39 / 58
本編
37.約束の指輪
しおりを挟む
エルフリーデを胸元に抱き締めながらジュードは語尾を強めて咎めるような質問をした。
「僕には内緒にするつもりだったってことでしょ?」
「はうっ……で、でもジュードに言ったら心配すると思ったからっ」
「あのね、言わない方が心配するに決まってるでしょ? それを後から知ることになったら僕はきっと今以上にリーのこと怒ると思うけど?」
「ジュードそんなに怒ってるの? こんなのたいしたことないのに……」
「たいしたことない?」
ジュードの様子に始終ビクついて離れようとするエルフリーデをジュードは逃さない。そうして狭いソファーの上で繰り広げられる攻防戦に負けたのはエルフリーデだった。ジュードはエルフリーデの腰に手を回して逃げる婚約者を抱き寄せると、痛々しい物を見るようにエルフリーデの頭をそっと撫でた。
「まったく、女の子が顔に傷なんかつくって……」
まるでジュードの方が傷付いているような様子にエルフリーデはギクッと身を強張らせた。普段の気の強さも何処へやらもうしおらしく謝るしかない。
「ごめんなさい……」
「結婚式までリーは外出禁止。分かった?」
「ええっ!? ジュードそれ本気で言ってるの? あと数週間も部屋で何してろって言うのよ!」
「ええっじゃないよ。そうしないと僕がリーのこと心配して心労で倒れそうだからね。それに結婚式までにその傷治さないと。だから大人しくしてるんだよ?」
「…………」
途端黙り込んでしまったエルフリーデの唇にジュードは優しく口づけた。触れ合うような軽いキスが終わってもまだ互いの唇が擦れる位近くにジュードはいて、エルフリーデの瞳を覗き込んでくる。
「……リー、返事は?」
今度は怖い顔を引っ込めて、良い子だから言うことを聞いて? と言わんばかりの優しい眼差しを向けられる。天使のような容貌のジュードにそれをされてしまうと、エルフリーデの尖った心は簡単に折られてしまう。
「……わっ、分かったわよぉっ! ちゃんと大人しくしてるからっ」
「じゃあそのことちゃんと守るって約束してくれる?」
「うん……約束する。でもだけ1つ教えて?」
「ん? リーは何を知りたいの?」
「ジュードがお城で会ってたあの綺麗な女の人、誰……?」
「そのことか……」
「やっぱりジュードもああいう大人で綺麗な人が良いの?」
「あのね、リーは何か誤解しているみたいだけど。あの人はそんなんじゃないんだよ?」
「じゃあ……」
どんな関係の人なの? とエルフリーデが不安そうに角度によって金にも見える大きな茶色の瞳を揺らすと、ジュードは仕方が無いなと徐に懐から小さな箱を取り出した。
「これをあの人にお願いしてたんだ」
「えっと、これって……?」
ジュードが箱を開けると、その箱の中から出てきたのは小さな可愛らしい花の形をあしらった綺麗な指輪だった。
「ピンキーリング?」
通常の仕様とは異なる。小指にはめる為に作られた指輪。薬指に付けるには小さすぎるサイズのそれをエルフリーデが不思議そうに見つめていると、ジュードが指輪をエルフリーデの小指にそっとはめ込んでくれた。
「うん、結婚指輪は僕達の場合もう正式なものが決まっているからね。代わりにこれを送ろうと思ってたんだ。装飾デザイナーの彼女に頼んで作ってもらった。エルフリーデの指に合う花を選んでくれるようにね。よく僕達が小さい頃に王城の庭園で約束するとき交換したでしょ?」
「おままごとで付けてた花の指輪? 結婚の約束するときに交換してた……」
「リーは花好きでしょ? 花冠も作ってよく頭に乗せて遊んでたし」
「うん……」
懐かしい思い出と共にエルフリーデの頭の中で昔の懐かしい記憶が鮮明に蘇ってくる。幼い頃、王城で迷子になって泣いていたエルフリーデを助けてくれたジュードと一緒に過ごした王城の庭園。そこで交わされた結婚の約束。一緒に日向ぼっこをしながら沢山遊んだ日々。花冠を作り合って互いの頭に乗せながらした最初のキス。
両親に秘密の逢瀬がバレた後も、婚約者となり一緒にいることが許された。だからその後もずっとエルフリーデとジュードは一緒にいて。庭園での時間を止めることなく、一緒にずっと過ごすことが出来た。いつも綺麗で優しくてエルフリーデが好きだと言ってくれるジュードの傍で大人になれた。
あの幼かった頃、男の子たちの心ない仕打ちに傷付いて存在を否定されたことに悲しんでいたことも、それがどうでもいいことだと思える位いまが幸せで、だからエルフリーデは明るくいられる。
嬉しくて優しい思い出に涙が自然と溢れてくる。口元に手を当てて涙がこぼれ落ちるのを必死に耐えていたら、ジュードにその手を取られてそっと唇を押し当てられた。
「僕と結婚してくれる?」
「はい……」
そうしてジュードから改めて結婚を申し込まれて、言葉で言い表せないくらいの感動に温かい涙がエルフリーデの頬を伝う。
ジュードは自身を慕って潤んだエルフリーデの大きな茶色い瞳を覗き込んで目蓋に優しく唇を落としながら、その何よりも愛しい存在と少し早い誓いの口づけを交わした。
「僕には内緒にするつもりだったってことでしょ?」
「はうっ……で、でもジュードに言ったら心配すると思ったからっ」
「あのね、言わない方が心配するに決まってるでしょ? それを後から知ることになったら僕はきっと今以上にリーのこと怒ると思うけど?」
「ジュードそんなに怒ってるの? こんなのたいしたことないのに……」
「たいしたことない?」
ジュードの様子に始終ビクついて離れようとするエルフリーデをジュードは逃さない。そうして狭いソファーの上で繰り広げられる攻防戦に負けたのはエルフリーデだった。ジュードはエルフリーデの腰に手を回して逃げる婚約者を抱き寄せると、痛々しい物を見るようにエルフリーデの頭をそっと撫でた。
「まったく、女の子が顔に傷なんかつくって……」
まるでジュードの方が傷付いているような様子にエルフリーデはギクッと身を強張らせた。普段の気の強さも何処へやらもうしおらしく謝るしかない。
「ごめんなさい……」
「結婚式までリーは外出禁止。分かった?」
「ええっ!? ジュードそれ本気で言ってるの? あと数週間も部屋で何してろって言うのよ!」
「ええっじゃないよ。そうしないと僕がリーのこと心配して心労で倒れそうだからね。それに結婚式までにその傷治さないと。だから大人しくしてるんだよ?」
「…………」
途端黙り込んでしまったエルフリーデの唇にジュードは優しく口づけた。触れ合うような軽いキスが終わってもまだ互いの唇が擦れる位近くにジュードはいて、エルフリーデの瞳を覗き込んでくる。
「……リー、返事は?」
今度は怖い顔を引っ込めて、良い子だから言うことを聞いて? と言わんばかりの優しい眼差しを向けられる。天使のような容貌のジュードにそれをされてしまうと、エルフリーデの尖った心は簡単に折られてしまう。
「……わっ、分かったわよぉっ! ちゃんと大人しくしてるからっ」
「じゃあそのことちゃんと守るって約束してくれる?」
「うん……約束する。でもだけ1つ教えて?」
「ん? リーは何を知りたいの?」
「ジュードがお城で会ってたあの綺麗な女の人、誰……?」
「そのことか……」
「やっぱりジュードもああいう大人で綺麗な人が良いの?」
「あのね、リーは何か誤解しているみたいだけど。あの人はそんなんじゃないんだよ?」
「じゃあ……」
どんな関係の人なの? とエルフリーデが不安そうに角度によって金にも見える大きな茶色の瞳を揺らすと、ジュードは仕方が無いなと徐に懐から小さな箱を取り出した。
「これをあの人にお願いしてたんだ」
「えっと、これって……?」
ジュードが箱を開けると、その箱の中から出てきたのは小さな可愛らしい花の形をあしらった綺麗な指輪だった。
「ピンキーリング?」
通常の仕様とは異なる。小指にはめる為に作られた指輪。薬指に付けるには小さすぎるサイズのそれをエルフリーデが不思議そうに見つめていると、ジュードが指輪をエルフリーデの小指にそっとはめ込んでくれた。
「うん、結婚指輪は僕達の場合もう正式なものが決まっているからね。代わりにこれを送ろうと思ってたんだ。装飾デザイナーの彼女に頼んで作ってもらった。エルフリーデの指に合う花を選んでくれるようにね。よく僕達が小さい頃に王城の庭園で約束するとき交換したでしょ?」
「おままごとで付けてた花の指輪? 結婚の約束するときに交換してた……」
「リーは花好きでしょ? 花冠も作ってよく頭に乗せて遊んでたし」
「うん……」
懐かしい思い出と共にエルフリーデの頭の中で昔の懐かしい記憶が鮮明に蘇ってくる。幼い頃、王城で迷子になって泣いていたエルフリーデを助けてくれたジュードと一緒に過ごした王城の庭園。そこで交わされた結婚の約束。一緒に日向ぼっこをしながら沢山遊んだ日々。花冠を作り合って互いの頭に乗せながらした最初のキス。
両親に秘密の逢瀬がバレた後も、婚約者となり一緒にいることが許された。だからその後もずっとエルフリーデとジュードは一緒にいて。庭園での時間を止めることなく、一緒にずっと過ごすことが出来た。いつも綺麗で優しくてエルフリーデが好きだと言ってくれるジュードの傍で大人になれた。
あの幼かった頃、男の子たちの心ない仕打ちに傷付いて存在を否定されたことに悲しんでいたことも、それがどうでもいいことだと思える位いまが幸せで、だからエルフリーデは明るくいられる。
嬉しくて優しい思い出に涙が自然と溢れてくる。口元に手を当てて涙がこぼれ落ちるのを必死に耐えていたら、ジュードにその手を取られてそっと唇を押し当てられた。
「僕と結婚してくれる?」
「はい……」
そうしてジュードから改めて結婚を申し込まれて、言葉で言い表せないくらいの感動に温かい涙がエルフリーデの頬を伝う。
ジュードは自身を慕って潤んだエルフリーデの大きな茶色い瞳を覗き込んで目蓋に優しく唇を落としながら、その何よりも愛しい存在と少し早い誓いの口づけを交わした。
0
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】平凡OL(β)ですが、同期の末っ子御曹司(α)に溺愛されています
神無月りく
恋愛
日本外食産業の一翼を担う『川嶋フーズ』で秘書としてOL黒田鞠花(くろだまりか)は、同期で社長令息の川嶋隼人(川嶋はやと)に入社以来恋に似た憧れを抱いていた。
しかし、そもそもの身分が違う上に自分はβで、彼はα。
ただの同期以上の関係になれないまま、五年の月日が流れた。
ある日、Ωのヒートに巻き込まれて発情した彼を介抱するため一夜を共にし、それがきっかけで両思いだったことが発覚して交際がスタート。
意外に庶民的でたまに意地悪なスパダリ彼氏に溺愛され、順調にデートを重ねて幸せな日々を送っていた鞠花だったが、自分の母親からαの交際を反対されたり、彼の運命の番を自称するΩ令嬢が登場したりと、恋路を妨げる波乱に見舞われるように……
※ムーンライトノベルズ(小説家になろう)様で同一作品を連載中ですが、こちらが若干先行公開となっております。
※一応R18シーンには☆マークがついています。
*毎週土日および祝日の不定時に更新予定(ただし、1月1日~5日までは連日更新)。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら
深冬 芽以
恋愛
インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。
ルールは一つ。
二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。
その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。
だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。
千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。
比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。
【ルーズに愛して】シリーズ
~登場人物~
相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG
トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任
有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任
千尋の同僚
結婚四年、別居一年半の妻がいる
谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB
|Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任
桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG
市役所勤務、児童カウンセラー
小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB
|Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人
小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻
|Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ
新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB
新田設計事務所副社長
五年前にさなえと結婚
新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG
新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子
亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG
楠行政書士事務所勤務
婚活中
鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた
ピロ子
恋愛
飲み会に参加した後、酔い潰れていた私を押し倒していたのは社内の女子社員が憧れるエリート課長でした。
普段は冷静沈着な課長の脳内は、私には斜め上過ぎて理解不能です。
※課長の脳内は変態です。
なとみさん主催、「#足フェチ祭り」参加作品です。完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる