178 / 1,060
ep.4.
ep4. 「暴かれた世界」 待ち続けた10年と無価値な15年
しおりを挟む
正直言って俺は心のどこかで期待してたんだ。
いつか母親が家に戻ってくるんじゃないかって。
これは誰にも言った事はない。
けど、いつ母親が帰って来てもすぐに暮らせるようにって家の中の掃除も庭の手入れも欠かさなかった。
母ちゃんがいずれ帰ってくるんじゃないかって、それは俺の願望に過ぎねぇってことぐらい解ってる。
ただの自己満足だよこんなのは。
母親は電話の一本すら寄越した事はねぇんだ。
それなのに。
俺は心のどっかでずっと待ってたし期待してた。
想像してくれよ。
“学校から帰ったら、もしかして母ちゃんが居るんじゃねぇか”って。
毎日、そんなふうに考えながら下校するんだ。
一縷の望みをかけて玄関の扉を開ける。
でも居ねぇんだ。
家には誰も居ない。
誰も居ねぇんだ。
あれから母ちゃんは一度だって帰って来た事はない。
爺さん婆さんが死んでから、真っ暗な家でいつも一人だった。
飯も一人、風呂も一人、寝るのも一人だ。
寂しくないはずがねぇだろ。
爺さん婆さんが生きてる頃も寂しかった。
物心が付いてからだからおそらく10年くらい?
そうだ、10年だな。
俺はずっと母ちゃんを待ってたんだ。
俺はこの10年間、ずっと母ちゃんの姿を探してた。
今年の俺の誕生日。
確証はないけどなんとなく“今年は母ちゃんが帰ってくるんじゃないか”って思ったんだ。
馬鹿げてるよな。
子どもじみてるって自分でも思うよ。
本当に嫌になるよな。
自分で自分が嫌いになる。
けどさ、その時の俺は本気だったんだ。
朝からそわそわして落ち着かなかった。
いつもより早く起きて家中の掃除をした。
庭の手入れもして、布団も干した。
バイト代が入ったからお茶と茶菓子の準備もした。
母ちゃんに話したいこと、聞いて欲しいことが山ほどあったんだ。
放課後はダッシュして家に戻った。
母ちゃんが家に居る気がしたんだ。
だけど。
家には誰も居なかった。
書き置きや生活費の入った封筒すらなかった。
そうだよな。
俺が勝手に期待して勝手に落ち込んでるだけなんだ。
意味なんかない。
意味なんかねぇんだ。
一年のうちで1日だけでもいいから俺のことを思い出して欲しかったなんて願望に過ぎねぇんだ。
多分、母ちゃんの中で俺の優先順位はきっと最下位なんだろう。
カフェで飲むようなドリンク一杯分以下の価値なんだろうぜ。
あらゆる物事の中で俺は最下位で、蔑ろにされて然るべき存在なんだろうな。
母ちゃんにとって俺は何の意味も持たないんだ。
きっと邪魔なんだろう。
俺が居たら不都合なんだろ?
俺が生まれて14年。
腹の中に居た時期を含めて15年くらいだよな。
母ちゃんの人生にとってこの15年って無意味で無価値だったんだな。
15年をドブに捨てさせて悪かったな。
でもそれってお互い様だろ?
俺にとってのこの人生もきっと意味なんかねぇんだ。
たまたま生きてるだけ。
ただ死ななかっただけだ。
本来はこんなことを言うべきじゃねぇって解ってるよ。
でも今はそんな気分なんだ。
いつか母親が家に戻ってくるんじゃないかって。
これは誰にも言った事はない。
けど、いつ母親が帰って来てもすぐに暮らせるようにって家の中の掃除も庭の手入れも欠かさなかった。
母ちゃんがいずれ帰ってくるんじゃないかって、それは俺の願望に過ぎねぇってことぐらい解ってる。
ただの自己満足だよこんなのは。
母親は電話の一本すら寄越した事はねぇんだ。
それなのに。
俺は心のどっかでずっと待ってたし期待してた。
想像してくれよ。
“学校から帰ったら、もしかして母ちゃんが居るんじゃねぇか”って。
毎日、そんなふうに考えながら下校するんだ。
一縷の望みをかけて玄関の扉を開ける。
でも居ねぇんだ。
家には誰も居ない。
誰も居ねぇんだ。
あれから母ちゃんは一度だって帰って来た事はない。
爺さん婆さんが死んでから、真っ暗な家でいつも一人だった。
飯も一人、風呂も一人、寝るのも一人だ。
寂しくないはずがねぇだろ。
爺さん婆さんが生きてる頃も寂しかった。
物心が付いてからだからおそらく10年くらい?
そうだ、10年だな。
俺はずっと母ちゃんを待ってたんだ。
俺はこの10年間、ずっと母ちゃんの姿を探してた。
今年の俺の誕生日。
確証はないけどなんとなく“今年は母ちゃんが帰ってくるんじゃないか”って思ったんだ。
馬鹿げてるよな。
子どもじみてるって自分でも思うよ。
本当に嫌になるよな。
自分で自分が嫌いになる。
けどさ、その時の俺は本気だったんだ。
朝からそわそわして落ち着かなかった。
いつもより早く起きて家中の掃除をした。
庭の手入れもして、布団も干した。
バイト代が入ったからお茶と茶菓子の準備もした。
母ちゃんに話したいこと、聞いて欲しいことが山ほどあったんだ。
放課後はダッシュして家に戻った。
母ちゃんが家に居る気がしたんだ。
だけど。
家には誰も居なかった。
書き置きや生活費の入った封筒すらなかった。
そうだよな。
俺が勝手に期待して勝手に落ち込んでるだけなんだ。
意味なんかない。
意味なんかねぇんだ。
一年のうちで1日だけでもいいから俺のことを思い出して欲しかったなんて願望に過ぎねぇんだ。
多分、母ちゃんの中で俺の優先順位はきっと最下位なんだろう。
カフェで飲むようなドリンク一杯分以下の価値なんだろうぜ。
あらゆる物事の中で俺は最下位で、蔑ろにされて然るべき存在なんだろうな。
母ちゃんにとって俺は何の意味も持たないんだ。
きっと邪魔なんだろう。
俺が居たら不都合なんだろ?
俺が生まれて14年。
腹の中に居た時期を含めて15年くらいだよな。
母ちゃんの人生にとってこの15年って無意味で無価値だったんだな。
15年をドブに捨てさせて悪かったな。
でもそれってお互い様だろ?
俺にとってのこの人生もきっと意味なんかねぇんだ。
たまたま生きてるだけ。
ただ死ななかっただけだ。
本来はこんなことを言うべきじゃねぇって解ってるよ。
でも今はそんな気分なんだ。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
もし学園のアイドルが俺のメイドになったら
みずがめ
恋愛
もしも、憧れの女子が絶対服従のメイドになったら……。そんなの普通の男子ならやることは決まっているよな?
これは不幸な陰キャが、学園一の美少女をメイドという名の性奴隷として扱い、欲望の限りを尽くしまくるお話である。
※【挿絵あり】にはいただいたイラストを載せています。
「小説家になろう」ノクターンノベルズにも掲載しています。表紙はあっきコタロウさんに描いていただきました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる