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第三十章 欲望に満ち満ちた悪魔共
嘘吐きさん
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ヘルがアルが攫われたと知った頃、アシュはそんな事は露知らずご機嫌だった。アルの身体の作りをようやく変えられたのだ。
『よしよし……これで生殖可能になったねぇ~、後は発情。待っててねぇ~ワンちゃん、アシュちゃん無しじゃ生きられない身体にしてあげる……』
ぼうっと眠そうな目で自分を見つめるアルの頭を撫で、アシュは最終段階に入るため再び点眼薬を手に取る。その瞬間、ベッドの向かい部屋の中心に黒い霧が発生した。
『もう来た……!? やばっ』
アシュは素早くアルの背に跨り、頭を押さえ付けて叫ぶ。
『この犬の命が惜しかったら動くな!』
霧が動きを止めると確信して、下着に手をかける。目の前で犯してやろう──と。しかしアシュの思い込みに反して霧は動いた、いや、霧の中から長い長い鉤爪を持った手が伸びた。アシュは予想外の異形に隙を突かれ、その身を掴まれた。
何ともおぞましい光景だ、細い少女の身体が形容しがたい化け物の手に握られているなんて。鉤爪がアシュの足に刺さって、握る力が強くなって、その苦痛に集中が途切れ魅了が解除され、瞳を閉ざそうとしていたアルが飛び起きる。
『こ、ここは……!? アシュメダイ様! これは一体何が……』
魅了をかけられていた意識はなく、アルはこの状況を「アシュが化け物に襲われている」だと思い込み、アシュを握る手の指の一つに噛み付いた。
「……おいで、アル」
『…………ヘル?』
霧の中からアシュを掴んでいるものと同じ腕が現れ、ヘルの声を聞き力を緩めたアルを優しく捕まえ、霧の中に引き込んだ。
『くっ……このっ、離せっ……! アシュちゃんこーいうのは嫌いかなぁーっ! このっ、ヘンタイ!』
アシュは赤い槍を魔力で作り出し、自分を捕まえている腕に突き刺した。その攻撃が効いたかどうか彼女には分からなかったが、槍が刺さった直後霧は消えた。後には息を荒らげたアシュと、青年だけが残った。
『だっ……誰よ……あの犬はどこ!? もぅ嫌っ、 訳分かんないことばっか!』
青年は不思議そうに首を傾げ、自らの手を顔の前に持っていく。まるで自分の存在を確かめるように。アシュは無視されていることに苛立ちながらも状況の異様さに嫌な汗をかいていた。
黒檀のような巻き髪、それを溶け込ませる浅黒い肌、夜空を閉じ込めたような瞳。そして何より人間の姿でありながら人間では有り得ないその美貌。人を誑かす為の淫魔ですらここまでの美男は居ない。
『だっ、誰なのかって、聞いてるんだけどなぁ~? アシュちゃん、オニーサンみたいなカッコイイ人だぁ~い好きでぇ、お近づきになりたいなぁ~って』
声は上擦っているが、態度は整えた。状況の理解度の割には上出来だ。
『ボクは……兄だよ』
青年の瞳がようやくアシュを捉えた。アシュはすかさず目を合わせ、魔眼を発動させたが──青年に変わった様子はない。
『あの石は廉価版の試作品だから、本来ボクを喚ぶことは出来ないものだった』
『い、石……?』
『けれど、彼は石を肌身離さず持ち歩き、祈りを込め、願いを込め、助けを求めた。魔力を注ぎ込んだ』
青年はアシュに歩み寄る。アシュは逃げ出してしまいたい気持ちを抑え、キッと青年を睨み返す。
『ボクを喚ぶ石は欠陥品だった。けれど、それでも、ボクを喚ぶ為に作られた物ではあった。だから彼の魔力は新たにボクを作り出した。兄としての役割を付与して』
青年が話す内容はアシュにとってどうでもよく、理解すらしたくない代物だ。だが、青年と睨み合って硬直したアシュには話を遮ることは出来ない。
『自分がボクであることに気付かず人間として生涯を終えるボクも居る。だから、今更、一つ顕現が増える程度──一人の少年の理想の兄として顕現する程度では、世界のバランスは揺るがない』
『…………だ、誰だって、聞いてるのよ……』
辛うじて絞り出した声は震えていた。
『ボクはヘルの兄だ、それ以外の何者でもない。ヘルはそう信じているし、ヘルはそうであるボクしか求めていない』
『……っ!』
答えになっていない、そう叫びたかった。けれど、二度目の発声は無かった。
『…………神として、人間の願いに応えるのは自然なこと。兄として、弟の敵を討ち滅ぼすのは当然のこと』
がっしりと顔を掴まれて、アシュは視線すら逃げ場を失う。
『──キミを月の裏まで連れて行こう、獣達と遊ぶ為にね。正しい星々の位置を教えてあげる、湖の中を見せてあげる。そう、つまり──つまり、もうキミは……』
青年の姿が歪み、黒い霧へと変わる。アシュはその中に燃え上がるような三つの眼を見た。その霧が再び姿を消すとそこには呆然と立ち尽くす少年と銀狼だけが残った。
…………僕は何をしていたっけ。アシュにアルが攫われたと聞いて、取り返しに──行ったんだっけ? 分からない、覚えていない、アスタロトに話を聞いたところまでは分かっているのに……頭が、痛い。
『ヘル、ヘル……? 大丈夫か、ヘル』
そう、アスタロトに聞いたんだ。アシュがアルを攫ったと。それで──えぇと、兄とベルゼブブは僕を置いて行こうとして、僕は一人で……一人で? 違う、誰かと……そう、兄と、兄? 兄は誰だ? 僕は? ボクは誰?
『ヘル……? なぁ、ヘル、ヘル!』
ヘル……? そうだ、思い出してきた。ヘルと一緒にアルを助けに来て、アルはベッドに押さえ付けられていて、アシュに──されて、いた? いなかった? 分からない、どうだった、アルは穢されていたか?
『ヘルっ!』
……背中を打った。何故……あぁ、転んだのか。尻もちをついて背後の壁で背を打ったんだ。立っていただけなのに? 違う、誰かに押されてバランスを崩した。
『ヘル……ヘル? 大丈夫か?』
「………………アル」
『ヘル! ようやく気付いたか! 何を呆けていたんだ。私が何度呼んだと……全く、心配させるな』
アルが目の前に居る。目立った傷も魅了の後遺症らしきものもない。
「アル、何もされてない?」
『む……? 何も、とは?』
首を傾げる仕草は変わらない愛くるしさだ。健康状態は良好に見える。
「足、開いて」
『……足?』
「後ろ足。ほら寝転がって、見せて」
アシュは淫蕩の悪魔、そして魅了の力を使ってベッドにアルを押さえつけていたということは──強姦されていた可能性がある。それはいけない、愛し仔が悪魔に穢されていたらヘルが悲しむ。
『なっ、何をするんだ! 駄目だ、ヘル、そんな……』
尾と翼をバタつかせ、弱々しい抵抗を見せるアルを仰向けに引っくり返す。手首をかくんと曲げたような、人間なら「可愛こぶって鬱陶しい」と思えるような前足が可愛らしい。胸や腹辺りの毛並みは背よりもモコモコとしていて撫でていて心地好い、当初の目的を忘れてしまいそうだ。そうやってアルの腹を撫でて楽しんでいると、背後の扉が勢いよく開いた。
『ヘルシャフト様! 無事です……ね、何してるんですか』
『ヘル! 無事……ぁ、ごめん……出てくから、続けて』
ベルゼブブとヘルの実兄の声だ。ボクは何故か出て行こうとする兄を引き止め、部屋の外で仁王立ちを決め込んだベルゼブブを中に引き入れた。
『何かこの家無人みたいだよ』
『……ガキ、髪……そんなに長かったか?』
続いてセネカとカルコスも入ってくる。どうやら四人で来たらしい。
ボクは少し考えて、何故かここに着いた時からアシュが居なかったと、いつの間にかアルを取り戻していたと丁寧に説明した。
『まっっったく意味が分かりません』
丁寧さが助長となったのか、上手く伝わらなかった。
『まぁ、気配も感じないし……ヘルシャフト君さっきも記憶無いって言ってたよね? もしかしたらだけど、無意識に敵を倒す技とか身についたんじゃない?』
「だったら便利だねぇ……」
どちらかと言うと記憶を代償に敵を消し去る技、な気もする。どちらにしても間違いだけれど。
『アシュメダイが居ないのとかヘルシャフト様の記憶が曖昧とかはまぁアスタロトに過去視させるとして……ヘルシャフト様、貴方様はどうして床で致そうと……? ベッドあるじゃないですか』
『えっ……ヘルシャフト君ってやっぱりそっち系?』
「何か勘違いしてないかい?」
『勘違いした方が楽しくありません?』
これだから悪魔は、そう叫びたい。
「ボクはただ、アルがアシュに何かされてないか、怪我とかないか、見てただけ」
『そ、そうだったのか? 突然足を開けと言いだすから……驚いたぞ』
『あっとここで証言出ました、証言出ましたよ』
訂正しよう。悪魔という種族の問題ではなく、ベルゼブブが特別下品なのだ。それこそ淫魔を上回る程に。
『まぁまぁ、ほら、アシュメダイ……? さんって淫蕩の悪魔でしょ? そんなのに攫われたんだから、まず確認するのはそこだよね、ねっヘルシャフト君』
『攫われた? 私……が?』
『…………一度帰って分かってること一人一人話そう。これ、事実の擦り合わせが必要だよ』
兄の意見に賛成だ、と首を縦に振る。バラバラに行動していて事実認識が皆曖昧だし、アルは魅了されていたせいで状況を理解出来ていないし、合流したタイミングの悪さから誤解も生じた。
今まで起こったことに全員が同じ認識を持つため、それを話し合うため、ヴェーン邸に戻った。
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『もう来た……!? やばっ』
アシュは素早くアルの背に跨り、頭を押さえ付けて叫ぶ。
『この犬の命が惜しかったら動くな!』
