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ep6

ep6『さよなら小泉先生』 引き摺り出されたもの

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目を開けるとそこにあったのは見慣れた天井だった。

いつもの俺の部屋だ。

時計を見る。

6時半だ。

俺は上半身を起こすとぼんやりとした記憶を辿った。

俺、いつの間に眠ってたんだろう。

昨日はバイトして帰って来たんだっけ。

さっき見た夢。

なんだか、見てはいけないモノを見てしまったような気分で一杯だった。

布団を畳み、服を着替える。

俺はどうしてあんな夢を───────?

歯を磨きながら俺は生々しい夢の断片を反芻していた。

嘘だろ?

夢の中とは言え─────なんで小泉とセックスしてんだよ、俺。

そう言えばさ、“夢占い”だとか“夢診断”ってヤツがあるだろ?

これには何か意味があるのか?

或いは予言や予兆めいたものがある?

考えれば考えるほど俺は混乱する。

顔を洗い、タオルで顔を拭くと鏡を見た。

俺さ、あんなにも『もう二度とセックスなんかしたくない』って思ってたハズなのに─────

どうして”出来“ちまったんだろうな。

気持ちと身体ってのは別なんだな。

相手が例え小泉であったとしても─────実行は”出来“るんだな。

ガリガリのまな板だと思っていた小泉の身体。

突き上げる度に目の前で大きく揺れる胸が脳裏によぎる。

あんなの嘘だろ。

小泉があんなに肉付きがいいハズが無いし──────

第一、小泉が俺とセックスすることを受け入れるとは到底思えなかった。

もし、あんな状況になったとしたら───────小泉のことだ。潔く借金を背負う判断をするんじゃないだろうか。

きっとそうだ。

小泉はそんな奴なんだ。そうだろ?

じゃあなんでこんな夢を見たんだ?

いや、或いは──────

『見せられた』のかもしれない。

俺は忌み子で、呪われた存在だ。

童貞を捨てるエネルギーを回収する為だけの呪いの依代。

その俺が『セックスしたくない』なんて言ってたとしたら─────

呪いの術者的には困るんだろうな。

何せ役割を果たして貰わないと困るんだろうし。

だから、俺にあんな夢を見せたのか?

──────”口ではどんなに嫌だと言っていても、身体の方は実行可能じゃないか“

そう言いたかったのか?

意地が悪いんだな、呪いって奴は。

そういう意図ならさ。相手が小泉でなくてもよかったじゃねぇか。

ムチムチのグラビアアイドルが5人くらいで俺の相手してくれるとかさ、夢なんだからもっとやりようがあるだろ?

もしそうだったら俺だって悪い気はしねぇし。

いや、むしろウェルカムだろ?

なんでよりによって小泉なんだよ?

全く気が利かねぇんだな、呪いって奴は──────


俺は冷凍庫から出した白米をレンジで解凍しながら漠然とそう思った。

冷蔵庫から出した納豆のパック、それからインスタントの味噌汁。

どっちも業務スーパーのヤツなんだな。納豆は3パックで42円、味噌汁は100食で513円(税込)だ。

納豆は1パック当たり14円、味噌汁は一食当たり約5円、米は貰い物なのでザッと計算して一食当たり約20円だ。

結構リーズナブルだろ?

手を合わせ、いただきます、と小さく呟く。

納豆をかき混ぜてご飯に掛けながらも、俺はどこか上の空だった。

そうだよな。

あんな夢を見て─────平常心じゃいられないよな。

念の為、さっき例の銀の缶の中身をチェックしたんだ。

当然だが増減はない。

当たり前だよなあ。

だってあれは夢だったんだから。

ご飯をかき込みながら、俺は自分で自分がわからなくなっていた。

どうして俺、夢の中で──────あんな気持ちになったんだろう。

普段は偉そうな事ばっかり言ってくる生意気な小泉を、力でねじ伏せて身体の自由を奪う。

手も脚も絡め取るように────全部の体重を掛けて逃げられないように抑え込む。

小泉が泣き喚いて懇願するのを無視して、メチャクチャに力任せに突き上げる。

圧倒的な支配欲と征服欲。

今まで感じたことのない快感に狂わされる精神。

俺の中にあったドス黒い部分が”呪い“によって引き摺り出され、白日の元に晒される。

俺自身が隠し、知らないふりをしていた衝動は突如として目の前に突きつけられた。







──────それを直視するにはあまりにもグロテスク過ぎたんだ。




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