[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

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ep0. 「真夏の夜の爪」 61.暴走と破裂

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午後八時前。

約束の時間より少し早いはずだった。

秘密基地のドアに手をかけた少年はその動きを止めた。

明かりもつけない暗い部屋のソファに一人マコトが座っていた。

ペットボトルの紅茶に口を付け、少年の姿に気がつくとボトルの蓋を閉めてテーブルに置いた。

ガックン、と少し明るめの声でマコトが少年を見た。

少年は一瞬息を飲んだ。

いつもフードを深くかぶっているマコトが今日はその銀色の髪をさらけ出していた。パーカーのフードはその背中に張り付いている。

いつもこうしてたら良かったのに。なんだよ可愛いじゃねぇかちくしょう、と少年は心の中で毒付いた。

「……良かった。来てくれたんだ」

マコトは心底ホッとした様子で呟いた。

もしかして来てくれないんじゃないかと思ってた、と泣きそうな表情を浮かべた。

「何でだよ。俺はお前との約束ぜってぇ守るし」

少年はやや緊張気味に答えた。

完璧に声が上擦っていた。

開幕当初から自分の心臓が破裂しそうになるのを少年は感じた。

早めに来た筈だったのに、と少年は後悔した。

もっと早くに家を出るべきだった。

心の準備が追いつかない。

マコトの座っているソファからやや離れた壁にもたれ掛かるような体勢で地べたに少年は座った。

いつもの少年の定位置の椅子ではなかった。

ガックン?とマコトが不思議そうな顔をした。

いや、何でも無ぇし、と少年は誤魔化した。

少年はまじまじとマコトの顔を見た。

月明かりとモバイルバッテリーの僅かな動作ランプでダークブルーの深海のような明るさの室内。

今日のマコトの顔は今までとは全く別人のようだった。

ちくしょう、と少年は拳で壁を軽く叩いた。何でこンなに可愛いんだよ、反則だろ、と少年は小さく呟いた。

え?何か言った?とマコトが聞き返す。

何でも無ぇよ気にすンな、と少年は上擦った声で誤魔化す。

少年の心臓は彼の意思と関係なく好き勝手に暴れていた。シフトレバーも同様だった。

その時間はあったのに対策を取らなかった判断がそもそも誤りだったのだ。

少年は死ぬほど後悔していた。自分自身の身体のパーツ性能を少年自身が過小評価していたのだ。

今宵のこの時間だけが少年とマコトに与えられた最後の時間だった。

何から話せばいいか、何から伝えるべきか。

少年が考えを纏めようとすればするほど考えていた台詞も思いも心臓とシフトレバーの暴走に引っ張られてバラバラになっていく。

えっと、と少年は言葉を詰まらせた。

こういう時って男がリードすンの?え?俺?

ここで少年が自分がほぼノープランだった事に気がついた。

全身に冷や汗が流れる。

どうすンだよこれ。こっからどう逆転するのか誰か教えてくれねぇか?もうこいつと会えるのこれで最後なんだぞ?ほぼ今生の別れなんだけど?少年は神に祈るような気持ちでその心臓をさらに抑える。

どうかしたの?とマコトが不思議そうに少年の顔を覗き込もうとする。

「ちょ……こっち来んな!」

思わず少年が声を荒げる。

え?とマコトが怪訝そうな表情を浮かべる。

え、いやそのこれは、と少年は取り繕おうとする。しかしどうにもならないと見るや観念してあっさりと白状した。

「駄目なンだよ……これ以上お前が近付いて来たら完璧に好きになっちまうだろ」

ガックン何言ってるの、とマコトは少し笑った。

「……そんなの僕も同じだよ」

じゃあ益々ダメじゃねぇか、と少年は頬を赤く染めたまま呟いた。

お互い近付かないでどうすんのさ、とマコトは少年の顔を見つめた。

「……いや、駄目だ」

少年は必死で首を横に振った。

「あと二、三時間で確実に俺、お前のこと完全に好きになるわ。無理だこれ」

ふふ、それは光栄なことだね、とマコトは微笑を浮かべた。

「……そんなの僕も同じじゃないか。どうしてダメなのさ」

少年は自分の心臓を手で抑えながら答える。

「お前のこと完璧に好きになってももう最低十年は会えねぇンだろ?俺、どうやってお前の居ねぇ十年過ごせばいいンだよ」

お前は平気なンかよ、と今度は少年がマコトを見た。

……だからこそだよ、とマコトは少年の目を見て言った。








「だからこそ、僕の最初で最後のお願いを聞いて欲しい」
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