霧が動きを止めると確信して、下着に手をかける。目の前で犯してやろう──と。しかしアシュの思い込みに反して霧は動いた、いや、霧の中から長い長い鉤爪を持った手が伸びた。アシュは予想外の異形に隙を突かれ、その身を掴まれた。
何ともおぞましい光景だ、細い少女の身体が形容しがたい化け物の手に握られているなんて。鉤爪がアシュの足に刺さって、握る力が強くなって、その苦痛に集中が途切れ魅了が解除され、瞳を閉ざそうとしていたアルが飛び起きる。
『こ、ここは……!? アシュメダイ様! これは一体何が……』
魅了をかけられていた意識はなく、アルはこの状況を「アシュが化け物に襲われている」だと思い込み、アシュを握る手の指の一つに噛み付いた。
「……おいで、アル」
『…………ヘル?』
霧の中からアシュを掴んでいるものと同じ腕が現れ、ヘルの声を聞き力を緩めたアルを優しく捕まえ、霧の中に引き込んだ。
『くっ……このっ、離せっ……! アシュちゃんこーいうのは嫌いかなぁーっ! このっ、ヘンタイ!』
アシュは赤い槍を魔力で作り出し、自分を捕まえている腕に突き刺した。その攻撃が効いたかどうか彼女には分からなかったが、槍が刺さった直後霧は消えた。後には息を荒らげたアシュと、青年だけが残った。
『だっ……誰よ……あの犬はどこ!? もぅ嫌っ、 訳分かんないことばっか!』
青年は不思議そうに首を傾げ、自らの手を顔の前に持っていく。まるで自分の存在を確かめるように。アシュは無視されていることに苛立ちながらも状況の異様さに嫌な汗をかいていた。
黒檀のような巻き髪、それを溶け込ませる浅黒い肌、夜空を閉じ込めたような瞳。そして何より人間の姿でありながら人間では有り得ないその美貌。人を誑かす為の淫魔ですらここまでの美男は居ない。
『だっ、誰なのかって、聞いてるんだけどなぁ~? アシュちゃん、オニーサンみたいなカッコイイ人だぁ~い好きでぇ、お近づきになりたいなぁ~って』
声は上擦っているが、態度は整えた。状況の理解度の割には上出来だ。
『ボクは……兄だよ』
青年の瞳がようやくアシュを捉えた。アシュはすかさず目を合わせ、魔眼を発動させたが──青年に変わった様子はない。
『あの石は廉価版の試作品だから、本来ボクを喚ぶことは出来ないものだった』
『い、石……?』
『けれど、彼は石を肌身離さず持ち歩き、祈りを込め、願いを込め、助けを求めた。魔力を注ぎ込んだ』
青年はアシュに歩み寄る。アシュは逃げ出してしまいたい気持ちを抑え、キッと青年を睨み返す。
『ボクを喚ぶ石は欠陥品だった。けれど、それでも、ボクを喚ぶ為に作られた物ではあった。だから彼の魔力は新たにボクを作り出した。兄としての役割を付与して』
青年が話す内容はアシュにとってどうでもよく、理解すらしたくない代物だ。だが、青年と睨み合って硬直したアシュには話を遮ることは出来ない。
『自分がボクであることに気付かず人間として生涯を終えるボクも居る。だから、今更、一つ顕現が増える程度──一人の少年の理想の兄として顕現する程度では、世界のバランスは揺るがない』
『…………だ、誰だって、聞いてるのよ……』
辛うじて絞り出した声は震えていた。
『ボクはヘルの兄だ、それ以外の何者でもない。ヘルはそう信じているし、ヘルはそうであるボクしか求めていない』
『……っ!』
答えになっていない、そう叫びたかった。けれど、二度目の発声は無かった。
『…………神として、人間の願いに応えるのは自然なこと。兄として、弟の敵を討ち滅ぼすのは当然のこと』
がっしりと顔を掴まれて、アシュは視線すら逃げ場を失う。
『──キミを月の裏まで連れて行こう、獣達と遊ぶ為にね。正しい星々の位置を教えてあげる、湖の中を見せてあげる。そう、つまり──つまり、もうキミは……』
青年の姿が歪み、黒い霧へと変わる。アシュはその中に燃え上がるような三つの眼を見た。その霧が再び姿を消すとそこには呆然と立ち尽くす少年と銀狼だけが残った。
…………僕は何をしていたっけ。アシュにアルが攫われたと聞いて、取り返しに──行ったんだっけ? 分からない、覚えていない、アスタロトに話を聞いたところまでは分かっているのに……頭が、痛い。
『ヘル、ヘル……? 大丈夫か、ヘル』
そう、アスタロトに聞いたんだ。アシュがアルを攫ったと。それで──えぇと、兄とベルゼブブは僕を置いて行こうとして、僕は一人で……一人で? 違う、誰かと……そう、兄と、兄? 兄は誰だ? 僕は? ボクは誰?
『ヘル……? なぁ、ヘル、ヘル!』
ヘル……? そうだ、思い出してきた。ヘルと一緒にアルを助けに来て、アルはベッドに押さえ付けられていて、アシュに──されて、いた? いなかった? 分からない、どうだった、アルは穢されていたか?
『ヘルっ!』
……背中を打った。何故……あぁ、転んだのか。尻もちをついて背後の壁で背を打ったんだ。立っていただけなのに? 違う、誰かに押されてバランスを崩した。
『ヘル……ヘル? 大丈夫か?』
「………………アル」
『ヘル! ようやく気付いたか! 何を呆けていたんだ。私が何度呼んだと……全く、心配させるな』
アルが目の前に居る。目立った傷も魅了の後遺症らしきものもない。
「アル、何もされてない?」
『む……? 何も、とは?』
首を傾げる仕草は変わらない愛くるしさだ。健康状態は良好に見える。
「足、開いて」
『……足?』
「後ろ足。ほら寝転がって、見せて」
アシュは淫蕩の悪魔、そして魅了の力を使ってベッドにアルを押さえつけていたということは──強姦されていた可能性がある。それはいけない、愛し仔が悪魔に穢されていたらヘルが悲しむ。
『なっ、何をするんだ! 駄目だ、ヘル、そんな……』
尾と翼をバタつかせ、弱々しい抵抗を見せるアルを仰向けに引っくり返す。手首をかくんと曲げたような、人間なら「可愛こぶって鬱陶しい」と思えるような前足が可愛らしい。胸や腹辺りの毛並みは背よりもモコモコとしていて撫でていて心地好い、当初の目的を忘れてしまいそうだ。そうやってアルの腹を撫でて楽しんでいると、背後の扉が勢いよく開いた。
『ヘルシャフト様! 無事です……ね、何してるんですか』
『ヘル! 無事……ぁ、ごめん……出てくから、続けて』
ベルゼブブとヘルの実兄の声だ。ボクは何故か出て行こうとする兄を引き止め、部屋の外で仁王立ちを決め込んだベルゼブブを中に引き入れた。
『何かこの家無人みたいだよ』
『……ガキ、髪……そんなに長かったか?』
続いてセネカとカルコスも入ってくる。どうやら四人で来たらしい。
ボクは少し考えて、何故かここに着いた時からアシュが居なかったと、いつの間にかアルを取り戻していたと丁寧に説明した。
『まっっったく意味が分かりません』
丁寧さが助長となったのか、上手く伝わらなかった。
『まぁ、気配も感じないし……ヘルシャフト君さっきも記憶無いって言ってたよね? もしかしたらだけど、無意識に敵を倒す技とか身についたんじゃない?』
「だったら便利だねぇ……」
どちらかと言うと記憶を代償に敵を消し去る技、な気もする。どちらにしても間違いだけれど。
『アシュメダイが居ないのとかヘルシャフト様の記憶が曖昧とかはまぁアスタロトに過去視させるとして……ヘルシャフト様、貴方様はどうして床で致そうと……? ベッドあるじゃないですか』
『えっ……ヘルシャフト君ってやっぱりそっち系?』
「何か勘違いしてないかい?」
『勘違いした方が楽しくありません?』
これだから悪魔は、そう叫びたい。
「ボクはただ、アルがアシュに何かされてないか、怪我とかないか、見てただけ」
『そ、そうだったのか? 突然足を開けと言いだすから……驚いたぞ』
『あっとここで証言出ました、証言出ましたよ』
訂正しよう。悪魔という種族の問題ではなく、ベルゼブブが特別下品なのだ。それこそ淫魔を上回る程に。
『まぁまぁ、ほら、アシュメダイ……? さんって淫蕩の悪魔でしょ? そんなのに攫われたんだから、まず確認するのはそこだよね、ねっヘルシャフト君』
『攫われた? 私……が?』
『…………一度帰って分かってること一人一人話そう。これ、事実の擦り合わせが必要だよ』
兄の意見に賛成だ、と首を縦に振る。バラバラに行動していて事実認識が皆曖昧だし、アルは魅了されていたせいで状況を理解出来ていないし、合流したタイミングの悪さから誤解も生じた。
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