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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 廃駅と煙草、劣等感の発見
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ホットケーキを食べ終わった途端に何故だか俺は居心地の悪さを感じてしまう。
撫子も概史も悪くねぇんだよな。多分だけど、俺の方が参っちまったんだ。
コイツらはなんだかんだで“真っ当”なんだよ。
散々セックスしまくってるって言えばそりゃそうなんだが────────いや、そういう訳じゃなくてさ。
なんて言うんだろうな?まあ、メンタルが真っ当なんだよ。病んでないっていうかさ。
パッと見は破天荒で滅茶苦茶に見えるんだけどさ、肝心なとこは至極真っ当なんだよ。概史ってヤツは。
撫子もきっとそうだろう。コイツらはお似合いなんだよ。DNAレベルでさ。
そう、俺だけなんだよ。どこかイカれてて───────しかも、悪い意味で、と来たもんだ──────それでいて始終ナヨナヨクヨクヨしてるんだからな。湿っぽいったらありゃしねぇじゃねぇか。
そんなこんなで俺は───────すっかり参っちまってたんだな。俺はここに居るべきじゃないって気付いたんだ。遅いんだけどさ。
ちょっとバイト入ってたの忘れてたわ、とかなんとか適当に告げて俺は概史の家を出る。
そうなんスか、と概史はいつもの調子で答えた。
まあ別に───────良くも悪くも俺は空気なんだよ。あの家ではさ。
俺が居たから邪魔ってことも無いんだ。俺が居ても居なくてもアイツらはあんな感じなんだからな。
それにさ、俺が邪魔してたらセックス出来ないとかそういう事もねぇんだ。あいつら、マジで四六時中一緒にいるからな。
別に不自由って訳でもねぇんだ。それはよくわかってるからさ。
俺が部屋を出ると後ろでさ、撫子が人形の手を指で持ってこう、こっちに向かって手を振らせてんだ。なんか笑っちまうよな。
本気であの人形が気に入ってんだろうな。まあ、可愛いもんじゃねぇか。
概史の家を出た俺はどこに行くでもなく少しブラブラしようと思ったんだ。まあ、土曜の午前中だしな。
家に帰っても誰も居ねぇし、かと言って行くアテもないんだ。ちょっと頭の中を整理したいからさ。少しばかり歩いていれば気も落ち着いて来るだろ?
それで駅前の道に出た俺は暫く歩いてたんだ。誰とも出会わない。車は行き交ってるけど特に知り合いと会うって事も起こんないんだな。
そしたらどういう訳か無性に──────煙草を吸いたくなって来たんだ。いや、言い訳するとさ、最近は減らしてたんだぜ?本当なんだよ。
けどさ、土曜の午前中の大通り───────随分過疎っていてかつてのような賑やかさは無い寂れた路地なんだけど─────────そこで煙草をふかす訳にはいかなかったんだよな。まあ、誰かに見つかったら厄介でさ。
それで俺は例の無人の廃駅に向かうことにしたんだ。まあ、いつもの場所ではあるし、他に誰も居ないからな。
背の高さまで伸びた草が人を寄せ付けない独特のオーラを放っていた。寧ろパワーアップしているまである。
錆びた看板がこの街の衰退具合をありありと物語っているようで多少イライラする。
そこで俺はいつものようにくたびれたベンチに腰掛けて胸ポケットから煙草の箱を取り出した。
少し考えに耽りたかったんだ。何しろ、混乱しちまうような事ばっかり立て続けに起こってたしな。
その瞬間なんだ。目の前にそれが飛び込んで来たのは。
吊るしたロープに首を通し、今から全体重を掛けようとしている人物。
────────────その女子生徒には見覚えがあった。
撫子も概史も悪くねぇんだよな。多分だけど、俺の方が参っちまったんだ。
コイツらはなんだかんだで“真っ当”なんだよ。
散々セックスしまくってるって言えばそりゃそうなんだが────────いや、そういう訳じゃなくてさ。
なんて言うんだろうな?まあ、メンタルが真っ当なんだよ。病んでないっていうかさ。
パッと見は破天荒で滅茶苦茶に見えるんだけどさ、肝心なとこは至極真っ当なんだよ。概史ってヤツは。
撫子もきっとそうだろう。コイツらはお似合いなんだよ。DNAレベルでさ。
そう、俺だけなんだよ。どこかイカれてて───────しかも、悪い意味で、と来たもんだ──────それでいて始終ナヨナヨクヨクヨしてるんだからな。湿っぽいったらありゃしねぇじゃねぇか。
そんなこんなで俺は───────すっかり参っちまってたんだな。俺はここに居るべきじゃないって気付いたんだ。遅いんだけどさ。
ちょっとバイト入ってたの忘れてたわ、とかなんとか適当に告げて俺は概史の家を出る。
そうなんスか、と概史はいつもの調子で答えた。
まあ別に───────良くも悪くも俺は空気なんだよ。あの家ではさ。
俺が居たから邪魔ってことも無いんだ。俺が居ても居なくてもアイツらはあんな感じなんだからな。
それにさ、俺が邪魔してたらセックス出来ないとかそういう事もねぇんだ。あいつら、マジで四六時中一緒にいるからな。
別に不自由って訳でもねぇんだ。それはよくわかってるからさ。
俺が部屋を出ると後ろでさ、撫子が人形の手を指で持ってこう、こっちに向かって手を振らせてんだ。なんか笑っちまうよな。
本気であの人形が気に入ってんだろうな。まあ、可愛いもんじゃねぇか。
概史の家を出た俺はどこに行くでもなく少しブラブラしようと思ったんだ。まあ、土曜の午前中だしな。
家に帰っても誰も居ねぇし、かと言って行くアテもないんだ。ちょっと頭の中を整理したいからさ。少しばかり歩いていれば気も落ち着いて来るだろ?
それで駅前の道に出た俺は暫く歩いてたんだ。誰とも出会わない。車は行き交ってるけど特に知り合いと会うって事も起こんないんだな。
そしたらどういう訳か無性に──────煙草を吸いたくなって来たんだ。いや、言い訳するとさ、最近は減らしてたんだぜ?本当なんだよ。
けどさ、土曜の午前中の大通り───────随分過疎っていてかつてのような賑やかさは無い寂れた路地なんだけど─────────そこで煙草をふかす訳にはいかなかったんだよな。まあ、誰かに見つかったら厄介でさ。
それで俺は例の無人の廃駅に向かうことにしたんだ。まあ、いつもの場所ではあるし、他に誰も居ないからな。
背の高さまで伸びた草が人を寄せ付けない独特のオーラを放っていた。寧ろパワーアップしているまである。
錆びた看板がこの街の衰退具合をありありと物語っているようで多少イライラする。
そこで俺はいつものようにくたびれたベンチに腰掛けて胸ポケットから煙草の箱を取り出した。
少し考えに耽りたかったんだ。何しろ、混乱しちまうような事ばっかり立て続けに起こってたしな。
その瞬間なんだ。目の前にそれが飛び込んで来たのは。
吊るしたロープに首を通し、今から全体重を掛けようとしている人物。
────────────その女子生徒には見覚えがあった。
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