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第五章 激闘!漆黒対影!

いざ黒影島へ。

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 堅牢な二つの外壁に囲まれ間に庶民の街があり、奥には立派な石造りの建物が階段上に存在する。そしてその奥には天高く作られた城がそびえ建っていた。
 ここは先に大魔将軍によって全滅させられた哀れな軍を差し向けた国、聖教皇国シェガヒメである。
 その城内にある会議室に大臣が集まっていた。

「ーー…それで、オサカの街を目視という報告を最後に連絡がないのはどういうことだ?」

 高位の聖職者の格好をした年配の男性が今回の議題を口に出す。
 発端はオサカの街から逃げ帰ってきた貴族達の報告であった。
 魔族によって占拠されたという共通の話は国に衝撃を与えた。
 同時にこれはチャンスでもあった。どの国よりも先に聖教皇国がオサカの街を奪還することに成功すればその先の利権の多くを自分達が優先して得られると思ったからだ。
 さらにオサカの街に大国の中では聖教皇国が最も近い。故にまずは属国に密使を送り派兵を指示した。
 情報では街はアンデッドと魔族が一体しかいなかったというので攻城戦用のゴーレムを与えておけば片がつくと大臣達は思っていた。
 しかし先の報告を最後に早四日経ってしまった。

「司教様。まさか、全滅したということを考えるべきなのでしょうか?」

 一人の大臣の発言にどよめきが起きる。指示した属国から二千の兵を出したと聞き及んでいるしゴーレム隊も与えたのだ。
 それがアンデッドと一体の魔族に負けたというのは信じ難い話になる。ざわめく会議室に扉をノックする音が聞こえ入室を許可すれば兵士が入ってくる。

「ロサリオ騎士団のゲール様が入室の許可を求めております。」
「何?ゲールが?」

 聞こえたことに白髪混じりの一人が聞き返す。ゲールと言えばオサカの街の騒動から無事に貴族を逃がしてみせた功績を教王に称賛された人物だ。
 その彼が突然訪問したのには何か理由があるのかもしれないと思って他の者の同意を得てから入室を許可した。
 兵士が扉を開け失礼しますと言ってゲールが入室する。

「ゲール部隊長。わざわざこの場に来たのは何用か?」
「はい、つい先ほどオサカの街に軍を差し向けたと聞き忠告を申し入れたいと思い参りました。」

 ゲールの発言に何故今さらと大臣達は思いつつも続けるよう返せば彼は進言した。

「率直に申し上げます。今すぐその派兵の撤回を伝え我々ロサリオ騎士団全軍をもって立ち向かうべきだと思います。」

 次に出されたゲールの提案に大臣達は大いに驚いてみせる。中には突然何を血迷ったことを申すのだ!と怒る者もいた。
 聖教皇国の精鋭であるロサリオ騎士団をしかも全員で中規模の街の奪還に使うなんて前代未聞の話であり当然反対の意見が挙がる中で先ほどの司教が片手を挙げて静まるよう皆に伝えた。

「ゲール部隊長。そこまで言うのは教王様から称賛され気が大きくなったわけではあるまい。何か深い事情があるのだな?」
「はい、私はあそこで本当の魔族というモノに出会いました。」

 そこからゲールは自分や二人の部下が体験したことを事細かに話してあげた。
 城の襲撃や大魔将軍の宣言、目の前で対峙した本人の印象と最後に見た力の一端を。
 話を聞かされた大臣達は一同に息を飲んだが司教は瞼を閉じて冷静に聞いてから目を開けて一人に視線を送る。

「副司祭よ。こちらの報告には大魔将軍の名前は入っていなかったと記憶しているが…?」
「っ!?そ、それは半世紀前にかの聖女様一行が討ち取ったと記録されておりましたのでいらぬ恐怖を生み出さない為にと省いた次第で……」

 視線を逸らして返す副司祭に余計な気遣いをしたものだと司教は大きくため息をつく。
 大魔将軍の噂は当然この国にも入ってきていた。
 ただそれはガレオの名前であり、さらに北の大陸から南に向かっているということもあり位置が外れているからと上層部にしかまだ回っていなかった。
 さらにそれからかの魔族が侵略したまたは破壊活動を行ったという情報は入ってこなかったこともあってこのような報告の誤りが起きてしまったのだろう。
 もし入っていたら先に精鋭の偵察を向かわせて事実確認を行ってから派兵を検討したはずだ。
 そして街を目視したという報告から途切れた理由について一つの可能性ができた。

「どうやら、送り出した軍は大魔将軍によって全滅したかもしれないな。」

 司教の言葉にゲールがどういうことかと尋ねてすでに派兵していたことを聞かされる。ゲールは昨日仲間から聞いてこうしてやってきたことも話してくれたことで報告の遅延もあったことが判明した。
 以上のことから会議の結論はすぐに決まる。オサカの街に精鋭を向かわせて偵察、その後状況次第ではロサリオ騎士団を派兵することを教王様に進言することが決定した。
 その日から二日後に属国より派遣した軍が跡形もなく消え失せたという知らせが入ることとなった。

***


「ーー…はいでは南西の里に帰る皆さんはこの円の中に入ってくださーい。」

 街の大通りに描いた大きめの円に帰るエルフ達を集めると最後に我も入ってから【次元転移ジャンプ】を使う。
 数秒の暗転から景色が一変し目の前に飛び込んできたのは土煙であった。
 我の後方で何人か咳き込むのを聞きつつ土煙が晴れるとうっそうとした森の中で前方右斜め先に大木の丸太で作った堅牢な壁が見えた。
 それを見て一人が本当に帰ってこれた!と喜ぶ。一人が口に出すと続いて他のエルフ達も喜びを見せた。

「ほらほら、喜ぶのは後にして早く逃げなさい。では頼んだぞクーナよ。我はここで待機している。」

 腕を組んだ態勢で顔を隣にいるクーナに向けて言えば彼女は了承の返事をしてから先導を始めてくれた。
 後はクーナがこの里にいるエルフ達に事情を伝え保護をお願いして譲渡し戻ってきたら転移して帰る。朝から始まったこの作業もすでに三回目となった。
 一回目をイランダと一緒にドワーフ達を地下帝国の入り口である山の大門近くに転移させ、二回目と三回目はエルフ達を別々の里にクーナと一緒に送り届けた。
 パッと転移した先にすぐ故郷が見えたことに誰もが喜ぶ顔を見せてお礼を言ってくれる嬉しさに内心ウキウキしてしまいそうな自分がいた。
 しばらくして前回と同じくクーナ一人で戻ってきた。
 【大地の守り人】として短く話し合いを進めて里の者達を中に入れてあげるとクーナは歓迎を受けるところを次の任務があるからと断って戻ってきたのは壁越しに聞こえてきていた。
 二回目の時点で同じことが起きたので受けてもよかったのだぞという質問はもうしない。クーナが隣に立ったのを確認してから我は街へと帰還した。

「お帰りなさいませ旦那様。」
「うむ、次は獣人族だな。」

 待っていたゾドラに返してから視線を獣人族に向ける。さすがに光って黒い膜が現れては消えてから多少の間の後にまた光って膜が現れて二人だけ戻ってくるを三回も見せられると期待度が上がっているようで早く帰りたいとそわそわしている者が見えた。
 そして何よりこちらとしては素晴らしい縁も得られるのだ。

「人数が人数なだけに半々にして転移するからと伝えてあるはずだが決まったかアズベルト王子よ?」
「っ…今更あんたに王子呼ばわりされたくないんだが。」

 見下ろしながら呼んだアズベルトはそっぽを向いて返してくる。
 得られた情報から現在残っている獣人族の国は二つしかなくアズベルトはその一つ緑獣国家りょくじゅうこっかアースデイの王族だ。
 アースデイは半世紀前から存在する歴史ある国なので当然そこにも転移の魔方陣は設置してあるし改めてこれで我は王族を助けた者として恩も売れるというわけだ。
 アズベルトの態度にゾドラはまた不敬だと怒りを顔に出すのを宥めてあげながら返事を待てばアズベルトは前半に自分が入って行くと伝えてくれた。

「王子がいらっしゃるので今回は自分が隣に立たせていただきます。」

 名乗り出たセプトに了承の返事をすれば我は円に誘導する。獣人族の一グループが移動するのを見ながら隣で見ているアズベルトに思ったことを尋ねた。

「何故王族とあろう者があんなところにいたのだ?」
「別に話すことじゃない。人間に捕まってしまった。それだけだ。」

 アズベルトの返事にわかりやすい奴と思ってしまう。だいたいそう言ってくる時は自身の失態か罠に嵌められてというのが定番である。
 まあ王族のプライドか性格からか言いたくないのであれば話をここまでにしておく。
 グループが円に入ったのを確認してからアズベルトが入り最後に我とセプトが入る。今回は人数が多いので転移した先の反動は大きいだろうが合図してから転移した。
 お決まりの暗転からの土煙の後で遠くに見えてきたのはドラゴンでも入れそうなほどの大きさを誇る金属製の城門。
 これはアースデイが誇る物理だけでなく魔法防御も兼ね備えた大正門だ。
 離れていてもわかる大正門が見えた獣人族は大いに喜びアズベルトはきょとんとした信じられないという顔になっていた。

「後は任せたぞセプトよ。」
「はい。さ、アズベルト王子、皆を先導してくださいませ。」

 セプトの言葉で我に帰るアズベルトは返事をしてから獣人達を大正門へと誘導を始めた。
 最後尾にセプトが回ってアズベルト達が大正門に着くのを遠目に見る。するとここからゴゴゴゴッという重い音が聞こえてきてほんの少しだけ開いたのを確認した。
 こちらから筋みたいな縦線に見えるが向こうはきっと腕を広げた成人男性三人分くらいは開いているのだろうからスムーズに獣人達は中に入っていった。
 そして最後尾のセプトが扉の向こうにいる誰かに話している素振りを見せてから走って戻ってきた。

「大魔将軍。あなたのことは伏せて事情は伝えております。」
「うむ、では残りのグループも運んでやるとしよう。」

 セプトは気遣いに内心感謝しつつ続けて残りの獣人達も転移してあげた。
 ここはセプトが先導して獣人達を大正門へ通らせ彼は二度目の往復を終わらせる。するとセプトは我にあるものを渡してきた。

「これは、紋章か?」
「はい、アズベルト王子が渡しておけと。」

 ここまで世話になったせめてものお礼ということだろうか。セプトを通じてアズベルトが渡してきたのはチェーンが付いた貴金属製の紋章であった。
 セプトの解説によると通行証としても使えるらしいので倉庫に納めておくとしよう。
 これで獣人とドワーフで帰りたい者は全て帰し後は他の点在するエルフの中規模の里に帰す者のみだ。
 ただ朝食後の振り分けから始めてやった作業はすでに太陽が真上に近づいているのでそれはお昼過ぎあたりに行うとしよう。

「しかしまあ、さすがに四回も転移すると気疲れを感じるな。」
「ははは…普通あれだけの人数を転移させるとしたらエルフ二十人がかりで行う大魔法なんですけど。」

 しかも一回やったらその二十人は丸一日休息しないといけないくらいの疲労を受けるものだともセプトは苦笑いで話してくれた。
 こちらとしては伊達に魔界で戦って生き延びてきただけに魔力の値は次元が違うという自信があるのでそういうものかと笑って返してから街に帰還した。
 帰ってから残り者達に話を通し我は街の方に目を向ける。大通りには家具が置かれまともな家具と見た目だけで機能性のない家具に三種族が協力して分けていく。それが終わるといよいよあいつの出番だ。
 ドワーフの一人が手信号で誘導してあげるのはエルフが乗る先の戦いで得た量産型ゴーレム。
 そのゴーレムが荷馬車の荷台を引いてやってくると不必要な家具を持ち上げ載せていった。
 戦いの後で量産型ゴーレムを一体運んできてドワーフ達に渡せば彼らは興味津々に調べ解体までやってみせた。
 それから人間に対しての悪態を口に出しながら構造を理解するとすぐに操作してみせたのはさすがだと言えるだろう。今では魔力の高いエルフが簡単に操作出来るようたった一日で内部を改良させた謂わば量産型ゴーレム改を二体完成させた。
 出力が上昇しエルフが操ることで何も持ってない状態だと小走りからランニングレベルにまで動けるようになった。
 ちなみに現在三体目も着手しており多分夜には出来上がるかもしれない。
 だから我は残る側の者達への指示はとてもシンプルに街にある建物を好きに使って住むところを作り上げてみせよと伝えた。
 決して投げやりに指示したわけではない。いずれ城にある備蓄が尽きてしまうだろうから残る者達自身でしっかり衣食住を賄えるようにしてもらう為にである。その為の頼まれごとなら快く引き受けてあげるつもりだ。
 問題は素直に相談してくれるかが不安なのでそこは【大地の守り人】達に協力してもらうとしよう。

「大魔将軍様。自分はこれから本部へ連絡する為の文をしたためようと思いますので本人様からも何か一言いただけますか?」
「うむ、ならば我は人間の敵として存在する故に利害の一致と理解していただければこれ幸いである、と伝えてくれ。」

 自分の言葉と意思を伝えてあげるとセプトは感謝と了承を述べてから城に向かった。
 なのでこの後どうするかを考えると黒影島に行く前にエイム達に報告するべきだろう。もう一週間も帰らないのはパーサー達が心配しているかもしれない。
 というわけで早速連絡するとしよう。

『もしもしエイム。今話して……』
『おっっそぉ~い!シャッテン倒すのにどれだけ時間かかったんだよマスター!』

 連絡早々相棒に叱られてしまった。
 思い返せばここまでに一度もエイムと【念間話術トランシーバー】してなかったのは失敗だと言えよう。
 怒るエイムに我は事情を話してあげた。シャッテンとまだ会ってないことに不満を言ってきたが街を占拠したことについてエイムからさすがマスター!とすぐに機嫌を良くしてくれたので大黒林の状況を聞いてみた。
 我々が出発してからの一週間は特に大きなことはなく住居も船も順調に進んでおり船はいよいよ作業も終盤に差し掛かったとのことをエイムは話してくれた。

『それで?いつシャッテンに会いに行くのマスター?』
『ふむ、諸々の伝達と処理を考慮して明日には黒影島に向かうつもりだ。』

 何せ黒影島に向かえば次に街へ帰るのがいつになるかはわからない。翌日になるかもしれないし三日後になるかもしれないし最悪十日過ぎるかもしれない。
 ただこれだけは絶対に約束したい。
 決して我はシャッテンに負けるつもりはないということを。


***


 を済ませ我とゾドラは海岸にいた。
 事情を知ったセプト達は我が帰還することを願っていると応援の言葉を述べて防衛の任務を快く承ってくれた。
 海を隔てた先の遠くに見える陸地こそシャッテンが待っている黒影島だ。

「さてゾドラよ。お見送りはここまでだ。我が戻ってくるまで街にくる敵は全て追い払え。」
「はい、行ってらっしゃいませ旦那様。」

 一礼して返してくれたゾドラに頷いてから黒影島に向かって飛翔する。船より何倍も速く飛んで行けば体感十分じゅっぷんくらいで島の浜辺に到着した。
 着地してから我は空を確認する。出発前は曇天だったのにまるで島全体を照らすようにして雲に大きな穴が空いているのが確認できた。
 つまりということだ。

「…シャシャシャッ、ダイ魔将軍さまだ!?」
「大マ将軍様ガやってキタ!」

浜辺の岩影からシャドウ族のひそひそ声を聞きながら我は敢えて徒歩で進んでみる。シャドウ族は我の進む先にいないように影を伸ばして別の影へと移動しながら好き勝手に話すのを耳にしながら島を見る。
 半世紀前、シャッテンが黒影島もといシコクを侵略する前は島国として又貴族達のリゾート地としても栄えていた。
 我が今いるこの浜辺もそうであったが今はその面影とも言う瓦礫は影を作る場所として点在している。
 しばらく歩いて元施設だった廃墟に入ってみた時だった。
 太い柱の影が膨らむように動き出してから人形ひとがたに二つ形成される。そこからから目や口と顔が生まれ身体も競泳水着のようなスーツを着けたかのように色と形が現れる。
 男女の顔つきで分かれた二体は瞼を開いて我を見るとすぐに片膝を着いて跪いてみせた。

「ようこそ大魔将軍様。」
「あなた様のご来訪お待ちしておりました。」

 無表情の顔を向けて挨拶してくれた二体に我は出迎えご苦労と頷いて返せば二体は立ち上がる。人形を形成させ色まで出せることはシャドウ族において上位の実力者に位置する。
 おそらくシャッテンの幹部なのだろう二人をつい興味津々に観察してしまうと女性タイプの方が自分の身体の前に手を当てて隠す。

