[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない！〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる！？

ep5.

ep5. 『死と処女(おとめ)』 女の子の武器

俺はなんと言って切り出そうかと少し考える。

『お前、3年にカツアゲされたろ？』なんてストレートには訊けないしな……

親や教師に言いたくないなんてよっぽどの事情があるんだろう。

どう話を持っていってどう着地させる？

俺は夢野のソックスをぼんやりと見ながら考える。

カツアゲの件も気になるが、夢野の所持するブランド品の事も気になるし─────

でも、俺がしつこく訊ねたら不自然過ぎないか？

なんでそこまで干渉してくるのかって事になるよな─────

俺が暫く黙り込んでしまったので夢野は怪訝そうな顔をしている。

「……佐藤君？」

あたし、なんか変な事言っちゃった？ゴメンね、気づかなくて、と夢野はすまなさそうな表情を浮かべた。

「いや！違うし！ちょっと考え事してただけで……！」

夢野は何も悪くねぇし、と俺はブンブンと首を横に振った。

「それならいいんだけど……あたし、いつもこんなだからさ」

夢野は諦めを込めたように視線を床に落とした。

「いつもって？」

俺が聞き返すと夢野は声を震わせた。

「佐藤君だけだよ……あたしにこんな風に優しくしてくれるの……」

クラスのみんな、いつもあたしとは距離を感じるし……と夢野は小さく呟く。

クラス内での距離感？

俺がさっき教室で覚えた違和感と関係があるんだろうか。

「クラスの奴らが夢野に対してなんか変って事なのか？」

俺は慎重に聞き返す。

「……うん。小学校の頃からそうなの」

少し間を置いて夢野がコクンと頷いた。

いつもそう。あたしからは周りの子がどんどん離れていっちゃうの、と夢野はその瞳に涙を浮かべた。

「そんなことねぇだろ、夢野には水森が居るんだろ？」

そのバッグに付いてるキーホルダーだって水森と交換したんだろ？と俺は咄嗟にフォローする。

「ちょっとプリアリから離れただけで、それ以外のことは普通に話してくれるんだろ？」

よくある事じゃねぇのか、と俺はなんとか夢野の言葉をを否定しようとした。

だけど、と夢野は続けた。

「唯ちゃん、本当に前とは別人みたいになっちゃって─────」

あたし、きっと唯ちゃんにとって要らない存在だったんだね、と夢野は大粒の涙を頬に流した。

ポタポタと涙が流れて床に落ちる。

結局あたしはいつもひとりぼっちなの、と夢野は更に泣いた。

「ちょっ……泣くなよ夢野！」

俺は女に泣かれるのが一番苦手なんだ。

女に泣かれたらどうしたらいいのかわかんなくなっちまう。

「夢野には俺が居るだろ？俺、役に立たたねぇかもしんねぇけど、お前が困ってることや悩んでることがあったら何でもするし！」

ややパニックになった俺は付き合ってる訳でも無いのに彼氏のようなセリフを言ってしまう。

めっちゃ不自然だし距離感無さすぎじゃねーか。

だけど、逆にコレはいい機会かもしれない。

「俺、夢野にいろいろと教えて貰ったしさ……俺に出来ることがあったら何でも言ってくれよ！」

マジでなんでも協力するし！と俺はややオーバーに夢野を励ました。

俺はポケットからタオルハンカチを出し、夢野に差し出した。

「俺、夢野の役に立ちたいんだ」

言った後でしまった、ちょっと大袈裟過ぎたか？と思ったのだが遅かった。

夢野の動きがピタリと止まる。

さっきのセリフ、やっぱり不自然だったろうか。

何か変だと夢野に勘付かれた？

「佐藤君、ほんとう……？」

目に涙を浮かべた夢野が俺を見ていた。

ああ、と俺が頷くと夢野はゆっくりとこう言った。





「……じゃあ、お言葉に甘えてお願いしてもいい？」