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第3章:それからの日々
第25話 それからの日々 その3
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コートを着てスーパーへと向かう。外は曇っていて風が吹いている。シチューのルーを買って、あとはアイスも買って置こうか。ヨリが食べるかもしれないし。そんなことを考えながら歩いていた。
「あ……」
スーパーのすぐ側、ちょうどヨリと再開した場所で俺は立ち止まってしまった。
ヨリがスーパーから出てきたから。
両手には凹凸の出来たビニール袋。もしかしたら買いだしとかなのかもしれない。忙しいだろうから声は掛けないでおこう、再び歩きだそうとしたところだった。
「え……?」
俺の口から間の抜けた、そして動揺したような声が漏れてしまう。
ヨリの後ろから女の人が歩いていた。オレンジ色の髪の毛で派手な服を着たショートカットの綺麗な女の人。二人が仲良く会話しながらスーパーから出てきた。ヨリもなんだか楽しそうな雰囲気で何かを話している。手伝い、って言ってたから友達とかその学部の同期、とかなんだろう。それこそ「油彩の子」とも言ってたから。彼女、とか恋人、ではないはず。少女漫画とかドラマとかでも知らない人と歩いていたら友達だった、とかはよくある話だと思うから。
けれども、妙に俺の心臓が嫌な音を立てていた。ヨリが女の子といるところを見たことがなかったから。もしかしたら、そのうちに、本当にヨリがいなくなるんじゃないか、って思って。
恐怖に似た感情が走った。
「あ、りせ」
けれどもヨリはそんなことあり得ない、と言わんばかりに本当にいつも通りに俺の方に駆け寄ってくる。その女性も俺の方に一緒に近づいてくる。まさか「付き合ってる人」とか紹介されるわけじゃないよな。心臓がバクバクと激しく鳴っている。
「そ、その方は……?」
震える声で俺は訊ねた。
「ああ、えーちゃん。油彩の子」
りせとまだ会ったことなかったよね。とヨリはえーちゃん、と呼ばれた女の人に言う。えーちゃん、と呼ばれた女の子は俺の方に視線を向ける。オレンジ色に紫色のメッシュを入れられた髪の毛。服装は随分と派手な服装。ファンタジーアニメに出てきてもおかしくないような服。でも、顔立ちの整った綺麗な女の人だった。
「式田と申します。北条くんの大学時代の同期です。いつも北条くんにお世話になっています」
ファッションの印象とは真逆の穏やかな響き。そしてぺこりと礼をされる。式田。あのパンフレットに書かれていた名前の人だ。
「は、はい……。天原です。ヨリ……北条君の、高校時代の、同級生、です」
北条くん、なんてりせに呼ばれたの初めて。とりせがぼそり、と言う。でも、そんなこと気にしている余裕がなかった。
「よろしくお願いします。天原さんのお話、北条くんからよく聞いてます。…………」
式田さんが何かを話している、というのは聞こえる。けれども、その話の内容まではきちんと聞き取れなかった。
「大丈夫ですか? 顔色悪いですよ?」
「りせ、どうしたの? 具合悪いの?」
「なんでも、ないです。大丈夫です」
失礼します、と二人に、ぺこりと目を合わさずに会釈して、俺はなにを動揺してるんだろう。もういい年なのに。大人の対応も取れなくて。
俺は逃げるようにしてその場から去った。
「あ……」
スーパーのすぐ側、ちょうどヨリと再開した場所で俺は立ち止まってしまった。
ヨリがスーパーから出てきたから。
両手には凹凸の出来たビニール袋。もしかしたら買いだしとかなのかもしれない。忙しいだろうから声は掛けないでおこう、再び歩きだそうとしたところだった。
「え……?」
俺の口から間の抜けた、そして動揺したような声が漏れてしまう。
ヨリの後ろから女の人が歩いていた。オレンジ色の髪の毛で派手な服を着たショートカットの綺麗な女の人。二人が仲良く会話しながらスーパーから出てきた。ヨリもなんだか楽しそうな雰囲気で何かを話している。手伝い、って言ってたから友達とかその学部の同期、とかなんだろう。それこそ「油彩の子」とも言ってたから。彼女、とか恋人、ではないはず。少女漫画とかドラマとかでも知らない人と歩いていたら友達だった、とかはよくある話だと思うから。
けれども、妙に俺の心臓が嫌な音を立てていた。ヨリが女の子といるところを見たことがなかったから。もしかしたら、そのうちに、本当にヨリがいなくなるんじゃないか、って思って。
恐怖に似た感情が走った。
「あ、りせ」
けれどもヨリはそんなことあり得ない、と言わんばかりに本当にいつも通りに俺の方に駆け寄ってくる。その女性も俺の方に一緒に近づいてくる。まさか「付き合ってる人」とか紹介されるわけじゃないよな。心臓がバクバクと激しく鳴っている。
「そ、その方は……?」
震える声で俺は訊ねた。
「ああ、えーちゃん。油彩の子」
りせとまだ会ったことなかったよね。とヨリはえーちゃん、と呼ばれた女の人に言う。えーちゃん、と呼ばれた女の子は俺の方に視線を向ける。オレンジ色に紫色のメッシュを入れられた髪の毛。服装は随分と派手な服装。ファンタジーアニメに出てきてもおかしくないような服。でも、顔立ちの整った綺麗な女の人だった。
「式田と申します。北条くんの大学時代の同期です。いつも北条くんにお世話になっています」
ファッションの印象とは真逆の穏やかな響き。そしてぺこりと礼をされる。式田。あのパンフレットに書かれていた名前の人だ。
「は、はい……。天原です。ヨリ……北条君の、高校時代の、同級生、です」
北条くん、なんてりせに呼ばれたの初めて。とりせがぼそり、と言う。でも、そんなこと気にしている余裕がなかった。
「よろしくお願いします。天原さんのお話、北条くんからよく聞いてます。…………」
式田さんが何かを話している、というのは聞こえる。けれども、その話の内容まではきちんと聞き取れなかった。
「大丈夫ですか? 顔色悪いですよ?」
「りせ、どうしたの? 具合悪いの?」
「なんでも、ないです。大丈夫です」
失礼します、と二人に、ぺこりと目を合わさずに会釈して、俺はなにを動揺してるんだろう。もういい年なのに。大人の対応も取れなくて。
俺は逃げるようにしてその場から去った。
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