にサクとシャルの子が乗っているぞ」

アルマが指差したのは水平線。目を凝らすと水面を泳ぐ赤いドラゴンの背に紫と黒のドラゴンが見えた。二人を背に乗せて泳ぐとは、流石のパワフルさだ。

「子供は眠る寸前まで遊び続けるって言うからねぇ、早めに上がらせないとホテルまで帰れないかもしれないよ。人間の子なら親がおぶっていくことも出来るけれど……ねぇ」

ドラゴンを運べるのはそのドラゴンより大きなドラゴンだけだ。俺はまだ海中にいる子供達に向かって手を振り、海から上がらせた。

「みぅ、帰ル?」

「あぁ、まだ遊びたいかもしれないけど……また今度来ような」

「しゅるるる……賛成、です。眠イ……しゅあぁ」

「ぴぃ……ぴぃ……」

シャルの子である紫のドラゴンは大きな欠伸をし、俺の子である黒いドラゴンは寝息を立てている。

「あれ、ネメスィJrは?」

「いませんね」

「潜っているのかな」

子供の水難事故はよくある話だ、ドラゴンだからと油断していた。俺はバクバクと激しく脈打つ心臓を服の上から引っ掻き、喉が張り裂けそうなほどの力を込めて海に向かって叫んだ。

「はぁっ、はぁっ……喉痛……ん? うわぁっ!?」

波の一部が盛り上がったかと思うと黒く変色し、どぅるどぅると砂浜に乗り上げてきた。スライムだ、黒いスライム状になったネメスィの子だ。

「……疲れて溶けたんだな」

「そんなことなるの!?」

ネメスィはスライムに手を突っ込んで掻き混ぜて──あ、撫でてるのかな? 撫でている。

「……ねぇおじさん、既に帰れなくなってない?」

「うーん……シャルの子は起きているし、カタラの子も少し前から寝ていたから十分回復しただろう。サクの子が起きるかは分からないけれど……大丈夫、帰れると思うよ」

ホテル側の失態をネタに脅迫紛いの方法で勝ち取ったドラゴンの外出許可は、流石に出先で一泊までは許してくれない。

「ネメスィJrはどうしようか」

「俺の子が運べるだろう。なぁ?」

「まぅ……どう、やって?」

赤いドラゴンは恐る恐る尻尾を黒いスライムに触れさせ、どぅるんと絡みついたのを見て瞳孔を狭める。

「……起きるまで俺が面倒を見よう。日没までには起こす、先に帰れ」

「あ、じゃあ俺も残る。アイツ気持ちよさそうに寝てるし……」

ネメスィとカタラが残るのか、一人ずつなら不安だったが二人ならちゃんと日没までにホテルに戻ってくれるだろう。

「後はサクの子だが……」

「おーい! 起きろ! 帰るぞ!」

「ぴぃ……ぴぃ……ぴぃ……」

耳元で叫んでも寝息を崩すことすらない。紫のドラゴンが軽く角を引っ掻いたが、それでも首を鬱陶しそうに振っただけだった。

「まぁ、この子くらいなら運べるだろう」

「みぃ! がんば、る!」

「アルマJrごめんなぁ……ありがとうな」

「寝てしまって運ばれるなんて、サクとアルマにそっくりじゃないか」

俺は寝てしまっているのではなく、失神したり身体に力が入らなくなっているだけだ。多分。

「み? まま、ぱぱ……似て、ル?」

「似てるよ。ほらっ……!」

突然アルマに持ち上げられ、赤いドラゴンとの顔の距離が近くなる。

「み……! ナンか……うれ、しぃ」

赤いドラゴンは照れたような仕草を見せると背に乗せている黒いドラゴンの位置を調整し、翼を揺らして飛び上がった。

「先導してあげないといけませんね。みなさん乗ってください」

紫のドラゴンの額に乗り、シャルと共に査定士を引っ張り上げる。次はアルマだ。今度は少し大変だぞ。

「せーのっ……! うん、無理。アルマ、自力で跳んで」

軽々と跳躍して乗ってきたアルマを見て、初めからそうしておけばよかったかなと少し痛む腕を振りながら考える。

「乗れましたね? どこかに掴まってくださいよ。大丈夫ですね、飛んでください」

紫のドラゴンが飛び上がり、ゆったりと飛んでいた赤いドラゴンを追い抜かす。行きよりも早い飛行に恐怖と興奮を高め、俺が落ちないように支えてくれているアルマの腕を強く抱き締める。

「あっという間に帰ってこれましたね」

「速いよなぁ……ちょっと頭クラクラする」

ボサボサになった頭を軽く整えながらドラゴン達を部屋まで送り、伸びをする。

「では兄さんおじさん、行きましょうか。さようならお義兄さん」

「……あぁ、楽しんできてくれ」

複雑そうな表情を浮かべるアルマに手を振り、俺達は三人で再びホテルを出た。ラブホのような宿を探さなければならないのだが、どうしようかとシャルと二人で悩む。しかし査定士にはアテがあるらしく俺達を先導してくれた。

「治安が悪いから近寄らない方がいいと言われたけれど、案外大丈夫なところだったんだ。そこにいい宿があったんだよ」

ネメシスにもらった地図には治安の良さがメモしてあり、査定士が向かっているのは中でも悪い方の区画だ。

「そんなとこ一人で行かないでください、危ないですよ」

「だから大丈夫だったんだって。普通の観光客は普通に過ごせるんだよ」

査定士はそう言って笑い、ガラの悪い通行人とすれ違っていく。確かに大丈夫そうだと早足で追おうとした瞬間、その通行人に腕を掴まれた。

「ほぉ……可愛いインキュバスだな、俺と遊ぼうぜ」

テンプレ台詞のオーガの腕は当然すぐに引きちぎられる。シャルを中心に始まった乱闘から逃れ、査定士の胸に飛び込む。

「……っ、絡まれるの区画入って一分とかからなかったんだけど! どこが大丈夫なんたよおっさん!」

「君の可愛さを舐めていたよ……まぁ、もう絡まれないと思うよ」

死体、いや全て半殺しで留められたチンピラの山に立つシャルを見上げる。

「シャル、行くよ」

「シャルぅ、怪我してないか? ありがとうなぁ、お兄ちゃんが綺麗にしてやるからな」

血みどろのシャルの顔を服の袖で拭きながら査定士に続く。俺達は宿まで自然と道を譲られた。
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