漆黒の大魔将軍は勇者に倒されたはずでした!?

武家桜鷹丸

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第五章 激闘!漆黒対影!

叩いて!耐えて…!?

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『ーー…なんやお前さんは?ここは妾の領域ぞ。よそ者はさっさと失せよ!』

 そやつは堂々と、正面から、単体で現れた。
 いや正確には二体と言うべきだったかもしれない。
 肩にスライムを乗せて現れたのはダークアーマー族の上位。わざわざ弱者を肩に付けて強者を気取っているつもりなのかしら?
 だとしたらとんだ愚か者ね……

『…お前がシャドウ族の頂点か?』
『そうです。それにしてもどうやって侵入したのかしら?ここまでに妾の配下が幾千といたはず。見つからず来れる方法などないわよ。』

 玉座から見下ろしながら尋ねてみれば奴はあっさり答えた。
 ただ正面から道なりにやってきたと。立ちはだかる者は全て倒しながら進んできたと返してきた。
 中身が空っぽの鎧魔族に妾の配下が全て負けたのかと思えば実に腹立たしいことであった。

『ふん、多少は出来る者だったかえ。一応名を聞いてあげましょう。』
『そうか、我は黒の魔将軍である。シャドウ族の長よ。我が主の命により貴様を、勧誘しにきました。』

 こちらへと手を伸ばしてみせながら魔将軍と名乗った奴の言葉につい間を置いてからはあっ!?と驚いてしまった。
 配下達を倒しておきながら妾を自分の主の為に勧誘してきた奴にふざけたことをと怒りが沸いてきた。

『嘗めているのか貴様!戦わずして妾を勧誘しようなどと無礼であると知りなさい!』

 怒りに任せて影で巨大な拳を作り奴へと振り下ろした。
 ズガンッ!と奴の周囲一帯ごと潰してやり影から伝わって手応えも感じら倒してやったと思った。
 だが呆気ない奴と拳を挙げようとした時だった。
 途中で影の拳の動きが止まり引こうにも引けなくなったことに何故と感じたがすぐに理解した。

『なるほど、この影は我でも掴めるということは物質として存在するということか。』

 叩いたところから声が聞こえてくれば魔将軍の足が見えた。
 まさか妾の一撃を平然と耐える者が現れたことにまた驚かされていれば別の声が聞こえてきた。

『ねえねえマスター。だったこれ投げ飛ばせるんじゃない?』
『む、そうだな。こんな大きな者は外に捨ててしまおう。』

 誰かと会話した魔将軍の次の行動に妾は驚かされる。攻撃に使った影を肩に抱えるように持ち上げられると半回転して軽々と投げてみせたのだ。
 シャドウ族とは影に影を使うもの。故に使う影とは繋がっている為に妾の身体は引っ張られて平野まで無理矢理飛ばされてしまった。
 そう、妾が物理的な力で負けたと初めて実感した瞬間であった。

『これは失礼した。まさか本体と繋がっているとは知らなかったのでな。』

 追いかけるようにして逆に見下ろしながら言ってきた魔将軍に妾を久方ぶりに怒りの炎が燃え上がり魔力を出しながら睨みつけた。
 すると奴はもっと失礼なことをしてきた。
 なんと妾の身体をのだ。
 影とは本来見られないもの故にシャドウ族にとってそのような行為は恥辱に値することに怒りが沸点に達した。

『潰す!!妾にそのようなことをしおって!叩いて曲げて!バラバラにして海に捨ててやる!』
『えっ!?…あ、おほん。なんだ?意外と激情なタイプだったのか?仕方ない、なら我が勝ったら話を聞いてくれるか?』
『勝てたら聞いてやる!勝てるものならばの話じゃがの!』

 影で作った足を突き出し蹴ろうとしたのを魔将軍は避けると近くの高いところに着地する時に気づかされた。
 ズラリと並ぶ自分のものとは違う軍勢。あれが魔将軍のものなのかと思えば少しして妾は冷静さを取り戻した。
 魔将軍は肩にいたスライムに何か伝えて降りさせると今度は妾と同じ地に着地する。

『さて、それでは始めるか……』

 その後、妾と魔将軍は三日三晩かけて戦ったのである。
 魔将軍が出してきたルールで戦い妾は全力を持って倒しにかかった。
 しかし結局奴を倒すことは出来なかった……


***


 ふと初めてシャッテンと出会った時のことを思い返してしまうとやっぱりつい観察するように見てしまって激怒されていたのを思い出した。
 だから正直こちらが用意した提案を飲んでくれるかは賭けとなるかもしれない。

「その前にシャッテンよ。今回も我が勝敗のルールを決めたい。」

 ピシッと失礼かもしれないがシャッテンを指差して提案してみた。
 ああ見えてシャッテンはただ戦うのではなく遊び心を求めたいところがある。その情報を事前に得ていたので前の戦いではこちらの犠牲を出さない策としてあの提案をしたのだ。

「嫌じゃ。前回はお前さんのルールに従って戦ったんやから今回は妾のルールで勝負してもらうわよ。」

 残念ながらシャッテンに断られてしまった。
 仕方ない、遊びを求めるシャッテンからのルール提案がどんな内容になろうとも受けて立とう。

「ルールの名前はそうね……ズバリ!〔叩いて耐えてジャンケンポン〕よ!」
「……はい?」

 なんだその企画物みたいなタイトルは?
 確かにこの世界にも子どもの遊びにジャンケンポンは存在していたがそれをなんでシャッテンは知ってルールに使おうと思ったんだ?
 そこからシャッテンはちゃんと説明までしてくれた。
 と言っても至ってシンプルでジャンケンして勝った方が攻撃して負けた方は耐える。それで参ったを言うか戦闘不能になったら勝ち負けとするというものだ。

「妾が勝ったらお前を配下にしてやる。そしたらこの島を出るのじゃ。」
「何?島を出てどうするつもりだ。」
「それは……それはお前を配下にしてから話してやる!」

 なんか躊躇いを見せてからこちらを指差して言ってくるシャッテンを少し不思議に思うが今は気にしないでおこう。
 向こうが提示してきたので我も言ってやらねば決闘が成り立たぬ。

「いいだろう。ならば我が勝利したらこの島は全て我が占領することにしよう。それでよいかシャッテンよ!」
「オーホホホホ!よいぞ大魔将軍!そうこなくては命の張り合いにはなるまいて!」

 互いに主張したことで決闘が成り立ち我は盾を変形させて巨大な手を作り、シャッテンも真下に池くらいまで広がった影を動かし準備に入れば案内してくれた二体のシャドウ族は影の中へと消えてその場を去った。
 同時に周りにあった気配も一斉に遠ざかっていくのを感じた。

「いくぞシャッテン!」
「来なんし大魔将軍!ジャーンケーン、ポン!」

 だいたい半径三キロメートルになんの気配もなくなってから我とシャッテンは最初の一手を出した。
 我はパーを出し、シャッテンはチョキを出した。
 つまり一回戦はシャッテンの攻撃になる。高らかに笑ってからシャッテンはチョキの手の指を閉じて二本指で突くように我に向かって動かしてきた。
 ここはルールに従って防御してみたがなかなかの一撃で後ろに少し滑ってしまった。

「始めから全力では長続きしないぞ?」
「長引かせるつもりはありませんから。さあ次ですわよ。」

 短期決戦を望んでいるかのような物言いをしてくるシャッテン。ならばこちらはジャンケンポンに勝ったら物理攻撃をメインに攻めるとしよう。
 二回戦目に出した手は我がグーでシャッテンがパー。つまりまた負けてしまい今度はパーで上から叩きつけてきたので障壁で耐える。さすがはシャッテンの攻撃、その場で脚に力を入れてやらねばならないほど重い一撃をしてくる。
 そこから七回ジャンケンポンしてから思わされる。
 我ってこんなにジャンケン弱かったっけ?と。
 九回して全敗するなんてちょっと弱すぎじゃない?

「オーホッホッホ!どうしたのかしら大魔将軍!あなたともあろう者がジャンケンポンで勝てないなんて!」

 全勝しているシャッテンは上機嫌に言ってくる。ていうかシャッテン、一撃の約束をしてきたくせに一連の攻撃だからとか言って途中に連擊使ってきただろうが。おかげでこちらはずっと防戦一方にさせられた。
 だがおかげでわかった……
 シャッテンがああいう言動を取る時は何か使のだと。
 つまりこちらが出す手をシャッテンは先読みして勝ってみせているという可能性が出てきた。
 だがなんの根拠も無しに不正だイカサマだと口に出すわけにはいかないが試せることはある。

「さあ大魔将軍!そろそろキツいんじゃないんですの?参ったと言って構わんどすよ?」
「何を言うシャッテン。勝負はまだまだわからないぞ?ここから一発逆転もあるやもしれんぞ!」

 意気揚々なシャッテンにこちらも気迫を出して言えば十回戦目のジャンケンをした。
 結果はシャッテンがチョキ、我がグーであった。
 我が勝利したことにシャッテンは予想外という顔ではなく何故か

