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しおりを挟む「ツヅリ!平気?」
研究室にモモトセとホワイトさんが入ってきた。アースィムに抱きしめられているのをみてモモトセは引き剥がして私を抱きしめた。
「平気…。あれ握手会は?ハッカイさんに会った?」
「握手会は終わった。後はフリーなんやけどさっき父親に結婚の承諾はしないと言われてブチギレてきたところや」
「オレもモモトセがあんなに怒ってるの初めて見たぞ」
ホワイトさんは赤茶色の髪をサラリとかきあげて爽やかな笑顔をモモトセに向けていた。
「お前面白かったんだな。アイドルの時もっとそういうの出せば良かったのに」
人懐っこい顔で二重で切長の緑目を細めてモモトセの頭をグシャクジャと撫でていた。
「うるさいねん。あの時マテオくんはあたり強かったやん。あんなん怖くてなにもよぉせぇへんわ」
それはそうだなとガハガハ笑っていた。なんというかアテニャンさんとはまたタイプが違って面白かった。
「って紹介が遅れました。元アイドルで現在は俳優をしているマテオ・ホワイトです。貴女はモモトセの婚約者さんと、お友達ですね?はじめまして」
ホワイトさんに手を差し出されたが例の如くモモトセが叩き落としていた。
「ツヅリは俺のや」
「モモトセさんのものでもないよ」
思わずアースィムがツッコミを入れていた。アースィムとホワイトさんは握手を交わして挨拶をしていた。
「とにかく一旦うちに帰って話をまとめよう…今のところ彼らは大きく動くことはないはずだから」
アースィムはそう仕切ったあと、どこかへ電話をかけてツムギさんが学問区や行政区を出ないようにSPにお願いしたいた。どうやらカタリさんと接触しないようにするらしい。
とりあえず私たちの家に帰ることにした。
「まさか親父がそんなことに…」
先程あったことをモモトセとホワイトさんに話をした。ホワイトさんは母や兄、姉さんなどから父がおかしいと聞いていたので秘密裏に調べていたそうだ。
「オレが生まれた時からすでにおかしいからあれが本性なんかと思ってたけど、違うんだな」
ホワイトさんはなんとも言えない表情をしていた。アースィムは話を続けた。
「モモトセさんは思ってたより何も被害が出なくて良かったよ。ツムギさんがナナミさんに対して異様に執着してるからモモトセさんは監禁されちゃうかもって思ってたけど、杞憂で済んで良かった」
「余計なお世話じゃ」
モモトセは頬を膨らませて拗ねていた。
「とりあえずカタリさんへの対処はツムギさんに任せるとして…1つ気になることがある」
アースィムはチラリと私の方へ視線を向けた。
「多分ハッカイさんはツヅリを殺しにくる」
「どうして」
「ハッカイさん、あの時アンドロイドの話をしたでしょ?あれまるでツヅリがアンドロイドの命令信号を作ってるのを知ってるような発言だった。作るのをやめるって発言することでその信号を作るのもやめさせるつもりなんだよ」
「そんな…」
「だから作りかけのやつはそのまま作っておいた方がいい。そしてなんなら安全なところに避難しよう。多分この居住区に全て邪魔な人を集めてきて燃やすかもしれない」
「そんなアホなこと…」
モモトセはやらないと言いかけたのであろうが、やりかねないと思ったのか言葉をそこで止めた。
「ハッカイさんってそんなヤバい人だったのか。めちゃくちゃ曲良いのにな」
「あいつは傲慢で世界は自分のものとでも思ってるんやろ」
「安全なところならオレが提起できると思う。あのピンク頭もいるけど許してくれ」
そうしてホワイトさんの提案する場所に身を隠すことにした。
着いたのは個人が所有する島だった。ここはホワイトさんの持ち物ではなく、もう1人のアイドルメンバー、ローザヴィ・トルストイさんの個人島にしばらく身を寄せることになった。
「うわ、モモトセじゃん。ちっすちっす」
トルストイさんはピンクの髪、ピンクの瞳で可愛らしい外見であったが服装や立ち姿が完全にオッサンだった。
「知らない2人もいるけど誰?」
簡潔に自己紹介をし、島のコテージの方へ案内された。
「女の子1人いるけど、部屋どうしようか。1人でコテージ使ってもいいけど、何かあった時は保証できないなぁ…部屋交代制にするか?」
「俺が婚約者やから俺と同室でええ」
「いや僕が同室で。幼馴染だし、ほら僕ついてないし」
アースィムは自分のコンプレックスを普通にこの人たちに話した。いや別段隠してなかったのかもしれないが。それを聞いてモモトセは「そういうことか」と何かに納得していた。
「おっちゃんはアースィム君を推しておくかな。モモトセのクソガキは100%手を出しそう」
トルストイさんは揶揄うようにゲラゲラ笑っていた。ホワイトさんに続き、モモトセのアイドルユニットは表と裏の顔が違いすぎる。
「でもついてなくてもできることはある程度出来る点についてはどうすか?ピンク先輩」
ホワイトさんはトルストイさんに質問していたが子どもができなきゃオールオッケーと答えていた。会話の内容が女性の前でする話題ではないので完全に異性としては見られていないのだろう。
「部屋かなり余ってるし君ら3人で使いなよ」
兎にも角にも部屋割りで揉めている場合では無いのだとアンドロイドの命令信号を作成するのに集中しなくては。
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