壁の穴

麻生空

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6気になる隣人

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それは昼下がりの事だった。

午前から微かに響いていた音楽が急に高くなったのは。

何度か奇声が聞こえて来てギューンとベースの激しい音が鳴り響いた。

その後は音の洪水のようにただただうるさかったのだ。

挙げ句、壁を叩くような音も混じり思わず苦情を大家に言ったのだ。

「音だけじゃなくって、壁も叩いているのうで、家の壁にも穴が空きそうなんですよ」

嘘ではない。
それ程の音が響いていたのだ。

あの狂ったカップルには色々と迷惑を掛けられ続けていたし。

異臭騒動や水漏れ騒動、楽器や歌や音楽騒動。

その他にもゴミ出し問題とか、兎に角色々ありすぎる。

事実、電話からも隣の騒音が聞こえたらしい大家さんは、マッハのごとく対応してくれた。

お陰で、それからは静かに暮らしている。

よっぽど大家さんに言われた事が効いたのだろう。

ただ、何故かあれ以降たまに壁がミシミシと音がするのが気になるんだけど。

「そう言えば、最近ゴミ出しで遭遇することもなくなったわね」

それに、何時も二人で出掛けていたのに、あれ以来彼女さんを見かけていない事に気が付く。

「もしかして、別れたのかしら?」

まぁ、他人の家の男女のことにまで口出しするべきではないと思うも、他人の色恋沙汰ほど面白いものはない。
だって、自分には責任がないんだから。

無責任に色々騒ぎ立てられる。

「気になる~」

その内、近所の人にでも聞いてみようと決意するのだった。
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