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第三章 王都リナージュ

第三十二話 秘密

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 前回、城に来たときに案内されたのは、バルト様の私室だったけど、今回は玉座の間。玉座の間に入るとアリス様が玉座に座らされていて口が布で縛られていた。

「アリス!」

 バルト様の声が玉座の間に響くとアリス様の後方、玉座の後ろからカテジナさんが現れた。

「あらあら、綺麗な鎧ね。バルト」
「アリスをどうするつもりだ」
「少しは勘づいているのでしょ?」
「やはり、[王族の血印]か?」
「偉いわね。褒めてあげる」

 カテジナさんはバルト様の答えに手をたたいて喜んでいた。やっぱり、そのスキルが影響しているみたい。

「スキルは人に継承できると思う?」

 カテジナさんはしばらく手を叩いてそんな質問をしてきた。スキルは人から人に渡すことはできない。僕でもそれは知っている。

「できるわけがないだろ。そんなことができてしまったら人狩りが横行してしまう」
「そうよね。当たり前だわ。でも、この子達はできてしまうのよ。継承というより強奪といった方が正しいのかしら」
「冥樹が、まさか・・・」

 バルト様はカテジナさんの言葉に反応して頭を抱えた。冥樹はスキルを奪うことができるみたいだね。

「おっと、ユアンとルークはうごくんじゃないよ。動いたらアリスちゃんの体が首とお別れすることになるよ」

 ユアンが一歩前へ踏み出すとカテジナさんが剣を取り出してアリス様の首に剣を当てた。うっすらとアリス様の首に血がにじむ。

「シャラ出番よ」
「俺の相手はバルト、ということか?」

 玉座の間の左右にあった天井を支える柱からシャラが出てきて頭をかきながら話した。

「災厄の龍・・・罰としてはこれ以上ないか」
「バルト様逃げてください」
「いや、二人はアリスのためにも動かないでくれ、これは私のこれまでの罪に対する罰だ。しかし、罪をそのままにしてこの世を去る気はない。シャラ、お前に付き合ってもらうぞ。[ゴールデンアーマー起動]!」

 ユアンが逃げろといったんだけどバルト様はシャラと戦うみたい。バルト様は黄金の鎧のスキルを発動させてさらに光り輝いていく。

「流石は人の王ということか。こんな狭いところでは俺が本気を出せん。外に出よう」
「ああ、俺も久しぶりの実戦だ。こんなところでは本気をだせん」

 バルト様とシャラは玉座の間の天井を突き破って外へと出て行ってしまった。シャラは元々飛べるので飛んでいくのはわかるんだけどバルト様も飛べたみたいです。何だか凄い装備なんだな~。

「家族団らんで話がしたいんだけどあとの二人もどこかへいってくれないかしら?」
「ダメですね。二人に動くなと言っておいて私たちまで何処かに行かせるなんて」
「そちらが優位過ぎないですか?」

 モナーナとルナさんは反論して僕らの前に立った。僕たちを守ってくれているんだね。

「そういうと思ったから相手を用意しているわよ」
「やっと出番か」
「・・・」
「おい、こいつはちゃんと動くんだろうな?」

 カテジナさんの背後からバイスと知らない男の人が出てきた。知らない男の人が生気のない目でいることが気掛かりなのかバイスが気にしている。

「ダイヤ団長!」

 ユアンがバイスと一緒に出てきた男の人を見て叫んだ。どうやら、あの人が行方不明になっていた[金色の旗]の団長さんのようです。見事に操られているみたい。

「大丈夫よ。あんたはあのエルフとやりなさい。モナーナちゃんには勝てないでしょうからね」
「ああ、俺の部下をことごとく縛り上げていたから知っているさ。おかげで俺の威厳ががた落ちだぜ。全く」

 やれやれといった様子でバイスが玉座からこちらに近づいてくる。バイスの武器はナイフなのだろうか両手に二本もっている。

「ダイヤも行きなさい」
「・・・」

 ダイヤ団長とバイスが僕らに近づいてくる。バイスが顎をクイッとさせて僕たちが入ってきた扉を指しているようだ。

「ルーク大丈夫だよね?」
「こっちは大丈夫だよ。モナーナ達も気を付けてね」

 モナーナとルナさんは顔を見合ってバイスたちを警戒しながらついていった。

「やっと親子だけになったわね」

 みんながいなくなってカテジナさん、ノーブルローズが口を開いた。

「ノーブルローズはなんでそんなに冥樹を育てたいの?世界樹は君じゃないの?」
「あら、いきなり質問?まあ、いいわ。そうね~。最初はノルディック様の言う通り恵みを分け合うっていうので動いていたんだけど、今人間たちの人口を見た時にそれは不可能だと思ったのよ」
「それで、こんな」
「そうよ。人を少なくすれば富も食べ物も分け合える。一つのリンゴを10人でわけるより4人で分けた方がいいでしょ?冥樹なら、もっと減らせられるわ」

 ノーブルローズの言葉は辛辣だった。人を減らせば分け合うことができる。そうかもしれないけどそれは本当に分け合っているのだろうか。それは一つのリンゴじゃなくて元々持っていた、もらうはずだった人から奪ったものであって、恵みを分け合っているとは言えないんじゃないかな。
 とても幼稚で人の心の通っていない考えだよ。

「あなたの話はとても幼稚だ!そんなこと誰も望んでいないよ。人を殺めて得た物を配られたって誰も喜ばない」
「誰も喜ばない?それはユアンあなたが幸せな世界で生きているから言えるのよ。何も持っていない人にとって、誰かから与えられるものはどんなものであっても喜ぶものなのよ。あの日のカテジナのようにね」

 ユアンの言葉にノーブルローズが答えた。
 あの日のカテジナ叔母さん、あの日っていうのは僕を引き取った時のことだろうか?

「自分の夫を亡くしたと思っていたカテジナはとても心細くて藁にもすがる思いでルークの両親のもとへといったの。なのに両親はいなくてお金と伝言の書かれたメモが置かれていただけだった。カテジナはほっと胸をなで下ろしていたわ。それはお金に対してだった」

 ノーブルローズはまるで見ていたかのように昔の話をしている。

「私はカテジナと同化しているのよ。記憶ももちろん持ってる。そして、あなたの両親からのメモの秘密もしっかりと見たわ」
「僕の両親の秘密?」

 何よりも気になることをノーブルローズが口ずさんだ、メモについてだ。僕の両親のメモの秘密って何だろう?
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