755 / 1,060
ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 免罪酒と蝕まれた身体
しおりを挟む
「は……?マジなのか!?」
今まで春崎の話を話し半分に聞いていた俺は途端に恐ろしくなった。
だってさ、俺もそうだけど────────みんな日常会話の中で『死ぬ』『死ね』『死にそう』とかフツーに使うだろ?
『お前マジ死ねよ』とかツッコミ感覚で普通に言うじゃん?『期末のテスト範囲とか全然見てねぇし勉強とかしてねぇしマジで死んだわ』とかってのも意識せずに言ってるしさ。
でも、今回の件コレはそうじゃねぇんだ。
マジで────────リアルの世界で人が死ぬ。
目の前に積まれた医薬品・薬学関係の書籍。
佐々木のことだ。情報から得られた何らかの根拠や確信があるんだろう。
「……じゃあ─────── 一條は嘘や冗談じゃなくて本当に死ぬ可能性があるっていうんだな?」
俺がそう訊ねると佐々木はノートパソコンを開き、検索サイトにアクセスした。
「そうね。それと、さっき聞いた“免罪酒”っていうキーワードを打ち込んでみたんだけど────────」
見事に何もヒットしないの、と佐々木は検索結果を指で指す。
確かに、そこに並べられているのは『免罪符』に関する記述やページばかりだった。
それってどういう意味なんだよ、という俺の質問に対し佐々木は少し考え込むような素振りを見せながら答える。
「考えられる可能性としては────────春崎小紅を名乗る人物の周辺でだけ使われている単語・或いは造語ってトコかしらね」
「造語?」
そう、と佐々木は頷いた。
「ほら、検索サイトで出てきた検索結果は『免罪符』に関するものばかりだったでしょう?」
『免罪符』から着想やイメージを得て作られた造語なんじゃないかしら?と佐々木はトントンと指先で机を弾く。
イメージか。
「そういや春崎のヤツ、一條に対して『処分』『失敗したケジメ』みたいなことを言ってたな…?」
佐々木はノートにメモを走らせながら相槌を打つ。
「春崎小紅の周囲・或いはグループ内でのみ通用するものとして────────[何かに失敗した罰として免罪酒を与えられる]又は[罪を償う為に免罪酒を飲む]といった慣例が出来上がってる可能性もありそうよ」
なるほど、グループ内での掟のようなものか。
ただ、と佐々木は続けた。
「貴方の話から推測するに春崎小紅を名乗る人物は小学校高学年~中1前後と考えられるわね。そんな年齢の人物が単独で薬品を調達出来るとも到底思えないの」
つまり?と俺が訊き返すと佐々木はこう結論付けた。
「知識やその手口から察するに────────単独犯ではなく複数形、組織での犯行であることに間違いないわ」
組織か。
例の変なイニシャルC ∴M ∴と関連があるんだろうか。
「けどさ。春崎が単独犯かグループかってのより────────一條が死にそうなのが確実って方がヤバくないか?」
俺がそう口にすると佐々木も頷いた。
「そうね。貴方の言うとおりだわ。一刻も早く、一條刻夜の身柄を保護して応急処置を受けさせる必要があるようね」
だけど、と佐々木は更に続け表情を曇らせた。
「一命を取り留めたとしても───────────一生回復しないレベルでの後遺症が残る可能性もあるの」
今まで春崎の話を話し半分に聞いていた俺は途端に恐ろしくなった。
だってさ、俺もそうだけど────────みんな日常会話の中で『死ぬ』『死ね』『死にそう』とかフツーに使うだろ?
『お前マジ死ねよ』とかツッコミ感覚で普通に言うじゃん?『期末のテスト範囲とか全然見てねぇし勉強とかしてねぇしマジで死んだわ』とかってのも意識せずに言ってるしさ。
でも、今回の件コレはそうじゃねぇんだ。
マジで────────リアルの世界で人が死ぬ。
目の前に積まれた医薬品・薬学関係の書籍。
佐々木のことだ。情報から得られた何らかの根拠や確信があるんだろう。
「……じゃあ─────── 一條は嘘や冗談じゃなくて本当に死ぬ可能性があるっていうんだな?」
俺がそう訊ねると佐々木はノートパソコンを開き、検索サイトにアクセスした。
「そうね。それと、さっき聞いた“免罪酒”っていうキーワードを打ち込んでみたんだけど────────」
見事に何もヒットしないの、と佐々木は検索結果を指で指す。
確かに、そこに並べられているのは『免罪符』に関する記述やページばかりだった。
それってどういう意味なんだよ、という俺の質問に対し佐々木は少し考え込むような素振りを見せながら答える。
「考えられる可能性としては────────春崎小紅を名乗る人物の周辺でだけ使われている単語・或いは造語ってトコかしらね」
「造語?」
そう、と佐々木は頷いた。
「ほら、検索サイトで出てきた検索結果は『免罪符』に関するものばかりだったでしょう?」
『免罪符』から着想やイメージを得て作られた造語なんじゃないかしら?と佐々木はトントンと指先で机を弾く。
イメージか。
「そういや春崎のヤツ、一條に対して『処分』『失敗したケジメ』みたいなことを言ってたな…?」
佐々木はノートにメモを走らせながら相槌を打つ。
「春崎小紅の周囲・或いはグループ内でのみ通用するものとして────────[何かに失敗した罰として免罪酒を与えられる]又は[罪を償う為に免罪酒を飲む]といった慣例が出来上がってる可能性もありそうよ」
なるほど、グループ内での掟のようなものか。
ただ、と佐々木は続けた。
「貴方の話から推測するに春崎小紅を名乗る人物は小学校高学年~中1前後と考えられるわね。そんな年齢の人物が単独で薬品を調達出来るとも到底思えないの」
つまり?と俺が訊き返すと佐々木はこう結論付けた。
「知識やその手口から察するに────────単独犯ではなく複数形、組織での犯行であることに間違いないわ」
組織か。
例の変なイニシャルC ∴M ∴と関連があるんだろうか。
「けどさ。春崎が単独犯かグループかってのより────────一條が死にそうなのが確実って方がヤバくないか?」
俺がそう口にすると佐々木も頷いた。
「そうね。貴方の言うとおりだわ。一刻も早く、一條刻夜の身柄を保護して応急処置を受けさせる必要があるようね」
だけど、と佐々木は更に続け表情を曇らせた。
「一命を取り留めたとしても───────────一生回復しないレベルでの後遺症が残る可能性もあるの」
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる