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番外
虚言
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「ねぇ、アイリスさん。王様の奥さんは王妃でしょ、王子の奥さんって何?王子妃?」
王宮に部屋をとってもらって、一晩は泊めてもらうことになっていた。うきうきそわそわしている私の質問にアイリスさんは難しそうな顔をした。
「ベンネル様は王太子ですから王太子妃ですね。…しかし、アカリ様が王太子妃となることはありません」
「?何でですか?ベンネルさんプロポーズしてくれたのに」
「…ベンネル様は王太子です。婚約者の方がいらっしゃいます。メーレ・アウルム公爵令嬢。王家とアウルム公爵家の婚姻は絶対のものですし、彼らは相思相愛の仲だという話でしたのに。…一目惚れとは」
アイリスさんがため息をつく横で私はショックを受けて固まっていた。
…嘘でしょ?あの人婚約者いるの?私にプロポーズしてきたのに。私好きになっちゃったのに。
「心配する必要はない。メーレには僕から話を通す」
蜂蜜みたいに甘い声がして私は驚いて振り向いた。
ドアのところにベンネル王子が立っていた。
「すまない、どうしても彼女に会いたくて、ノックを忘れてしまった」
「…ベンネル様、王宮とはいえ、未婚の女性の部屋なのですから…」
「用事が終わったらすぐに退出するよ」
アイリスさんににこやかに微笑みかけてベンネル王子が私の方に歩いてくる。
「アカリ」
「あ、ベンネルさ、ベンネル王子」
「ベンネルと。アカリには呼び捨てで呼んでほしい」
「ベンネル…」
やっぱりかっこいい。
「話を通す、とは。どのようになされるつもりですか」
なんかアイリスさんの顔が険しい。
「そのままだよ。愛する人が出来てしまったのだと、メーレには伝えるつもりだ」
「アウルム公爵家との婚約を何だと…それにあなたと彼女は…」
「1人の公爵令嬢よりも聖女の方が尊い存在だろう?父、国王陛下には反対されたがきっと説得してみせる。一人息子の僕が心から愛する女性なんだ。いつかはきっと許してくれる。そうしたらアカリ、君と夫婦になれるんだよ」
真剣な顔をしてアイリスさんを説き伏せるベンネルが私には甘く柔らかな笑顔を向ける。あぁ、溶けちゃいそう。
「…きっとそうはならないでしょうね」
ぼそりとつぶやいたアイリスさんの声は私の耳には届かなかった。
王宮に部屋をとってもらって、一晩は泊めてもらうことになっていた。うきうきそわそわしている私の質問にアイリスさんは難しそうな顔をした。
「ベンネル様は王太子ですから王太子妃ですね。…しかし、アカリ様が王太子妃となることはありません」
「?何でですか?ベンネルさんプロポーズしてくれたのに」
「…ベンネル様は王太子です。婚約者の方がいらっしゃいます。メーレ・アウルム公爵令嬢。王家とアウルム公爵家の婚姻は絶対のものですし、彼らは相思相愛の仲だという話でしたのに。…一目惚れとは」
アイリスさんがため息をつく横で私はショックを受けて固まっていた。
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「心配する必要はない。メーレには僕から話を通す」
蜂蜜みたいに甘い声がして私は驚いて振り向いた。
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「すまない、どうしても彼女に会いたくて、ノックを忘れてしまった」
「…ベンネル様、王宮とはいえ、未婚の女性の部屋なのですから…」
「用事が終わったらすぐに退出するよ」
アイリスさんににこやかに微笑みかけてベンネル王子が私の方に歩いてくる。
「アカリ」
「あ、ベンネルさ、ベンネル王子」
「ベンネルと。アカリには呼び捨てで呼んでほしい」
「ベンネル…」
やっぱりかっこいい。
「話を通す、とは。どのようになされるつもりですか」
なんかアイリスさんの顔が険しい。
「そのままだよ。愛する人が出来てしまったのだと、メーレには伝えるつもりだ」
「アウルム公爵家との婚約を何だと…それにあなたと彼女は…」
「1人の公爵令嬢よりも聖女の方が尊い存在だろう?父、国王陛下には反対されたがきっと説得してみせる。一人息子の僕が心から愛する女性なんだ。いつかはきっと許してくれる。そうしたらアカリ、君と夫婦になれるんだよ」
真剣な顔をしてアイリスさんを説き伏せるベンネルが私には甘く柔らかな笑顔を向ける。あぁ、溶けちゃいそう。
「…きっとそうはならないでしょうね」
ぼそりとつぶやいたアイリスさんの声は私の耳には届かなかった。
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