「我の勝ちだなシャッテンよ。受けるがよい!」

 ようやく出せるこちらの攻撃に我はグーにした手をそのまま後ろに引けば足下から魔力をブースター代わりに噴射させてシャッテンへと飛ぶ。
 突っ込む我に反応が少し遅れたシャッテンは影の伸ばして壁としてきたがお構い無しにぶつかった。
 ゴムみたいにシャッテンへと伸びるほど影を変形させさせた一撃であったが本体には届かず弾き返されてしまったので着地してみせる。
 だがしっかりと効果があったことは実感できた。
 シャドウ族は影を操るのに魔力を使う。それが大きく複雑な操作になれば尚更消費も高くなる。ただの壁にするのではなくゴムみたいな性質を与えて防いだのはシャッテンにとって痛手となったであろう。
 案の定【情報開示リサーチ】を使うとシャッテンの魔力が減っているのが確認できた。

「どうしたシャッテンよ?まだ我は一撃目だぞ?半世紀の間に防御のを忘れていたのか?」
「く!そっちこそ満身創痍のくせして、一撃入れたからと勝ち気にならないでほしいどす!」

 苦しまぎれの返しにも聞こえるシャッテンの言葉に我は予想が当たったと確信してこちらから掛け声を出す。手を出すその数秒前に我はまた同じことをしてやった。
 するとシャッテンはまた顔を赤らめて動揺をみせながら先に指を開いたのでこちらはチョキを出した。
 シャッテンはパーを出したことでまた我の勝ちとなったので今度はシャッテンの頭上を越えて高らかに飛んでから豪快なチョップをしてやった。
 それをシャッテンは影で作った手の平で受け止めてみせる。この衝突により発生した衝撃波は大きく付近の瓦礫が吹き飛んでしまった。

「お、おのれぇ、気づいてやり返してくるとはぁ…!」
「ふ、今さら卑怯とは言うまいなシャッテンよ?なにせ先に貴様がやったのだからな。」

 弾かれてから本当に悔しそうな顔で文句をたれてくるシャッテンにこちらはそう言い返してから笑ってみせる。
 そしてピシッとシャッテンを指差して言ってやった。

「理解したならシャッテンよ、耳まで赤くなる前に我から。」

 我がネタばらししてやるとシャッテンは舌打ちする。
 ずばり解説しよう。
 シャッテンの影は質量を持たせることが出来る。つまり影の表面から出すことも出来ればにも出せるということだ。
 シャッテンはその影で地面に穴を掘り地中から伸ばして我が宙に浮いた時を見計らい地上にある我の影と繋がってみせたのである。
 確かに地に立っても離れても影は出来るのでしてやれたというわけだ。
 影魔法には影を繋げることで相手の考えを読み取るものもあると聞いていたがまさかこのような場面で使ってきたのは全く予想外だった為に気づくのが遅れてしまった。
 まあこれはエイムとの会話を思い出したおかげとも言える。
 ちなみに先の二戦では試しにとシャッテンの容姿を褒め称える言葉を浮かべながら無意識にジャンケンポンしたのだが、あんなに動揺するとは思ってなかった。

「さあて、ここからが本番だぞシャッテン。どちらが先に根を上げるかな…!」
「ふん!すでに勝ち越している妾が勝つに決まっているでしょう!」

 自分が有利だと思っているシャッテンと言葉通りここからは互いに読み合いをしながらジャンケンポンをしていった。
 そこから数えること四十二戦目でシャッテンの攻撃の防いだ時に我は手を前に出して言った。

「そこまでだシャッテンよ。」
「何がです?」
「もう夕方だ。今日はここまでにしよう。」

 人差し指で指し示した先にはオレンジ色になる空があった。
 このまま夕暮れとなれば戦いの最中にシャッテンの力が弱まってしまう。それでは不公平な勝負となってしまいかねないので我は一時休戦を申し込んだのだ。
 魔界ならば本当に赤い太陽こと赤陽さきようとそれよりちょっと光が弱い青い太陽の青陽せいようが一日を照らしてくれたのでシャドウ族は二つの太陽が入れ替わるほんの一時間程度の夜以外は活動できた。
 しかしこの世界にはちゃんとした朝昼晩が存在し長い夜は活動を制限されることになっているはずだ。
 シャッテンもそのことは重々理解しているようでこちらの提案にあっさりと了承し日が昇ったら続きをしようと言ってくれた。

「ではまた朝に参ろう。」
「え?ど、何処にいくつもりなんす?」

 約束を伝えてから背を向けた時にシャッテンから問いかけられる。
 何処と言われて実はあまり考えてなかったがとりあえずシャッテンの視界に入らないところまで飛んでから休めばいいかなとは思っていた。