「シャッテン様以外にそのような行いはお止めください。」

 と指摘を受けてしまった。
 別に好奇の目で見たわけではないがとりあえず女性タイプに謝罪の言葉を述べた。
 そういえば始めてシャッテンと会った時も同じように観察してしまい無礼者と怒られたのを思い出した。
 もしかしたらシャドウ族にとっては羞恥の感覚なのかもしれない。

「それで、シャッテンは何処におる?我は彼女と話がしたくて参ったのだ。」
「今からご案内致します。ですがその前に……」

 男性タイプが言うと女性タイプが動いて我を挟むように立つ。すると男性タイプは両手を刃に、女性タイプは両足を槍のように形を変える。
 その意味を理解するとため息をついてみせてから肩幅に脚を開いて待った。
 直後に前後から攻撃を受け【漆黒の障壁】が発動する。一打目から二体は変形させた手足による高速の連撃を繰り出す。だが二体の攻撃は残念ながら障壁に防がれるばかりで我には届かなかった。
 どうやらステータスにおいて大差があるようだ。
 少しして二体は物理攻撃が無意味だと理解したのか正面に揃ってから闇属性魔法攻撃を仕掛けてきた。
 残念ながらそれも障壁で防いでみせると諦めてくれたのか中止し再び先ほどの立ち位置になってから片膝を着く。

「シャッテン様のご命令でしたのでどうかご理解くださいませ。」
「構わない。シャッテンも本物だと信じ難いからそう命じたのだろう?」

 我が気にしない様子で言ってあげると二体はお礼の言葉を伝えてから改めてシャッテンのいるところへと案内してくれた。
 わざと徒歩で案内してくれる二体の後を進みながらまた周りを見る。目的地に進行していくと我を見ようと影の中から様々な中位以上のシャドウ族が顔を見せてくる。

「シャッテンは五十年もこの島から出ようとはしなかったのか?」

 ただ歩くのはつまらないので二体にシャッテンのことを聞いてみればすんなり話してくれた。
 この世界が勇者達によって魔族の脅威から退けられてからもシャッテンは島に乗り込もうとする輩は片っ端から殲滅していったが何故か黒影島から出ようとはしなかったらしい。
 側近達からはまるで誰かを待つ為に動こうとしなかったようにも感じられたとか。
 話をしながらだと時の流れか足も進むのか見えたのはおそらくシコクにあった名残りなのであろう立派な城が見えてきた。

「あのお城にシャッテン様がおられます。」
「そうか。」

 目的地に着いて教えられると我は返事をしてから前に出て仁王立ちとなれば叫んでやった。

「シャッテンよ!大魔将軍が来てやったぞ!そんなところにいないで昔みたいに自ら姿を見せよ!」

 しっかり城に伝わるように叫んでやれば少ししてその城が
 何故割れたかと言えば石造りのはずの城が膨張して耐えきれずにだ。
 崩れる城の中から山の形にまで膨れた黒い存在を見せてから縦横に変形を繰り返すと徐々に圧縮して形を取っていきその姿を見せた。
 黒い手足に白いマーメイドタイプの胴体、青白い髪を上にまとめた気品ある顔立ちの女性タイプ。しかし手には黒い斧と槍を組み合わせたハルバードを携えていた。
 そして閉じた瞼を開いて地上にいる我を捉えると影女将シャッテンは高らかに笑ってみせた。

「オホホホホ!本当に生き返ったのね大魔将軍!また顔が見れてシャッテン感激しちゃいそうよ!」
「感動するのは勝手だが我は用があってここまで足を運んだのだ。シャッテンよ、貴様ならば世界中の情勢を知っているであろう。聞かせてもらうぞ?」

 宙に浮き上昇しながら情報を求めて言い放ってみた。
 案の定シャッテンは一度悩む素振りをわざと見せてから断ってきた。

「妾はお前に勝っても負けてもいない。妾から聞き出したいのであればあの時の決着を果たしておくれやす。」

 そう言ってハルバードを横に振ればシャッテンの真下に影が生まれ巨大な手の形に成ってみせる。
 始めから戦うつもりだったくせによく言うよ。
 だがこちらもそのつもりだったので盾を前に出してみせながら返してやろう。

「ふん、いいだろう。今度こそどちらが上か決めてやろうぞ!」

 こうして百と数十年ぶりの決闘が始まることになる。
 しかも前世の夏の風物詩である丸一日番組を越えるおよその戦いがだ。
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