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最終章 道化師は神逆する
第299話 神逆#1
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場所は移って雲に覆われた王の御前。天界と呼ばれるそこは殺風景が広がっているが、それでもそれで十分と思わせるほど神聖で厳かな雰囲気を漂わせていた。
そんな場所にいるのは三人の人物。神への復讐を目論むクラウンとリリス。そして、階段の最上段から椅子で足を組んで二人を見下ろすブロンドの髪を一に束ねた最高神トウマ。
神の使徒とは真逆のデザインである袖なしの白い服はクラウン達のこれまでの神の使徒とは違う見た目の違和感を増長させていく。
トウマはおもむろに立ち上がると二人に告げる。
「ねぇ、かつての神々が作ったとか、古代人の超文明が作ったと言われる古代兵器のことは知っているよね? 君たちはその一人を仲間にしていて、そしてのそこの少年は一つの古代兵器の破壊に成功しているわけだし」
「何が言いたい?」
「それは全部で三つあるんだ。全身機械の少女兵器【破壊のリルリアーゼ】、島のような超ド級飛行船【空帝のウェルメス】。そして、最後の一つがこの笛さ」
階段を下りながら、腰に差していた一つの長細い笛をクラウン達に見せるように掲げた。その笛は棒の先の横側に口をつけるところがあり、そして、そこから横に指で塞ぐ穴が開いている。
例えるなら、フルートだ。金属光沢を見せているので、まさにそれであると言った方が良いだろう。
「これは【魔物使いのベリヘリオ】と呼ばれる笛さ。まあ、もう意味はどんな意味か分かるよね? さあ、神の前で幻想的な舞を見せてくれよ!」
「何言って――――――!」
トウマは笛に口をつけると演奏を始めた。その笛の音はゆったりとしたまるで森林で小鳥のさえずりを聞いてリラックスしているようなメロディーだった。
しかし、その演奏による音とは裏腹に、現実では別のことが起こっていた。それはクラウンとリリスの背後から突然赤と青の二体の金属のこん棒を持ったオーガが現れたのだ。
そして、オーガはそれぞれに攻撃を振るっていく。二人は同時に後方へと跳躍する。すると、今度はトウマの方の背後から何十体ものオオカミが召喚され、二人を襲っていく。
クラウンはすぐさま背後のオオカミを抜刀と同時に斬り払っていく。そして、もう一体は蹴り飛ばし、さらにもう一体は赤のオーガに向かって投げつける。
すると、赤オーガはピッチャー返しをするようにこん棒で撃ち返す。クラウンはそれを避けていくとオーガに向かって袈裟切りに刀を振るう。
赤オーガは肩から脇腹にかけて両断された。そして、地面に後ろ向きに倒れていくともう一体の赤鬼がこん棒を構えて待ち受けていた。
その赤オーガはこん棒を突き出してクラウンを襲う。しかし、咄嗟に刀で防いだクラウンは吹き飛ばされるだけでなんとかなった。
トウマの奏でる曲調が少し速くなる。その瞬間、音に合わせて襲ってくる魔物の移動速度も上がった。
先ほどよりも捌きづらくなり、それに力も増えていっている。しかし、それだけで屈するほどやわな精神はしていない。
「リリス、一か所に奴らをまとめろ!」
「わかったわ!」
そう告げられたリリスは重力を使って、魔物を一か所に密集、圧縮していく。そして、その圧縮された魔物の球体をクラウンが糸を飛ばして繋げるとそのままグルグルと振り回し始めた。
その質量弾は周囲にいた魔物を打ち付けながら、等しく回っていく。そして、ハンマーとなったそれをトウマに向かって投げた。
トウマはそれをチラッと見ると避けずに笛を吹き続ける。すると、向かってきた笛はトウマを中心にしてぐるりと回るとクラウンに向かっていった。
「チッ、無駄な攻撃だったか」
クラウンは思わず舌打ちすると向かってきた魔物の球体を両断する。半球面となったそれはクラウンの間を通り過ぎ、ただの肉塊となる。
すると、トウマは笛の音をアップテンポにし始めた。それによって、再び召喚されたオオカミや新たにワシのような鳥がクラウン達に襲いかかる。
さらに、トウマは足で雲の床を軽くタップするとその場所から苗が出来た。そして、その苗はトウマの奏でるメロディーに合わせるようにぐんぐんと成長していく。
トウマの膝丈まで来て、一般的な身長であるトウマを追い抜き、さらに何十倍もの大きさまで成長した。
大きく花開くように葉っぱが生い茂る広葉樹で、その葉っぱ一つ一つがわずかに輝いて見える。さながら、聖樹といった感じだ。
そして、トウマはその聖樹の木陰で、幹に寄り掛かりながら笛を吹く。すると、聖樹の葉っぱの一枚が―――――光の速度で発射された。
―――――――ドゴオオオオオオンンッ!!
