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其の弐 指輪は待っている
一
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弥生も終わりにさしかかる頃、世間は桜色に染まりつつあった。そこここで顔を見せ始めた桜のつぼみに見送られた卒業生と、入れ替わるように大志を抱いて新たな学び舎に臨む新入生。出会いと別れを、鮮やかな桜の花が見守っている。
そしてここにも一人、新たな出会いを迎えようとしている少女がいた。ただ、こちらは桜色どころか、真っ青になっていたのだが。
「ない……」
小阪初名は青ざめた顔で、せっかく片づけた荷物を全部ひっくり返して、絶望していた。
「ない……確かに鞄に入れてたのに」
東京の実家から持ってきた荷物も、祖母から譲り受けたバッグも、すべてが部屋に散乱していた。子供の頃からずっと大事にしてきたお守りはあるのに、そこについていたストラップだけが、姿を消した。
先日失くしたと思っていたものの、何とか手元に戻って来た御守りは、ちょっと珍しいものだった。大阪梅田にある露天神社で授与されているスポーツ御守りというもので、各種スポーツの道具がストラップとしてついて、何種類も並ぶというものだった。初名のものには、プラスチックの竹刀のストラップがついていた。
正確には、ずっとつけていたせいで金具がゆるんでしまい、守り袋の中にしまっていた。だからこそ、それだけ無くなるとは思っていなかったし、無くなったことにもすぐに気付けなかった。
先日、梅田に行った時には確かにあった。出かける前に確認したのだから。
そしてあの日、電車を降りてから行った場所といえば、限られてくる。
あの日行った場所は、露天神社と、そこに繋がる大きな地下街と、そして……未だに存在を信じられない、あそこ。
「と、いうことは……」
できれば関わらない方がいい。そして考えたくないが、こういう時はなぜか最悪のことばかり想像してしまう。
「……仕方ない。行こう」
別にあそこにあるとは限らない。可能性を一つ一つ潰すためにも、初名は鞄をつかんで、立ち上がった。
そしてここにも一人、新たな出会いを迎えようとしている少女がいた。ただ、こちらは桜色どころか、真っ青になっていたのだが。
「ない……」
小阪初名は青ざめた顔で、せっかく片づけた荷物を全部ひっくり返して、絶望していた。
「ない……確かに鞄に入れてたのに」
東京の実家から持ってきた荷物も、祖母から譲り受けたバッグも、すべてが部屋に散乱していた。子供の頃からずっと大事にしてきたお守りはあるのに、そこについていたストラップだけが、姿を消した。
先日失くしたと思っていたものの、何とか手元に戻って来た御守りは、ちょっと珍しいものだった。大阪梅田にある露天神社で授与されているスポーツ御守りというもので、各種スポーツの道具がストラップとしてついて、何種類も並ぶというものだった。初名のものには、プラスチックの竹刀のストラップがついていた。
正確には、ずっとつけていたせいで金具がゆるんでしまい、守り袋の中にしまっていた。だからこそ、それだけ無くなるとは思っていなかったし、無くなったことにもすぐに気付けなかった。
先日、梅田に行った時には確かにあった。出かける前に確認したのだから。
そしてあの日、電車を降りてから行った場所といえば、限られてくる。
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できれば関わらない方がいい。そして考えたくないが、こういう時はなぜか最悪のことばかり想像してしまう。
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