147 / 1,060
ep.3.
ep3 . 「嘘つき黒ギャルと初めての男女交際」 ハイエースと助手席の見知らぬ男
しおりを挟む
一瞬、俺は何か聞き間違えたのかとも思った。
……え?
どういう意味だ?
俺はチラリと諸星キクコを横目で見た。
いつも威勢のいい強気な黒ギャルがとてつもなく小さく、幼く感じられた。
さっき人目を憚らず大声で泣いたせいか、ガッツリしたメイクは殆ど落ちていた。
その素顔は年相応、いや逆に実年齢より幼くも見えた。
「……アンタも子どもじゃないんだし、意味くらいわかるでしょ」
諸星キクコは俯いたままで呟く。
そうだな、と俺は頷いた。
「確かにもう子どもじゃ無ぇよな」
けど、と俺は続けてこう言った。
「大人でも無ぇだろ?」
諸星キクコは黙っていた。
前後の流れからなんとなく諸星キクコの身に起こった出来事の想像は付いた。
全部本人に喋らせるというのは酷にも思えた。
「……別に言いたくなけりゃ無理する事ぁ無ぇぜ?」
相手がどうとか今更聞く気にもなれなかった。
聞いたところで俺に何かができるとも、御月との仲を修復してやれるとも思えなかった。
俺はただ黙って諸星キクコの次の言葉を待った。
今日は帰るならそれでもいい。
帰りたく無いならそれでもいい。
俺はただこの黒ギャルの横に座っていた。
思うようにしたらいい、ただそれだけだった。
10月の風に乗せて沈黙が流れる。
秋の入口の夕方は涼しく、沸騰して混乱した感情を冷やしてくれるかのようだった。
諸星キクコはポツリポツリと言葉を発し始めた。
俺はただそれを黙って聞いていた。
「……いつだったかな、夏休み頃だったと思うんだけど自転車のチェーンが外れて困ってた事があったんだよね」
「その時、大学生くらいの男の人が助けてくれたの。テキパキ直してくれてさ。メッチャいい人だなって思った」
「……その後少し経ってさ、大雨が降ってる日にアタシ、傘持ってなくてさ。駅からダッシュで家まで帰ろうとしてたの」
「そしたらさ、車がアタシの横に止まってさ。見たらあの時の男の人なの」
大雨だし濡れちゃうでしょ?送るから乗りなよ、って言われてさ。
前回助けてもらった事あったからゼンゼン知らない人って訳じゃないでしょ?
いい人って知ってたし、確かに凄いゲリラ豪雨だったから既にビショ濡れになってたんだよね。
だから乗せてもらったの。その車に。
その男の人、一人だと思ったら助手席にもう一人居てさ。
でもこの男の人の友達かなって思ってその時は深く考えなかったの。
後部座席に乗ってさ、家はどっちって聞かれたからちゃんと答えたの。車ならすぐの距離だったから。
そしたらさ、車が急にスピード上げて家の前を通り過ぎてさ。
“キクコちゃんだっけ…?せっかくだからちょっとドライブして行かない?”って言われたの。
アタシよくわかんなくてさ。“どこに行くの?”って聞いたのよ。
そしたらその男の人と助手席の人がニヤって笑ってるのが見えたの。
なんとなく嫌な予感がしたけど、車は家の近くを走ってたしさ。そんな心配するような事でも無いなって思ったんだよね。
あの時の自分を全力で止めたいわ。
車の外の景色がドンドン山の中に向かってるのが見えて……
ここまで聞いて、予想できている結末に俺は戦慄した。なんでこんな事になってしまったんだろうと心の底から思った。
……え?
どういう意味だ?
俺はチラリと諸星キクコを横目で見た。
いつも威勢のいい強気な黒ギャルがとてつもなく小さく、幼く感じられた。
さっき人目を憚らず大声で泣いたせいか、ガッツリしたメイクは殆ど落ちていた。
その素顔は年相応、いや逆に実年齢より幼くも見えた。
「……アンタも子どもじゃないんだし、意味くらいわかるでしょ」
諸星キクコは俯いたままで呟く。
そうだな、と俺は頷いた。
「確かにもう子どもじゃ無ぇよな」
けど、と俺は続けてこう言った。
「大人でも無ぇだろ?」
諸星キクコは黙っていた。
前後の流れからなんとなく諸星キクコの身に起こった出来事の想像は付いた。
全部本人に喋らせるというのは酷にも思えた。
「……別に言いたくなけりゃ無理する事ぁ無ぇぜ?」
相手がどうとか今更聞く気にもなれなかった。
聞いたところで俺に何かができるとも、御月との仲を修復してやれるとも思えなかった。
俺はただ黙って諸星キクコの次の言葉を待った。
今日は帰るならそれでもいい。
帰りたく無いならそれでもいい。
俺はただこの黒ギャルの横に座っていた。
思うようにしたらいい、ただそれだけだった。
10月の風に乗せて沈黙が流れる。
秋の入口の夕方は涼しく、沸騰して混乱した感情を冷やしてくれるかのようだった。
諸星キクコはポツリポツリと言葉を発し始めた。
俺はただそれを黙って聞いていた。
「……いつだったかな、夏休み頃だったと思うんだけど自転車のチェーンが外れて困ってた事があったんだよね」
「その時、大学生くらいの男の人が助けてくれたの。テキパキ直してくれてさ。メッチャいい人だなって思った」
「……その後少し経ってさ、大雨が降ってる日にアタシ、傘持ってなくてさ。駅からダッシュで家まで帰ろうとしてたの」
「そしたらさ、車がアタシの横に止まってさ。見たらあの時の男の人なの」
大雨だし濡れちゃうでしょ?送るから乗りなよ、って言われてさ。
前回助けてもらった事あったからゼンゼン知らない人って訳じゃないでしょ?
いい人って知ってたし、確かに凄いゲリラ豪雨だったから既にビショ濡れになってたんだよね。
だから乗せてもらったの。その車に。
その男の人、一人だと思ったら助手席にもう一人居てさ。
でもこの男の人の友達かなって思ってその時は深く考えなかったの。
後部座席に乗ってさ、家はどっちって聞かれたからちゃんと答えたの。車ならすぐの距離だったから。
そしたらさ、車が急にスピード上げて家の前を通り過ぎてさ。
“キクコちゃんだっけ…?せっかくだからちょっとドライブして行かない?”って言われたの。
アタシよくわかんなくてさ。“どこに行くの?”って聞いたのよ。
そしたらその男の人と助手席の人がニヤって笑ってるのが見えたの。
なんとなく嫌な予感がしたけど、車は家の近くを走ってたしさ。そんな心配するような事でも無いなって思ったんだよね。
あの時の自分を全力で止めたいわ。
車の外の景色がドンドン山の中に向かってるのが見えて……
ここまで聞いて、予想できている結末に俺は戦慄した。なんでこんな事になってしまったんだろうと心の底から思った。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
もし学園のアイドルが俺のメイドになったら
みずがめ
恋愛
もしも、憧れの女子が絶対服従のメイドになったら……。そんなの普通の男子ならやることは決まっているよな?
これは不幸な陰キャが、学園一の美少女をメイドという名の性奴隷として扱い、欲望の限りを尽くしまくるお話である。
※【挿絵あり】にはいただいたイラストを載せています。
「小説家になろう」ノクターンノベルズにも掲載しています。表紙はあっきコタロウさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる