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ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 奥さまは17歳
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おいおいおい……
本気だろうか。
俺は改めて『BABY IN CAR』のステッカーが5枚ほど貼られたベルファイアを見た。
これって確か7人か8人乗りだよな。
だとしたら、子どもが5人居ても全員乗れるんだろうけど────────
今のご時世、それってなかなか厳しんじゃないだろうか。
テレビで大家族のドキュメンタリーみたいな番組を見かけたことはあるが、ああいうのって相当稼いでないと厳しくないか?
「わかるwwいいなあwwwオレもwww早くデカい車ほしいしww」
先輩マジで勝ち組っスねwwと概史が羨望の眼差しで鈴木先輩を見つめる。
コイツは鈴木先輩をガチでリスペクトしてんだろう。
概史の理想とする将来像ってのが鈴木先輩と近いんだろうな。
俺達は再び車に乗り込み、店に向かって出発した。
「そう言えば今日はドコに行くんですか?」
俺がそう尋ねると鈴木先輩は思い出したように膝を打った。
「おお、そうじゃ。言うの忘れとったんじゃけどのう」
財布を家に忘れたけぇ、ちょっと寄らせて貰うわ、と言いながら鈴木先輩はウインカーを出して車線を変更する。
「そっか~。確か、今住んでるのはこの辺って言ってたねぇ~」
暫く走った後に車は川沿いの小さな家の前で停まった。
「ここが鈴木先輩の家なんですか?」
少し古くはある──────築40年くらいの戸建て。
バブル以前に建てられたファミリー世帯向けの田舎の戸建てといった印象の住まいだ。
アパートみたいなとこに住んでるイメージだったのでなんだか意外だ。
家の前にはアンパンマンの幼児用の乗り物や小さなキックボードが置いてあり、賑やかな様子が見てとれた。
不意に家の中から誰かが出てくる。
「……あら。有斗(あると)くん?」
今日は出掛けるんじゃなかったの、と鈴木先輩に声を掛けてきた人物を見た俺は絶句した。
とんでもない美少女がそこには立っていた。
スラリとした華奢な身体は雪のように真っ白な肌で───────その髪は淡い花のような薄紫だ。
長い睫毛の奥、吸い込まれそうな瞳はビー玉のようにこちらを見ている。
まるで妖精じゃないか。
いや、妖精というよりミューズ……女神とでもいうべきだろうか。
この世のものとは思えない神々しい存在に俺達は圧倒される。
「……あ、佑先輩。お久しぶりです」
佑ニーサンに気付いた美少女は微笑みながら小さくお辞儀をする。
その仕草がまたとてつもなく可愛らしい。
絶句している俺と概史に向かって鈴木先輩がこう紹介し始めた。
「おお。言うとらんかったのう。こっちは嫁の八宇じゃ」
初めまして、とニコリと笑う姿に俺と概史はただ言葉を失った。
アイドル─────いや、そんなレベルはとうに超えている。
今テレビに出ているアイドルグループのセンターとタメを張れる、或いはそれ以上のレベルなんじゃないか?!
圧倒的な美少女のオーラにただ俺達は気圧されていた。
なんでこんな100年に一度レベルの逸材がこの限界地方都市の更に僻地に居るんだ!?
「コイツが後輩の佐藤で、そっちの小さいのがフーミンの弟の概史じゃ」
鈴木先輩が俺達を美少女に紹介する。
俺と概史は強張った表情のまま、会釈をするのが精一杯だった。
「有斗(あると)くんがいつもお世話になってます」
美少女が微笑みながら俺たちに会釈をする。
脳味噌が爆発しそうだった。
可愛すぎるとかそんな次元を超えている。
あり得ないレベルの美少女を目の前にして頭が真っ白になっている俺達に対し───────鈴木先輩はさらりとこう言い放った。
「実は今、三人目が腹の中に居るんじゃ」
※作中では昭和95年(2020年)の世界を描いています。
本気だろうか。
俺は改めて『BABY IN CAR』のステッカーが5枚ほど貼られたベルファイアを見た。
これって確か7人か8人乗りだよな。
だとしたら、子どもが5人居ても全員乗れるんだろうけど────────
今のご時世、それってなかなか厳しんじゃないだろうか。
テレビで大家族のドキュメンタリーみたいな番組を見かけたことはあるが、ああいうのって相当稼いでないと厳しくないか?
「わかるwwいいなあwwwオレもwww早くデカい車ほしいしww」
先輩マジで勝ち組っスねwwと概史が羨望の眼差しで鈴木先輩を見つめる。
コイツは鈴木先輩をガチでリスペクトしてんだろう。
概史の理想とする将来像ってのが鈴木先輩と近いんだろうな。
俺達は再び車に乗り込み、店に向かって出発した。
「そう言えば今日はドコに行くんですか?」
俺がそう尋ねると鈴木先輩は思い出したように膝を打った。
「おお、そうじゃ。言うの忘れとったんじゃけどのう」
財布を家に忘れたけぇ、ちょっと寄らせて貰うわ、と言いながら鈴木先輩はウインカーを出して車線を変更する。
「そっか~。確か、今住んでるのはこの辺って言ってたねぇ~」
暫く走った後に車は川沿いの小さな家の前で停まった。
「ここが鈴木先輩の家なんですか?」
少し古くはある──────築40年くらいの戸建て。
バブル以前に建てられたファミリー世帯向けの田舎の戸建てといった印象の住まいだ。
アパートみたいなとこに住んでるイメージだったのでなんだか意外だ。
家の前にはアンパンマンの幼児用の乗り物や小さなキックボードが置いてあり、賑やかな様子が見てとれた。
不意に家の中から誰かが出てくる。
「……あら。有斗(あると)くん?」
今日は出掛けるんじゃなかったの、と鈴木先輩に声を掛けてきた人物を見た俺は絶句した。
とんでもない美少女がそこには立っていた。
スラリとした華奢な身体は雪のように真っ白な肌で───────その髪は淡い花のような薄紫だ。
長い睫毛の奥、吸い込まれそうな瞳はビー玉のようにこちらを見ている。
まるで妖精じゃないか。
いや、妖精というよりミューズ……女神とでもいうべきだろうか。
この世のものとは思えない神々しい存在に俺達は圧倒される。
「……あ、佑先輩。お久しぶりです」
佑ニーサンに気付いた美少女は微笑みながら小さくお辞儀をする。
その仕草がまたとてつもなく可愛らしい。
絶句している俺と概史に向かって鈴木先輩がこう紹介し始めた。
「おお。言うとらんかったのう。こっちは嫁の八宇じゃ」
初めまして、とニコリと笑う姿に俺と概史はただ言葉を失った。
アイドル─────いや、そんなレベルはとうに超えている。
今テレビに出ているアイドルグループのセンターとタメを張れる、或いはそれ以上のレベルなんじゃないか?!
圧倒的な美少女のオーラにただ俺達は気圧されていた。
なんでこんな100年に一度レベルの逸材がこの限界地方都市の更に僻地に居るんだ!?
「コイツが後輩の佐藤で、そっちの小さいのがフーミンの弟の概史じゃ」
鈴木先輩が俺達を美少女に紹介する。
俺と概史は強張った表情のまま、会釈をするのが精一杯だった。
「有斗(あると)くんがいつもお世話になってます」
美少女が微笑みながら俺たちに会釈をする。
脳味噌が爆発しそうだった。
可愛すぎるとかそんな次元を超えている。
あり得ないレベルの美少女を目の前にして頭が真っ白になっている俺達に対し───────鈴木先輩はさらりとこう言い放った。
「実は今、三人目が腹の中に居るんじゃ」
※作中では昭和95年(2020年)の世界を描いています。
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