魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

61『熊さんとダンジョンへ』

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 ギリギリと音を立てるほど強く歯を噛み締め、アンナリーナの両肩を掴んでいるテオドールが目を座らせている。
 さすがに怖くなったアンナリーナが、口許を震わせながらも、笑顔を見せる。

「あれ? おかしいな……塞いだはずなのに」

 触れてみて、たしかに血まみれだが、もう傷はない。

「【洗浄】ほら、熊さん。
 もう傷はないでしょう?」

「俺が言ってるのは、怪我をしたって事だ! まったくわかってんのか?
 こんなんじゃ、とてもひとりで王都になんか出せないわ!」

 この話題に繋げられると、アンナリーナは弱い。

「うう~ 熊さんごめんなさい」

 ひたすら謝るしかない。

「一体、何でそんな怪我したんだ?
 今日はギルドに行くって言ってたよな?」

 溜息をひとつ吐いて、アンナリーナはギルドであった事を話しはじめた。


「ミルシュカの野郎、ぶっ殺してやる」

「熊さんが言うと洒落になんないよ」

 それでね、とアンナリーナは続ける。

「なんかむしゃくしゃするから、ダンジョン行って、いつものようにお肉狩ってたの。
 そしたら何度目かに突然、衝撃波が来て……気づいたらコレ」

 今はもう、血も傷痕もない頬に触れる。

「完全にイレギュラーだったんだよ。
 どういう法則で出てくるのかわからないけど、あれはヤバいわ」

 アンナリーナは真剣に、この事を報告すべきか考えている。



「本当に、本当に知らないよ?」

 結局テオドールに押し切られる事になったアンナリーナは渋い顔で睨みつけている。

 テオドールに、デラガルサのダンジョンへの同行を強要され、学院受験の取り消しまで持ち出されて、アンナリーナは渋々頷いた。
 本当に渋々だ。
 何故ならば今まで、従魔たちは一緒に転移していたがヒトは初めてなのである。

「じゃあ、行くね」

 今回は、後々報告の義務が生まれる可能性がある為、一度ダンジョンの外に転移して、入り口での登録をして入宮する事にした。
 もちろんテオドールはフル装備だ。


 酩酊感も何もなく、呆気ないほどの転移の後、アンナリーナとテオドール、そしてセトは昼なお暗い森の中に佇んでいた。

「おお! 無事に転移できたよ熊さん。何事もなく良かったね!」

 キョロキョロとあたりを見回すテオドールの腕に、アンナリーナは絡みつく。

「こんな形で実験のような形になってしまってごめんね。
 でもこれで、これからは一緒にダンジョン行けるね」

 アンナリーナは嬉しそうだ。



「お連れ様が一緒とは珍しいですね」

 入り口の詰所から兵士長が出てきて、ギルドカードを改める。

「そうですね。
 過保護な保護者なんですよ」

 手を繋いで、ルンタッタと中に入って行くふたり。見かけは微笑ましいがその会話は恐ろしい。

「熊さん、今【身体強化】かけさせてもらったから。2階層に降りたら一気に突っ走るよ」

 それから5階層までは【威圧】で一切の戦闘をせず、6、7階層は呆気なく退けた。
 テオドールはこの間、ほとんど何もしていない。
 そして、他の冒険者が一泊してようやく辿り着くこの場に、わずか3刻でやって来た。

「次は、ちょっと強めのミノタウロス……熊さん、殺ってみる?」

 ちょうど木陰から、戦斧を担いだミノタウロスが1匹、姿を現した。
 テオドールが一歩足を踏み出すと、戦斧を構えたミノタウロスがこちらに向かってくる。

 第一撃は互角だった。
 激突に火花を散らし、受け流すと互いに距離を取る。
 最初にそれを縮めたのはテオドールだ。
 ミノタウロスの一撃を受けると、そのまま今度は上方に向かって、戦斧を振り上げる。
 その刃はミノタウロスを逆袈裟に切り裂き、テオドールの記念すべき第一戦は、圧倒的な勝利に終わった。

「わ~ やったー!熊さんかっこいい!!」

 近づいたアンナリーナが【血抜き】してインベントリにしまい込む。

「いつもはこの階層にテントを張ってお肉を調達するんだけどね」

 そそくさと9階層に続く階段に向かい、そこを降りていった。


「ここが例の9階層。
 とりあえずまだ、階段から出ないで」

 先ほどは、階段にいても衝撃波にやられたのだが。
 様子を見ながら一歩足を踏み出すと、途端に村の中の動きが始まる。

「ああ、今回は普通ね」

【探索】で、他の冒険者がいないか確認する。
【結界】で、村全体を覆う。
【サファケイト】目に入る範囲のミノタウロスやオークがバタバタと倒れていく。その様をテオドールは目を見開いて見ていた。

「この階は足を踏み入れた途端、オークたちが動き出すの。
 その数、10や20できかないよ。
 だから【広範囲殲滅魔法】がいるわけ。今のは【サファケイト】と言って結界内の空気を無くし、酸欠にして屠る魔法。
 あと【血抜き】して、一丁上がり」

 なんと恐ろしい魔法だろうか。
 テオドールは震撼した。

「あとはお肉と、持ってた斧を回収して終わり。これを延々と繰り返してたの」

 その後、試しに何度か繰り返し、上位種が出てきたところで同じように処理し、今日の探索を終える。
 あとは、行きよりもスピードを上げダンジョン入り口に戻ると、さっさとデラガルサを後にし、テオドールの部屋に戻ってきた。

 部屋の主は蹲って、唸っている。

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