「さあな。貴様の感知出来ないところで休むだけだ。」

 なのでそう伝えてから我は飛び立った。
 その時にシャッテンの顔を見ていれば本当は良かったかもしれないが……


***

 夕方の空にも見える漆黒の軌跡を残して去っていった大魔将軍。
 相も変わらずカッコいい去り方をしおってからに。
 ほんまに意地悪なお方や。
 この世界の夜を理解して妾に配慮するその優しさは五十年経っても変わらないというわけか。
 かつて大魔将軍の配下を覗き見した時の他者の支配下では見れない活気溢れた光景と尊敬の念を生んでいたと記録している。
 何故かと思っていれば大魔将軍は種族関係なく平等に接していただけだった。
 側近や幹部だけでなく非戦闘員のところにも挨拶しにいく大魔将軍に周りは牽かれていったのだ。

(その時のあの立ち振舞いはとても……)

 はふりと息をついてから妾は気持ちを切り替える。
 今のところ四十二戦中二十七勝十五敗。最初に九勝しておいたことが功を奏して妾の魔力には余裕がある。
 それに夜明けまでの間に回復する魔力など互いにたかが知れている。
 さらには大魔将軍の種族がそれに拍車をかけることになる。ダークアーマー族は魔力を回復するのに時間がかかる弱点を持つ。このまま戦い続ければ間違いなく大魔将軍の方が先に魔力が少なくなるはずだ。
 魔力が少なくなったらダークアーマー族は鎧の制御に支障をきたして動きが鈍くなる。そこで妾が降伏を提案してやればさすがの大魔将軍も折れることであろう。

(そして大魔将軍を配下にしたら……)

 その先の未来を想像すると胸が高鳴り口がにやけてしまう。
 魔王以外で妾が唯一認めた魔族をこの手に入れてこその第一歩となるのだ。

(くくくくく、楽しみじゃのう。この世界を全て真っ黒に染めてやる日が待ち遠しいわ!)

 影で遊びながら妾は早く朝日がくることを祈って待つことにした。
 夜の暗闇は妾達シャドウ族の影と影の移動を制限させ下位ならばその場から全く動けなくなる。妾はシャドウ族の最上位シャドウ・オブ・クイーンなので実体のままなら移動することは可能。
 ということは今大魔将軍が何をしているかを周りのシャドウ族に見られることなく様子見できるのではないかしら?

(……ちょっと覗いていきましょう。)

 決してこれは大魔将軍が今何をしているか気になるからではありまへん。
 大魔将軍が怪しいことや卑怯な手を画策してないか見る為でありんす。そうです、そういうことです。


***


 シャッテンが多分感知出来ないだろう夜の浜辺まで飛んできた。
 それから鎧に不調がないかを確認する。ほとんどの攻撃はスキルで防いでみせたがその分魔力も消費してしまった。
 最大魔力の十分の一まで減れば鎧の動作に支障がきてしまうはずなので指先の細かい動作までしっかり確かめ異常無しと判断した。
 だがここまでで少し疑問を覚えた。
 シャッテンの攻撃を防ぐ時に障壁で防いだ場合と盾で防いだ場合で手応えにがあった気がするのだ。
 そりゃあ障壁よりも漆黒の大盾で防いだ方が様々なスキルが発動してダメージを軽減してくれるので当然なのだが半世紀前よりもより軽減する力が増しているようだった。
 我には漆黒の大盾で防御した場合に光と聖属性を除く属性攻撃を四十パーセントカットする条件発動型の防御スキルが存在する。
 シャッテンの攻撃には全て闇属性が入っているので当然ダメージを軽減していたがそれでも手応えの差が大きく感じた。
 まさかシャッテンが手加減するなんてあり得ないことだろうし、この疑問を抱えたまま明日の再戦を迎えるのはいささか不安となる。
 良いことなのに不安を覚えるのは原因がわからないままで戦うのは傲慢となりかねないからだ。

(一度調べてみるか……)

 考えてみると復活してから自分のステータスを見る機会がなかったのでこの際夜明けまでに確認しておこうと思いステータスを確認した。
 すると現存魔力があまり減っていないことに気づく。あれだけシャッテンの攻撃を防いだにしては消費した魔力が割に合わないと思った。
 そこで自分のスキルをチェックしたら思いがけないものを見つけてしまい気づかされる。
 世界が、ヒトが変わってしまったのは理解していた。
 だがまさかもうこれ以上はないだろうと思っていた自分にもまだ先がある成長があったとはと。

(うーむ、これって…卑怯になっちゃうのかな?)
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