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ep6
ep6『さよなら小泉先生』 炭酸水と放課後の幽霊
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目の前の小泉────親戚とも本人ともつかない存在。
俺は途端にコイツが恐ろしいものに思えてきた。
無意識のうちに後退りしてしまっていることに気付く。
いや、マジでなんなんだ?
身体が透けてるなんて───────まるで幽霊みたいじゃないか。
生きてる人間が幽霊になることなんてあるか?
小泉本人は死んでないのに?
どうして中二の姿で現れてる?
しかもなんでカルピスソーダ飲んでカントリーマアム食ってんだよ。
幽霊ってなんか食ったりすんの?
俺の全身から冷や汗が滝のように流れていく。
「あ、俺さ。家で猫飼ってて。そろそろ餌の時間なんだ」
適当な言い訳をし、俺はその場を離れようとした。
小泉(幽霊)は小さく頷き、念押しするように言った。
「この場所のこと、誰にも言っちゃダメだからね」
俺は返事も碌にせず、脱兎のように古井戸の小屋から逃げ出した。
なんだこれ。
マジでなんだよこれ?
意味がわかんねぇ。
話は変わるんだけどさ。最近のゲーセンのプライズフィギュアってかなり出来がいいじゃん?
概史が何個か持ってるの見せて貰ったんだけどさ、中には身体の一部がクリア素材で出来てるヤツもあるのな
髪や衣装のパーツがクリア素材になっててさ、その上からグラデみたいな塗装がされてんの。
髪の毛先やスカートの裾やフリルが透けて見える感じになってんだよな。
多分、キャラの透明感とかを表してる技術や演出なんだろうけど─────
俺が見た小泉の幽霊は─────まさにそんな感じだったんだ。
生身の人間の身体の一部がスケルトンとかって有り得るか?
90年代末期のゲームハードじゃねぇんだからさ。
人体がスケルトンとかマジでどうなってんだよ?
その晩は意味がわからなさ過ぎて全く寝付けなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日の朝礼前。
俺は美術準備室に顔を出した。
小泉は何かの書類を整理しているようだった。
昨日会合があったと言ってたから、それ関連の物かもしれない。
小泉は俺を見ると険しい表情を浮かべた。
「なんだ。佐藤か」
あまりここに出入りするなと昨日言っただろう?と小泉は苦々しげに吐き捨てた。
おいおい。なんでそう塩対応なんだよ。つれないなあ。
「いや、冷やかしとかじゃなくてさ。ちょっと聞きたいことがあって」
ちょっと呪いとかに関係してるかも、と俺が付け加えると小泉の表情が変わった。
「何かあったのか?」
いや、そういう訳でもないけど、と俺は慌てて首を振る。
「それよりさ、昨日の放課後は教職員の会合とやらがあったのか?」
忙しそうだけど、と俺が訊ねると小泉は首をすくめてみせた。
「見ての通りだ。こう授業以外の業務が多くては敵わんな」
そうか、と俺は頷いた。
昨日の小泉は忙しくて学校を抜け出すなんて到底出来なかった事が窺えた。
「あのさ、センセェ。まだ生きてる人間が幽霊になるってこと、あり得るか?」
俺が思い切ってそう打ち明けると小泉は意外そうな表情を浮かべた。
「幽霊?お前、何か見たのか?」
いや、見間違いかもしれねぇし、と俺は言葉を濁した。
小泉は少し考え込むような素振りを見せながらもこう言った。
「結論から言えば───────それは十分有り得るな。“生霊“って存在だ」
俺は途端にコイツが恐ろしいものに思えてきた。
無意識のうちに後退りしてしまっていることに気付く。
いや、マジでなんなんだ?
身体が透けてるなんて───────まるで幽霊みたいじゃないか。
生きてる人間が幽霊になることなんてあるか?
小泉本人は死んでないのに?
どうして中二の姿で現れてる?
しかもなんでカルピスソーダ飲んでカントリーマアム食ってんだよ。
幽霊ってなんか食ったりすんの?
俺の全身から冷や汗が滝のように流れていく。
「あ、俺さ。家で猫飼ってて。そろそろ餌の時間なんだ」
適当な言い訳をし、俺はその場を離れようとした。
小泉(幽霊)は小さく頷き、念押しするように言った。
「この場所のこと、誰にも言っちゃダメだからね」
俺は返事も碌にせず、脱兎のように古井戸の小屋から逃げ出した。
なんだこれ。
マジでなんだよこれ?
意味がわかんねぇ。
話は変わるんだけどさ。最近のゲーセンのプライズフィギュアってかなり出来がいいじゃん?
概史が何個か持ってるの見せて貰ったんだけどさ、中には身体の一部がクリア素材で出来てるヤツもあるのな
髪や衣装のパーツがクリア素材になっててさ、その上からグラデみたいな塗装がされてんの。
髪の毛先やスカートの裾やフリルが透けて見える感じになってんだよな。
多分、キャラの透明感とかを表してる技術や演出なんだろうけど─────
俺が見た小泉の幽霊は─────まさにそんな感じだったんだ。
生身の人間の身体の一部がスケルトンとかって有り得るか?
90年代末期のゲームハードじゃねぇんだからさ。
人体がスケルトンとかマジでどうなってんだよ?
その晩は意味がわからなさ過ぎて全く寝付けなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日の朝礼前。
俺は美術準備室に顔を出した。
小泉は何かの書類を整理しているようだった。
昨日会合があったと言ってたから、それ関連の物かもしれない。
小泉は俺を見ると険しい表情を浮かべた。
「なんだ。佐藤か」
あまりここに出入りするなと昨日言っただろう?と小泉は苦々しげに吐き捨てた。
おいおい。なんでそう塩対応なんだよ。つれないなあ。
「いや、冷やかしとかじゃなくてさ。ちょっと聞きたいことがあって」
ちょっと呪いとかに関係してるかも、と俺が付け加えると小泉の表情が変わった。
「何かあったのか?」
いや、そういう訳でもないけど、と俺は慌てて首を振る。
「それよりさ、昨日の放課後は教職員の会合とやらがあったのか?」
忙しそうだけど、と俺が訊ねると小泉は首をすくめてみせた。
「見ての通りだ。こう授業以外の業務が多くては敵わんな」
そうか、と俺は頷いた。
昨日の小泉は忙しくて学校を抜け出すなんて到底出来なかった事が窺えた。
「あのさ、センセェ。まだ生きてる人間が幽霊になるってこと、あり得るか?」
俺が思い切ってそう打ち明けると小泉は意外そうな表情を浮かべた。
「幽霊?お前、何か見たのか?」
いや、見間違いかもしれねぇし、と俺は言葉を濁した。
小泉は少し考え込むような素振りを見せながらもこう言った。
「結論から言えば───────それは十分有り得るな。“生霊“って存在だ」
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