862 / 1,153
ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 THIS IS THE KNIGHT
しおりを挟む
バイクの音が段々と大きくなっているような気がする。
こっち方面に来てるのか?
夜中に幹線道路を走ったり、峠 (でもないただの山道)を攻めたりってのはこの近辺の族の定番の行動パターンだが─────────
この時間帯にこんな辺鄙な場所に来るってのは珍しいな。
「なんだろうな?何やってんだ?」
俺が独り言のように呟くと、概史が茶化すようにこう反応する。
「新人研修でもやってるとかじゃないスかww夜中の時間帯じゃ練習やりにくいとかww」
新人て、と俺が思わず反射的に口にすると、概史はやや真面目な表情でこう答えた。
「以前にもそういう話が出てたと思うんスけどww昔に比べてメンバーが減ってるらしいじゃないスか。今は2チームくらいしか残ってないって」
そっか、と適当な相槌を打ちながら俺は2本目の煙草に火を点ける。
「あwwでもww“伝説”の存在の話は健在っスねww未だに語り継がれてますしww」
伝説か。
「確か、『羽威刄闇(ワイバーン)』てチームの総長だったらしいよな、何年か前に滅茶苦茶に暴れてそこら中で恐れられてたとかなんとか」
数年程前の話なんだが───────今はそういう話は全く聞かなくなった。
「そうそうww『紅蓮の内藤』って名前でしたね、確かwww」
ネーミングだけだとそこまでって感じじゃないっスよねwwと概史は吹き出したように笑う。
「でもさ、聞いた話じゃさ、以前に7チームあった族のうち5チームはこの総長がぶっ潰したって──────」
元々、少子化で人材不足だったのにさ、業界にトドメ刺しちゃってるじゃんか、と俺が言うと概史がまたゲラゲラと笑った。
「走り屋業界壊滅wwwテラ破壊の神ww」
あれ、と俺はふと疑問を浮かべた。
「生き残りのチームのうち、破壊の神が居た方のチームが『羽威刄闇(ワイバーン)』だろ?じゃあさ」
もう片方のチームはなんて名前だったっけ、と俺が口にすると同時に───────大きなエンジン音が複数、けたたましく周囲に響く。
「……え?」
気付いた瞬間にはもう、俺達は十数台のバイクに取り囲まれていた。
俺と概史は思わず顔を見合わせた。
ガラも頭も悪そうな兄ちゃんが俺と概史の顔を交互に見る。
「おい!餓鬼どもも羽威刄闇(ワイバーン)のメンバーか?」
え、いや、と俺はそれを否定しようとするが、上手く伝わらないようだ。
まあそうだよな。
俺はと言えば、いつもの学ランに赤シャツ、ベルトには例のケースのチェーンがぶら下がっている。
おまけにしっかり喫煙中と来たもんだ。
今の俺の風貌はどっからどう見ても田舎ヤンキーそのものだろう。
暴走族の一員と間違われても仕方のない状況であることは俺にも理解できた。
しかし。
概史はどうだ?全く暴走族っぽくない普通の男子小学生じゃねぇか?
今だって着てるのはアニメイトで予約してまで買ったって言ってたキャラ物のパーカーだし────────
しかし、改めてそのデザインを見た俺は固まってしまう。
概史がハマっているというアニメのパーカー。
そこには、『天上天下唯我独尊』『暴走族卍愚連隊』の文字がデカデカとプリントされている。
おいおいおいおい。
これって誤解されないか!?
確か概史が熱中してるアニメって、ヤンキー系ジャンルだとは聞いてたが─────────(ちなみに俺はまだ見てない)
どうしよう。俺ら、なんかガチモンの兄ちゃんに誤解されてる?!
流行りのアニメを一通り視聴してるだけのミーハーな男子小学生なんだが!?
「あ、いや、違うんです。俺らはごく普通の一般人で────────」
そう言いかけた瞬間、鉄パイプが空を切って俺の肩先を掠めた。
「……っ!?」
は!?
いきなり殴りかかってくるとか気は確かか!?
「っせぇんだよ!!ゴチャゴチャ言ってねぇで内藤出せや!?」
居るんだろうが、そこによ!というイカれた兄ちゃんの言ってる意味は何一つわからない。
「いや、ここに内藤なんて人は居ませんけど──────」
俺は極力、冷静であることを心掛けながら丁寧に説明しようと試みる。
なんなんだろう、急すぎじゃねぇか。
人違いにしては乱暴でせっかち過ぎだし。
慌てん坊が過ぎる。
俺がそう答えたにも関わらず、イカれた兄ちゃんは俺の胸ぐらを掴んだ。
「あんだろ!ここにコレがよぉ!?居るじゃねぇか!?」
コレって?何の話?
誰のことを言ってるんだ?
「いやあの、家を間違われてませんか?……」
胸倉を掴まれたまま、それでも俺は必死に誤解を解こうと説得を試みる。
「ハァ!?餓鬼がゴチャゴチャと小賢しいんだよ!?馬鹿にしてんのか!?『紅蓮の内藤』出せってんだよ!」
しかし、シラフなのか元からなのかイカれた兄ちゃんは聞く耳を持たず、俺に殴りかかろうとする。
殴られる。
そう思った瞬間だった。
[パシッ!]という小気味良い音が周囲に響いた。
「え……!?」
殴られる瞬間、思わず目を瞑ってしまっていた俺は恐る恐る瞼を上げる。
俺の後ろに立っていたのは、鈴木先輩だった。
「……あ!鈴木先輩!」
混乱状態の俺は、救いの神の登場に思わず声を上げる。
イカれた兄ちゃんの拳を素手で受け止めた鈴木先輩は静かにこう言った。
「───────────ワシが『紅蓮の内藤』じゃが」
こっち方面に来てるのか?
夜中に幹線道路を走ったり、峠 (でもないただの山道)を攻めたりってのはこの近辺の族の定番の行動パターンだが─────────
この時間帯にこんな辺鄙な場所に来るってのは珍しいな。
「なんだろうな?何やってんだ?」
俺が独り言のように呟くと、概史が茶化すようにこう反応する。
「新人研修でもやってるとかじゃないスかww夜中の時間帯じゃ練習やりにくいとかww」
新人て、と俺が思わず反射的に口にすると、概史はやや真面目な表情でこう答えた。
「以前にもそういう話が出てたと思うんスけどww昔に比べてメンバーが減ってるらしいじゃないスか。今は2チームくらいしか残ってないって」
そっか、と適当な相槌を打ちながら俺は2本目の煙草に火を点ける。
「あwwでもww“伝説”の存在の話は健在っスねww未だに語り継がれてますしww」
伝説か。
「確か、『羽威刄闇(ワイバーン)』てチームの総長だったらしいよな、何年か前に滅茶苦茶に暴れてそこら中で恐れられてたとかなんとか」
数年程前の話なんだが───────今はそういう話は全く聞かなくなった。
「そうそうww『紅蓮の内藤』って名前でしたね、確かwww」
ネーミングだけだとそこまでって感じじゃないっスよねwwと概史は吹き出したように笑う。
「でもさ、聞いた話じゃさ、以前に7チームあった族のうち5チームはこの総長がぶっ潰したって──────」
元々、少子化で人材不足だったのにさ、業界にトドメ刺しちゃってるじゃんか、と俺が言うと概史がまたゲラゲラと笑った。
「走り屋業界壊滅wwwテラ破壊の神ww」
あれ、と俺はふと疑問を浮かべた。
「生き残りのチームのうち、破壊の神が居た方のチームが『羽威刄闇(ワイバーン)』だろ?じゃあさ」
もう片方のチームはなんて名前だったっけ、と俺が口にすると同時に───────大きなエンジン音が複数、けたたましく周囲に響く。
「……え?」
気付いた瞬間にはもう、俺達は十数台のバイクに取り囲まれていた。
俺と概史は思わず顔を見合わせた。
ガラも頭も悪そうな兄ちゃんが俺と概史の顔を交互に見る。
「おい!餓鬼どもも羽威刄闇(ワイバーン)のメンバーか?」
え、いや、と俺はそれを否定しようとするが、上手く伝わらないようだ。
まあそうだよな。
俺はと言えば、いつもの学ランに赤シャツ、ベルトには例のケースのチェーンがぶら下がっている。
おまけにしっかり喫煙中と来たもんだ。
今の俺の風貌はどっからどう見ても田舎ヤンキーそのものだろう。
暴走族の一員と間違われても仕方のない状況であることは俺にも理解できた。
しかし。
概史はどうだ?全く暴走族っぽくない普通の男子小学生じゃねぇか?
今だって着てるのはアニメイトで予約してまで買ったって言ってたキャラ物のパーカーだし────────
しかし、改めてそのデザインを見た俺は固まってしまう。
概史がハマっているというアニメのパーカー。
そこには、『天上天下唯我独尊』『暴走族卍愚連隊』の文字がデカデカとプリントされている。
おいおいおいおい。
これって誤解されないか!?
確か概史が熱中してるアニメって、ヤンキー系ジャンルだとは聞いてたが─────────(ちなみに俺はまだ見てない)
どうしよう。俺ら、なんかガチモンの兄ちゃんに誤解されてる?!
流行りのアニメを一通り視聴してるだけのミーハーな男子小学生なんだが!?
「あ、いや、違うんです。俺らはごく普通の一般人で────────」
そう言いかけた瞬間、鉄パイプが空を切って俺の肩先を掠めた。
「……っ!?」
は!?
いきなり殴りかかってくるとか気は確かか!?
「っせぇんだよ!!ゴチャゴチャ言ってねぇで内藤出せや!?」
居るんだろうが、そこによ!というイカれた兄ちゃんの言ってる意味は何一つわからない。
「いや、ここに内藤なんて人は居ませんけど──────」
俺は極力、冷静であることを心掛けながら丁寧に説明しようと試みる。
なんなんだろう、急すぎじゃねぇか。
人違いにしては乱暴でせっかち過ぎだし。
慌てん坊が過ぎる。
俺がそう答えたにも関わらず、イカれた兄ちゃんは俺の胸ぐらを掴んだ。
「あんだろ!ここにコレがよぉ!?居るじゃねぇか!?」
コレって?何の話?
誰のことを言ってるんだ?
「いやあの、家を間違われてませんか?……」
胸倉を掴まれたまま、それでも俺は必死に誤解を解こうと説得を試みる。
「ハァ!?餓鬼がゴチャゴチャと小賢しいんだよ!?馬鹿にしてんのか!?『紅蓮の内藤』出せってんだよ!」
しかし、シラフなのか元からなのかイカれた兄ちゃんは聞く耳を持たず、俺に殴りかかろうとする。
殴られる。
そう思った瞬間だった。
[パシッ!]という小気味良い音が周囲に響いた。
「え……!?」
殴られる瞬間、思わず目を瞑ってしまっていた俺は恐る恐る瞼を上げる。
俺の後ろに立っていたのは、鈴木先輩だった。
「……あ!鈴木先輩!」
混乱状態の俺は、救いの神の登場に思わず声を上げる。
イカれた兄ちゃんの拳を素手で受け止めた鈴木先輩は静かにこう言った。
「───────────ワシが『紅蓮の内藤』じゃが」
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる