魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

文字の大きさ
108 / 577
第三章

1『領都ハンネケイナ』

しおりを挟む
以前と同じパターンで薬師だと確認され、一瞬で態度が変わる。
 もう慣れたとはいえ、くすぐったく感じるのはしょうがない。

「えーっと、そんな大層なものじゃないですし。
 ……あっ! 通行料、幾らですか?
 いやその前に、私、従魔持ちなんですよ。登録しなきゃ駄目ですよね?」

「薬師殿、先ほどはご無礼致しました。従魔の登録は当方でも受け付けております、が……?」

 召喚獣と違って、従魔は常に同行しているはずだが、目につくところにそれらしき魔獣はいない。

「ああ、ごめんなさい。
 セト、アマル、出ておいで」

 ローブの合わせを開くと、特徴的な黄色のアイテムバッグが覗いた。
 兵士がつい、バッグに視線を囚われていると、首のあたりから30㎝ほどのトカゲと、内ポケットから見たこともないヒラヒラしたものが現れた。
 両方とも、トカゲは眉間に、ヒラヒラはお椀をひっくり返したような天辺に、文字のようなものを組み合わせた印が浮かんでいる。
 だが、従魔と言われて構えていた兵士は脱力する。

「……ペット?」

「はい、こっちはリザードのセト。
 この子はジェリーフィッシュのアマルです」

「リザードの仔か……
 こんなチビなら危険はないでしょう。
 こっちのジェリーフィッシュ?は観賞用?」

 フヨフヨと浮いていたアマルが、アンナリーナの頭の上に止まる。
 長い触手の一本がアンナリーナの頬を撫でた。

「契約印があるから魔導具の首輪は免除になります。
 ……薬師殿、下世話な話で悪いのですが、通行料銀貨2枚と、登録料2匹で金貨2枚、従魔の通行料、同じく2匹で金貨1枚……合計金貨3枚と銀貨2枚でお願いします」

 ずいぶんな金額になってしまい、恐縮している兵士に、アンナリーナは別に気にした様子もなく硬貨を渡した。

「確かに頂きました。
 薬師殿、これからどちらに?」

「冒険者登録をするためにギルドに行こうかと。
 あ、ここには商業ギルドもあるんですか?」

「この、領都ハンネケイナはこの国で2番目に大きな都市です。
 もちろんありますよ」

 それから彼は、2つのギルドの違いを説明してくれて、魔獣に関するものはすべて冒険者ギルドに卸す事を教えてくれた。
 最後に宿について聞いてみる。

「それならギルドから出てすぐの道を右にまっすぐいくと【緑の牧場亭】という宿があります。あそこなら女の子1人でも安心でしょう」

 それにペットにしか見えない、アンナリーナの従魔たちを連れていても問題ないだろうと言う。
 アンナリーナの入国の書類と従魔登録の書類を揃えて、兵士は手を差し出してきた。

「ようこそ薬師殿。
 このハルメトリア国、ギィ辺境伯領、領都ハンネケイナに」

 握手をして立ち上がる。
 さて、これから本日のメインイベント、ギルドでの冒険者登録だ。


 冒険者ギルドは有事に対応するため、どこの町でも中央門の近くにある。
 ここも、兵士が指差した先に特徴的な建物があった。

「では薬師殿、お気をつけて。
 ギルドでカードを作られたら、一度見せにきて下さいね」

「わかりました、色々ありがとう」

 手を振って門を後にする。
 いくらも歩かないうちに冒険者ギルドの表玄関に到着した。

「ラノベでよくあるウエスタンドアじゃないのね」

 普通に両開きの扉……それもオークでも通れるのではないかという大きさの扉を押し開いた。
 途端に中の喧騒が聞こえてくる。
 アンナリーナが前世で、ファンタジー小説などで仕入れた知識では、朝夕が混む筈だったのだが、昼過ぎの今も随分賑わっていた。

 ぐるりと眼差しを巡らせて、周りを見回すと、これもまたテンプレの酒場が全体の半分ほどを占めている。
 ほとんどの喧騒がここを源としていて、今も昼日中からエールを飲んで盛り上がっていた。

 次は正面のカウンターに目を移す。
 そこには3人の女性事務員が次々と冒険者たちをさばいていた。
 他に【新規受付】【依頼受付】や【鑑定】などの窓口がある。
 アンナリーナは無意識に【悪意察知】と【危機察知】を発動させていた。

「次の方どうぞ……あら、お嬢さん依頼かしら」

 その受付嬢を見た途端【危機察知】がビリビリし始める。
 悪意ではないのだが、どちらにしても良い感情ではなさそうだ。

「いえ、冒険者登録をしに来たのですが」

 アンナリーナのその言葉を聞いた途端、彼女の顔になんとも言えない仄暗いものが浮かんだ。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

処理中です...