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ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』 土曜日の朝、濡れた制服のスカート
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水森唯。
俺と同じクラスの女子。
その水森唯が────────今まさに、木に引っ掛けたロープに首を通そうとしている。
信じられねぇだろ?俺だってそうだ。普通に考えてあり得ねぇんだからな、こんなことはさ。
「ちょ……!何やってんだよ!?」
意味がわからず、咄嗟に俺は水森唯の身体目掛けてタックルしてしまう。
「……っ!?」
踏み台を蹴り、宙にぶら下がる寸前だった水森は悲鳴を上げた。
音を立てて水森の身体は地面に叩きつけられる。
混乱した様子の水森唯は真っ赤な顔で地面に蹲り、そのままゲホゲホと咳き込んだ。
「なあ、おい─────────」
声を掛けようとした俺はその異常な様子に気付く。
水森の制服のスカートは濡れていた。周囲の地面にはポタポタと雫が落ちているのが見て取れる。
特定の部位だけ濡れている────────それだけで察するには十分だった。
恐らく失禁しているんだろう。
どう声を掛けていいものか分からず、俺はただ戸惑う。
咳混んでいた水森の顔色は真っ赤から土色に変化していた。
相当マズい状況だろう。俺にもそれくらいはわかる。それくらいヤバい状態だった。
本当に大丈夫なのか。救急車を呼ぶか?
俺は戸惑いながらも水森の様子を窺う。
「なあ、水森────────」
思い切って声を掛けるも水森は無反応だった。
死んだ魚のように澱んだ眼からは生命力のようなものが一切感じられない。
鼻水と涎、涙が一度に垂れ流しになっている顔はぐしゃぐしゃだ。
呼吸もどこかしら不安定だ。全く大丈夫ではない。
どうしよう。
とりあえず生きてはいるみたいだが─────────
俺は少し考えた後、立ち上がって廃駅から少し出た場所の自販機に向かった。
スポーツドリンクを買い、へたり込んでいる水森にハンカチと共に渡す。
「ほら……これ飲めるか?」
水森は顔を上げない。辛うじて生きてはいるが依然混乱しているんだろう。
俺はペットボトルの蓋を開け、水森の口元に近付けた。
「いいからさ、ちょっと飲んでみろよ」
俺がペットボトルを傾けてやると水森は一口、それを飲んだ。
冷たいスポーツドリンクが喉に流し込まれ、水森の身体は少しピクリと動く。
改めて水森の右手にペットボトルを握らせてやると今度は自分からそれを飲んだ。
よほど酷い状態だったんだろう。今まで何も飲み食いしてなかったのかもしれない。
物凄い勢いで水森は500mlのペットボトルを飲み干した。
土色だった顔色は少し青白い程度に戻っていた。少しはマシになったんだろうか。
しかし、一体なんだって────────────真面目で努力家の水森が首を括ろうとしていたのか────────俺には全く見当がつかなかった。
俺と同じクラスの女子。
その水森唯が────────今まさに、木に引っ掛けたロープに首を通そうとしている。
信じられねぇだろ?俺だってそうだ。普通に考えてあり得ねぇんだからな、こんなことはさ。
「ちょ……!何やってんだよ!?」
意味がわからず、咄嗟に俺は水森唯の身体目掛けてタックルしてしまう。
「……っ!?」
踏み台を蹴り、宙にぶら下がる寸前だった水森は悲鳴を上げた。
音を立てて水森の身体は地面に叩きつけられる。
混乱した様子の水森唯は真っ赤な顔で地面に蹲り、そのままゲホゲホと咳き込んだ。
「なあ、おい─────────」
声を掛けようとした俺はその異常な様子に気付く。
水森の制服のスカートは濡れていた。周囲の地面にはポタポタと雫が落ちているのが見て取れる。
特定の部位だけ濡れている────────それだけで察するには十分だった。
恐らく失禁しているんだろう。
どう声を掛けていいものか分からず、俺はただ戸惑う。
咳混んでいた水森の顔色は真っ赤から土色に変化していた。
相当マズい状況だろう。俺にもそれくらいはわかる。それくらいヤバい状態だった。
本当に大丈夫なのか。救急車を呼ぶか?
俺は戸惑いながらも水森の様子を窺う。
「なあ、水森────────」
思い切って声を掛けるも水森は無反応だった。
死んだ魚のように澱んだ眼からは生命力のようなものが一切感じられない。
鼻水と涎、涙が一度に垂れ流しになっている顔はぐしゃぐしゃだ。
呼吸もどこかしら不安定だ。全く大丈夫ではない。
どうしよう。
とりあえず生きてはいるみたいだが─────────
俺は少し考えた後、立ち上がって廃駅から少し出た場所の自販機に向かった。
スポーツドリンクを買い、へたり込んでいる水森にハンカチと共に渡す。
「ほら……これ飲めるか?」
水森は顔を上げない。辛うじて生きてはいるが依然混乱しているんだろう。
俺はペットボトルの蓋を開け、水森の口元に近付けた。
「いいからさ、ちょっと飲んでみろよ」
俺がペットボトルを傾けてやると水森は一口、それを飲んだ。
冷たいスポーツドリンクが喉に流し込まれ、水森の身体は少しピクリと動く。
改めて水森の右手にペットボトルを握らせてやると今度は自分からそれを飲んだ。
よほど酷い状態だったんだろう。今まで何も飲み食いしてなかったのかもしれない。
物凄い勢いで水森は500mlのペットボトルを飲み干した。
土色だった顔色は少し青白い程度に戻っていた。少しはマシになったんだろうか。
しかし、一体なんだって────────────真面目で努力家の水森が首を括ろうとしていたのか────────俺には全く見当がつかなかった。
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