上 下
717 / 1,060
ep8

ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』  無資格の医療行為

しおりを挟む
俺はもう一度上野を見た。

顔は真っ青で額に汗をかいている。

誇張無しで本当に死にそうな様子に思えた。

「なあ、上野───────」

俺は手に持っているものを見せるようにして上野に話しかけた。

「俺さ、今“指用のコンドーム”とローション持ってんだけど────────」

これ使ったら今度は上手く行くんじゃね?と俺が提案すると上野は弱々しく答える。

「……“指用のコンドーム”?……そんなのあるの……!?」

お前さ、ダメ元でもう一回やってみたら、と俺が言うと上野は苦しそうに首を振った。

「……む……無理……息……出来なくて……これ以上なんかするの……」

今の上野は呼吸するだけで精一杯ってことなのか。

俺が躊躇していると───────────上野の方から懇願してくる。

「お願い……佐藤っち……助けて……」

ポロポロと涙が溢れ、頬から伝って枕に吸い込まれていく。

俺にやれって事なのか?!

だけど、迷っている暇は無い様にも思えた。

さっきから俺はなるべく視線を逸らすように努力はしていたが──────ショーツを脱いだ上野の下半身はスカートが捲れて露わになっていた。

あの気の強い上野が俺の前でこんな姿を晒しているなんて普通じゃ到底考えられない。

よほどの緊急事態、身体が異常な状態になっているということだろう。

俺は手の中のパッケージを確認する。

確か、“指用コンドーム”には───────予めジェルが付いてるって話だったよな?(普通のコンドームにも付いてはいるんだろうが)

てことはさ、普通に指を入れるより指用のコンドームを付けた方がすんなり入るってことだよな?

俺に出来るだろうか?

俺は自分の右手を改めて見た。

爪は短く切ってはいるが、ささくれもあるし手荒れも酷い。まあ、結構バイトガチってるし洗濯やら皿洗いとかの家事もやってるからな。

同年代の男子中学生に比べたらガサガサに荒れた手かもしれねぇ。

普通に入れたら痛いだろうが───────指用コンドームがあるから痛みは軽減出来るだろうか?

指用コンドーム。

これって指サックの薄い版みたいなイメージでいいんだろうか?

或いは、ビニール手袋の指だけ版?

いずれにせよ、これを付けることで生々しさやいやらしさは軽減され、少し医療行為めいた雰囲気になる気がした。

医療行為といえば───────そういや、以前に爺さんの茶飲み友達に聞いた話があるな。

確か、[摘便]って言うんだっけ?

便秘が酷すぎて自力で出せない患者に対して看護師が指を穴に突っ込んで掻き出すって話だったような。(※1)

爺さんの茶飲み友達が入院中にナースにやって貰ったって自慢げに言ってたんだよなあ。

ナースが指に手を突っ込むって話があまりにも強烈過ぎて印象に残ってたんだが────────

じゃあさ、今から俺がやろうとしてることってさ、やっぱ医療行為な訳じゃん?

もっとも無免許で無資格の素人がやっていい事じゃないっていうのは百も承知だけど──────────

これはさ、あくまでも緊急措置なんだよ。

俺にそれ以外の動機なんて何も無いんだ。

大丈夫、何も悪い事をしようとしてる訳じゃねぇんだよ。

俺は覚悟を決め、上野に話しかけた。











「なあ、上野───────本当に俺に任せていいんだな?」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...