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ep6
ep6『さよなら小泉先生』 大反省会会場
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小泉からの電話で佑ニーサンが学校にすっ飛んで来てくれたのは有り難かった。
佑ニーサンが居なけりゃ詰んでただろうな。
何せ、俺の母親は地底湖で即身仏みたいな人柱になってんだから。
概史から借りたバイクの事も『自宅に置いていたもので僕が所有者です』と偽の証言をしてくれたのも助かった。
俺が無免で日常的に乗ってるバイクが概史のもので、フーミンがそれを黙認してるってバレたらあちこちに迷惑が掛かるしな。
そういう機転が利くのも佑ニーサンのスゲェとこなんだな。
まあ、校長をはじめ、学年主任や加賀に小泉が揃い踏みしてる中で堂々とブラフをかませる度胸もなかなかのモンなんだが。
そんなこんなで校長室で大反省会が開かれた後、俺は反省文を書かされることになった。
でも、こんな事で済むのなら何枚でも大作を執筆してやるよって気分だった。
いつもの日常が戻ってきた。
それだけでもう俺は充分だった。
反省文?マジでいくらでも書けるし?
(おい……さっきから何をニヤニヤしながら書いているんだ?)
俺の表情がよっぽどおかしかったのか、小泉が小声で俺に聞いてくる。
「え?俺、ニヤニヤしてるか?」
(……馬鹿!さっきからずっとヘラヘラしっ放しじゃないか。反省してないのか?)
反省。
「反省ならもう一生分くらいしたかもな」
(ハア!?)
小泉がまたしても怪訝な表情を浮かべた。
小泉だけでなく、加賀や校長が目の前に居る状態で俺は反省文を仕上げた。
「ほい。校長センセー。反省文出来ましたァ!」
俺が校長の目の前に作文用紙を突き出すと、校長は黙ってそれに目を通しはじめた。
「ちょっ……佐藤!まずは先に私に見せないか!」
なんで勝手に、と言い掛けた小泉を校長が制止する。
「……まあいいじゃありませんか、小泉先生。私は佐藤君の率直な気持ちを知りたいんです」
ウチの学校の校長は何の変哲もない爺さん先生だ。
普段は全く絡みはない。
「……ふむ……」
爺さん校長は俺の反省文に一通り目を通すと、俺の顔を真っ直ぐに見た。
「────佐藤君」
何スか、と俺が答えると爺さん校長は少し笑った。
「君はいい表情になりましたね。以前とは違う顔だ」
「……ハァ!?」
俺より先に小泉が声を上げる。
「……先日のことは彼なりに思う所があったのでしょう。深く反省もしているようですし、今回は特別に今後の経過を見ると言うことで────」
「流石爺さん校長じゃん。話が分かるんスねぇ」
「ちょっ……!校長先生!?」
俺がそう答えると横から加賀がヒステリックな声を上げた。
「バイクの無免許運転ですよ!?たまたま警察に通報されなかったからいいようなものの──────」
そうですね、と爺さん校長は頷く。
「本来であれば決して許されないことです。ですが、若いうちはなんでも失敗して成長していくものでしょう」
彼には悪気があった訳では無いようですし、今日のところは厳重注意という事にしておきませんか、と爺さん校長は加賀に言った。
マジかよ。
爺さん校長は佑ニーサンの方を向かってこう切り出した。
「今後はお兄さんにも車両と鍵の管理を徹底して頂ければと……それくらいでいいんじゃないでしょうか」
ええ、勿論です、と佑ニーサンは神妙な顔で頷いた。
ポカンと口を開けている小泉に向かって爺さん校長はこう言った。
「……彼が変わることが出来たのも小泉先生のお陰なんでしょうね」
この爺さん、何かに気付いたんだろうか。それとも気のせいか?
───────とにかく、こうして俺と小泉の日常はどうにか戻って来たのだった。
佑ニーサンが居なけりゃ詰んでただろうな。
何せ、俺の母親は地底湖で即身仏みたいな人柱になってんだから。
概史から借りたバイクの事も『自宅に置いていたもので僕が所有者です』と偽の証言をしてくれたのも助かった。
俺が無免で日常的に乗ってるバイクが概史のもので、フーミンがそれを黙認してるってバレたらあちこちに迷惑が掛かるしな。
そういう機転が利くのも佑ニーサンのスゲェとこなんだな。
まあ、校長をはじめ、学年主任や加賀に小泉が揃い踏みしてる中で堂々とブラフをかませる度胸もなかなかのモンなんだが。
そんなこんなで校長室で大反省会が開かれた後、俺は反省文を書かされることになった。
でも、こんな事で済むのなら何枚でも大作を執筆してやるよって気分だった。
いつもの日常が戻ってきた。
それだけでもう俺は充分だった。
反省文?マジでいくらでも書けるし?
(おい……さっきから何をニヤニヤしながら書いているんだ?)
俺の表情がよっぽどおかしかったのか、小泉が小声で俺に聞いてくる。
「え?俺、ニヤニヤしてるか?」
(……馬鹿!さっきからずっとヘラヘラしっ放しじゃないか。反省してないのか?)
反省。
「反省ならもう一生分くらいしたかもな」
(ハア!?)
小泉がまたしても怪訝な表情を浮かべた。
小泉だけでなく、加賀や校長が目の前に居る状態で俺は反省文を仕上げた。
「ほい。校長センセー。反省文出来ましたァ!」
俺が校長の目の前に作文用紙を突き出すと、校長は黙ってそれに目を通しはじめた。
「ちょっ……佐藤!まずは先に私に見せないか!」
なんで勝手に、と言い掛けた小泉を校長が制止する。
「……まあいいじゃありませんか、小泉先生。私は佐藤君の率直な気持ちを知りたいんです」
ウチの学校の校長は何の変哲もない爺さん先生だ。
普段は全く絡みはない。
「……ふむ……」
爺さん校長は俺の反省文に一通り目を通すと、俺の顔を真っ直ぐに見た。
「────佐藤君」
何スか、と俺が答えると爺さん校長は少し笑った。
「君はいい表情になりましたね。以前とは違う顔だ」
「……ハァ!?」
俺より先に小泉が声を上げる。
「……先日のことは彼なりに思う所があったのでしょう。深く反省もしているようですし、今回は特別に今後の経過を見ると言うことで────」
「流石爺さん校長じゃん。話が分かるんスねぇ」
「ちょっ……!校長先生!?」
俺がそう答えると横から加賀がヒステリックな声を上げた。
「バイクの無免許運転ですよ!?たまたま警察に通報されなかったからいいようなものの──────」
そうですね、と爺さん校長は頷く。
「本来であれば決して許されないことです。ですが、若いうちはなんでも失敗して成長していくものでしょう」
彼には悪気があった訳では無いようですし、今日のところは厳重注意という事にしておきませんか、と爺さん校長は加賀に言った。
マジかよ。
爺さん校長は佑ニーサンの方を向かってこう切り出した。
「今後はお兄さんにも車両と鍵の管理を徹底して頂ければと……それくらいでいいんじゃないでしょうか」
ええ、勿論です、と佑ニーサンは神妙な顔で頷いた。
ポカンと口を開けている小泉に向かって爺さん校長はこう言った。
「……彼が変わることが出来たのも小泉先生のお陰なんでしょうね」
この爺さん、何かに気付いたんだろうか。それとも気のせいか?
───────とにかく、こうして俺と小泉の日常はどうにか戻って来たのだった。
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