魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

165『シャルメンタルとの遣り取りと市場』

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 アンナリーナはこの地方の地図を要求した。シャルメンタルはすぐに出してきて、机の上に広げる。

「これは本当に思いつきなんですが……
 この学研都市の周辺の村に襲撃犯が潜んでいる可能性はないですか?」

「村に……?」

「ええ、それも村の中では目立たない、普段は村人として生活しているのではないかと。それなら拉致された人たちの行方がわからなくなっているのも納得できるし」

 シャルメンタルは真っ青になった。
 もし、それが正解ならば大変な事だ。

「一度、信頼の置ける人員に監視してもらうしかないですね。
 拉致された人たちを奴隷商に売り渡す場合も動きがあるわけですから……
 えっと、こちらの国には【誘拐屋】と言った盗賊の一種がありますか?

「誘拐屋?」

「私の育った国には盗賊に近い集団で【誘拐屋】と言う、乗り合い馬車などを襲って乗客を拉致し、身代金と引き換えに目的地まで送り届ける、といった職種があります。
 身代金を払えなければ奴隷商に売られるのですが」

「それはなんとも……
 このあたりでは聞かない話だな」

「でも彼らは殺傷したり、あんなに荒っぽく馬車を壊したり、物品を盗んだりしないんです。
 今回は隊商ですし、やはり盗賊ですね」

 シャルメンタルは驚愕していた。
 この学研都市の間近で、もしそのような事が起きていたとするならば、大変な事だ。

「と、とにかくこの話は領主に報告しよう。リーナ嬢、今日はありがとう」

「いえ、こちらこそありがとうございました」

 どうやら上手く、シャルメンタルの意識を逸らす事に成功したようだ。
 このままでは、先日大学院を訪ねた時のように興味本位に執着されて足留めされていたかもしれないが、どうやら解放されそうだ。

「あの、もう私の容疑は晴れましたよね?旅を続けて良いでしょうか?」

「もちろんだ、リーナ嬢」

 言質を取ったアンナリーナはそのまま大学院を後にした。
 先ほどの話に一切加わらなかったテオドールと、町を散策する。


「しかしリーナ、今回もまた、ややこしい事に巻き込まれたもんだな」

 まるでトラブルホイホイのような言い方に、アンナリーナは頬を膨らませる。
 そんな仕草も可愛いと、テオドールは内心で鼻の下を伸ばす。

「まあ、出発出来そうで良かったじゃん。ちょっとここの市場を覗いて、いいものがあったら買い込んで帰ろうか」

 学研都市の市は大変に賑わっているようだ。
 アンナリーナたちが今歩いている場所は、まだ市場の通りではないのだが、すでに熱気が感じられる。
 売り子の呼び込みが聞こえてきた。

 角を曲がると、その先には賑やかな市場が広がっていた。
 どこの市でもそうなのだが、まずは非食品……例えば衣料品や雑貨屋が並んでいる。
 中には自身が作った、買い手にはお得な品も多く、値切りながらの買い物も楽しい。


「うえっ!? うそ、うそ、うそ~?」

 そぞろ歩いていたアンナリーナが、突然叫んで走り出した。

「あ、こらリーナ、待て! 走るな!」

 こうなったアンナリーナは聞く耳を持たない。
 共に駆け出したテオドールは、やっと追いついたアンナリーナの様子を訝しげに見た。

 ある一軒の店の前で、かぶりつくようにして見入っているアンナリーナ。
 一体何を見ているのかと言うと。

「鍋?」

「そーだよ、熊さん!
 これはホーロー鍋だよ!!」

 目をキラキラさせて、手にした鍋に頬ずりをせんばかりに興奮したアンナリーナに、もはやテオドールに打つ手はない。

「初めて見たよ!
 ねぇ、お兄さん。これはあなたが作ったの?」

 鉄鍋よりもお値段の張るホーロー鍋はあまり売れていない。
 だがアンナリーナは即決した。

「これ、全部下さい!」

「リーナ! おまえ、何を言ってる!? 本気か?」

「マジだよ、マジ。
 熊さん、この鍋はいいんだよ。
 熱伝導率が良くてね、シチューやジャムなんかを作るのに最適なんだよ。
 ほら、うちは料理を鍋ごとしまっちゃうでしょ? 鍋はいくつあってもいいんだよ。
 あ、お兄さん。やっぱり全部はダメだよね?」

 売り子をしていた青年は、アンナリーナが言った『全部下さい』を聞き間違いかと思った。そしてアンナリーナたちの遣り取りを呆然として見ていた。

「いえ、はい、大丈夫です。
 あの、本当に全部?」

「そちらさえ良ければ。
 ああ、このボウルやトレーもいいわね。洗面器やピッチャーもあるの?
 キャセロール、もっと欲しいわ!」

 アンナリーナの暴走は止まらない。

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