106 / 1,153
ep2 .
ep2 . 「訳有り令嬢と秘密の花園」 告白
しおりを挟む
どういう事だろうか。
一瞬の緊張が二人の間に走ったかのように思えた。
どうして、と口から出かけた言葉を俺は紙一重で押し殺した。
深く聞いてはいけない気がした。
迂闊に触れれば彼女を傷付けてしまう話題である事は馬鹿の俺ですら理解できた。
彼女はゆっくりと遠くを見る。
金色の髪が風に揺れた。
わたくし……以前に大きな事故に遭った事がありますの、と花園リセは小さく呟いた。
大きな事故。
この貴婦人の御令嬢が?
にわかには信じがたかった。
しかし、いよいよこれはこちらからは触れてはいけない話題だぞ、と俺は確信した。
こちらの緊張を読み取ったかのように彼女は小さく微笑を浮かべた。
「だから、婚約は白紙ということになりましたの……ただそれだけの話なのですけど」
変なこと言ってしまってごめんなさいね、ビックリしたでしょう、と花園リセは俺の目を真っ直ぐに見て穏やかに笑った。
いや、と俺は首を振った。
でも良かったんじゃねぇの、と俺はつい口にしてしまう。
「え?」
花園リセが不思議そうな顔で俺を見る。
駄目だ、こんな事言っちゃいけない、とは頭では理解できているつもりだった。
しかし俺は自分が喋るのを自分自身で止められなかった。
「良かったじゃん、結婚前に相手の本性が分かってさ。相手の奴、リセさんが大変な時に助けるどころか見捨てて行くような男だったって事だろ?」
花園リセは驚いた様子で俺を見ていた。
「そんな奴とうっかり籍入れないで逆に良かったじゃねぇか。リセさんにはもっといい男が絶対居るんだからよ」
それに、と更に俺は余計な一言を言ってしまう。
「俺だったら絶対に怪我した婚約者にそんな思いさせないのに。意地でも絶対に婚約破棄なんかしねぇよ」
彼女はその大きな瞳を見開いて言葉を詰まらせた。
ゆっくりとした風が吹き、更に沈黙が流れる。
にゃあ、とマサムネが彼女の膝から降り、俺の懐に飛び込んでくる。
しまった、と俺は思った。
なんて事を言ってしまったのだろう。
俺はマサムネを抱き上げた。
俺は心底後悔した。
マサムネのしっぽがクルクルと俺の膝の上で動く。
彼女を傷付けるような事を言ってしまった。
花園リセはこんなにも俺とマサムネに親切にしてくれたって言うのに。
恩を仇で倍返ししたような形になったと思った俺は頭の中がパニックになっていた。
馬鹿か俺は。
最低だな。
花園リセが無言で俺の顔を見つめる。
一呼吸置くと彼女はふふ、と小さく笑った。
頼もしいんですのね、小さな騎士さんは、と彼女は俺をからかうように微笑んだ。
にゃあ、とマサムネが鳴き俺の膝に小さな爪を立てる。
「……あなたのお姫様に選ばれる女の子が羨ましいですわ」
そう言った花園リセは今度は悪戯っぽく笑った。
揶揄われてるのは俺の方?
一瞬の緊張が二人の間に走ったかのように思えた。
どうして、と口から出かけた言葉を俺は紙一重で押し殺した。
深く聞いてはいけない気がした。
迂闊に触れれば彼女を傷付けてしまう話題である事は馬鹿の俺ですら理解できた。
彼女はゆっくりと遠くを見る。
金色の髪が風に揺れた。
わたくし……以前に大きな事故に遭った事がありますの、と花園リセは小さく呟いた。
大きな事故。
この貴婦人の御令嬢が?
にわかには信じがたかった。
しかし、いよいよこれはこちらからは触れてはいけない話題だぞ、と俺は確信した。
こちらの緊張を読み取ったかのように彼女は小さく微笑を浮かべた。
「だから、婚約は白紙ということになりましたの……ただそれだけの話なのですけど」
変なこと言ってしまってごめんなさいね、ビックリしたでしょう、と花園リセは俺の目を真っ直ぐに見て穏やかに笑った。
いや、と俺は首を振った。
でも良かったんじゃねぇの、と俺はつい口にしてしまう。
「え?」
花園リセが不思議そうな顔で俺を見る。
駄目だ、こんな事言っちゃいけない、とは頭では理解できているつもりだった。
しかし俺は自分が喋るのを自分自身で止められなかった。
「良かったじゃん、結婚前に相手の本性が分かってさ。相手の奴、リセさんが大変な時に助けるどころか見捨てて行くような男だったって事だろ?」
花園リセは驚いた様子で俺を見ていた。
「そんな奴とうっかり籍入れないで逆に良かったじゃねぇか。リセさんにはもっといい男が絶対居るんだからよ」
それに、と更に俺は余計な一言を言ってしまう。
「俺だったら絶対に怪我した婚約者にそんな思いさせないのに。意地でも絶対に婚約破棄なんかしねぇよ」
彼女はその大きな瞳を見開いて言葉を詰まらせた。
ゆっくりとした風が吹き、更に沈黙が流れる。
にゃあ、とマサムネが彼女の膝から降り、俺の懐に飛び込んでくる。
しまった、と俺は思った。
なんて事を言ってしまったのだろう。
俺はマサムネを抱き上げた。
俺は心底後悔した。
マサムネのしっぽがクルクルと俺の膝の上で動く。
彼女を傷付けるような事を言ってしまった。
花園リセはこんなにも俺とマサムネに親切にしてくれたって言うのに。
恩を仇で倍返ししたような形になったと思った俺は頭の中がパニックになっていた。
馬鹿か俺は。
最低だな。
花園リセが無言で俺の顔を見つめる。
一呼吸置くと彼女はふふ、と小さく笑った。
頼もしいんですのね、小さな騎士さんは、と彼女は俺をからかうように微笑んだ。
にゃあ、とマサムネが鳴き俺の膝に小さな爪を立てる。
「……あなたのお姫様に選ばれる女の子が羨ましいですわ」
そう言った花園リセは今度は悪戯っぽく笑った。
揶揄われてるのは俺の方?
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる