魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

206『吃驚!!』

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 今アンナリーナは、いささかねっとりとした視線に晒されている。

 先日から “ ついてきている ”ハイ・コボルト・ソルジャーは、少しづつだがその距離を縮め、本来ならあるはずの群れの縄張りも無視して、ずっと追ってきているのだ。

「どういうつもりなんだろう……」

 休憩していた、見晴らしの良い平原では、丈の低い野草の中で伏せながら一定の距離を保っていた。
 そしてその夜の野営では、昨夜よりもさらに距離を縮めてアンナリーナたちを、いやアンナリーナを見ていた。
 食事を終えアンナリーナが馬車の中に入ってからはさらに近づいて、一晩中結界の周りをグルグルと回っていたのだ。


「なぁ、これは一体何だと思う?」

 イジと共に夜番に立っていたテオドールが問う。

「俺は……俺たちはどちらかと言えば亜人よりの魔獣だからよくわからないが、狼系など集団で群れる獣系魔獣の連中の習性から言えば……アレではないか」

「アレって……」

 わかったのか、わからないのか、よくわからない感想のテオドールと、まったく悪意を感じない、この困った追跡者の扱いに困ったイジ。
 そして、結界の周りをグルグル回っているハイ・コボルト・ソルジャー。
 テオドールたちの焚き火以外、まったくの闇夜の中、時折情けない遠吠えがあったのを、拡張された空間の寝室で眠っていたアンナリーナは知るよしもなかった。


 翌朝、アンナリーナが起きて馬車から出てくると、静かな騒動が起きていた。

「どうしたの?」

「いや……まぁ、見てもらった方が早いな。
 まだ誰も手をつけてない」

 テオドールに促されて結界に近づくと、その外の違和感に気づいた。

「あれ? これって……?」

 ダンジョンの中では時折、貴重な薬草が発見されることがある。
 基本ダンジョンに季節はないので、地上では考えられない時に思っても見ないものに出会えることがある。

 今、アンナリーナの前には、普段高山でしかお目にかかれない貴重な薬草が、やはり特別な状態……花を咲かせたものが花束と言える量で、そこに置かれていた。

「え……っと、これを持ってきたのは、やっぱり?」

 遠目には、かなり離れたところから、それでも気になるのだろう、野草の中にピクピク動く耳が見えている。

「貢ぎ物か?」

 小声で、そっと囁くようにテオドールがセトに確認している。
 黙って頷いたセトは、かなり戸惑っているようだ。
 そんななか、アンナリーナは結界から一歩踏み出し、地面にそっと置かれている花束……レイザン草を手にした。

「ありがとう、嬉しいよ」

 さほど大きな声ではなかったが、ハイ・コボルト・ソルジャーには十分だった。
 草むらの中で立派な尻尾がブンブン振られて、喜びを表している。
 そして唐突に逃げていった。

「このレイザン草はとても貴重なんだよ。傷まないうちにインベントリに入れておこう……
 あの犬さんにもお礼しなくっちゃね」

 この時、誰もが今夜起こりうる事件を、想像すら出来なかった。



 アンナリーナの提案で始まったのは、オークの串焼きパーティーだ。
 昼の間にアンナリーナに話を通していたので、オーク肉にはたっぷりとタレがしみている。
 それを野外用バーベキューコンロでどんどんと焼いていくのだ。
 その匂いは結界から漏れる事はないが、遠目からでも何か特別な事をしているのは見て取れる。
 あちらこちらから集まってくる魔獣を目立たないよう片付けていたのは、件のハイ・コボルト・ソルジャーだった。

 様子を見ながら機会を伺っていたアンナリーナはおもむろに、結界を通り抜けた。
 その手には山盛りの串焼きの乗った皿を持ち、無防備に佇んだ。
 その姿に、ハイ・コボルト・ソルジャーがギョッとして、慌ててかけよってくる。
 そして、アンナリーナめがけて集まってくる魔獣を、それが例え自身と同じ種族であったとしても、躊躇いなく屠っていく。

 そして、どれだけの時間が経ったのだろう。
 あたりに、ハイ・コボルト・ソルジャーの気配しか感じられなくなって、アンナリーナは歩み出した。
 ゆっくり、ゆっくりと、ハイ・コボルト・ソルジャーに近づき皿を差し出して言う。

「昨日はお花をどうもありがとう。
 これはお礼です。
 串から外して食べてね」

 腹ばいになったまま、そろりそろりと近づいてくる、ハイ・コボルト・ソルジャーが、チラリチラリと上目遣いで見上げてくる。
 もう少しで手が届く、そこまで近づいて、彼はピタリと動きを止めた。
 そしてアンナリーナとハイ・コボルト・ソルジャーの視線が絡み合った瞬間、アンナリーナの頭の中に声が響いた。

『ハイ・コボルト・ソルジャーが仲間になりたがっています。
 YES/NO?』

「何、これー!?」

 アンナリーナ、びっくりである。

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