53 / 61
第二章 見知った大地
第53話 好奇心
しおりを挟む
「よく寝た~。魔法を教わったおかげでぐっすり」
「はは、それは良かったです……」
アイコさんと一緒に起きる。
魔法を教えて次の日にはみんなの自宅に帰ってきた。マリさんはやっぱりあの西洋の兜をかぶった女性だったんだろう、帰ってきていない。
「マリはあのお墓にいるんだよね」
「たぶん……」
話を聞く限り、僕が戻ってきたのはマリさんのことだと思う。マリさんが周りに魔力をばら撒いて変化をもたらせた。そのせいでアユカお母さんの中の妹も危険を知らせてくれた。思えば彼女もマリさんの魔力と僕の魔力を受けて覚醒したのかもしれないな。
「すぐに行きたいところだけど……」
「……ライト君。行かない?」
「ん……」
アイコさんは早くマリさんを助けたいみたいだ。彼女も魔が刺しているだけ、アイコさんのように魔法を外に出せれば元に戻るはずだ。セリナやツトムも戦うことで魔力を外に出して元に戻っていた。あくまでも僕の推測だけどね。
「少し覗いて来てもいいかも?」
「待ちなさい」
アイコさんと部屋を出ながら話しているとアユカお母さんに両肩を抑えられた。
「お母さん?」
「あまり危険なことはしちゃだめ。ケンジさん達を待ちましょ」
アユカお母さんがそう言うと朝食の並ぶ席に座るように促してくる。
「アユカお母さん。少し外に行くだけだよ」
アイコさんが朝食を食べながら話す。誤魔化しているつもりだけど、お母さんもシンジさんもヤレヤレと首を横に振る。
「仕方ない。私も一緒に行くよ。マリは私に危害は加えないだろ?」
シンジさんがそういって車のキーを握る。
「シンジさん。でも危険に違いはないわ」
「大丈夫。行かなければいいんだからね」
心配するアユカお母さんの手を握って答えるシンジさん。男らしくてカッコいい人だな。どっかの誰かさんと大違いだ。
「ライト君、アイコ。さあ行こうか」
「……うん」
シンジさんがそういって外への扉に手をかける。アイコさんは元気なく返事をする。僕とだけだったらマリさんのところに行こうと思ってたんだろうな。二人にはバレバレだな。
「さて……マリのところへ行こうか」
「「え!?」」
車に乗るとシンジさんから信じられない提案をしてくる。思わずアイコさんと顔を見合ってしまった。
「色々考えたんだよ。リスクをね」
シンジさんはそういって胸ポケットからガムを取り出す。口に含むと説明してくれた。
「警察が君のような力を野放しにするはずがない。ものにするかケンジさんがアラキさんに聞いていたように処分をするかだ」
「そう言えばそんなこと言ってた」
シンジさんの説明にアイコさんが顎に手を当てて考え込む。ケンジさんはわざわざ僕らに聞こえる声で追及してくれてたからな。
「例えばだ。個人で戦車や戦闘機を保有していたらと考える。そうなるとやれ権利だ、許可だと国は言ってくるだろう。あくまでも推測だけどね。それを断るとまとわりついてくるはずだよ。そして、思い通りにならなかったら……」
シンジさんが深刻な顔で僕を見つめる。処分か……確かにやりかねないね。
「警察が準備を終える前に終わらせてしまえばいいんだ。私はそう思ったわけ。アユカさんの知らないところで終わらせてしまう」
何か決意めいた表情で話すシンジさん。
「じゃあお父さん。一緒に迎えに行こう。マリを」
「ああ、新しい家族と共にな」
「うん! そうだね! ライト君と一緒に!」
アイコさんの言葉に同意して僕の頭を撫でてくれるシンジさん。シンジさんが撫で終わるとアイコさんが抱き着いてくる。
「マリを叱ってやらないと! こんなに可愛いお兄ちゃんが出来るって言うのに!」
「ははは、そうだな。こんなに可愛い息子が出来るって言うのにな」
アイコさんの声に今度はシンジさんが同意して声をあげた。こんなに愛されると別れが悲しくなるな……。
「さて、じゃあ出発しますか!」
「マリを叱りに! しゅっぱ~つ」
少し涙ぐむ僕を一瞥してシンジさんが車を走らせる。アイコさんは気づいて抱き着いて声をあげた。
「到着だ。警察はいない?」
「はい。一般の人もいないように感じますけど」
大きな墓地に到着して周りを伺うシンジさん。僕も見回すけど、人が見当たらない。この墓地の敷地の中にマリさん達が。そう思っているとシンジさんがアクセルを踏んだ。だけど、車は前に進まない。
「ん? 変だな」
タイヤが勢いよく周る。地面の摩擦も感じられない。おかしい、そう思っていると。
「あら? 誰かと思えばマリさんのご家族?」
「なっ!?」
バックミラーにセリナが現れて声をあげる。いつの間にかシャボン玉の中に入れられて車ごと浮いていた。
「あと少しでマリさんの願いが叶うのよ。警察のいう通り待っていればいいのに」
「警察? なんでそれを知って……まさか!?」
「ふふふ、もうばらしてもいいわね。マリさんの超能力は【魔を刺し操ること】よ」
セリナの言葉に声をあげると丁寧に説明してくれた。ケンジさんかアラキさんが操られていたってこと?
そう思っているとパトカーが複数僕らを包囲してきた。パトカーから降りる警官たちはみんな僕らへと拳銃を構える。
「大人しく出てきなさい。マリさんの家族は傷つけないから安心して」
「僕はダメってことかな?」
「ふふ、ご明察様」
どうやら、僕は家族じゃないから始末するつもりみたいだ。
「ライト君」
「安心してください。二人はマリさんのもとに」
「で、でも」
「大丈夫。僕に拳銃は効かないよ。セリナのシャボン玉もね」
心配するアイコさんにウインクで答える。二人は顔を見合って車から外に出る。
「ふふ、お別れは終わった? 涙の別れはどんなシーンよりもいいわね」
泣きまねをして話すセリナ。アイコさんはそんな彼女を睨みつける。
「マリはどこ! 私怒ってるんだからね!」
「まぁ! 怖い。ふふふ、マリさんのご家族は皆さん魅力的な方ね~。こちらにどうぞ」
何もせずにシンジさんとアイコさんをエスコートしていくセリナ。
「おっと、忘れるところだった。ツトム」
「分かってますよ会長。会長の覇道にあの子は邪魔ですよね」
僕の乗っていた車が大きく飛び上がる。シャボン玉を跳ねらせるためにツトムが地面を波打たせた。大きなビルよりも大きく飛び上がるとシャボン玉が割れて車が投げ出される。やってくれるね。
「でも無駄だよ!」
僕は車から飛び出して空を歩く。空を飛び方法はいくつも考えていた。土の球を作り出して浮かせる、それを足場にすれば簡単だ。風で飛ぶことも出来るけど、土の方が僕に合っているように感じた。適性は大事だな。
シャボン玉が割れても割れなくてもなんの問題もない。二人が無事なら遠慮はいらない。
「はは、それは良かったです……」
アイコさんと一緒に起きる。
魔法を教えて次の日にはみんなの自宅に帰ってきた。マリさんはやっぱりあの西洋の兜をかぶった女性だったんだろう、帰ってきていない。
「マリはあのお墓にいるんだよね」
「たぶん……」
話を聞く限り、僕が戻ってきたのはマリさんのことだと思う。マリさんが周りに魔力をばら撒いて変化をもたらせた。そのせいでアユカお母さんの中の妹も危険を知らせてくれた。思えば彼女もマリさんの魔力と僕の魔力を受けて覚醒したのかもしれないな。
「すぐに行きたいところだけど……」
「……ライト君。行かない?」
「ん……」
アイコさんは早くマリさんを助けたいみたいだ。彼女も魔が刺しているだけ、アイコさんのように魔法を外に出せれば元に戻るはずだ。セリナやツトムも戦うことで魔力を外に出して元に戻っていた。あくまでも僕の推測だけどね。
「少し覗いて来てもいいかも?」
「待ちなさい」
アイコさんと部屋を出ながら話しているとアユカお母さんに両肩を抑えられた。
「お母さん?」
「あまり危険なことはしちゃだめ。ケンジさん達を待ちましょ」
アユカお母さんがそう言うと朝食の並ぶ席に座るように促してくる。
「アユカお母さん。少し外に行くだけだよ」
アイコさんが朝食を食べながら話す。誤魔化しているつもりだけど、お母さんもシンジさんもヤレヤレと首を横に振る。
「仕方ない。私も一緒に行くよ。マリは私に危害は加えないだろ?」
シンジさんがそういって車のキーを握る。
「シンジさん。でも危険に違いはないわ」
「大丈夫。行かなければいいんだからね」
心配するアユカお母さんの手を握って答えるシンジさん。男らしくてカッコいい人だな。どっかの誰かさんと大違いだ。
「ライト君、アイコ。さあ行こうか」
「……うん」
シンジさんがそういって外への扉に手をかける。アイコさんは元気なく返事をする。僕とだけだったらマリさんのところに行こうと思ってたんだろうな。二人にはバレバレだな。
「さて……マリのところへ行こうか」
「「え!?」」
車に乗るとシンジさんから信じられない提案をしてくる。思わずアイコさんと顔を見合ってしまった。
「色々考えたんだよ。リスクをね」
シンジさんはそういって胸ポケットからガムを取り出す。口に含むと説明してくれた。
「警察が君のような力を野放しにするはずがない。ものにするかケンジさんがアラキさんに聞いていたように処分をするかだ」
「そう言えばそんなこと言ってた」
シンジさんの説明にアイコさんが顎に手を当てて考え込む。ケンジさんはわざわざ僕らに聞こえる声で追及してくれてたからな。
「例えばだ。個人で戦車や戦闘機を保有していたらと考える。そうなるとやれ権利だ、許可だと国は言ってくるだろう。あくまでも推測だけどね。それを断るとまとわりついてくるはずだよ。そして、思い通りにならなかったら……」
シンジさんが深刻な顔で僕を見つめる。処分か……確かにやりかねないね。
「警察が準備を終える前に終わらせてしまえばいいんだ。私はそう思ったわけ。アユカさんの知らないところで終わらせてしまう」
何か決意めいた表情で話すシンジさん。
「じゃあお父さん。一緒に迎えに行こう。マリを」
「ああ、新しい家族と共にな」
「うん! そうだね! ライト君と一緒に!」
アイコさんの言葉に同意して僕の頭を撫でてくれるシンジさん。シンジさんが撫で終わるとアイコさんが抱き着いてくる。
「マリを叱ってやらないと! こんなに可愛いお兄ちゃんが出来るって言うのに!」
「ははは、そうだな。こんなに可愛い息子が出来るって言うのにな」
アイコさんの声に今度はシンジさんが同意して声をあげた。こんなに愛されると別れが悲しくなるな……。
「さて、じゃあ出発しますか!」
「マリを叱りに! しゅっぱ~つ」
少し涙ぐむ僕を一瞥してシンジさんが車を走らせる。アイコさんは気づいて抱き着いて声をあげた。
「到着だ。警察はいない?」
「はい。一般の人もいないように感じますけど」
大きな墓地に到着して周りを伺うシンジさん。僕も見回すけど、人が見当たらない。この墓地の敷地の中にマリさん達が。そう思っているとシンジさんがアクセルを踏んだ。だけど、車は前に進まない。
「ん? 変だな」
タイヤが勢いよく周る。地面の摩擦も感じられない。おかしい、そう思っていると。
「あら? 誰かと思えばマリさんのご家族?」
「なっ!?」
バックミラーにセリナが現れて声をあげる。いつの間にかシャボン玉の中に入れられて車ごと浮いていた。
「あと少しでマリさんの願いが叶うのよ。警察のいう通り待っていればいいのに」
「警察? なんでそれを知って……まさか!?」
「ふふふ、もうばらしてもいいわね。マリさんの超能力は【魔を刺し操ること】よ」
セリナの言葉に声をあげると丁寧に説明してくれた。ケンジさんかアラキさんが操られていたってこと?
そう思っているとパトカーが複数僕らを包囲してきた。パトカーから降りる警官たちはみんな僕らへと拳銃を構える。
「大人しく出てきなさい。マリさんの家族は傷つけないから安心して」
「僕はダメってことかな?」
「ふふ、ご明察様」
どうやら、僕は家族じゃないから始末するつもりみたいだ。
「ライト君」
「安心してください。二人はマリさんのもとに」
「で、でも」
「大丈夫。僕に拳銃は効かないよ。セリナのシャボン玉もね」
心配するアイコさんにウインクで答える。二人は顔を見合って車から外に出る。
「ふふ、お別れは終わった? 涙の別れはどんなシーンよりもいいわね」
泣きまねをして話すセリナ。アイコさんはそんな彼女を睨みつける。
「マリはどこ! 私怒ってるんだからね!」
「まぁ! 怖い。ふふふ、マリさんのご家族は皆さん魅力的な方ね~。こちらにどうぞ」
何もせずにシンジさんとアイコさんをエスコートしていくセリナ。
「おっと、忘れるところだった。ツトム」
「分かってますよ会長。会長の覇道にあの子は邪魔ですよね」
僕の乗っていた車が大きく飛び上がる。シャボン玉を跳ねらせるためにツトムが地面を波打たせた。大きなビルよりも大きく飛び上がるとシャボン玉が割れて車が投げ出される。やってくれるね。
「でも無駄だよ!」
僕は車から飛び出して空を歩く。空を飛び方法はいくつも考えていた。土の球を作り出して浮かせる、それを足場にすれば簡単だ。風で飛ぶことも出来るけど、土の方が僕に合っているように感じた。適性は大事だな。
シャボン玉が割れても割れなくてもなんの問題もない。二人が無事なら遠慮はいらない。
100
あなたにおすすめの小説
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ
ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた
いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう
その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った
だけど仲間に裏切られてしまった
生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい
そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました
ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。
女の子と言われてしまう程可愛い少年。
アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。
仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。
そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた
願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる