[200万PV達成]それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?

SPD

文字の大きさ
60 / 1,153
ep.0

ep0. 「真夏の夜の爪」 60.爪を切れ。傷がつくから

しおりを挟む
少年はシャワーを浴びながらずっとこの夏の全てに思いを巡らせていた。

昭和九十五年のこの夏。長いようで一瞬で終わりを迎えようとしている夏。

永遠に続くかのように思われた少年とマコトの二人の世界は今夜終わるのだ。




料理。食事。据え膳。
シャンディガフ。ミニ四駆。蝶の模様。
調子外れのシャボン玉の童謡。望まれなかった子ども。黄緑色のストロー。
十四歳。妊娠。後悔。
手術。卵巣。子宮。
三百円の指輪。約束。結婚。
折られたベンツマーク。苺のショートケーキ。下手くそな嘘。
コルトパイソン。リボルバー。銀色の拳銃。
子猫。片目。眼帯。
マグナ50。折れたミラー。タンデム。
海。汗ばむ背中。ペットボトルの水。
柔らかい胸の感触。体温。涙。
すれ違う友達。コバルトブルーの絵の具。片想い。
黒いパーカー。銀色の髪。ダボダボな服のサイズ。
人工的な葡萄の香り。泣き声。その横顔。




「雪城マコト」




少年はその名を呼んだ。

返事はないが自分自身の身体がそれに反応していた。

いつもの事だが制御不可だった。何一つ自分の思い通りにはならなかった。

シフトレバーが硬いせいで現在地を発進すらできずにいる事に誰よりも少年自身が戸惑っていた。

少しの間逡巡した後、悩んだ末にシャワーの蛇口温度設定のツマミを勢いを付けてフルに回す。

数秒後に冷え切った水が少年の身体めがけて矢のように降りかかる。無言のまま少年はそれを全て浴びる。

夏の終わりの宵の時間帯は気温も心なしか控えめだった。身体がどんどん冷え切っていく。

もう少し冷やしていこう。少年は涙も汗も迷いも全て洗い流した。




シャワーから上がると少年はJAのロゴ入りの使い倒してゴワゴワになったスポーツタオルで身体を拭いた。

赤いTシャツと学生服のズボンを履き、靴下を履いた。

麦茶を飲みながらちゃぶ台の上に置いていた爪切りで爪を切った。

短くし過ぎて深爪しそうになったが概史のアドバイスを思い出した。

多分これくらいだろうか。爪切りの裏側の爪やすりで切り口を丸くした。

少年はなんとも言えない気分に襲われた。


爪。つめ。ツメ。


少年は自分の両手をじっと見た。
俺はこの手をどうするんだろう?
この指をどうするんだろう?
この爪はどうなるんだろう?
考えても何も答えは得られなかった。



いつも通りにワックスで髪をセットする。

降りた前髪を立たせて後ろに持っていく。いつものヘアスタイルだった。

俺は大人になるのか?鏡に映った自分自身に少年は問いかけた。

鏡の奥の自分は黙っていた。どこか泣きそうな顔であるようにすら思えた。

短ランを羽織るとボタンを留めずに少年は目を閉じ両頬を叩いた。

カラーボックスの上にあるフォトフレームを手に取ると行ってきます、と呟き少年は自宅を後にした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...