105 / 1,060
ep2 .
ep2 . 「訳有り令嬢と秘密の花園」 捨てられた令嬢と婚約破棄
しおりを挟む
「こんにちは。佐藤さん」
よう、と俺は何事も無かったように返事を返す。
花園リセは穏やかな微笑みを浮かべている。
ところで佐藤さん、さっき後ろに何か持ってらっしゃいましたか、と彼女はその微笑みを浮かべたまま俺に問いかける。
バレていた。
どうしよう。
俺は咄嗟に誤魔化そうと何か気の利いた事を言うべく思考を巡らせる。
しかし。
何も思い浮かばない。
沈黙がゆっくりと流れる。
どうしよう。どうする?
今更隠すことも学生鞄に押し込むことも出来ない。
観念した俺はさっき買ってきた花を彼女の前に差し出した。
「あの……」
何て説明したらいいかわからない。
花って人にあげるときに何て言えばいい?
どうしよう、なんかやべーやつみたいじゃん俺。勘違いした変な挙動不審な奴みたいじゃんか俺。
俺は気ばかり焦って何も言えなくなった。
まあ、と花園リセが鈴のような声で笑う。
「これをわたくしに?」
俺は黙って頷いた。
なんとも説明が難しかった。
彼女はその白魚のような手で俺から花を受け取る。
嬉しいですわ、と花園リセはその花を愛おしそうに抱きしめるかのようにして微笑んだ。
なんか知らんけど喜んでくれてるみたいだしまあいいか、と俺は少しホッとした。
御令嬢の喜ぶ物なんて俺には想像もつかなかったから悪くないリアクションで本当に助かったと思った。
ふふ、と彼女は微笑みながら俺の顔を見た。
「殿方からお花を頂けるなんて思ってもみませんでしたから……」
意外な言葉だった。
彼女ほどの御令嬢ならたくさんの上流階級の男から花束や宝石を山のようにプレゼントされるのが日常茶飯事、といったイメージだったからだ。
いやいや、リセさんほどの人の所にだったら沢山の男から色んな花でもプレゼントでも山のように届くんだろ?と俺は感じたままに聞いてみた。
いいえ、と花園リセはゆっくりと首を横に振る。
「佐藤さんだけですわ」
わたくしのような人間を気にかけてくださる方は、と彼女は伏目がちに答えた。
「は?そんなハズ無ぇだろ。リセさんほどの容姿端麗で知性も教養もある女をほっとく男なんか居ねぇだろ?」
冗談めかして言ったのは失敗した。
彼女は黙って俯いてしまった。
え、嘘だろ。
ガチなのか?
え。俺、地雷踏んだ?
マジか?
「ねえ、佐藤さん」
花園リセは俺の目を真っ直ぐに見た。
「わたくし……以前に婚約破棄されてしまったことがありますの……」
予想外の斜め上に行く方向性の事実に俺は困惑した。
これほどまでに非の打ちどころの無い御令嬢が婚約破棄された?
嘘だろ?する側でなくてされた側?
よう、と俺は何事も無かったように返事を返す。
花園リセは穏やかな微笑みを浮かべている。
ところで佐藤さん、さっき後ろに何か持ってらっしゃいましたか、と彼女はその微笑みを浮かべたまま俺に問いかける。
バレていた。
どうしよう。
俺は咄嗟に誤魔化そうと何か気の利いた事を言うべく思考を巡らせる。
しかし。
何も思い浮かばない。
沈黙がゆっくりと流れる。
どうしよう。どうする?
今更隠すことも学生鞄に押し込むことも出来ない。
観念した俺はさっき買ってきた花を彼女の前に差し出した。
「あの……」
何て説明したらいいかわからない。
花って人にあげるときに何て言えばいい?
どうしよう、なんかやべーやつみたいじゃん俺。勘違いした変な挙動不審な奴みたいじゃんか俺。
俺は気ばかり焦って何も言えなくなった。
まあ、と花園リセが鈴のような声で笑う。
「これをわたくしに?」
俺は黙って頷いた。
なんとも説明が難しかった。
彼女はその白魚のような手で俺から花を受け取る。
嬉しいですわ、と花園リセはその花を愛おしそうに抱きしめるかのようにして微笑んだ。
なんか知らんけど喜んでくれてるみたいだしまあいいか、と俺は少しホッとした。
御令嬢の喜ぶ物なんて俺には想像もつかなかったから悪くないリアクションで本当に助かったと思った。
ふふ、と彼女は微笑みながら俺の顔を見た。
「殿方からお花を頂けるなんて思ってもみませんでしたから……」
意外な言葉だった。
彼女ほどの御令嬢ならたくさんの上流階級の男から花束や宝石を山のようにプレゼントされるのが日常茶飯事、といったイメージだったからだ。
いやいや、リセさんほどの人の所にだったら沢山の男から色んな花でもプレゼントでも山のように届くんだろ?と俺は感じたままに聞いてみた。
いいえ、と花園リセはゆっくりと首を横に振る。
「佐藤さんだけですわ」
わたくしのような人間を気にかけてくださる方は、と彼女は伏目がちに答えた。
「は?そんなハズ無ぇだろ。リセさんほどの容姿端麗で知性も教養もある女をほっとく男なんか居ねぇだろ?」
冗談めかして言ったのは失敗した。
彼女は黙って俯いてしまった。
え、嘘だろ。
ガチなのか?
え。俺、地雷踏んだ?
マジか?
「ねえ、佐藤さん」
花園リセは俺の目を真っ直ぐに見た。
「わたくし……以前に婚約破棄されてしまったことがありますの……」
予想外の斜め上に行く方向性の事実に俺は困惑した。
これほどまでに非の打ちどころの無い御令嬢が婚約破棄された?
嘘だろ?する側でなくてされた側?
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる