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ep9
ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第三夜
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「なんだよ、模擬挙式って」
俺がそう聞き返すと小泉は必死な様子でこう答えた。
「要は────────見学客に見せるデモンストレーションみたいなものだ」
いつも花嫁役をやっている社員さんの身内に不幸があったらしくて、と小泉は続けた。
「人手が足りないって事で急遽、打診されたんだよ」
高校時代の先輩が結婚式場に就職してて───────それでその、と小泉はややテンパった調子で説明する。
『普段から巫女やメイドやってるなら花嫁衣装も抵抗ないでしょ』みたいな理由で私に白羽の矢が立ってしまったらしくて、と小泉は真っ赤な顔のまま経緯を述べた。
なるほど、急遽先輩から頼まれて断れなかったってことか。
ん?
けど、デモンストレーションて?
「なにそれ?実演販売って意味か??」
全くピンと来ないの俺は更に聞き返す。
「実演販売───────まあ、ざっくり言えばそうだろうな。『当結婚式場で式を挙げるとこんな雰囲気になります』っていうのを客に体感して貰う意図ではあるし」
結婚式場の実演販売か。
「ほら、この雑誌の別冊付録なんだが────── 一冊丸々が『ブライダルフェア』特集なんだ」
小泉が冊子を俺に渡してくる。
「ん?ブライダルフェアって?」
俺は冊子をパラパラと捲った。
付箋の付いたページには、市内中心部の駅裏にある大きな結婚式場の写真が掲載されている。
「ブライダルフェアってのは見学会みたいなものだ。これから式を挙げたいカップルが実際に式場に行って施設を見たり、料理を食べたりする─────」
俺はページに記載されたある文言に釘付けになった。
「『フルコース試食会』!?」
ああ、と小泉は頷いた。
「結婚式を挙げるに当たって、披露宴の料理は重要なポイントだからな。当然、試食もある」
ケチった料理だったり、不味い料理だと新郎新婦の評判までガタ落ちになるからな。大事な事なんだ、と小泉は続けた。
「しかしここの式場の料理は美味いと評判だぞ。料理長が目の前でフランベしてくれる本格派なんだ」
フランベって?と俺がまた聞き返すと小泉は冊子の次のページを開いた。
「ほら、ここに載ってるだろう?肉や魚を焼く際に最後に酒を掛けて──────一気に炎が上がって迫力がある。これがまた好評らしいんだ」
俺は写真に目を落とす。
なんか凄そうな料理長の持つフライパンから炎の柱が上がっている。
「なにこれ!!かっけー!!!!めっちゃ美味そう!!」
俺は思わず声を上げてしまう。
高級そうなステーキの写真も添えられている。
本格フレンチとか、そういう感じなんだろうか。
「スゲェんだな、ブライダル見学会って。でもこういうのって高いんだろ?」
参加費って三万くらい取られるのか、と俺が聞くと小泉は首を振った。
「いや、無料だ」
ハァ!?
「え!?タダって事はないだろ!?だってフルコースだぜ!?」
俺はもう一度冊子のページに視線を移し、結婚式場の外観の写真を見た。
この衰退した地方都市にはそぐわないような───────サクラダ・ファミリアのような荘厳な外観。
「このエリアって壁に囲まれてて見たこと無かったけどさ、めっちゃゴージャスでここだけ外国みたいじゃねぇか」
こんな豪華な場所で高級フレンチフルコース食って無料はウソだろ?と俺が言うと小泉は再び首を振った。
「いや、見学会は概ねどこも無料だぞ。結婚式ってのは総額で300~400万はザラな世界だからな。見学は無料でもペイ出来てるんだろう」
小泉はそう言って冊子にある他の結婚式場のページを指で示す。
確かに、どのページの結婚式場も大半が見学会は無料だった。(試食だけ2000円という会場も一部あったが)
無料どころか、最後にアンケートに答えればお土産やプレゼントが貰える会場まである。
お城みたいな場所でフルコース食えて、手土産まで貰えて至れり尽せりじゃねぇか。
「何これ!!めっちゃスゲェじゃん!?」
初めて知った『結婚式場の見学』という概念に俺はすっかりエキサイトしてしまう。
「なあセンセェ!!俺も連れてってくれよ!!!そのブライダルフェアとやらに!!!」
俺がそう聞き返すと小泉は必死な様子でこう答えた。
「要は────────見学客に見せるデモンストレーションみたいなものだ」
いつも花嫁役をやっている社員さんの身内に不幸があったらしくて、と小泉は続けた。
「人手が足りないって事で急遽、打診されたんだよ」
高校時代の先輩が結婚式場に就職してて───────それでその、と小泉はややテンパった調子で説明する。
『普段から巫女やメイドやってるなら花嫁衣装も抵抗ないでしょ』みたいな理由で私に白羽の矢が立ってしまったらしくて、と小泉は真っ赤な顔のまま経緯を述べた。
なるほど、急遽先輩から頼まれて断れなかったってことか。
ん?
けど、デモンストレーションて?
「なにそれ?実演販売って意味か??」
全くピンと来ないの俺は更に聞き返す。
「実演販売───────まあ、ざっくり言えばそうだろうな。『当結婚式場で式を挙げるとこんな雰囲気になります』っていうのを客に体感して貰う意図ではあるし」
結婚式場の実演販売か。
「ほら、この雑誌の別冊付録なんだが────── 一冊丸々が『ブライダルフェア』特集なんだ」
小泉が冊子を俺に渡してくる。
「ん?ブライダルフェアって?」
俺は冊子をパラパラと捲った。
付箋の付いたページには、市内中心部の駅裏にある大きな結婚式場の写真が掲載されている。
「ブライダルフェアってのは見学会みたいなものだ。これから式を挙げたいカップルが実際に式場に行って施設を見たり、料理を食べたりする─────」
俺はページに記載されたある文言に釘付けになった。
「『フルコース試食会』!?」
ああ、と小泉は頷いた。
「結婚式を挙げるに当たって、披露宴の料理は重要なポイントだからな。当然、試食もある」
ケチった料理だったり、不味い料理だと新郎新婦の評判までガタ落ちになるからな。大事な事なんだ、と小泉は続けた。
「しかしここの式場の料理は美味いと評判だぞ。料理長が目の前でフランベしてくれる本格派なんだ」
フランベって?と俺がまた聞き返すと小泉は冊子の次のページを開いた。
「ほら、ここに載ってるだろう?肉や魚を焼く際に最後に酒を掛けて──────一気に炎が上がって迫力がある。これがまた好評らしいんだ」
俺は写真に目を落とす。
なんか凄そうな料理長の持つフライパンから炎の柱が上がっている。
「なにこれ!!かっけー!!!!めっちゃ美味そう!!」
俺は思わず声を上げてしまう。
高級そうなステーキの写真も添えられている。
本格フレンチとか、そういう感じなんだろうか。
「スゲェんだな、ブライダル見学会って。でもこういうのって高いんだろ?」
参加費って三万くらい取られるのか、と俺が聞くと小泉は首を振った。
「いや、無料だ」
ハァ!?
「え!?タダって事はないだろ!?だってフルコースだぜ!?」
俺はもう一度冊子のページに視線を移し、結婚式場の外観の写真を見た。
この衰退した地方都市にはそぐわないような───────サクラダ・ファミリアのような荘厳な外観。
「このエリアって壁に囲まれてて見たこと無かったけどさ、めっちゃゴージャスでここだけ外国みたいじゃねぇか」
こんな豪華な場所で高級フレンチフルコース食って無料はウソだろ?と俺が言うと小泉は再び首を振った。
「いや、見学会は概ねどこも無料だぞ。結婚式ってのは総額で300~400万はザラな世界だからな。見学は無料でもペイ出来てるんだろう」
小泉はそう言って冊子にある他の結婚式場のページを指で示す。
確かに、どのページの結婚式場も大半が見学会は無料だった。(試食だけ2000円という会場も一部あったが)
無料どころか、最後にアンケートに答えればお土産やプレゼントが貰える会場まである。
お城みたいな場所でフルコース食えて、手土産まで貰えて至れり尽せりじゃねぇか。
「何これ!!めっちゃスゲェじゃん!?」
初めて知った『結婚式場の見学』という概念に俺はすっかりエキサイトしてしまう。
「なあセンセェ!!俺も連れてってくれよ!!!そのブライダルフェアとやらに!!!」
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