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本編
37.約束の指輪
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エルフリーデを胸元に抱き締めながらジュードは語尾を強めて咎めるような質問をした。
「僕には内緒にするつもりだったってことでしょ?」
「はうっ……で、でもジュードに言ったら心配すると思ったからっ」
「あのね、言わない方が心配するに決まってるでしょ? それを後から知ることになったら僕はきっと今以上にリーのこと怒ると思うけど?」
「ジュードそんなに怒ってるの? こんなのたいしたことないのに……」
「たいしたことない?」
ジュードの様子に始終ビクついて離れようとするエルフリーデをジュードは逃さない。そうして狭いソファーの上で繰り広げられる攻防戦に負けたのはエルフリーデだった。ジュードはエルフリーデの腰に手を回して逃げる婚約者を抱き寄せると、痛々しい物を見るようにエルフリーデの頭をそっと撫でた。
「まったく、女の子が顔に傷なんかつくって……」
まるでジュードの方が傷付いているような様子にエルフリーデはギクッと身を強張らせた。普段の気の強さも何処へやらもうしおらしく謝るしかない。
「ごめんなさい……」
「結婚式までリーは外出禁止。分かった?」
「ええっ!? ジュードそれ本気で言ってるの? あと数週間も部屋で何してろって言うのよ!」
「ええっじゃないよ。そうしないと僕がリーのこと心配して心労で倒れそうだからね。それに結婚式までにその傷治さないと。だから大人しくしてるんだよ?」
「…………」
途端黙り込んでしまったエルフリーデの唇にジュードは優しく口づけた。触れ合うような軽いキスが終わってもまだ互いの唇が擦れる位近くにジュードはいて、エルフリーデの瞳を覗き込んでくる。
「……リー、返事は?」
今度は怖い顔を引っ込めて、良い子だから言うことを聞いて? と言わんばかりの優しい眼差しを向けられる。天使のような容貌のジュードにそれをされてしまうと、エルフリーデの尖った心は簡単に折られてしまう。
「……わっ、分かったわよぉっ! ちゃんと大人しくしてるからっ」
「じゃあそのことちゃんと守るって約束してくれる?」
「うん……約束する。でもだけ1つ教えて?」
「ん? リーは何を知りたいの?」
「ジュードがお城で会ってたあの綺麗な女の人、誰……?」
「そのことか……」
「やっぱりジュードもああいう大人で綺麗な人が良いの?」
「あのね、リーは何か誤解しているみたいだけど。あの人はそんなんじゃないんだよ?」
「じゃあ……」
どんな関係の人なの? とエルフリーデが不安そうに角度によって金にも見える大きな茶色の瞳を揺らすと、ジュードは仕方が無いなと徐に懐から小さな箱を取り出した。
「これをあの人にお願いしてたんだ」
「えっと、これって……?」
ジュードが箱を開けると、その箱の中から出てきたのは小さな可愛らしい花の形をあしらった綺麗な指輪だった。
「ピンキーリング?」
通常の仕様とは異なる。小指にはめる為に作られた指輪。薬指に付けるには小さすぎるサイズのそれをエルフリーデが不思議そうに見つめていると、ジュードが指輪をエルフリーデの小指にそっとはめ込んでくれた。
「うん、結婚指輪は僕達の場合もう正式なものが決まっているからね。代わりにこれを送ろうと思ってたんだ。装飾デザイナーの彼女に頼んで作ってもらった。エルフリーデの指に合う花を選んでくれるようにね。よく僕達が小さい頃に王城の庭園で約束するとき交換したでしょ?」
「おままごとで付けてた花の指輪? 結婚の約束するときに交換してた……」
「リーは花好きでしょ? 花冠も作ってよく頭に乗せて遊んでたし」
「うん……」
懐かしい思い出と共にエルフリーデの頭の中で昔の懐かしい記憶が鮮明に蘇ってくる。幼い頃、王城で迷子になって泣いていたエルフリーデを助けてくれたジュードと一緒に過ごした王城の庭園。そこで交わされた結婚の約束。一緒に日向ぼっこをしながら沢山遊んだ日々。花冠を作り合って互いの頭に乗せながらした最初のキス。
両親に秘密の逢瀬がバレた後も、婚約者となり一緒にいることが許された。だからその後もずっとエルフリーデとジュードは一緒にいて。庭園での時間を止めることなく、一緒にずっと過ごすことが出来た。いつも綺麗で優しくてエルフリーデが好きだと言ってくれるジュードの傍で大人になれた。
あの幼かった頃、男の子たちの心ない仕打ちに傷付いて存在を否定されたことに悲しんでいたことも、それがどうでもいいことだと思える位いまが幸せで、だからエルフリーデは明るくいられる。
嬉しくて優しい思い出に涙が自然と溢れてくる。口元に手を当てて涙がこぼれ落ちるのを必死に耐えていたら、ジュードにその手を取られてそっと唇を押し当てられた。
「僕と結婚してくれる?」
「はい……」
そうしてジュードから改めて結婚を申し込まれて、言葉で言い表せないくらいの感動に温かい涙がエルフリーデの頬を伝う。
ジュードは自身を慕って潤んだエルフリーデの大きな茶色い瞳を覗き込んで目蓋に優しく唇を落としながら、その何よりも愛しい存在と少し早い誓いの口づけを交わした。
「僕には内緒にするつもりだったってことでしょ?」
「はうっ……で、でもジュードに言ったら心配すると思ったからっ」
「あのね、言わない方が心配するに決まってるでしょ? それを後から知ることになったら僕はきっと今以上にリーのこと怒ると思うけど?」
「ジュードそんなに怒ってるの? こんなのたいしたことないのに……」
「たいしたことない?」
ジュードの様子に始終ビクついて離れようとするエルフリーデをジュードは逃さない。そうして狭いソファーの上で繰り広げられる攻防戦に負けたのはエルフリーデだった。ジュードはエルフリーデの腰に手を回して逃げる婚約者を抱き寄せると、痛々しい物を見るようにエルフリーデの頭をそっと撫でた。
「まったく、女の子が顔に傷なんかつくって……」
まるでジュードの方が傷付いているような様子にエルフリーデはギクッと身を強張らせた。普段の気の強さも何処へやらもうしおらしく謝るしかない。
「ごめんなさい……」
「結婚式までリーは外出禁止。分かった?」
「ええっ!? ジュードそれ本気で言ってるの? あと数週間も部屋で何してろって言うのよ!」
「ええっじゃないよ。そうしないと僕がリーのこと心配して心労で倒れそうだからね。それに結婚式までにその傷治さないと。だから大人しくしてるんだよ?」
「…………」
途端黙り込んでしまったエルフリーデの唇にジュードは優しく口づけた。触れ合うような軽いキスが終わってもまだ互いの唇が擦れる位近くにジュードはいて、エルフリーデの瞳を覗き込んでくる。
「……リー、返事は?」
今度は怖い顔を引っ込めて、良い子だから言うことを聞いて? と言わんばかりの優しい眼差しを向けられる。天使のような容貌のジュードにそれをされてしまうと、エルフリーデの尖った心は簡単に折られてしまう。
「……わっ、分かったわよぉっ! ちゃんと大人しくしてるからっ」
「じゃあそのことちゃんと守るって約束してくれる?」
「うん……約束する。でもだけ1つ教えて?」
「ん? リーは何を知りたいの?」
「ジュードがお城で会ってたあの綺麗な女の人、誰……?」
「そのことか……」
「やっぱりジュードもああいう大人で綺麗な人が良いの?」
「あのね、リーは何か誤解しているみたいだけど。あの人はそんなんじゃないんだよ?」
「じゃあ……」
どんな関係の人なの? とエルフリーデが不安そうに角度によって金にも見える大きな茶色の瞳を揺らすと、ジュードは仕方が無いなと徐に懐から小さな箱を取り出した。
「これをあの人にお願いしてたんだ」
「えっと、これって……?」
ジュードが箱を開けると、その箱の中から出てきたのは小さな可愛らしい花の形をあしらった綺麗な指輪だった。
「ピンキーリング?」
通常の仕様とは異なる。小指にはめる為に作られた指輪。薬指に付けるには小さすぎるサイズのそれをエルフリーデが不思議そうに見つめていると、ジュードが指輪をエルフリーデの小指にそっとはめ込んでくれた。
「うん、結婚指輪は僕達の場合もう正式なものが決まっているからね。代わりにこれを送ろうと思ってたんだ。装飾デザイナーの彼女に頼んで作ってもらった。エルフリーデの指に合う花を選んでくれるようにね。よく僕達が小さい頃に王城の庭園で約束するとき交換したでしょ?」
「おままごとで付けてた花の指輪? 結婚の約束するときに交換してた……」
「リーは花好きでしょ? 花冠も作ってよく頭に乗せて遊んでたし」
「うん……」
懐かしい思い出と共にエルフリーデの頭の中で昔の懐かしい記憶が鮮明に蘇ってくる。幼い頃、王城で迷子になって泣いていたエルフリーデを助けてくれたジュードと一緒に過ごした王城の庭園。そこで交わされた結婚の約束。一緒に日向ぼっこをしながら沢山遊んだ日々。花冠を作り合って互いの頭に乗せながらした最初のキス。
両親に秘密の逢瀬がバレた後も、婚約者となり一緒にいることが許された。だからその後もずっとエルフリーデとジュードは一緒にいて。庭園での時間を止めることなく、一緒にずっと過ごすことが出来た。いつも綺麗で優しくてエルフリーデが好きだと言ってくれるジュードの傍で大人になれた。
あの幼かった頃、男の子たちの心ない仕打ちに傷付いて存在を否定されたことに悲しんでいたことも、それがどうでもいいことだと思える位いまが幸せで、だからエルフリーデは明るくいられる。
嬉しくて優しい思い出に涙が自然と溢れてくる。口元に手を当てて涙がこぼれ落ちるのを必死に耐えていたら、ジュードにその手を取られてそっと唇を押し当てられた。
「僕と結婚してくれる?」
「はい……」
そうしてジュードから改めて結婚を申し込まれて、言葉で言い表せないくらいの感動に温かい涙がエルフリーデの頬を伝う。
ジュードは自身を慕って潤んだエルフリーデの大きな茶色い瞳を覗き込んで目蓋に優しく唇を落としながら、その何よりも愛しい存在と少し早い誓いの口づけを交わした。
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