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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 未読と中絶可能週数
しおりを挟む未知の領域過ぎて、俺には何もかもがわからなかった。
だけど、この状況をどうすればいい?
夢野はどこに向かって着地しようとしている?
俺は首を振った。
着地できなかったからこそ─────ビルから飛び降りたんじゃないのか?
いや、逆か?
ビルから飛び降りて着地できなかった?
どちらにせよ、このままだと同じ結果、同じ結末を何度も繰り返すことになるだろう。
「なあ、夢野……」
俺はなるべく慎重に声を掛ける。
「彼氏は……もう知ってるのか?」
岬京矢。
交際中の女子を妊娠させてしまったとあれば、向こうもタダでは済まないだろう。
どういうつもりで夢野を放置しているんだ?
夢野は少し黙った後、重い口を開いた。
「うん……言ったよ。ちゃんと」
でも、と夢野は声を詰まらせた
「向こうは受験生だから─────県内全域模試が終わる10月中旬まで待ってって……」
終わったらちゃんと話し合おう、将来のことを一緒に考えようって言ってくれて、と夢野はか細い声で答える。
話し合う。
まさか産ませるつもりなんだろうか?
でも、模試があるって事は高校に行くよな?
じゃあやっぱり堕させるつもりか?
俺、よく知らねぇんだけどさ。赤ん坊を中絶するのって期間が決まってるんじゃなかったのか?
期間を過ぎたら、もう堕ろせないんだろ?
だったらさ、あんまり決断を先送りしたらマズいんじゃね?
何かがおかしい。
夢野の彼氏は何を考えてる?
俺の不安が夢野に伝わったのだろうか。
夢野も緊張した表情を浮かべる。
「あたしもね、心配になって何度も連絡しようとしたんだけど─────」
既読が付かなくて、と夢野は左手で顔を覆った。
「それって……メッセージを読んでないってことか?」
「模試や中間テストが近いから、スマホ自体を触らないようにしてるのかもしれないし……」
模試が終わるまで待とうと思う、と震える声で夢野は絞り出した。
いいのか?
そんなに時間を空けても─────
夢野が飛び降りた時期。
模試の終了と同じ時期じゃないのか?
だとしたら。
俺は自分の胸がざわつくのを感じた。
どうすればいい?
俺一人でどうにか出来る範疇を越えている。
すぐに小泉に報告しなければならん状況だろう。
俺はもう一度夢野の姿を見た。
ベッドに横たわる姿が痛々しくて見ていられなかった。
だけど、ゆっくりしている時間はない。
夢野を一人にするのは気が引けるが、いつまでもこの家に滞在してていい訳でもないし─────
「ゴメンね。せっかく来てくれたのに、嫌な思いさせて」
夢野は申し訳無さそうに呟く。
俺が帰ろうとしているのに気付いたんだろうか。
「あたしなら一人で大丈夫よ。いつものことだから……」
夢野はそう言うと作り笑いを浮かべた。
俺に心配させまいとしてるんだろうか。
「本当に一人で大丈夫か?」
俺はズレた布団を掛け直した。
うん、と夢野が頷くと同時にことりと音を立ててカーペットに何かが転がり落ちた。
「何か落ちたけど?」
落ちた物を手に取る。
それはキラキラした何かが入ったガラスの小瓶だった。
「あ、それ」
夢野が気付いて声を上げる。
「あたしのお守りなの。こういう時はどうしてだかいつも握ってて」
バスルームにいた時から握ってたんだろうか。
さっきは左手の怪我の方が大変だから右手までは見ていなかったが─────
小さな小瓶の中にある、銀色にキラキラ輝く小さなもの。
「唯ちゃんがね、お守りだよってくれた水晶なんだ」
俺は夢野の右手に小瓶を持たせてやった。
なんだか小さな子どもみたいだな、と思った。
夢野は疲れてしまったんだろうか。
そのまま目を閉じ、しばらくすると寝息を立てて眠りについた。
夢野が眠ったのを確認した後、俺はそっと部屋を後にした。
だけど、この状況をどうすればいい?
夢野はどこに向かって着地しようとしている?
俺は首を振った。
着地できなかったからこそ─────ビルから飛び降りたんじゃないのか?
いや、逆か?
ビルから飛び降りて着地できなかった?
どちらにせよ、このままだと同じ結果、同じ結末を何度も繰り返すことになるだろう。
「なあ、夢野……」
俺はなるべく慎重に声を掛ける。
「彼氏は……もう知ってるのか?」
岬京矢。
交際中の女子を妊娠させてしまったとあれば、向こうもタダでは済まないだろう。
どういうつもりで夢野を放置しているんだ?
夢野は少し黙った後、重い口を開いた。
「うん……言ったよ。ちゃんと」
でも、と夢野は声を詰まらせた
「向こうは受験生だから─────県内全域模試が終わる10月中旬まで待ってって……」
終わったらちゃんと話し合おう、将来のことを一緒に考えようって言ってくれて、と夢野はか細い声で答える。
話し合う。
まさか産ませるつもりなんだろうか?
でも、模試があるって事は高校に行くよな?
じゃあやっぱり堕させるつもりか?
俺、よく知らねぇんだけどさ。赤ん坊を中絶するのって期間が決まってるんじゃなかったのか?
期間を過ぎたら、もう堕ろせないんだろ?
だったらさ、あんまり決断を先送りしたらマズいんじゃね?
何かがおかしい。
夢野の彼氏は何を考えてる?
俺の不安が夢野に伝わったのだろうか。
夢野も緊張した表情を浮かべる。
「あたしもね、心配になって何度も連絡しようとしたんだけど─────」
既読が付かなくて、と夢野は左手で顔を覆った。
「それって……メッセージを読んでないってことか?」
「模試や中間テストが近いから、スマホ自体を触らないようにしてるのかもしれないし……」
模試が終わるまで待とうと思う、と震える声で夢野は絞り出した。
いいのか?
そんなに時間を空けても─────
夢野が飛び降りた時期。
模試の終了と同じ時期じゃないのか?
だとしたら。
俺は自分の胸がざわつくのを感じた。
どうすればいい?
俺一人でどうにか出来る範疇を越えている。
すぐに小泉に報告しなければならん状況だろう。
俺はもう一度夢野の姿を見た。
ベッドに横たわる姿が痛々しくて見ていられなかった。
だけど、ゆっくりしている時間はない。
夢野を一人にするのは気が引けるが、いつまでもこの家に滞在してていい訳でもないし─────
「ゴメンね。せっかく来てくれたのに、嫌な思いさせて」
夢野は申し訳無さそうに呟く。
俺が帰ろうとしているのに気付いたんだろうか。
「あたしなら一人で大丈夫よ。いつものことだから……」
夢野はそう言うと作り笑いを浮かべた。
俺に心配させまいとしてるんだろうか。
「本当に一人で大丈夫か?」
俺はズレた布団を掛け直した。
うん、と夢野が頷くと同時にことりと音を立ててカーペットに何かが転がり落ちた。
「何か落ちたけど?」
落ちた物を手に取る。
それはキラキラした何かが入ったガラスの小瓶だった。
「あ、それ」
夢野が気付いて声を上げる。
「あたしのお守りなの。こういう時はどうしてだかいつも握ってて」
バスルームにいた時から握ってたんだろうか。
さっきは左手の怪我の方が大変だから右手までは見ていなかったが─────
小さな小瓶の中にある、銀色にキラキラ輝く小さなもの。
「唯ちゃんがね、お守りだよってくれた水晶なんだ」
俺は夢野の右手に小瓶を持たせてやった。
なんだか小さな子どもみたいだな、と思った。
夢野は疲れてしまったんだろうか。
そのまま目を閉じ、しばらくすると寝息を立てて眠りについた。
夢野が眠ったのを確認した後、俺はそっと部屋を後にした。
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