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ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 Do It Yourself
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黙って俯いている上野がなんだか痛々しく思えた。
普段のあの威勢の良さは見る影もない。
「お前も───────なのか?」
俺の問いかけにに対し、上野はただ呟く。
「……やっぱさ。佐藤っちもあーしのこと馬鹿だって思うよね」
軽蔑するよね、と涙目で口にする上野はまるで別人のようだ。
どうしよう。
なんて答えればいい?
……いや、と俺は首を振った。
「なんか聞いたんだけどさ、コレって元々は大人向けの商売らしいじゃん?」
中学生向きじゃねぇって事なんだろ?と俺は続けた。
「じゃあさ、それを知ってた上であえて中学生に売りつけた奴が悪いんじゃねぇの?」
俺の言葉を聞いた上野はポロポロと涙をこぼす。
え!?
「は!?なんで泣くんだよ!?」
俺は女に泣かれるのが苦手なんだよ。
オロオロした俺はどうしたらいいか分からず、ただパニックになる。
「……な、なあ上野?とりあえず病院行こうぜ?」
やっぱ医者に診て貰わねぇとどうにもならねぇだろ?という俺の言葉に上野はブンブンと首を横に振る。
「……ダメ!!病院なんて絶対無理だし!!───────そもそも親に絶対言えないっしょ……?」
親?
そうか、病院へ行くって言っても金も要るし、保険証とかも要るよな?
それに。
俺は小泉に聞いたことを思い出した。
もし病院に行くってなったらそれは────────産婦人科ってことになるんだろうか?
産婦人科。
確か、[未成年の方は必ず保護者の方とお越しください]って張り紙がしてあったって話だったよな?
もしも上野が金や保険証を手に入れたとしてもさ、診て貰えない可能性があるってことか?
「……家族にだけは……絶対知られたくないから」
佐藤っち……絶対誰にも言わないで、と泣く上野に対し俺はなんと声を掛けていいものかと戸惑う。
「……あ、じゃあさ。佐々木に相談するのはどうだ?お前ら仲良かっただろ?」
佐々木ならなんとかしてくれるだろうし──────と言い掛けた俺の言葉を遮って上野は首を振る。
「……絶対ダメ!佐々木っちは頭がいいから─────いろんなことがバレちゃう……!」
「え?」
どういう意味だろうか。
佐々木にバレるとマズい?仲がいいのにか?
困惑している最中……不意に先日の佐々木と後輩のやりとりが俺の脳裏をかすめる。
「あ、じゃあさ─────お前が自力で出すのは?」
俺は必死で思いつく限りの提案をする。
佐々木が出来るんなら上野が自分でどうにかすんのも出来るんじゃね?
もうやったし、と上野は爪を噛んだ。
「あーしもやっぱりおかしいなって思ってさ……自分で出そうとしたけど──────怖くて出来なくて」
やりかけて途中でやめちゃったし、と上野は諦めたように呟く。
俺は胸ポケットにある名刺入れを出して中身を確認した。
中には例の物─────────使い切り用ローションが入っている。
俺はそのパッケージを上野に差し出した。
「なあ、上野……コレ使ったら案外すんなりいくんじゃね?」
普段のあの威勢の良さは見る影もない。
「お前も───────なのか?」
俺の問いかけにに対し、上野はただ呟く。
「……やっぱさ。佐藤っちもあーしのこと馬鹿だって思うよね」
軽蔑するよね、と涙目で口にする上野はまるで別人のようだ。
どうしよう。
なんて答えればいい?
……いや、と俺は首を振った。
「なんか聞いたんだけどさ、コレって元々は大人向けの商売らしいじゃん?」
中学生向きじゃねぇって事なんだろ?と俺は続けた。
「じゃあさ、それを知ってた上であえて中学生に売りつけた奴が悪いんじゃねぇの?」
俺の言葉を聞いた上野はポロポロと涙をこぼす。
え!?
「は!?なんで泣くんだよ!?」
俺は女に泣かれるのが苦手なんだよ。
オロオロした俺はどうしたらいいか分からず、ただパニックになる。
「……な、なあ上野?とりあえず病院行こうぜ?」
やっぱ医者に診て貰わねぇとどうにもならねぇだろ?という俺の言葉に上野はブンブンと首を横に振る。
「……ダメ!!病院なんて絶対無理だし!!───────そもそも親に絶対言えないっしょ……?」
親?
そうか、病院へ行くって言っても金も要るし、保険証とかも要るよな?
それに。
俺は小泉に聞いたことを思い出した。
もし病院に行くってなったらそれは────────産婦人科ってことになるんだろうか?
産婦人科。
確か、[未成年の方は必ず保護者の方とお越しください]って張り紙がしてあったって話だったよな?
もしも上野が金や保険証を手に入れたとしてもさ、診て貰えない可能性があるってことか?
「……家族にだけは……絶対知られたくないから」
佐藤っち……絶対誰にも言わないで、と泣く上野に対し俺はなんと声を掛けていいものかと戸惑う。
「……あ、じゃあさ。佐々木に相談するのはどうだ?お前ら仲良かっただろ?」
佐々木ならなんとかしてくれるだろうし──────と言い掛けた俺の言葉を遮って上野は首を振る。
「……絶対ダメ!佐々木っちは頭がいいから─────いろんなことがバレちゃう……!」
「え?」
どういう意味だろうか。
佐々木にバレるとマズい?仲がいいのにか?
困惑している最中……不意に先日の佐々木と後輩のやりとりが俺の脳裏をかすめる。
「あ、じゃあさ─────お前が自力で出すのは?」
俺は必死で思いつく限りの提案をする。
佐々木が出来るんなら上野が自分でどうにかすんのも出来るんじゃね?
もうやったし、と上野は爪を噛んだ。
「あーしもやっぱりおかしいなって思ってさ……自分で出そうとしたけど──────怖くて出来なくて」
やりかけて途中でやめちゃったし、と上野は諦めたように呟く。
俺は胸ポケットにある名刺入れを出して中身を確認した。
中には例の物─────────使い切り用ローションが入っている。
俺はそのパッケージを上野に差し出した。
「なあ、上野……コレ使ったら案外すんなりいくんじゃね?」
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