着弾した葉っぱは敵味方関係なく半径三メートル範囲で爆炎を起こしていく。そして、その聖樹からの固定砲台援護射撃は横殴りの雨のように跳んできた。
クラウンとリリスは先ほどまで魔物たちと戦っていたが、あの葉っぱを直撃を避けることを優先的に動き始めた。しかし、周囲にいる魔物はまるで死すら問わない覚悟で突っ込んでくる。
クラウンは咄嗟に<魔王化>になり、迫ってくる魔物を斬り払ったり、蹴り飛ばしたり、振り回したりしながら避けていく。
しかし、避けることが優先であるために爆炎の範囲に入らないようにしていると動ける範囲が限られていく。
そこに集中して魔物が集まってくる。その魔物に動きをさらに制限される。その結果―――――
「くっ!」
クラウンの脇腹を葉っぱの光弾が貫いた。焼けるような痛みが脇腹を襲ってくる。しかも、その一瞬の痛みによる硬直にオオカミが噛みついたり、爪で斬り裂いたり、ワシがくちばしで突き刺しにやってくる。
また雨のような光弾による爆炎の効果範囲に入り、火傷を負っていく。そのダメージが少しずつ蓄積されていく。
「リリス、一度合流しろ」
「ええ、同じことを考えていたわ」
クラウンはリスク覚悟でリリスを呼び寄せるために声を張るとリリスからも同意である返答が来た。そして、クラウンとリリスは魔物を退けながら合流すると背中合わせになる。
<古代化>していたリリスの体はクラウンと同じように切り傷や噛みつき跡、火傷の跡とあり、苦戦を強いられていることがすぐに伺えた。
「リリス、魔力はまだあるか?」
「ええ、無くても絞り出すけどね」
「そうか。なら、温存のためにも早くこの状況をどうにかしないとな」
「となると、やはり魔物よりも厄介なのはあの木かしら。あれを破壊するしかなさそうね」
「そうだな。グダグダ考えるよりも行動だ」
クラウンとリリスは同時に互いに逆向きに走り出す。その間を光弾が通り抜けていく。そして、二人はそれぞれ魔物を駆逐しながら進んでいくと旋回しながら樹のすぐ近くまで接近していった。
しかし、その聖樹は雲の床に隠していた大小太さ様々な根っこを飛び出させるとその根っこを鞭のように自由自在に使って、鋭くしなやかな攻撃をしてくる。
そのことにクラウンとリリスは思わず歯噛みをした。避けることがやっとの光弾の上に、動きが不規則な根っこをの攻撃は実に厄介だ。
それに加えて、自滅覚悟の魔物による突撃攻撃はもはやほぼダメージなしで回避することを不可能とさせていた。
クラウンは糸で、リリスは重力で凌いで凌いでやって来ているが、そればかりをやっていると後でトウマと戦う時に魔力がほとんど尽きてしまい、絶望的な戦いを強いられることになる。
それを回避するためにも魔力はあまり使わず、ダメージは最小限で聖樹の破壊。そして、トウマの持つ笛の破壊が必要不可欠となる。
「お前もその光弾を食らいやがれ!」
クラウンは迫ってきた光弾に黒き刃を振るう。そして、威勢のいい声を出しながら跳ね返す。すると、その一つの光弾が木の葉っぱに着弾し、爆発。一部が燃え始めた。
すると、聖樹は暴れるように根っこをジタバタと動かしていく。先ほどよりも根っこの動きがさらにランダム的になり、どこまで届くのかは根っこによって違うので予測もしづらい。
しかし、予測しづらいならば、予測できるようにするか、そもそも動かせなくすればいい。
「リリス!」
「了解よ!」
クラウンの掛け声を聞いたリリスはすぐさま暴れまくる根っこに超重力かけていく。そして、真下に働く超重力に根っこが雲の床に這いつくばって固定されるとその中をクラウンが走っていく。
当然クラウンも超重力の範囲に入っている。しかし、<魔王化>のおかげで耐えながらも移動できるのだ。
しかし、聖樹もクラウンに近づかれるのは困るのか足元にいるクラウンに向かって光弾を放つ。その光弾は超重力範囲に入るとさらに加速してクラウンを襲う。
クラウンは木の幹に糸を飛ばすと巻き戻す力で自身の体を聖樹まで手繰り寄せる。その移動途中で見るのはクラウンがすぐ近くまで接近しているのにもかかわらず、悠然と笛を吹くトウマの姿。
クラウンが聖樹を優先的に破壊に来るだろうという判断のもとでいるのだろうが、それが実に腹立たしい限りだ。
「これで終わり―――――っ!」
クラウンが刀を振るう直前にもはや自身にも当たっているという角度で光弾が飛んできた。そして、それはクラウンの踏ん張っていた足を掠めていく。
聖樹は攻撃されるのを嫌がっていたから、幹まで来たら自分を攻撃することはないだろうと思っていたが甘かったようだ。
クラウンは一時的に踏ん張りが利かなくなって、咄嗟に刀を振るうも半分以上で斬り込みを入れただけで、切断に至らなかった。
しかし、クラウンの攻撃がそこで終わっても、クラウン達の攻撃はそこで終わりではない。
「あんたのフォローは一番の味方である私がフォローすればいいだけのことよ―――――炎月輪!」
幹に向かって飛びだしてきたのは根っこを足止めしていたリリス。リリスは幹に向かって超重力が働くように位置を調整すると脚部に炎を纏わせて、回転しながら回し蹴り。
「おらああああああ!」
切り込みの方から入ったリリスの蹴りは斬り込み口を広げていくように押し込んでいく。そして、やがて切込みの入っていない部分がバキッと裂け、自重によって聖樹は横向きに倒れていった。
「まだよ――――――風断烈脚!」
リリスはすぐに前回りしながら下に落ちていくと聖樹を蹴った足とは反対側の風を纏わせた足で重力加速度のままにかかと落とし。
その下にいたトウマは後方に跳ねるようにして避ける。その動きに合わせて、クラウンがトウマの持っている笛に刃を突き立てた。
そんな場所にいるのは三人の人物。神への復讐を目論むクラウンとリリス。そして、階段の最上段から椅子で足を組んで二人を見下ろすブロンドの髪を一に束ねた最高神トウマ。
神の使徒とは真逆のデザインである袖なしの白い服はクラウン達のこれまでの神の使徒とは違う見た目の違和感を増長させていく。
トウマはおもむろに立ち上がると二人に告げる。
「ねぇ、かつての神々が作ったとか、古代人の超文明が作ったと言われる古代兵器のことは知っているよね? 君たちはその一人を仲間にしていて、そしてのそこの少年は一つの古代兵器の破壊に成功しているわけだし」
「何が言いたい?」
「それは全部で三つあるんだ。全身機械の少女兵器【破壊のリルリアーゼ】、島のような超ド級飛行船【空帝のウェルメス】。そして、最後の一つがこの笛さ」
階段を下りながら、腰に差していた一つの長細い笛をクラウン達に見せるように掲げた。その笛は棒の先の横側に口をつけるところがあり、そして、そこから横に指で塞ぐ穴が開いている。
例えるなら、フルートだ。金属光沢を見せているので、まさにそれであると言った方が良いだろう。
「これは【魔物使いのベリヘリオ】と呼ばれる笛さ。まあ、もう意味はどんな意味か分かるよね? さあ、神の前で幻想的な舞を見せてくれよ!」
「何言って――――――!」
トウマは笛に口をつけると演奏を始めた。その笛の音はゆったりとしたまるで森林で小鳥のさえずりを聞いてリラックスしているようなメロディーだった。
しかし、その演奏による音とは裏腹に、現実では別のことが起こっていた。それはクラウンとリリスの背後から突然赤と青の二体の金属のこん棒を持ったオーガが現れたのだ。
そして、オーガはそれぞれに攻撃を振るっていく。二人は同時に後方へと跳躍する。すると、今度はトウマの方の背後から何十体ものオオカミが召喚され、二人を襲っていく。
クラウンはすぐさま背後のオオカミを抜刀と同時に斬り払っていく。そして、もう一体は蹴り飛ばし、さらにもう一体は赤のオーガに向かって投げつける。
すると、赤オーガはピッチャー返しをするようにこん棒で撃ち返す。クラウンはそれを避けていくとオーガに向かって袈裟切りに刀を振るう。
赤オーガは肩から脇腹にかけて両断された。そして、地面に後ろ向きに倒れていくともう一体の赤鬼がこん棒を構えて待ち受けていた。
その赤オーガはこん棒を突き出してクラウンを襲う。しかし、咄嗟に刀で防いだクラウンは吹き飛ばされるだけでなんとかなった。
トウマの奏でる曲調が少し速くなる。その瞬間、音に合わせて襲ってくる魔物の移動速度も上がった。
先ほどよりも捌きづらくなり、それに力も増えていっている。しかし、それだけで屈するほどやわな精神はしていない。
「リリス、一か所に奴らをまとめろ!」
「わかったわ!」
そう告げられたリリスは重力を使って、魔物を一か所に密集、圧縮していく。そして、その圧縮された魔物の球体をクラウンが糸を飛ばして繋げるとそのままグルグルと振り回し始めた。
その質量弾は周囲にいた魔物を打ち付けながら、等しく回っていく。そして、ハンマーとなったそれをトウマに向かって投げた。
トウマはそれをチラッと見ると避けずに笛を吹き続ける。すると、向かってきた笛はトウマを中心にしてぐるりと回るとクラウンに向かっていった。
「チッ、無駄な攻撃だったか」
クラウンは思わず舌打ちすると向かってきた魔物の球体を両断する。半球面となったそれはクラウンの間を通り過ぎ、ただの肉塊となる。
すると、トウマは笛の音をアップテンポにし始めた。それによって、再び召喚されたオオカミや新たにワシのような鳥がクラウン達に襲いかかる。
さらに、トウマは足で雲の床を軽くタップするとその場所から苗が出来た。そして、その苗はトウマの奏でるメロディーに合わせるようにぐんぐんと成長していく。
トウマの膝丈まで来て、一般的な身長であるトウマを追い抜き、さらに何十倍もの大きさまで成長した。
大きく花開くように葉っぱが生い茂る広葉樹で、その葉っぱ一つ一つがわずかに輝いて見える。さながら、聖樹といった感じだ。
そして、トウマはその聖樹の木陰で、幹に寄り掛かりながら笛を吹く。すると、聖樹の葉っぱの一枚が―――――光の速度で発射された。
―――――――ドゴオオオオオオンンッ!!
着弾した葉っぱは敵味方関係なく半径三メートル範囲で爆炎を起こしていく。そして、その聖樹からの固定砲台援護射撃は横殴りの雨のように跳んできた。
クラウンとリリスは先ほどまで魔物たちと戦っていたが、あの葉っぱを直撃を避けることを優先的に動き始めた。しかし、周囲にいる魔物はまるで死すら問わない覚悟で突っ込んでくる。
クラウンは咄嗟に<魔王化>になり、迫ってくる魔物を斬り払ったり、蹴り飛ばしたり、振り回したりしながら避けていく。
しかし、避けることが優先であるために爆炎の範囲に入らないようにしていると動ける範囲が限られていく。
そこに集中して魔物が集まってくる。その魔物に動きをさらに制限される。その結果―――――
「くっ!」
クラウンの脇腹を葉っぱの光弾が貫いた。焼けるような痛みが脇腹を襲ってくる。しかも、その一瞬の痛みによる硬直にオオカミが噛みついたり、爪で斬り裂いたり、ワシがくちばしで突き刺しにやってくる。
また雨のような光弾による爆炎の効果範囲に入り、火傷を負っていく。そのダメージが少しずつ蓄積されていく。
「リリス、一度合流しろ」
「ええ、同じことを考えていたわ」
クラウンはリスク覚悟でリリスを呼び寄せるために声を張るとリリスからも同意である返答が来た。そして、クラウンとリリスは魔物を退けながら合流すると背中合わせになる。
<古代化>していたリリスの体はクラウンと同じように切り傷や噛みつき跡、火傷の跡とあり、苦戦を強いられていることがすぐに伺えた。
「リリス、魔力はまだあるか?」
「ええ、無くても絞り出すけどね」
「そうか。なら、温存のためにも早くこの状況をどうにかしないとな」
「となると、やはり魔物よりも厄介なのはあの木かしら。あれを破壊するしかなさそうね」
「そうだな。グダグダ考えるよりも行動だ」
クラウンとリリスは同時に互いに逆向きに走り出す。その間を光弾が通り抜けていく。そして、二人はそれぞれ魔物を駆逐しながら進んでいくと旋回しながら樹のすぐ近くまで接近していった。
しかし、その聖樹は雲の床に隠していた大小太さ様々な根っこを飛び出させるとその根っこを鞭のように自由自在に使って、鋭くしなやかな攻撃をしてくる。
そのことにクラウンとリリスは思わず歯噛みをした。避けることがやっとの光弾の上に、動きが不規則な根っこをの攻撃は実に厄介だ。
それに加えて、自滅覚悟の魔物による突撃攻撃はもはやほぼダメージなしで回避することを不可能とさせていた。
クラウンは糸で、リリスは重力で凌いで凌いでやって来ているが、そればかりをやっていると後でトウマと戦う時に魔力がほとんど尽きてしまい、絶望的な戦いを強いられることになる。
それを回避するためにも魔力はあまり使わず、ダメージは最小限で聖樹の破壊。そして、トウマの持つ笛の破壊が必要不可欠となる。
「お前もその光弾を食らいやがれ!」
クラウンは迫ってきた光弾に黒き刃を振るう。そして、威勢のいい声を出しながら跳ね返す。すると、その一つの光弾が木の葉っぱに着弾し、爆発。一部が燃え始めた。
すると、聖樹は暴れるように根っこをジタバタと動かしていく。先ほどよりも根っこの動きがさらにランダム的になり、どこまで届くのかは根っこによって違うので予測もしづらい。
しかし、予測しづらいならば、予測できるようにするか、そもそも動かせなくすればいい。
「リリス!」
「了解よ!」
クラウンの掛け声を聞いたリリスはすぐさま暴れまくる根っこに超重力かけていく。そして、真下に働く超重力に根っこが雲の床に這いつくばって固定されるとその中をクラウンが走っていく。
当然クラウンも超重力の範囲に入っている。しかし、<魔王化>のおかげで耐えながらも移動できるのだ。
しかし、聖樹もクラウンに近づかれるのは困るのか足元にいるクラウンに向かって光弾を放つ。その光弾は超重力範囲に入るとさらに加速してクラウンを襲う。
クラウンは木の幹に糸を飛ばすと巻き戻す力で自身の体を聖樹まで手繰り寄せる。その移動途中で見るのはクラウンがすぐ近くまで接近しているのにもかかわらず、悠然と笛を吹くトウマの姿。
クラウンが聖樹を優先的に破壊に来るだろうという判断のもとでいるのだろうが、それが実に腹立たしい限りだ。
「これで終わり―――――っ!」
クラウンが刀を振るう直前にもはや自身にも当たっているという角度で光弾が飛んできた。そして、それはクラウンの踏ん張っていた足を掠めていく。
聖樹は攻撃されるのを嫌がっていたから、幹まで来たら自分を攻撃することはないだろうと思っていたが甘かったようだ。
クラウンは一時的に踏ん張りが利かなくなって、咄嗟に刀を振るうも半分以上で斬り込みを入れただけで、切断に至らなかった。
しかし、クラウンの攻撃がそこで終わっても、クラウン達の攻撃はそこで終わりではない。
「あんたのフォローは一番の味方である私がフォローすればいいだけのことよ―――――炎月輪!」
幹に向かって飛びだしてきたのは根っこを足止めしていたリリス。リリスは幹に向かって超重力が働くように位置を調整すると脚部に炎を纏わせて、回転しながら回し蹴り。
「おらああああああ!」
切り込みの方から入ったリリスの蹴りは斬り込み口を広げていくように押し込んでいく。そして、やがて切込みの入っていない部分がバキッと裂け、自重によって聖樹は横向きに倒れていった。
「まだよ――――――風断烈脚!」
リリスはすぐに前回りしながら下に落ちていくと聖樹を蹴った足とは反対側の風を纏わせた足で重力加速度のままにかかと落とし。
その下にいたトウマは後方に跳ねるようにして避ける。その動きに合わせて、クラウンがトウマの持っている笛に刃を突き立てた。
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