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第2章:高校時代の俺達
第20話 過去と
しおりを挟む部屋に戻り、ベッドの上で、ぼんやりと数ヶ月前のことを思い出していた。
恋人、がいたことがある。高1の夏休みからヨリと出会う少し前まで。
その人は、俺よりも年上で、すごくスマートな人だった。俺よりも背が高くて、笑顔が綺麗な人。優しくて、何でも出来て、頭もよくって、その人と付き合えることが幸せだった。
その人に何でも教えてもらった。俺の知らないことを全部。知りたくなかったことまで教えてもらった。一人の時の寂しさも。
俺は、その人が好きだった。叶うことだったら一生いたい、とも思った。けれども、その人とはすぐに縁が切れてしまった。「ごめんね」って言われて。俺が飲み込めないまま一方的に
今思えば、その人に子ども扱いされてたんだと思う。俺の頭を撫でる手つきも、俺に何かを教える時の声も、恋人、というよりは、子どもを扱うみたいな仕草だったから。
ピアスを開けたのは、寂しかったから。寂しくって仕方がなくて開けた。痛みで、寂しいのを紛らわせたかったのかもしれない。けれども、思ったよりも痛くなかった。
ヨリは俺のことが好き。俺はヨリのことは…………わかんない。
わかんないままでいたい。
きっとないとは思うけれど、もし、俺がヨリを好きになったら、好きになって、どこかで別れたら、また、あの時みたいな気持ちを味わうのかもしれない。傷つきたく、ないな。
ヨリのことを、好きになりたくない、な。
そんなことを考えながら、自分の想いが分からないまま、夜が過ぎて、朝を迎える、を繰り返して、あっという間に月曜日になってしまった。
どういう顔で会えばいいんだろうか。いつものように二人分の弁当を作って、俺はヨリのいる美術室に向かう。
「おはよう、りせ」
ヨリは昨日みたいに絵を描いていた。俺より早く美術室に来ていて、俺が扉を開けると、顔をこちらに向けてくれた。やっぱり、綺麗な顔をしている。
「……おはよう。……どうしたの?」
「何が?」
「……寂しそうだから」
「……何でもないよ」
寂しかった時のことを思い出していたのが、ヨリにばれてしまったのかもしれない。もう一度、「本当になんでもない」って言ったら「そう」と言って、再びキャンバスの方に戻った。
――じゃあさ、僕が好きだって言ったら?
少しだけ、心臓の鼓動が速くなって、顔が熱くなる。あんな風に言われたから、ちょっと意識してしまった。
「りせ」
「何」
「りせのこと、好きだよ」
「……ありがと」
その言葉が嬉しくて、なんだか寂しかった。
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