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ep.9.5
ep9.5『夢千夜』 “かりそめの花嫁” 第十三夜 悪魔に魅入られた花嫁
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俺と小泉は赤い絨毯の上にそのまま転がっていた。
身体はまだ熱いが心は虚脱状態だった。
まるで魂ごと抜けてしまったかのような、何もかも燃え尽きてしまった感覚。
横の小泉をチラリと見る。
その瞳に映っているのは神ではなく────────黒い服を着た悪魔だった。
悪魔に魅入られたのか?
或いは、既にその毒牙に掛けられた後なのか。
どうだろうな?
だってその悪魔は俺なんだから。
小泉の瞳に映った俺の姿を凝視する。
ドレスを乱した花嫁は視線を逸らすようなこともなく、ただ茫然としながら何かを見ている。
何故だかわからない。
どうしてだか俺は───────目の前の小泉のことがたまらなく可愛く思えてきてしまう。
なんでだろうな?
普通さ、こういうのって賢者タイムって言うんじゃねぇの?
ついさっきまで必死で腰振っててもさ、終わった瞬間にフッと冷静になって目の前の女のことがウザくなるとかってよく聞くじゃん?
なんか違うんだよな。
逆なんだよ。不思議なことにさ。
なんかさ、どうしてだろうな。小泉ってさ、全然美人じゃないんだ。知ってるだろうと思うけどさ。まあ、わかるだろ?
そう、美人とか可愛いとかそういうタイプじゃないんだ。
だけど。
今、目の前の小泉に─────────俺は堪らなく惹かれてしまっていた。
このタイミングってのが最高に意味不明なんだけどさ。
俺は呆然としている小泉に声を掛ける。
「……あの……その、悪ィ、結構痛かったよな?」
ごめん、と俺が小さく言うと小泉は首を振った。
怒ってないんだろうか。
いつもの小泉なら怒ってるよな?
大丈夫、とだけ小さく呟いた小泉は再び黙り込む。
その頬の赤みはまだ引いていない。
ああ、なんか可愛いなあ、と思った俺は自然に──────────そのまま唇を重ねていた。
大聖堂の鐘の音が再び狂ったように鳴り始めた。
ぶっ壊れているのはこの世界なのか?それとも俺達?
────────いや、やっぱその両方だろうな。
身体はまだ熱いが心は虚脱状態だった。
まるで魂ごと抜けてしまったかのような、何もかも燃え尽きてしまった感覚。
横の小泉をチラリと見る。
その瞳に映っているのは神ではなく────────黒い服を着た悪魔だった。
悪魔に魅入られたのか?
或いは、既にその毒牙に掛けられた後なのか。
どうだろうな?
だってその悪魔は俺なんだから。
小泉の瞳に映った俺の姿を凝視する。
ドレスを乱した花嫁は視線を逸らすようなこともなく、ただ茫然としながら何かを見ている。
何故だかわからない。
どうしてだか俺は───────目の前の小泉のことがたまらなく可愛く思えてきてしまう。
なんでだろうな?
普通さ、こういうのって賢者タイムって言うんじゃねぇの?
ついさっきまで必死で腰振っててもさ、終わった瞬間にフッと冷静になって目の前の女のことがウザくなるとかってよく聞くじゃん?
なんか違うんだよな。
逆なんだよ。不思議なことにさ。
なんかさ、どうしてだろうな。小泉ってさ、全然美人じゃないんだ。知ってるだろうと思うけどさ。まあ、わかるだろ?
そう、美人とか可愛いとかそういうタイプじゃないんだ。
だけど。
今、目の前の小泉に─────────俺は堪らなく惹かれてしまっていた。
このタイミングってのが最高に意味不明なんだけどさ。
俺は呆然としている小泉に声を掛ける。
「……あの……その、悪ィ、結構痛かったよな?」
ごめん、と俺が小さく言うと小泉は首を振った。
怒ってないんだろうか。
いつもの小泉なら怒ってるよな?
大丈夫、とだけ小さく呟いた小泉は再び黙り込む。
その頬の赤みはまだ引いていない。
ああ、なんか可愛いなあ、と思った俺は自然に──────────そのまま唇を重ねていた。
大聖堂の鐘の音が再び狂ったように鳴り始めた。
ぶっ壊れているのはこの世界なのか?それとも俺達?
────────いや、やっぱその両方だろうな。
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