543 / 1,153
ep6
ep6『さよなら小泉先生』 荒唐無稽な概念
しおりを挟む
俺とシンジは公園に移動し、ベンチに腰掛けていた。
よろしければどうぞ、と俺が自販機で買ったスポーツドリンクを差し出すとシンジはそれを受け取った。
「……ありがとうございます」
二人で冷たい物を飲み、少しの間沈黙が流れた。
公園の時計の針は2時半を指していた。
俺が支度し、モタモタとしている間に鬼怒川鏡花への訪問が昼過ぎになってしまったのもあるんだが────────
小学校は4時間授業か何かで給食後に下校してきたとか、そんな時間割だったのだろうか。
俺がぼんやりとそんな事を考えているとシンジの方から口を開いた。
「驚かれたでしょう。こんな……おままごとみたいな事をしてるなんて」
やや自虐的な口調。
いえ、と俺は首を振った。
「小泉さんの……お姉さんの為に食料や日用品を差し入れてあげてるんですよね?」
ご家族には内緒で?と俺が尋ねるとシンジは苦笑いを浮かべた。
「最初はそうだったんですけど────家族も薄々察しているようで」
最近はキッチンにそれとなくレトルト食品が多めに置いてあるんですよね、とシンジは俯いた。
「日用品や消耗品もわざとおれの目のつく場所に置いてあるんですよ。もうバレバレって感じなんですけど」
「……そうだったんですか」
鬼怒川鏡花にはもう、自力で自活できる能力が無いのだろう。
買い物はおろか、料理や日常生活もままならない。
辛うじて生きているのはこうしてシンジが差し入れを持ってきているからなのか。
こんな状態で何と言ってシンジに声を掛ければいいんだろう。
俺が言葉を詰まらせていると、シンジは思わぬ方向へと話を切り出した。
「……あの、すごく変な事をお聞きするんですけど」
そう前置きしてからシンジが口にしたのはあり得ない単語だった。
「────“催眠アプリ”ってご存知ですか?」
「は!?」
俺は思わず素で反応してしまう。
エロ同人誌やエロゲとかでよく見掛けるアレ!?
そんなん、実在する訳は無いだろう。
もしもそんなチート級のモノが実在するとなれば大変な事だが──────存在しないからこそのエロ同人やエロゲなワケで。
そこらの女を抱き放題とか無法地帯の滅茶苦茶な世界になるなんてさ、どう考えても有り得ないじゃねぇか。
「ゲームとか……マンガに出てくるやつですよね?」
俺は極力、冷静を装って返事した。
「そうです。普通に考えれば漫画やゲーム、アニメの世界だけのものですよね」
だけど、とシンジは言葉を続けた。
「もしもそれが─────いや、それに近い物が……実在するとしたらどう思われますか?」
「……え!?」
またしても俺は返答に詰まってしまう。
普通に考えれば荒唐無稽な話だろう。
だが、シンジは冗談を言っている風には到底思えなかった。
それに、この境内シンジってヤツは根っからの堅物キャラなんだ。
エロゲやエロ同人誌なんて見たりするようなキャラじゃないし、人を揶揄ったりするような事もしないだろう。
だとしたら。
まさかそんなモノが──────本当に実在してるって言うのか?
よろしければどうぞ、と俺が自販機で買ったスポーツドリンクを差し出すとシンジはそれを受け取った。
「……ありがとうございます」
二人で冷たい物を飲み、少しの間沈黙が流れた。
公園の時計の針は2時半を指していた。
俺が支度し、モタモタとしている間に鬼怒川鏡花への訪問が昼過ぎになってしまったのもあるんだが────────
小学校は4時間授業か何かで給食後に下校してきたとか、そんな時間割だったのだろうか。
俺がぼんやりとそんな事を考えているとシンジの方から口を開いた。
「驚かれたでしょう。こんな……おままごとみたいな事をしてるなんて」
やや自虐的な口調。
いえ、と俺は首を振った。
「小泉さんの……お姉さんの為に食料や日用品を差し入れてあげてるんですよね?」
ご家族には内緒で?と俺が尋ねるとシンジは苦笑いを浮かべた。
「最初はそうだったんですけど────家族も薄々察しているようで」
最近はキッチンにそれとなくレトルト食品が多めに置いてあるんですよね、とシンジは俯いた。
「日用品や消耗品もわざとおれの目のつく場所に置いてあるんですよ。もうバレバレって感じなんですけど」
「……そうだったんですか」
鬼怒川鏡花にはもう、自力で自活できる能力が無いのだろう。
買い物はおろか、料理や日常生活もままならない。
辛うじて生きているのはこうしてシンジが差し入れを持ってきているからなのか。
こんな状態で何と言ってシンジに声を掛ければいいんだろう。
俺が言葉を詰まらせていると、シンジは思わぬ方向へと話を切り出した。
「……あの、すごく変な事をお聞きするんですけど」
そう前置きしてからシンジが口にしたのはあり得ない単語だった。
「────“催眠アプリ”ってご存知ですか?」
「は!?」
俺は思わず素で反応してしまう。
エロ同人誌やエロゲとかでよく見掛けるアレ!?
そんなん、実在する訳は無いだろう。
もしもそんなチート級のモノが実在するとなれば大変な事だが──────存在しないからこそのエロ同人やエロゲなワケで。
そこらの女を抱き放題とか無法地帯の滅茶苦茶な世界になるなんてさ、どう考えても有り得ないじゃねぇか。
「ゲームとか……マンガに出てくるやつですよね?」
俺は極力、冷静を装って返事した。
「そうです。普通に考えれば漫画やゲーム、アニメの世界だけのものですよね」
だけど、とシンジは言葉を続けた。
「もしもそれが─────いや、それに近い物が……実在するとしたらどう思われますか?」
「……え!?」
またしても俺は返答に詰まってしまう。
普通に考えれば荒唐無稽な話だろう。
だが、シンジは冗談を言っている風には到底思えなかった。
それに、この境内シンジってヤツは根っからの堅物キャラなんだ。
エロゲやエロ同人誌なんて見たりするようなキャラじゃないし、人を揶揄ったりするような事もしないだろう。
だとしたら。
まさかそんなモノが──────本当に実在してるって言うのか?
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる