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3章:学校生活
7:昼休み その1
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昼休み。俺のクラスの外がいつもよりも騒がしかった。「転校生:ガレット」を一目見ようと他のクラスからも野次馬のように生徒がやってきていた。やっぱり、みんな、気になっているんだと思う。転校生がどういう姿をしているのか。聞こえてくる声はやはり女子生徒のものが多い。ドアの隙間からガレットの方に視線を向けたり、小さな黄色い歓声を上げたりしている。まるで、映画撮影中の芸能人を見ているかのように眺めていた。
ガレットは、先ほどの続き、という感じで、クラスメイトに囲まれていた。さっきの続きの話をしたい子もいるだろうし、お弁当を持ってきている子もいる。多分、ガレットと一緒に食べたいんだろうな、と思った。
ガレットのクラスメイトに対する態度は、穏やかで柔らかいものであった。隣から談笑も聞こえてきた。もうすでにクラスの中に打ち解けているような気がする。
クラスメイトと親しくしゃべっているガレットを見ていると、なんだか、俺は邪魔者かもしれない、という想いが強くなっていく。
ガレットの視線が、俺の方に向かないうちに、そっと俺はその場を離れて、屋上へと向かった。
「……」
あの場から離れたくて、行き当たりばったりで、屋上へ来てしまった。誰もいない屋上にはもったいないくらいの太陽が照っていた。
いつも弁当を食べている場所に座りこんだ。今日は弁当はない。勢いで出てきて、置いてきてしまった。ガレット、あの弁当、もう食べてるかな。なんてことを思う。
はあ、と一つ大きなため息をついた。
俺は、やっぱり、邪魔者なのかもしれない。
ガレットが打ち解けていることに嫉妬してるとか、俺がいなくても、みたいな卑屈な気持ちではない。
ガレットがクラスメイトと良好な関係を築くためには、悪評が立っていて、お世辞にも人当たりも、愛想もいい、とは言えない俺は、いない方がいいのかな、なんて純粋に思ってしまった。多分、料理がうまい人も、俺よりも一緒に過ごしていて楽しい人も、あの中にいると思うから。
今頃、ガレットはみんなで弁当を食べているのかもしれない。そちらの方が、彼にとってはいいだろう。特に話すのが特別うまいわけでも、一緒にいて楽しいわけでもない俺と一緒に食べるより、クラスで食べたほうがきっと楽しいだろうから。
「……お腹、すいたな」
つい、漏れてしまった。
勢いで出てきてしまったから、今の俺は何も持っていない。
でも、今更戻ったって、ガレットが楽しく食事をしているところを邪魔してしまうと思ったから。多分、ガレットが気を遣ってくれそうだけれど、それはそれで周りにも、ガレットにも申し訳ない。
本当は、ガレットと二人で食べる弁当を、楽しみにしていた。
心の中に溜まった感情を吐き出すように、もう一つ、大きなため息が口から漏れた瞬間だった。
俺が開ける以外は、めったに開かない屋上の扉が開く。びっくりして、扉の方へ視線を向ける。もしかして、誰かが使おうとしていたのかな。でも、入学して数か月、ここに人は誰も来たことがなかったから。
「え……?」
俺の口から間抜けな声が漏れた。
「大事なものを忘れているよ。章太郎」
そこにいたのは、二人分の弁当箱を持ったガレットだったから。
ガレットは、先ほどの続き、という感じで、クラスメイトに囲まれていた。さっきの続きの話をしたい子もいるだろうし、お弁当を持ってきている子もいる。多分、ガレットと一緒に食べたいんだろうな、と思った。
ガレットのクラスメイトに対する態度は、穏やかで柔らかいものであった。隣から談笑も聞こえてきた。もうすでにクラスの中に打ち解けているような気がする。
クラスメイトと親しくしゃべっているガレットを見ていると、なんだか、俺は邪魔者かもしれない、という想いが強くなっていく。
ガレットの視線が、俺の方に向かないうちに、そっと俺はその場を離れて、屋上へと向かった。
「……」
あの場から離れたくて、行き当たりばったりで、屋上へ来てしまった。誰もいない屋上にはもったいないくらいの太陽が照っていた。
いつも弁当を食べている場所に座りこんだ。今日は弁当はない。勢いで出てきて、置いてきてしまった。ガレット、あの弁当、もう食べてるかな。なんてことを思う。
はあ、と一つ大きなため息をついた。
俺は、やっぱり、邪魔者なのかもしれない。
ガレットが打ち解けていることに嫉妬してるとか、俺がいなくても、みたいな卑屈な気持ちではない。
ガレットがクラスメイトと良好な関係を築くためには、悪評が立っていて、お世辞にも人当たりも、愛想もいい、とは言えない俺は、いない方がいいのかな、なんて純粋に思ってしまった。多分、料理がうまい人も、俺よりも一緒に過ごしていて楽しい人も、あの中にいると思うから。
今頃、ガレットはみんなで弁当を食べているのかもしれない。そちらの方が、彼にとってはいいだろう。特に話すのが特別うまいわけでも、一緒にいて楽しいわけでもない俺と一緒に食べるより、クラスで食べたほうがきっと楽しいだろうから。
「……お腹、すいたな」
つい、漏れてしまった。
勢いで出てきてしまったから、今の俺は何も持っていない。
でも、今更戻ったって、ガレットが楽しく食事をしているところを邪魔してしまうと思ったから。多分、ガレットが気を遣ってくれそうだけれど、それはそれで周りにも、ガレットにも申し訳ない。
本当は、ガレットと二人で食べる弁当を、楽しみにしていた。
心の中に溜まった感情を吐き出すように、もう一つ、大きなため息が口から漏れた瞬間だった。
俺が開ける以外は、めったに開かない屋上の扉が開く。びっくりして、扉の方へ視線を向ける。もしかして、誰かが使おうとしていたのかな。でも、入学して数か月、ここに人は誰も来たことがなかったから。
「え……?」
俺の口から間抜けな声が漏れた。
「大事なものを忘れているよ。章太郎」
そこにいたのは、二人分の弁当箱を持ったガレットだったから。
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