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ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 BABY IN CAR
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車内ではBAD HOPの[Rusty Knife]が流れていた。
俺も好きな曲だ。
ステレオ回りもあれこれ弄ってんだろうか。かなりの重低音が後部座席にも響いてくる。
ウーハーとかも付けてそうだな、とぼんやりと思いながら俺は鈴木先輩の話の続きに耳を傾けた。
「元々、爺さんの遺産を予想外に相続したとか言うとってのう。それでベルファイアを勢いで一括で買ったって流れじゃったらしゅうて───────」
ワシんとこに二人目が生まれた言うたら『子どもが多かったら大きい車がいいんじゃねぇの』って話になって、という鈴木先輩の話に佑ニーサンも感心する。
「へぇ~。すっごいタイミングだねぇ~。鈴木君て昔から目上の人に可愛がられるキャラだったし~」
その人に目にかけて貰ってたんだねぇ、と佑ニーサンが言うと概史が割って入る。
「それってww佑ニーサンもそうじゃないですかww」
まあそうじゃのう、と鈴木先輩は少し照れた様子で後頭部を掻いた。
「そういう流れでトントン拍子にベルファイアを格安で譲って貰えることになってのう。前に乗っとったワゴンRを下取りに出して──────後はちょっとバイト増やしてどうにか金も用意出来たんじゃ」
なるほどなあ。なんかスゲェな、鈴木先輩って。
「ん~。今、軽のワンボックスカーの中古価格って上がってるらしいもんねぇ~なんか[わらしべ長者]みたい~」
まあ、じゃけど……と鈴木先輩はこう続けた。
「安う譲って貰うたとは言え、ワシには分不相応な車じゃしのう。後ろの凹みもまだよう修理に出しとらんのんじゃ」
「えwww凹みってどんくらい酷いんスかww」
見せてくださいよwwwと概史がそれに反応する。
車はハザードを焚いて路肩に停まった。
「ええけど……結構デカいで?」
鈴木先輩と俺達は車から降り、車の後ろに回った。
ベルファイアのバックドアの中央部分には『BABY IN CAR』のステッカーの種類違いのものが5枚ほど連なって貼られていた。
「ちょwww貼りすぎwww」
どんだけ赤ちゃん居るんすかwwwと概史が腹を抱えて笑い始めた。
「え~?どうしたのこれ~?」
佑ニーサンが驚いたようにステッカーを凝視する。
「凹みを修理出来るような余裕がのうてのう。苦肉の策じゃ」
鈴木先輩はそろりとステッカーの端を剥がしてみせる。
ステッカーの下にオレンジ色の何かが見えた。
「うちのチビが遊んどった小麦粘土を貰うてのう。凹みを埋めとるんじゃ」
それを誤魔化す為に上からステッカー貼っとるんじゃけど、という鈴木先輩の説明を聞いて俺達は思わず吹き出す。
「ちょwww小麦www粘土でwww車の修理www」
概史が涙目で大爆笑している。
「いや~。普通はその発想にならないよねぇ~」
佑ニーサンも感心しながらステッカーを眺めている。
「……まあ、でも──────言われないとわかんないレベルで気付かないですよ、これ」
俺がそう言うと鈴木先輩はガハハと豪快に笑った。
「まあええじゃろ!最終的にはこんだけ赤ん坊も増えるじゃろうし!」
俺も好きな曲だ。
ステレオ回りもあれこれ弄ってんだろうか。かなりの重低音が後部座席にも響いてくる。
ウーハーとかも付けてそうだな、とぼんやりと思いながら俺は鈴木先輩の話の続きに耳を傾けた。
「元々、爺さんの遺産を予想外に相続したとか言うとってのう。それでベルファイアを勢いで一括で買ったって流れじゃったらしゅうて───────」
ワシんとこに二人目が生まれた言うたら『子どもが多かったら大きい車がいいんじゃねぇの』って話になって、という鈴木先輩の話に佑ニーサンも感心する。
「へぇ~。すっごいタイミングだねぇ~。鈴木君て昔から目上の人に可愛がられるキャラだったし~」
その人に目にかけて貰ってたんだねぇ、と佑ニーサンが言うと概史が割って入る。
「それってww佑ニーサンもそうじゃないですかww」
まあそうじゃのう、と鈴木先輩は少し照れた様子で後頭部を掻いた。
「そういう流れでトントン拍子にベルファイアを格安で譲って貰えることになってのう。前に乗っとったワゴンRを下取りに出して──────後はちょっとバイト増やしてどうにか金も用意出来たんじゃ」
なるほどなあ。なんかスゲェな、鈴木先輩って。
「ん~。今、軽のワンボックスカーの中古価格って上がってるらしいもんねぇ~なんか[わらしべ長者]みたい~」
まあ、じゃけど……と鈴木先輩はこう続けた。
「安う譲って貰うたとは言え、ワシには分不相応な車じゃしのう。後ろの凹みもまだよう修理に出しとらんのんじゃ」
「えwww凹みってどんくらい酷いんスかww」
見せてくださいよwwwと概史がそれに反応する。
車はハザードを焚いて路肩に停まった。
「ええけど……結構デカいで?」
鈴木先輩と俺達は車から降り、車の後ろに回った。
ベルファイアのバックドアの中央部分には『BABY IN CAR』のステッカーの種類違いのものが5枚ほど連なって貼られていた。
「ちょwww貼りすぎwww」
どんだけ赤ちゃん居るんすかwwwと概史が腹を抱えて笑い始めた。
「え~?どうしたのこれ~?」
佑ニーサンが驚いたようにステッカーを凝視する。
「凹みを修理出来るような余裕がのうてのう。苦肉の策じゃ」
鈴木先輩はそろりとステッカーの端を剥がしてみせる。
ステッカーの下にオレンジ色の何かが見えた。
「うちのチビが遊んどった小麦粘土を貰うてのう。凹みを埋めとるんじゃ」
それを誤魔化す為に上からステッカー貼っとるんじゃけど、という鈴木先輩の説明を聞いて俺達は思わず吹き出す。
「ちょwww小麦www粘土でwww車の修理www」
概史が涙目で大爆笑している。
「いや~。普通はその発想にならないよねぇ~」
佑ニーサンも感心しながらステッカーを眺めている。
「……まあ、でも──────言われないとわかんないレベルで気付かないですよ、これ」
俺がそう言うと鈴木先輩はガハハと豪快に笑った。
「まあええじゃろ!最終的にはこんだけ赤ん坊も増えるじゃろうし!」
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