たましいの救済を求めて

手塚エマ

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第九章 私はやめない

第十話 臨戦態勢

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  今夜の十一時からの面談には、第三面接室を麻子は選んだ。
 診察室に一番近い部屋であり、診察室の奥では駒井が控えている。

 受付のパート女性も三谷も帰った夜の十時。
 麻子は給湯室で丁寧に入れた緑茶をふたつの湯呑に急須から注ぎ、盆に乗せ、診察室に持って行く。

「失礼します」

 ドアをノックしてから開けた麻子は、診察室の駒井のデスクに湯呑を置いた。

「ありがとう」
「こちらこそ、今日は、ありがとうございます」
「長澤さんも、今から食事?」
「はい。コンビニで買ってきたお弁当ですけど」
「じゃあ、一緒に食べようか。僕もさっき買ってきたのがあるんだよ。一人だと味気ないし」

 デスクに置かれた湯呑の茶卓と、弁当らしきレジ袋を持ち、診察室から出て来た駒井が、畑中のデスクにを陣取った。
 隣のデスクは、契約社員用の空きデスク。
 そちらを借りた麻子はコンビニのハンバーグ弁当の蓋をあけ、駒井は弁当のチェーン店で買った丼を出す。
 深夜の夜食にしては高カロリーだが、十一時からの面談に備えてのカロリーだ。

 集中力を切らさずに、頭をフル回転させ続けると、気力よりも体力の方を消耗する。
 丼だけでは わびしく見えた駒井の為に、麻子は給湯室の買い置き籠から調達したカップの即席みそ汁を作り、冷蔵庫から保存容器も取り出した。
 畑中が、帰省土産として持ってきた野沢菜だ。
 それを小皿に移すと、保冷容器は元に戻す。

「先生。良かったら食べて下さい」

 盆に乗せて事務室に戻る。駒井がいらないと言ったなら、自分が食べればいいことだ。

「食べるよ。ありがと」

 飯を頬張った駒井は、口をもぐもぐさせながら礼を言う。再び椅子に腰かけた麻子の好意に甘えるように、野沢菜に箸をつける駒井を見ていた。

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